【書評】『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』(ショーン・スティーブンソン)

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 お薦めの本の紹介です。
 ショーン・スティーブンソンさんの『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』です。

 ショーン・スティーブンソン(Shawn Stevenson)さんは、健康アドバイザーです。
 米国内の健康部門のポッドキャストで第一位の人気を誇る“The Model Health Show”のクリエイターとして有名です。

睡眠は「量より質」


「睡眠不足」は、先進国に共通する問題です。

 免疫系の衰え、糖尿病、ガン、肥満、鬱、物忘れの増加。

 睡眠不足は、私たちの身体に、さまざまなトラブルを引き起こします。

 スティーブンソンさんは、私たちの身体に「現れるもの」の質を決めるのは睡眠だと強調します。

 私は、クライアント一人ひとりに潜む後天的な影響を明らかにしたいと思って分析を始めた。クライアントに仕事のことを尋ね、人間関係のことを尋ね、朝起きてから夜寝るまでのあいだに習慣となっている行動について尋ねた。彼らの日常生活について分析し、血液検査やホルモン検査の結果を見ると、一つのことがはっきりと浮かびあがった。結果を出せずに苦しんでいるクライアント全員が、睡眠もしくはストレスに大きな問題を抱えていたのだ。それも、睡眠の問題とストレスの両方を抱えている人がほとんどだった。寝不足になれば、当然ストレスはたまる。
 ストレスに対処する方法はたくさんあるが、睡眠を改善する方法となると、「8時間寝なさい」という決まり文句以外はほとんど見当たらない。そもそも、8時間寝たところで問題は解決しない。8時間寝ても、毎朝疲れがとれずにぐったりとした気持ちで起きている人がたくさんいる。だから私は、クライアントの睡眠時間を増やすだけでなく、睡眠の質も大幅に改善する方法を提供しようと考えた。その方法をクライアントが実行し始めると、それまで結果を出せずにいたことが堰を切ったみたいに次々と改善していった。質の高い睡眠をとることの大切さがデータに表れることはわかっていたが、人生を一変させるほどの結果が出るとは思ってもみなかった。

『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 はじめに より ショーン・スティーブンソン:著 花塚恵:訳 ダイヤモンド社:刊

 本書は、睡眠の質を劇的に改善し、人生の成功を手に入れるための具体的な方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「睡眠」が脳と体をつくり変える


 私たちの体内では、目覚めているときに「異化作用」(外から摂取した物質を体内で分解する過程)が起こります。

 一方、眠っているときには、「同化作用」(外から摂取した物質を合成する過程)が起こり、免疫力、骨、筋肉の成長や再生が促されます。

 つまり、眠ることで身体が再生され、若さが保てるということです。

 良質な睡眠をとると、免疫系が強化され、ホルモンバランスが安定し、新陳代謝が促進される。身体のエネルギーが増加し、脳の働きも改善される。睡眠を適切にとらない限り、自らが求める肉体や人生を手にすることはできない。絶対に不可能だ。
 私たちが暮らす社会では、睡眠はまったくといっていいほど尊重されていない。それどころか、「成功するためには睡眠時間を削ってより多く働かないといけない」「死んでから好きなだけ眠ればいい」といった考え方が刷り込まれる。尊重されていないという表現は、はっきり言って生ぬるい。
 たゆまぬ努力が成功の大部分を占めることは言うまでもないが、賢く努力することだって同じくらい重要だ。それなのに、休むことなく働き続ける人が世界中にたくさんいる。そういう人は、朝から晩まで仕事漬けの日々を送りながらも、仕事の質が大幅に落ちていることに気づいていない。調査によると、24時間一睡もしない状態が続いた直後は、脳に送られるグルコースの量が全体で6パーセント減るという。つまり、それだけバカになるということだ。
 寝不足のときに、キャンディやドーナツなどの甘いもの、スナック菓子といったでんぷん質を食べたくなる原因もこれにある。脳内からグルコースが減少すると、身体はできるだけ早く脳にグルコースを送ろうとする。生き延びるためにそうするのだ。このメカニズムは、遺伝子を通じて受け継がれてきた。狩猟採集時代に生きた私たちの先祖にとって、脳の働きが鈍ることは、捕食者の攻撃による死や、必要な食料を確保するための狩りや採取といった能力の著しい低下を意味したからだ。現代では、冷蔵庫のところへ行くだけで、寝不足の身体の訴えを鎮めることはできるが、グルコースの減少といった現象によってストレスが生じるメカニズムはいまなお健在だ。あなたの身体にも、しっかりと組み込まれている。

『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 CHAPTER 1 より ショーン・スティーブンソン:著 花塚恵:訳 ダイヤモンド社:刊

 睡眠不足のまま、仕事をした。
 そのため、集中力や注意力が落ちて、生産性が上がらない一日を過ごした。

 そんな経験は、誰にでもあることでしょう。

 睡眠不足が、脳へのグルコースの供給を減少させ、ストレスを生みます。
 そのストレスで、間食がやめられなくなり、肥満や糖尿病などの生活習慣病につながります。

「諸悪の根源は、睡眠不足にある」

 そう言っても過言ではありませんね。

問題児「コルチゾール」の本当の働き


 体内で生成されるホルモンで、睡眠に重要な役割を果たすもののひとつが「コルチゾール」です。

 コルチゾールは、一般的にストレスが生じたときに分泌される「ストレスホルモン」だと問題視されることが多いです。

 太るのはコルチゾールのせいだ! ホルモンバランスが崩れるのもコルチゾールが原因だ! 大好きなテレビ番組が打ち切りになったのもコルチゾールが悪い! コルチゾールさえいなくなれば、すべてがうまくいくのに・・・・・。
 だが現実には、コルチゾールは悪者ではない。健康で身体の働きを最適に保つために、なくてはならない大切な存在だ。コルチゾールが生成されるのには、ちゃんとした理由がある。だから、コルチゾールの量をできるだけ減らしても意味がない。必要なときに必要な働きができるように、コルチゾールを健全なリズムで生成できることが大切なのだ。
 世間で言われている説明とは相容れないかもしれないが、コルチゾールはある種のスーパーヒーローだと言っていい。コルチゾールは、起きあがって動くためのエネルギーややる気をもたらしてくれる。眠りから目を覚まさせ、機敏に動けるようにしてくれる。精神力、集中力、やる気を日々もたらしてくれる。もちろん、コルチゾールに欠点がないわけではない。生成が過剰もしくは不足すれば、問題が生じる恐れがある。
 自然療法医のアラン・クリスチャンソンのベストセラー著書『The Adrenal Reset Diet(副腎リセットダイエット)』に、コルチゾールに関する素晴らしい記述がある。「コルチゾールは生体のリズムを日々管理する副腎ホルモンだ。たとえるなら、体内に備わっているコーヒーメーカのような存在だ。私たちは毎朝、副腎ホルモンが新しいコーヒーを淹れたとたんに目が覚める。夜は、副腎ホルモンというコーヒーメーカーのスイッチが切れて眠りに落ちる」
 コルチゾールは睡眠のサイクルに欠かせない。図を見てわかるように、朝になったらコルチゾールの分泌量は自然に増える(下図を参照)。それは、朝起きて行動を起こし、人生を楽しむためだ。時間がたつにつれ、コルチゾールの量は減少の一途をたどり、熟睡の準備に入る頃に底をつく。これがコルチゾール生成の正常なリズムだが、みなさんもご存じのとおり、毎日の生活は必ずしも正常とは限らない。
 コルチゾールが本来少なくなるべきときに、最大になる人もいれば、本来最大になるべきときに少なくなる人もいる。そういう人は、「疲れすぎてリラックスできない状態」だと言える。夜になると、体は疲れているのに神経は最高に高ぶり、本来すっきりしているべき午前中は、ベッドから身体を引き離せない。そういう状態に心当たりがあるなら、この本で紹介する対策が役に立つ。驚くほど熟睡できるようになるはずだ。

『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 CHAPTER 2 より ショーン・スティーブンソン:著 花塚恵:訳 ダイヤモンド社:刊

コルチゾールが分泌されるリズム CHAP2P41
図.コルチゾールが分泌されるリズム
(『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 CHAPTER 2 より抜粋)

 コルチゾールの分泌量を増やすポイント。
 それは、「日中に太陽光を浴びること」です。

 太陽光を浴びる量を増やせば、コルチゾールの分泌の正常なリズムが生まれ、メラトニン分泌のリズムもまた正常になるとのこと。

 スティーブンソンさんは、体内時計がもっとも敏感に反応するのは、早朝午前6時から午前8時30分の太陽光だと述べています。

 夜、ぐっすり眠るためには、朝の過ごし方が大事です。
 外に出て、しっかり太陽の光を浴びる習慣を身につけたいですね。

睡眠不足は「腸内フローラの代謝異常」を招く!


 人間の「腸」は、神経組織の塊です。
 最近の研究では、脳内と同じ神経伝達物質が30種類存在することが明らかになりました。

 まさに、「第二の脳」と呼ばれるにふさわしい臓器です。

 スティーブンソンさんは、腸が健康でちゃんと機能することが、睡眠の質に大きく影響すると述べています。

 腸の働きの取りまとめ役という重責は、迷走神経が担う。迷走神経は、腸に限らず心臓や肺といった臓器と脳を直接つなぐ。そして、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究者により、迷走神経を通じて運ばれる食物繊維の情報は、約90パーセントが腸から脳へ渡り、その反対はないという意外な事実が明らかになった。腸内環境と腸の健康は、脳の機能を支配するという重要な役割を果たしているのだ。腸で起きたことは必ず脳まで伝わる。残念ながら、旅ならぬ「腸の恥はかき捨て」とはいかない。
 UCLAの研究では、腸内に何兆個と存在する細菌が第二の脳である腸神経系と絶えず情報をやり取りしていることも明らかにされている。また、カリフォルニア工科大学の研究者は、セロトニンの生成に重要な役割を果たす細菌が腸内に存在すると発表した。
 私たちの体内には細胞の10倍の数の細菌が生息していて、そのほとんどが腸に住みついている。だからといって怖がることはない。細菌とはそういうものだ。人間は細菌と共生できるように進化を遂げてきた。正常なバランスが保たれていれば、免疫系や消化器系の管理をはじめ、睡眠の正常化も助けてくれる。
 細菌でも「善玉菌」と呼ばれるものは、健康の維持に大きく貢献してくれる。一方、「日和見菌」と呼ばれるものは、場合によっては身体にさまざまなダメージを与える。とはいえ、日和見菌にも体内で果たす役割はある。映画『アベンジャーズ』に出てくるハルクのようだと思えばいい。ハルクは決していい人ではないが、チームの勝利に協力した。そうは言っても、ハルクのような人ばかりになったら、あっというまに世界は破滅するだろう。
 大切なのは、善玉菌に対する日和見菌の比率だ。身体の舵を任せるなら、信用できるやつがいい。悪いやつにのっとられれば、ファストフードのドライブスルーにばかり連れて行かれ、夜になれば暴れて眠らせてもらえない。
 腸内細菌はお花畑のように群れていることから、腸内フローラとも呼ばれている。睡眠のリズムが不規則になると、腸内フローラに何が起こるのか。学術誌『セル』に掲載されていた研究によると、人間の体内時計は細菌のバランスに影響を受けるという。日常生活で普通に起こりうる時差ボケなどの出来事を経験するだけで、腸内毒素症が生じ、代謝異常を招くのだ。
 その研究チームは、10時間のフライトによって時差ボケが生じる前、フライト中、フライト後で被験者の便を採取して分析した。すると、肥満や糖尿病の人に多く見られる種類の細菌の数が、時差ボケ後に増加していた。そして、被験者の睡眠のリズムが通常に戻ったとたん、その細菌の数は正常値まで下がったという。
 また、腸内細菌に独自の体内時計があり、毎晩決まった時間に「衛兵交代式」を行うことで、腸の管理を信用できるやつに引き継ごうとしていることも明らかになった。だがら、徹夜したり、寝不足になったりすれば、日和見菌に腸を(ひいては脳も)のっとられる機会を生むことになるのだ。

『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 CHAPTER 7 より ショーン・スティーブンソン:著 花塚恵:訳 ダイヤモンド社:刊

 腸と脳とは、迷走神経を通じて、相互にやりとりをしています。

 睡眠不足は、腸内環境の劣化を招きます。
 逆に、腸内環境が悪くなると、睡眠に障害を生じます。

「鶏と卵の関係」ですね。

 ぐっすり眠れない人は、食生活から見直してみる。
 時間がかかるようで、実は、最も効果的な方法かもしれません。

睡眠不足は「老化」に直結する


 人の寿命を知るうえで、もっとも正確な指標になる。
 そう言われているのが、「テロメア」です。

 テロメアは、染色体の末端に位置し、染色体の破損やほつれを防いでいるものです。

 睡眠不足は、テロメアの劣化にも、大きな影響を与えます。

 年齢を重ねるにつれてテロメアはすり減っていき、最終的に消えてなくなる。そうすると、細胞の分裂が止まる。わかりやすい言い方をすれば、それが老化だ。細胞の老化は毎日起こるが、長い年月をかけてゆっくりと起こる大きな問題が一つある。テロメアの長さを縮めるスピードは、ある行動によって左右されるのだ。カリフォルニア大学の研究チームが実施した調査により、テロメアを縮めるスピードを加速させる最大の要因は寝不足であることが明らかになった。
 10代から20代前半にかけて身体に必要な睡眠を顧みない生活を送ると、身体はそれにすぐ慣れるものの、知らず知らずのうちに老化が加速する。細胞の分裂が突然止まった影響が身体に現れても、何が起きたのかわからない。
 細胞の分裂が止まるとどうなるか。これまであったエネルギーが突然なくなる。体調を崩す頻度が増える。身体のあちこちが痛みだす。体重を落とそうとしてもなかなか落ちなくなる。70代や80代の人の話をしているのではない。20代後半でそういう経験のある人が大勢いるのだ! 老化のスピードを自らの不注意で加速させているというのに、そうと気づける人はほとんどいない。
 この事実をいますぐ子どもたち(とくに高校生と大学生)に伝えてほしい。彼らの先に待ち受ける長い年月を健康で丈夫な若々しい身体で送るためには、絶対に知っておく必要がある。
 嬉しいことに、ライフスタイルを改善すれば、テロメアの強化を図ることができる。学術誌『アーカイブ・オブ・インターナル・メディスン』に掲載された研究により、週に100分程度の運動(テニス・水泳・ランニングなど)をした人は、週に16分だけ運動した人に比べて平均5〜6歳若く見えることが明らかになった。やはり、運動は若さの源泉なのだ。睡眠を改善する効果も期待できることを思えば、健康で長生きするためには、適切な運動が欠かせないのもうなずける。
 運動は、時間を見計らって行うことがとても大切だ。夜更かしが身体によくないことは周知の事実だが、夜に運動することはそれ以上によくない。暗くなってから運動して深夜まで起きていることだけが悪い、というわけでもない。午前3時に起きてルームランナーで歩く、といった運動の仕方も避けたほうがいい。ホルモンの正常なサイクルは、そんな時間に起きてジムで熱心に運動するようにはなっていない。このことをしっかりと頭に入れて、身体と健康にとって最適な時間に運動する生活リズムをつくろう。時間の調整は、案外自分の力でどうにかできる。人は環境によってつくられるが、環境をつくるのは人だということを忘れないでほしい。

『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』 CHAPTER 11 より ショーン・スティーブンソン:著 花塚恵:訳 ダイヤモンド社:刊

 適度に身体を疲れさせる運動は、睡眠に入るまでの時間が短くなる、より深い睡眠を得られるなど、多くのメリットがあることは、周知の事実です。

 それに加えて、テロメアの強化につながるのであれば、運動をしない理由はありません。
 日々の充実と将来の活力のために、ぜひ、定期的な運動を習慣にしたいですね。

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 スティーブンソンさんは、睡眠は人生の隠し味だとおっしゃっています。

 最高の素材と最高の腕で作った料理。
 それも、隠し味ひとつ足りないだけで、大雑把で味気ないものになってしまいます。

 誰もが普段日常的にやっているけれど、ほとんど注目されない「睡眠」。
 しかし、その質を高めることは、人生全体の質を高めることと同意義といえます。

「最高の睡眠」という“スパイス”を私たちの日々の生活に振りかけて、人生という“料理”を最高に味わいたいですね。


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