【書評】『眼を動かすだけ1分間超集中法』(北出勝也)

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お薦めの本の紹介です。
北出勝也さんの『眼を動かすだけ1分間超集中法』です。

北出勝也(きたで・かつや)さんは、オプトメトリー・ドクター(検眼士)です。
一般社団法人視覚トレーニング協会の設立者であり、現在は、同協会の代表理事を務められています。

「視る力」とは何か?

北出さんたち検眼士の役目は、「視る力」を改善することです。

「視る力」とは、単純に遠くを見る視力だけではなく、眼球の働きのすべてと、脳で形を捉える視空間認知機能などを意味します。

北出さんは、これを鍛えることで、集中力や作業効率が向上し、さらに中高年の人であれば物忘れや認知症の予防など、さまざまな効果が得られることが科学的に判明していると指摘します。

 ここでいう「視る力」とは、単なる視力を意味するものではありません。
視界に映った情報を正確に捉え、それを脳で迅速に処理すること。つまり、目を通したトータルな能力を指しています。
そして、こうした「視る力」は、私たちの生活のいたるところに大きな影響をあたえているのです。たとえば・・・・・、

急ぎの仕事があるのに、どうしても作業に集中できない。
大事なところを見落とし、読み間違いが多い。
1日中パソコンに向かっているのに、どうにも能率が上がらない。
真面目に取り組んでいるのに、作業内容にケアレスミスが多い。
スポーツ、特に球技や、車の運転は自信がない。


こんな悩みにさいなまれた経験はないでしょうか。

人の集中力は、疲労や体調など心身のコンディションに大きな影響を受けます。そのため、たいていの人は「少し休めば回復するだろう」と思い、その原因を深く考えようとはしません。
しかしじつは、不調の原因が「視覚」にあるとしたらどうでしょう? 「視る力」が適切に機能していないために、集中力や注意力など、思わぬところに悪影響を及ぼしているのだとしたらーー。
人は視力が衰えてきたり、老眼の影響を感じたときに、敏感にそれを察知します。それまでクリアに見えていたものがしにくくなれば、敏感にそれを察知します。それまでクリアに見えていたものが視認しにくくなれば、誰しも異変を感じて当然でしょう。
ところが、トータルな意味での「視る力」の低下には、意外なほど鈍感なのです。
そこでまずは、日常で感じているささいな不便や不都合の原因が、眼にあるという仮説を立ててみることから始めましょう。

『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 1 より 北出勝也:著 光文社:刊

本書は、北出さんが眼球の働きを鍛えるメソッドとしてまとめた「ビジョントレーニング」をわかりやすくまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「眼を動かす力」が弱っている現代人

北出さんは、「視る力」が低下していることにより、物事を的確に認識できていなかったり、情報を的確に処理できていなかったり、あるいは脳や精神のコンディションを正常に保つことができなくなる。これは日常的によく起こっていることだと指摘します。

 眼を動かす力が弱くなってしまうと、速く眼を動かして作業するときの効率が落ちてしまったり、視野が狭くなって、注意力が広範囲に行き届かない、といった問題が起きます。作業の効率が悪い、見落としや見間違いが多いといった仕事上のミスも、実は眼球運動の問題が原因ということもあります。

スポーツ、特に球技や、車の運転が苦手だという人は少なくないと思いますが、そのようなことも、眼を動かす力と大きくかかわっています。球技が苦手な人は、もともと眼球運動の力がよく発達していなかったことに原因があるということもあります。
また、小学生のときに字を読むことが難しかったり、字を書き写すことが難しかったりした人は、能力の問題ではなく、眼を動かす力が弱かったということがあります。中学生になって勉強のスピードが上がってから、先生が板書するスピードについていけず、気まずい思いをしながら友達にノートを借りていた人もいることでしょう。ビジョントレーニングを受けることで、読むことが上手になったり、書き写す力がついて自信がつく子もたくさんいます。
ただ、トレーニングで改善することがまだまだ知られていないために、対策を講じられないまま大人になってしまった人が多くいます。それは、「はじめに」でも述べたように、日本では「視る力」を鍛えることが教育の場でおろそかになっていることも関係します。

視覚というのは、私たちの日常生活と密接にかかわっている重要なセンサーです。それだけに、自覚がなくても十分に作動していなければ、生活に思いがけない弊害をもたらすことがあります。
そのわかりやすい一例が、集中力です。

眼でものを見ることと集中力がなぜ関係するのか、疑問に思う人も多いでしょう。しかし眼と脳は、深い関係を持っているのです。
人は視覚でものを捉えた際、脳の「視覚野(しかくや)」と呼ばれる部位でその情報を処理しています。そして、認識した情報に基づいて、脳の前頭葉(ぜんとうよう)が司令を体の各部位へ送ることになります。
たとえば、目の前のグラスを手に取ろうとするときや、前から歩いてくる人をよけようとするときなど、すべては視覚情報をもとに脳が下した司令によって次の行動をとっています。
このとき、そもそも視覚からの情報を脳が正しくキャッチできていなければ、正しい司令を送ることはできません。
これは、漠然とした地図では目的地にまっすぐたどりつけないことと同じです。たとえば、手元からおよそ40センチ先に置いてある認識したグラスを取ろうとしたものの、実際には35センチ先にあった場合、指先がグラスにつっかえてしまい、倒して中身をこぼしてしまうようなトラブルが起こります。
きっとみなさんのまわりにもいるでしょう。すぐにものを落としたり、つまずいて転んだりするそそっかしい人が。もしかするとこれも、視覚機能の不備に原因があるのかもしれません。
人は認識している視覚情報が不正確であると、的確な行動を取ることができない生き物なのです。
そこで着目してほしいのが、「アイ・コントロール(眼球運動)」という概念です。これはつまり、眼球もまた、手や足と同じように、脳との相関関係を持つ運動器官のひとつであるという考え方に基づいています。
アイコントロールが不十分な状態にあると、視覚情報があいまいになってしまい、仕事の効率も集中力も低下します。みなさんが日頃から感じている不調の一因は、案外ここにあるかもしれません。

『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 1 より 北出勝也:著 光文社:刊

眼球の動きを良くすることは、動いているものを捉える視力、つまり「動体視力」を鍛えることになります。
スポーツの世界、とくに球技においては、一流選手は例外なく、優れた動体視力を持っていると聞きます。

眼を動かす力が、運動神経だけでなく、集中力の有無に大きく関わっている。
なかなか気づかないことですが、当然といえば当然の事実といえますね。

眼はさまざまな筋肉で動いている

北出さんは、眼も手や足などと同様に、筋力を鍛えるのが可能であると述べ、それを理解してもらうために眼球の構造を簡単に説明しています。

 眼球は多くのみなさんがイメージしている通り、およそ球体に近い形状をした器官です。簡単にまとめれば、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる球に、角膜や水晶体といったいわゆる「瞳(ひとみ)」に相当する部位で構成され、全体は強膜と呼ばれる硬い膜で覆われています。
その性質上、カメラにたとえるとわかりやすいでしょう。レンズの部分に相当するのが「水晶体」です。
眼球は前部と後部に2つの穴があいており、前方の穴には角膜が、後方の穴には視神経が入っています。視覚的な情報は角膜から光として取り入れられ、これが水晶体によって光の屈折と焦点を調整したうえで、網膜上で映像化します。網膜はいわば、その網膜に焼きつけられた視覚情報を脳に伝えるのが、「視神経」です。
また、眼球の中で水晶体レンズの調整をおこなう部位を、「毛様体筋」と呼びます。遠くのものを見るときにはこれがゆるみ、近くのものを見るときには緊張して、視覚に映る対象物に焦点を合わせるのです。
ここで重要なのは、眼球はこうした機能に加えて、6つの筋肉で動かしているということです。対象に焦点を合わせるための一連の動きは、上斜筋、下斜筋、上直筋、下直筋、外直筋、内直筋によって制御されています。
筋肉ですから、鍛えることは可能です。逆にいえば、腕力や脚力のように、ふだんあまり使うことがなければ、どんどん衰えていくのは眼の筋肉も同じことです。

「視力」は、はっきりとした映像を脳に送る力であり、それも大事な能力なのですが、あくまで視覚機能の力の一部でしかない、ということを理解することが大切です。
たとえ視力がよくても、「眼の動きの力」が弱ければ、視覚情報をすばやく捉えて脳に入力していくことが難しくなるのです。
ビジョントレーニングによって、視力が鍛えられる(回復する)と誤解されることがよくありますが、そうではありません。
なぜなら、「視力」は「遠くのものをはっきりと見る力」を意味するものであり、「見る力」とはまた別物だからです。

そのため、仮に視力だけが飛び抜けてよかったとしても、眼球運動のパフォーマンスが低ければ、対象物を視覚で捉えるのに時間がかかります。「見る」とはすなわち、視覚で捉えたものを情報として認知し、それに対して心身が反応するまでのプロセスを指すのです。
これが不十分であると、もし突然どこからかボールが飛んできたとしても、それにいち早く気づいたり、危険であると判断したりすることが遅れ、重大な事故につながることもあり得ます。
ビジョントレーニングとは、そうした視覚機能全般の改善をめざすトレーニングなのです。

『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 2 より 北出勝也:著 光文社:刊

図1 眼球を動かす筋肉 眼を動かすだけ Part2
図1.眼球を動かす筋肉
(『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 2 より抜粋)

眼を動かしているのも「筋肉」です。
当然、使わなければ衰えてしまいます。

現代人は、パソコンやスマホの画面を見つめる時間が長く、眼をあまり動かさなくなっています。
だからこそ、余計に眼球を動かすトレーニングが必要になりますね。

眼を動かすだけでよい脳波が出る!

眼球運動をしているときに脳がどのように活動しているのか。

北出さんが被験者となって、さまざまな眼球運動をしているときの脳の血流を調べた結果、驚くような結果がわかりました。

図2 眼球運動による脳の血流の変化 眼を動かすだけ Part3

図2.眼球運動による脳の血流の変化
(『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 3 より抜粋)

 まず、対象物を眼で追う追従性眼球運動をおこなっているときは、従来の眼球運動の司令塔といわれている部分の活動が見られたのですが、離れている対象物を視点をジャンプさせながら見る跳躍性眼球運動をおこなっているときには、前頭葉の中で従来の眼球運動の司令塔の部分よりはるかに広範囲にわたり、血流の上昇活動が起こりました。これは、眼を動かすだけでも前頭葉の中が広範囲で活動することを示す、驚くべき結果でした(上の図2を参照)。
そして輻そう性眼球運動、つまり「寄り眼」をしているときは、前頭葉の前のほうの部分・前頭前野の、集中力や意志的な活動を司る部分が働いたのです。
眼球を動かすトレーニングをすることで前頭葉の力、すなわちイメージする、集中する、感情のコントロールをする、意思決定をするなどの力も促進されるのではないかという推論を立て、トレーニングを指導していましたが、脳の血流の変化を調べることで、それが実証されたことになります。
(中略)
次の図は、前頭葉の脳波を測定するアルファテックという機器を使って測定した、私自身の脳波のグラフです(下の図3を参照)。
実験内容は、非常にシンプルです。最初の1分間はただ眼を閉じて何もしていない状態で計測します。次の1分間は、眼を薄めの状態に保ち、そのまま眼球をゆっくりと一定のペースで左右に動かし続けただけ。次の1分間も、そのまま左右に眼球を動かし続け、その間の脳波を測定しました。
人の脳波は、大きく3つの状態に分けることができます。
まず「α(アルファ)波」とは、人が最もリラックスした状態で出る脳波です。大脳皮質があまり働いていない状態であり、覚醒はしていても安静を保った、刺激が少ないことを意味しています。
これに対して「θ(シータ)波」は、さらにリラックスした状態であり、眠りに入る前のまどろみを示しています。ただしこのとき、人は高い記憶力を発揮し、ひらめきを得やすい状態にあるのが特徴。就寝前、ベッドの中で突然いいアイデアを思いつき、慌ててメモ帳を探したりするようなことがあるのは、このためです。
これらに加え、「β(ベータ)波」は人が緊張したりイライラして活動しているときに出るものです。
これを踏まえたうえで、円グラフの内訳に注目してください。私が左右に一定のリズムで眼球運動を続けていくうちに、最初はほとんどβ波が占めていた(つまり緊張していた)のに対して、少しずつα波とθ波が占める割合が拡大していることが顕著にわかります。
最初の1分間は特に何もせず、眼を閉じて測定を行いました。このときの円グラフは、β波がほとんどを占めていました(円グラフ❶)。次の1分間では眼を軽く動かしながら、測定しました。このときの円グラフの状態は、α波とθ波のバランスが非常によく、要は心の落ち着いた、何をするにも理想的なメンタルコンディションであるといえます。
つまり眼球運動を始めてすぐに、脳はリラックスした状態を手に入れたことを、このグラフは示しているのです。

『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 3 より 北出勝也:著 光文社:刊

図3 眼球運動による脳波の変化 眼を動かすだけ Part3

図3.眼球運動による脳波の変化
(『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 3 より抜粋)

たった数分の眼球運動をするだけで、脳の中の状態(血流や脳波)が大きく変わるのは驚きです。

眼と脳が、いかに強く結びついているかを示すデータともいえますね。

眼の筋肉を鍛える「6つのトレーニング」

北出さんは、1回3〜5分で、誰でも簡単に眼球の動きを鍛えられる「6つの基本のトレーニング」を紹介しています(下の図4を参照)。

図4−1 輹そう性眼球運動 眼を動かすだけ Part4 図4−2 ヘッド スウィング 眼を動かすだけ Part4 図4−3 追従性眼球運動 眼を動かすだけ Part4 図4−4 跳躍性眼球運動 眼を動かすだけ Part4 図4−5 弓矢のポーズ 眼を動かすだけ Part4 図4−6 視野広げ 眼を動かすだけ Part4

図4.眼の筋肉を鍛える基本の6つのトレーニング
(『眼を動かすだけ1分間超集中法』 Part 4 より抜粋)

このトレーニングのポイントは、必ず眼球を動かすよう意識することです。
朝晩の習慣にしたいですね。

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年齢を重ねていくと、真っ先に衰えを感じる器官のひとつが「眼」です。

年をとったら「老眼」になるのは避けられないと、多くの人は考えているでしょう。
しかし、それは真実でしょうか。

眼球を動かす筋肉が衰えて「視る力」が弱った症状が老眼であるなら、防ぐことができますし、機能を回復させることも可能です。

日々の集中力アップに加えて、将来の老眼や認知症予防にもつながる。
そんな「ビジョントレーニング」の驚くべき効果を、ぜひ皆さんも体感してください。
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