【書評】『STUDY HACKS!』(小山龍介)
お薦めの本の紹介です。
小山龍介さんの『STUDY HACKS! 楽しみながら成果が上がるスキルアップのコツと習慣』です。
小山龍介(こやま・りゅうすけ)さんは、大学卒業後大手広告代理店に入社、その後海外に渡りMBAを取得。
2009年からブルームコンセプトという会社の代表取締役に就任され、新規事業のコンサルティングやライフハックに関する新商品のプロデュースを手掛けています。
勉強は、自分自身を「突然変異」をさせるチャンス
生活するうえで、難しい問題やこんがらがった複雑なこと、それにちょっとしたトラブル。
それらを、一瞬でサクッと解決する技術のことを「ライフハック」と言います。
そして、ライフハックなアイデアをいくつも持ち、それらを道具として使いこなす達人のことを「ライフハッカー」と呼びます。
小山さんは、今の時代におけるライフハックの重要性を、以下のように述べています。
昔からのやり方を踏襲するだけでは、樹上にいるようなもの。絶滅の危機に瀕してしまいます。
今はよくても、10年後、「あのやりかたって、まるで天然記念物だね」と若手にささやかれる、そんな暗い未来はまっぴらごめんです。今こそ二足歩行を始めるときだというのは、こうした未来を避けるためでもあるのです。
そしてここからが重要なのですが、新しいやり方というのは、今までの業務の延長戦上には見つからないということ。3回繰り返してきた業務をもう1回やったとしても、そこに新しい方法は見つかりません。経験を積めば積むほど見えなくなるものがあるのです。「STUDY HACKS!」 はじめにより 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
ただ木の上で待っていても、食べ物を得ることはできません。
不安でも、木を降りて、自分の足で歩いてみる。
人類は、そんな全く新しい方法(スキル)を身に付けることで、生き延びることができました。
小山さんは、さらに続けます。
勉強をすると、業務では関係なかった知識に触れることになります。最初は聞き慣れないその知識に戸惑いも覚えるかもしれませんが、しかしその戸惑いこそが重要なのです。そこでは、あなたの中の遺伝子レベルで、確実に何らかの変化が起こっています。その変化が積み重なっていった結果、突然変異が起こる。そして今こそ、自分自身を突然変異させるタイミングなのです。
「STUDY HACKS!」 はじめにより 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
わかってはいても、続けるのは難しいのが勉強です。
本書は、ライフハックによって、勉強を楽しみに変えてしまう。無理がなくて、楽に続けられる、ハック精神にあふれる勉強
法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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まず「耳」から覚えよう
小山さんは、「ラク耳勉強法」という勉強法を提唱します。
何でも音声にして、耳からインプットしようという方法です。
なぜ耳からなのかというと、視覚は、全体のイメージを一瞬で捉えるのには適しているのですが、細かいところまで記憶するのは不得意。映像は音声に比べて情報量が多いので、「だいたいこんな感じのものがある」というように、おおざっぱに捉えて処理しているのです。
その点、音は細かい部分まで注意を払うことが出来ます。ここに、記憶に関する音の優位性があるのです。理解できないことでも、まず頭の中に叩き込んでみる。それであとから、「ああ、あれはこういうことだったのか!」と理解が追いついてくるのです。
実はここには、「理解する前に記憶する」という重要なコンセプトが隠されています。
受け取った情報を、すでに知っている概念へとすぐに変換するのではなく、そのままの「生」の状態でまずは引き受ける。これから勉強しようとする内容はわからないから勉強するのであり、勉強するその瞬間は、「何がなんだかわからないもの」として迫ってくるもの。それを「わからないから」といって拒絶するのではなく、ひとまず「わからない」という状態で脳にインプットする。勉強のプロセスにおいては、こうした“いい加減さ”を許容するのがポイントです。「STUDY HACKS!」 CHAPTER1 より 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
とにかく、その時は意味がわからなくても、頭に叩き込んでおく。
そうすることで、後から理解が追い付いてきます。
それには、耳からのインプットが最適ですね。
悩まないで、量をこなすこと。
それが大事です。
短時間で集中して勉強しよう
それは、短時間勉強だからこそ引き出せる集中力の活用です。時間がないという状況を逆手にとり、短時間の中で集中力を維持しながら中身の濃い勉強をする。長時間勉強しているとどうしても出てくる「中だるみ」の問題を避けるのです。
ビジネスのプロジェクトでも、リソースがあればあるほど、そのリソースが無駄遣いされやすいといわれています。官僚制度を研究したパーキンソンは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則にまとめました。
つまり、時間というリソースが潤沢に使えるということは、それだけ時間を無駄遣いしてしまいやすいということ。こう考えると、長時間勉強できない社会人のほうがかえって、充実した勉強をしやすい環境にあるといえる理由がわかるでしょう。
「長時間、勉強できない」というふうにネガティブに捉えるのではなく、むしろ「長時間、勉強しないからこそ、集中して勉強できる」というふうにポジティブに捉え直すべきなのです。「STUDY HACKS!」 CHAPTER2 より 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
まとまった時間が取りにくいのは、社会人の宿命です。
でも、それはそれで、メリットもあるんですね。
ちょっとした時間を積み上げていく。
集中してやる。
それが効率を上げて勉強するためのコツです。
頭に入れたことは積極的に忘れよう
脳というのは、穴の空いた桶。情報という水を入れても、その瞬間からこぼれ落ちていきます。こぼれ落ちていく量を少なくしようと穴を手でふさごうとしても、あまりに穴が多いので、水漏れを止めることはできません。勉強だけをやっているならまだしも、会社で仕事をしながらだと、その水漏れはさらにひどいものになります。
忘却については、エンビングハウスの研究が有名です。その研究では、最初の1時間のうちになんと54%を忘れてしまうという結果が出ています。
(中略)
そこで、発想を逆転させる必要が出てきます。つまり、覚えたことはできるだけ積極的に忘れるということ。忘れたうえで、再度、脳に放り込む。水漏れを止めるのではなく、水が漏れるよりも多く、水を入れていくことに集中するのです。常に水を流し込んでいれば、漏れてもいいのです。「STUDY HACKS!」 CHAPTER3 より 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
これも、発想の転換です。
反復練習の効果ですね。
忘れても構わない。
その割り切りの良さが、大事です。
忘れようと思うと、逆に、意外と覚えているものです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
STUDIOUSとはSTUDYの語源を同じくする言葉で、「よく勉強する」という意味のほかに、「熱中する」というニュアンスがあります。
勉強することによって、提供できる付加価値が増え、人脈が広がり、仕事から多くのことを学ぶ。そこにあるのは、寝る間も惜しいくらいに人生に熱中している姿です。
それから脳科学者の茂木健一郎さんによれば、このSTUDIOUSという言葉には、多くの人が一心に何かを作り上げるという意味もあるそうです。
(中略)
そうして考えると、今までの勉強観が大きくゆらぎ始めます。勉強というと、一人で机に向かって黙々と進めていくようなイメージがあると思いますが、本来の意味から考えると、あまりに偏った勉強観だといえます。
同じSTUDIOUSから派生したスタジオという言葉が示しているように、勉強というのは、新しいものが生まれる「場」にこそふさわしいもののはず。そして、そこでの経験を通じて一人ひとりが新しい発見をする。それこそが、本来の勉強のはずなのです。「STUDY HACKS!」 CHAPTER7 より 小山龍介:著 講談社+α文庫:刊
元をたどれば、「勉強する」ことと「熱中する」ことは、同じ語源です。
興味のあることに熱中し、その経験から新しい発見をすること。
それが新たなモチベーションとなっていく。
勉強とは、本来、そうあるべきものなのでしょう。
同様に、ライフハックを活用して勉強を楽しみ、その中から新たなライフハックが生まれる。
そんな好循環が、人々の発想を変え、世の中を変えていきます。
皆さんも、素敵なライフハッカーを目指しましょう。
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