本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『READING HACKS!』(原尻淳一)

 お薦めの本の紹介です。
 原尻淳一さんの『READING HACKS!』です。

 原尻淳一(はらじり・じゅんいち)さんは、大学の修士課程を修了後、大手広告代理店勤務で入社から一貫して飲料や食品のブランド戦略立案を手掛け、現在は、大手レコード会社でアーティストのマーケティングなどを担当されています。

現代に求められる「読む」スキル

 生活するうえで難しい問題や、こんがらがった複雑なこと、それにちょっとしたトラブル。
 それらを、一瞬でサクッと解決する技術のことを、「ライフハック」と言います。

 そのような「ライフハック」をいくつも持っていて、それを道具として使いこなしている達人のことを「ライフハッカー」と呼びます。

 原尻さんは、「読む」という行為が、今ほど重要になっている時代はないと指摘します。

 その理由は、文書として消費できる情報量の増加以上に発信される情報量が急激に増え、そのギャップがますます広がりつつあるからです。
 

 つまり、現代のビジネスマンは、①大量のドキュメントを読むことが大前提となっていて、そのなかから②自分に必要な情報を素早く収集して、③効率よく形にしなければならない、という重荷を背負わされているのです。
(中略)
 もう一つ。本書がこだわりたいのは「アウトプット」という言葉です。なぜなら、ビジネスにおいて評価されるのは「アウトプット」でしかないからです。
(中略)
 ビジネスにおける読書は「書く」こと、「話す」ことに直結します。しかし、わたしたちが体得してきた読書というものは、果たしてそうなっていたでしょうか。
 この問題をよく考えてみると、そもそもわたしたちはこの「読む」という行為に関して何ら定型を持っていないのです。

   「RAEDING HACK!」  はじめにより  原尻淳一:著  東洋経済新報社:刊

 本書は、ビジネス・リーディングにおける1つの基本モデルとなりうることを目標に描いたとして、忙しいビジネスマンが大量のドキュメントをスピーディーに効率よく読み、良質なアウトプットを生産する準備段階までを具体的に提示した一冊です。
 そのから、いくつかピックアップしてご紹介します。

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読書投資基準=70:20:10モデル

 本を選ぶ時、無意識に好きなカテゴリーばかりを選び、偏りが出てしまいがちですね。
 そうならないようにするには、どうしたらいいか。

 原尻さんは、本を買う場合に、ある投資基準を持っています。
 

 最も簡単なのは、読書に対して「70:20:10」と呼ばれる投資基準を持つことです。これはグーグルの社長エリック・シュミットさんが自社の投資基準比として掲げているもので、グーグルでは、既存サービスの充実に70%の金と時間をかけ、20%は既存サービスの周辺サービスの充実に、そして10%は全く新しい未知の領域に投資するという黄金比率があります。
 わたしはこの基準を読書に持ち込んでいて、既存のビジネス領域へ書籍投資に70%、既存ビジネスをサポートしうる、あるいは新しくビジネスになるうる領域の参考文献に20%、そして全く未知の書籍に10%を割くように意識しています。

   「RAEDING HACK!」 Chapter2 より  原尻淳一:著  東洋経済新報社:刊


 なるほど、意識するだけで、だいぶ違いそうですね。
「より深く」も大事ですが、「幅広く」も大事です。

はじめは薄い本から読み始める

 理論と実際という言葉がありますけれども、やはり理論の説明は抽象概念になりますし、それより導入ではリアルでわかりやすいものを選び、なるべく「読書の参入障壁を低くすること」を心がけましょう。それをクリアしたら、徐々にレベルをあげていく。こうしたほうが、読書にテンポがついてきて、それが次の読書への足がかりになります。
(中略)
どんなに薄くても1冊は1冊です。読み終わった後、達成感を味わうことができます。この達成感を得ることが読書を持続させる点で、とても重要なんです。

   「RAEDING HACK!」 Chapter2 より  原尻淳一:著  東洋経済新報社:刊

 どんな分野の本も、いきなり分厚い専門書から読み始めない。
 まず、イントロダクション的な導入書から始めるべき。

 最初から欲張り過ぎるな、ということですね。
 自分の身の丈を考えた選択をすることが重要です。

ノウハウ本は、鵜呑みにしないで「実験」するもの

 原尻さんは、ある目的を達成するための方法がしっかり書かれている本、いわゆるノウハウ本は読むべきだと述べています。

 スタンスとしては、実験をして、自分にあったものだけを吸収するということが重要です。
 

 たとえば、野球をやっている人がすべてイチロー選手の振り子打法をすれば、彼のようにメジャーリーグで首位打者を取れるのかというとそうではないでしょう。かつて王監督がやっていた一本足打法をすれば、年間50本のホームランを達成できるわけでもない。その方法には、使う人の向き不向きが必ずあるわけですから、それを一度やってみて、駄目なら次をまた試せばいい。これはビジネス書を読む上で、大変重要な視点だと思います。

   「RAEDING HACK!」 Chapter4 より  原尻淳一:著  東洋経済新報社:刊

「この方法でないといけない」
「この方法ではダメだ」

 人は、このように、試してみる前に決めつける傾向があります。

 本になっているほどの方法なら、著者以外にも大勢、その方法を取り入れているはずです。
 実験してみる価値は、あります。

 全部ではなくても、一部だけでも自分に合っていて、取り入れられる。
 そんな部分があるかもしれません。

 何ごとも、食わず嫌いは損だということです。

先輩や後輩に説明することを前提に資料を読む

 原尻さんは、ビジネスに限らず何でも教えてもらうよりも教える側に立ってはじめて真に内容を理解できるものだ指摘します。
 説明する「仮想のターゲット」を決めてその文書を読むべきとのこと。
 

 つまり、ビジネスで資料を読む時の構えは常に複眼的であることが大切なのです。1つは自分のアウトプットに活用できるパーツを探すこと、そしてもう1つは、直面しているビジネスをより深く理解するために、誰かに説明する前提で読むこと。この宮本武蔵のような二刀流の構えが、1つ上のビジネスマン、優れたアウトプッターが持っておくべき視点なのです。

   「RAEDING HACK!」 Chapter6 より  原尻淳一:著  東洋経済新報社:刊

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 人に内容を説明しようと思った時に、初めて理解が足りていないことに気が付く。
 普段の仕事でも、よくありがちなことです。

 そうならないように、始めから誰かに説明する前提で、読むべきだということですね。

 文書をたくさん読むために大事なのは、やはり、数をこなして慣れること。
 それに尽きます。

 まずは、自分の興味のある分野やカテゴリーを、手当たり次第に読んでみる。
 そこから新たな興味が生まれ、自分の世界が広がります。
 本を読むのが、より楽しくなります。

 本書は、そのきっかけになる一冊です。

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