【書評】『血管の老化は「足」で止められた』(池谷敏郎)
お薦めの本の紹介です。
池谷敏郎さんの『血管の老化は「足」で止められた』です。
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池谷敏郎(いけたに・としろう)さんは、内科・循環器科がご専門の医学博士です。
人は「足の血管」から老化する!
「人生100年時代」という言葉が、すっかり当たり前になってきた今日。
どうせ長生きするのなら、元気に、健康に、若々しくいたい。
そんな私たちの望みを叶えるカギを握るのが「血管」です。
血管は、全身をくまなく巡り、酸素と栄養を送り、いらないものを回収してくれているので、その働き者の血管が老いると、全身が影響を受ける
からです。
池谷さんは、欠陥のなかでも「足の血管」に注目することが大切
だと指摘し、その大きな理由として、以下の2つを挙げています。
①血管の老化のサインは足に出やすいから
②「足の血管力」を高めることが、全身の血管力を高める手っ取り早い方法だから
血管は、「物言わぬ臓器」といわれます。
老化が進んでも、初期の頃には、何の症状も出ないからです。何らかの自覚症状が出たときには、すでに動脈硬化がすっかり進行して、大事な血管が狭くなったり詰まったりしていた、ということが多いです。
そのため、心筋梗塞や脳卒中といった血管病は「突然死が怖い」といわれるのですね。
自覚症状がないまま動脈硬化が進行して、あるとき、大変な血管事故を起こすーー。血管が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる所以(ゆえん)です。
しかし、脳卒中や狭心症・心筋梗塞を発症するよりも早い段階で、下肢の動脈硬化がわかりやすい症状で出ることも少なくありません。
足で全身の動脈硬化の進行に気づくことができれば、心臓や脳での大事故に至る前に、対処することができます。
上記の5項目で該当するものはありますか?(上の図1を参照)当てはまるものがあっても、「まぁ、よくあること」と、あまり気にとめていなかったかもしれません。でも、これらは実は、足の血管力が衰えてきたサインなのです。
(サイン①・・・・・歩くスピードが遅い)
歩く速度が遅い、特に同年代の人と比べても遅いときには何らかの原因があります。
筋肉や骨の衰えを疑いがちですが、足の血管力の低下も原因の1つなのです。
早く歩くには、筋肉をたくさん動かすために、沢山の酸素が必要になります。つまり、血流が大事です。
足の血管力が低下して、血行が悪くなっていると、ちょっと早く歩こうとすると血流が足りなくなってしんどくなります。だから、自(おの)ずと歩くスピードが遅くなるのです。(サイン②・・・・・冷え、しびれ)
冷えは、それこそ「よくあること」と思う人が多いかもしれません。実際、若い人も含めて手足の冷えを感じている人は多いですが、これも血管力が低下しているサインです。
末端の血管が開きにくくなって血行が悪くなると、末端まで十分な血液が行き渡らなくなります。そうすると、足先が冷たくなるのです。
同様にしびれも、血行が悪くなっているサインの1つです。しびれと聞くと「神経が悪いのかな」とも思うかもしれません。でも、神経に酸素と栄養を渡しているのも血管なので、血行が悪くて神経に十分な血液が行き渡らなくなると、しびれが生じます。
足の動脈硬化の初期症状が、冷えとしびれです。
「たかが冷え」「たかがしびれ」と思わず、足の血管力が低下しているサインの1つであることを覚えておいてください。(サイン③・・・・・間欠性跛行(かんけつせいはこう))
少し歩くと、足がしびれたり痛くなったりして、少し休憩するとまた歩けるようになる。
これは「間欠性跛行」といわれ、足の血管力が低下したときに見られる、いちばん特徴的なサインです。
歩くときには、足の筋肉は沢山の酸素を必要としています。足の血管力が落ちていると、十分な酸素を送り届けることができないので、歩くとしびれや痛みが出て、休むと症状が治るのです。
ちなみに、間欠性跛行のもう1つの原因が、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」です。これは、背骨が変形することで、脊髄の神経の通り道である脊柱管が狭くなってしまう病気のこと。
脊柱管狭窄症の人も、歩くとしびれや痛みが出て、しばらく休むとまた歩けるようになる間欠性跛行が見られます。ただ、脊柱管狭窄症の場合、前かがみになると症状がやわらぐのが特徴です。(サイン④・・・・・足がつりやすい)
運動中や寝ているときに突然足がつる。このことを、「こむら返り」といいます。
「こむら」は、ふくらはぎのこと。足の裏や太ももなど、ふくらはぎ以外でもこむら返りは起きますが、ふくらはぎが多いので「こむら(ふくらはぎ)返り」と呼ばれています。
こむら返りは冷えや脱水、筋肉の疲労、ミネラル不足などが原因といわれますが、血行不良も原因の1つです。
動脈硬化や下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの血行障害があると、こむら返りが起こりやすいのです。たまに足がつるくらいなら、そう心配することはありませんが、足が頻繁(ひんぱん)につる場合は、足の血管力の低下が疑われます。(サイン⑤・・・・・水虫、足の傷の治りが遅い)
足に水虫や傷ができたときに「なかなか治らないな」と感じることはありませんか?
治らないからずっと薬を塗り続けている人がいますが、実は原因は皮膚ではなく、血流にあることも多いのです。
血流が悪くなると、水虫も傷も治りが遅くなります。
そのほか、血流が悪くなると、末端まで十分な血液が届かなくなり、足の爪が変形・変色したり、足の指の毛が抜けたりすることも。もし左右の足を比べて、片方が指毛が濃く、片方が薄いなど、左右差がある場合には要注意です。血流の低下が疑われます。5つの項目のうち、1つでも該当すれば、すでに足の血管力が低下している可能性があります。そして、当てはまる項目が増えれば増えるほど、疑いは濃厚になります。
当てはまる項目がある人は、今がチャンスです。足の血管力を高めて、全身の血管の状態を改善し、全身の若返りを図りましょう。当てはまる項目がなかった人は、そのままよい状態を保ち、老化を防ぎましょう!
前項では、足の血管力が低下しているサインを5つ紹介しました。足の血管力が低下している状態とは、つまりは「足の動脈硬化」が起きているということです。
動脈が硬くもろくなるのが、動脈硬化です。
動脈硬化についてはよく知られていますが、足の血管にも動脈硬化が起こることはまだまだ知らない人が多いのではないでしょうか。
足の動脈硬化は、専門用語では「下肢閉塞性動脈疾患(かしへいそくせいどうみゃくしっかん)」「末梢動脈疾患」などと呼ばれますが、この本ではわかりやすいように「足の動脈硬化」で統一しましょう。足の動脈硬化は、今、増えているのです。
先ほどの5つのサインに当てはまった人は、「足の動脈硬化が進んでいるかも・・・・・」と、心配になったかもしれません。
正確に調べるには、「ABI(ankle brachial index)検査」というものがあります。
ベッドに横になって、血圧を測るときに腕に巻くマンシェットを左右の腕と足首に巻きます。そして、グーッと締めながら両腕と両足首の血圧を同時に測り、その比率を計測します。
腕の血圧よりも、足首で測った血圧のほうがやや高いのが正常です。
つまり、「足の血圧÷腕の血圧」が「1」をやや超えているのが正常値。
ところが、差がなかったり、足の血圧のほうがやや低かったりすることがあります。そういう人は、足首に至る血管のどこかに狭くなっている場所があるということです。
具体的には「足の血圧÷腕の血圧」が「0.9」以下だと、足の動脈硬化が疑われます。ABI検査は、両腕と両足首の血圧を同時に測るというだけの検査なので、痛みも何もなく、5分ほどで終わる、手軽に受けられる検査です。多くのクリニックで健康保険を利用して受けられますし、健康診断や人間ドッグのオプションに入っている場合もあります。
このABI検査で動脈硬化があるかどうかはわかりますが、さらに、どこに血行障害があるのかを調べるには、超音波検査やCT、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像検査を行います。特に、造影剤という薬を点滴で動脈内に注入した上でCTで撮影すると、どの部部がどのくらい狭まっているのか、血管の状態を詳しく診ることができます。●自宅でできるテストも
足の血管力が低下しているサインがあっても、病院で検査を受けるのはちょっと勇気がいるでしょうか。そこで、足の動脈硬化がないか、自分で調べる方法も紹介しましょう。
それが「足上げテスト」です(下の図2を参照)。足を上げたまま足首を曲げ伸ばしし、その後、足の色を確認してみてください。
健康な足は、ほとんど色味が変わりません。ところが、血流が悪くなっていると、蒼白になるのです。左右の足の色に違いがないか、確認しましょう。疼(うず)くような痛みが出た場合も、血流が悪くなっていると考えられます。
この「足上げテスト」で足が真っ白になったり、痛みが出たりした場合は、一度、病院で検査を受けましょう。健康診断のときにABI検査を追加してもいいですね。
まずは、「足上げテスト」を自宅で試してみてください。『血管の老化は「足」で止められた』 1章 より 池谷敏郎:著 青春出版社:刊
池谷さんは、
「人は血管とともに老化する」という言葉は、「人は足の血管とともに老化する」と言い換えられると述べています。
本書は、「足の血管力」を上げて動脈硬化を防ぐことで、いつまでも若々しく、健康に生きるためのノウハウをわかりやすく解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「足の動脈硬化」を招く三大生活習慣病
池谷さんは、直接的に血管を老けさせ動脈硬化を引き起こす残念な三大生活習慣病
を挙げ、それぞれを以下のように解説しています。
①「高めの血圧」「高血圧」・・・・・圧力が血管の壁を厚く硬くする
1つ目が「高血圧」です。
心臓から送り出された血液が血管の壁を押し広げる力が、血圧。
高血圧の人は、血管の壁を強く押し続けている状態です。そうするとどうなるか、想像してみてください。
強い圧力に耐えるために、もともとはしなやかだった血管が、少しずつ厚く硬くなっていきます。そうすると血液の通り道は狭くなるので、狭い通り道を血液が走り抜けることになって、さらに血管の壁はぐいぐい押されるようになります。そうして動脈硬化が進むのです。大事なのは、「血圧がやや高いな」と気づいたときに対処すること。
高血圧と診断されるのは、診察室での血圧が「140/90mmHg」以上、家庭で測った血圧が「135/85mmHg」以上の場合です。
正常の血圧は、診察室血圧で「120/80mmHg」未満、家庭血圧で「115/75mmHg」未満であり、これ以上の血圧は高めの血圧と判定されます。日本高血圧学会のガイドラインでは、高めの血圧を「正常高血圧」ないしは「高値血圧」として、高血圧予備軍であり、正常血圧の人に比べると動脈硬化のリスクが高いと注意喚起しています。「上の血圧は『年齢+90mmHg』まではいい」という説を耳にしたことはありませんか?これは一昔前にいわれていたことで、現在の医学ではすでに否定されています。
75歳未満は、診察室血圧で「130/80mmHg」未満をめざす。
75歳以上でも、診察室血圧で「140/90mmHg」未満をめざす。
これが、治療目標の目安です。この範囲を超えている人は、まずは「高めなんだな」と認識することから始めましょう。②「糖尿病」「糖尿病予備軍」・・・・・老化の元凶AGEs(エイジス)をためる
2つ目の気をつけるべき生活習慣病が、「糖尿病」「糖尿病予備軍」です。
血液中のブドウ糖の濃度が高い状態が続くのが、糖尿病です。
高血糖状態が続くと、血液中に余った糖が、体内のタンパク質と結びついて「終末糖化産物(AGEs)」と呼ばれる物質が生まれます。これが、体を老けさせるもとなのです。
AGEsは、活性酸素を発生させて血管を傷つけます。それだけではなく、血管の壁の内側にも進入し、血管内部に入り込んでいたLDLコレステロールを酸化させて、動脈硬化をより進行させるのです。
余分な糖質がタンパク質と結びついてAGEsを生み出す反応を「糖化」といい、この糖化は、体をサビさせる「酸化」の原因となり、細胞を老化させる元凶です。糖尿病の診断にはいくつかのパターンがありますが、血液検査で次の①②のいずれかと③が確認されると、糖尿病と診断されます。
①空腹時血糖値が「126mg/dl以上」
②随時(食事時間と無関係の)血糖値が「200mg/dl以上」
③HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が「6.5%以上」ちなみに、HbA1cは、直近1〜2カ月間の平均血糖値が反映される数値です。
糖尿病の人は、糖尿病ではない人に比べて、足の血管障害や神経障害を悪化させて足の切断にまで至るリスクが7倍も高いという報告もあります。
別の国内の研究では、糖尿病の人は10万人あたり年間21.8人が、足首よりも上の部分で足を切断する「大切断」を行っていたのに対し、糖尿病ではない人は10万人あたり2.3人だったという結果が出ています。同様に、足首から下の部分で切断する「小切断」は、糖尿病の人は10万人あたり年間28.4人、糖尿病ではない人は1.9人だったそうです。
つまり、糖尿病があると、大切断のリスクはおよそ10倍、小切断のリスクは15倍にも跳ね上がったのです。
それだけ、糖尿病は足の血管を老けさせるということです。特に血糖値のコントロールの悪い人、つまりはHbA1cの高い人はリスク大だと思ってください。糖尿病の人は、今、全国で1000万人超いるといわれています。そして、それと同じくらい「糖尿病予備軍」の人もいることが知られています。
糖尿病とは診断されていなくても、血糖値がやや高めの「糖尿病予備軍」の人もやっぱり要注意なのです。
糖尿病予備軍には2つのタイプがあります。
「空腹時血糖値がやや高いタイプ」と、「食後だけ血糖値が高くなる食後高血糖タイプ」の2つです。このうち、特に食後高血糖タイプは、この段階からすでに血管へ負担をかけていて、動脈硬化や心血管病を起こしやすいことがわかっています。
ところが、この段階では血糖値が高くなるのは食後だけなので、空腹時の血糖値を測る健康診断や人間ドックでは見逃されやすいのです。
ただし、食後高血糖を起こしている人は、HbA1cがやや高くなる傾向があります。「5.6%以上」の人は危ないと思いましょう。また、かかりつけ医で食後1〜2時間後の血糖値を測定してもらい、140mg/dl以上であれば、食後高血糖の可能性があります。③「脂質異常症」(コレステロール値、中性脂肪値の異常)・・・・・動脈硬化の始まり
最後の3つ目の生活習慣病が、「脂質異常症」です。悪玉の「LDLコレステロール」値が高い ⇒ 140mg/dl以上
善玉の「HDLコレステロール」値が低い ⇒ 40mg/dl未満
「中性脂肪(トリグリセライド)」値が高い ⇒ 150mg/dl以上
「non(ノン)-HDLコレステロール」が高い 170mg/dl以上このいずれか1つでも当てはまると、脂質異常症と診断されます。
脂質異常症は、かなり直接的に動脈硬化の原因になります。
というのは、動脈硬化の始まりは、血液中に余ったコレステロールが血管の壁に入り込むことなのです。どういうことか、説明しましょう。
まず、コレステロールは、細胞膜やホルモンをつくる材料となるなど、体にとって欠かせないものです。そのため、血流に乗って体の隅々にまで運ばれていくのですが、この際、肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役割を担っているのがLDLコレステロールです。
それなのになぜ「悪玉」と呼ばれるのかというと、LDLコレステロールは、運ぶべきコレステロールが多すぎると、余分なコレステロールを血液中に置き去りにしてしまうから。
その置き去りにされたコレステロールをせっせと回収して、肝臓に戻してくれるのが、HDLコレステロールです。だから、善玉なのですね。
ただ、余っているコレステロールが多すぎると、善玉のHDLコレステロールも回収しきれず、取り残されたままになってしまいます。
その回収されなかったコレステロールは、血管にできた小さな傷から血管の壁の内側に入り込んでたまってしまいます。これが、動脈硬化の始まりなのです。では、中性脂肪はどう関わるのでしょうか。
実は、中性脂肪が多いと、善玉のHDLコレステロールは少なくなり、同時に、悪玉のLDLコレステロールが小型化します。すると、小さくなった分、血管の壁にスルスルと入り込みやすく、また酸化されて異物化し、免疫細胞に取り込まれて血管壁に沈着しやすくなるのです。
しかも、余った中性脂肪自体も変質して、血管の壁に入り込み、血管にできるコブの材料になります。
さらに最近では、「non-HDLコレステロール」という値が脂質異常症の診断基準に加えられています。「non-HDLコレステロール」は総悪玉コレステロールともいえるものです。血中にはLDLコレステロール以外にもわずかに悪玉が潜んでいます。この悪玉は中性脂肪とともに血中に存在するため、中性脂肪値が高いとその量が増えることがわかっています。このような理由から、中性脂肪値が高いとその量が増えることがわかっています。このような理由から、中性脂肪値が高いと動脈硬化のリスクが高くなるのです。ところで、「コレステロール値が高いほど長生きする」といった話を聞いたことはありませんか? いまだにそう発信している医師もいるので、一般の方は「え? 高くていいの? 下げたほうがいいの?」と戸惑ってしまうと思います。
前述したように、コレステロールも体をつくる大事な材料であることは確かです。同じように、中性脂肪も、貯蔵用のエネルギーになったり、体温を一定に保つのに役立ったり、外部からの衝撃を和らげるクッションになったりと、メリットがあります。
また、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールにしても、全身にコレステロールを運ぶという大事な役割を担っています。そういう意味では、単純に「悪者」というわけではありません。
でも、LDLコレステロールが多すぎたり、HDLコレステロールが少なすぎたり、また中性脂肪が多すぎてLDLコレステロールが小型化したりすれば、血管の健康が脅かされる危険性が高まるのです。『血管の老化は「足」で止められた』 2章 より 池谷敏郎:著 青春出版社:刊
これら「三大生活習慣病」を引き起こすのは、主に食生活の乱れが原因です。
・コメやパンなどの炭水化物をお腹いっぱい食べる
・スナック菓子などの間食をよくとる
・清涼飲料水やフルーツジュースなど甘い飲み物をよく飲む
・濃い味付けのものや、塩分多めのものをたくさん食べる
これらのような“残念な食習慣”は、なるべく避けるようしたいですね。
歩くことで「足の血管力」がアップする!
池谷さんは、足の血管力を高める、いちばん手軽で有効な方法が、歩くこと
だと指摘し、その理由を以下のように説明しています。
なぜ,歩くだけで足の血管力はアップするのでしょうか。
大きく3つの理由があります。第一の理由が、「NO(一酸化窒素)が分泌されるから」です。
NOについては、2章の終わりで「血管力をアップする天然の薬のようなもの」と紹介しました。
簡単におさらいすると、血管をしなやかに開いてくれるとともに、血管の炎症を抑えて傷を修復してくれる“血管のメンテナンス係”です。歩くときには、じっとしているときに比べて、足の筋肉で10〜20倍の血流を必要とします。つまり、歩くでけで血液が増えるのです。
増えた血流は、血管を内側からマッサージするように刺激します。すると、刺激を受けた血管内皮細胞がNOの分泌を増やします。
また、体を動かすと、筋肉では「ブラジキニン」という物質が分泌されるのですが、このブラジキニンにもNOを増やす作用があります。ですから、NOの分泌を増やそうと思ったら、運動がおすすめです。
手をギュッと握って開く「グーパー運動」だけでもNOは増えます。
ただ、歩くことは全身運動です。しかも、足(下半身)を動かします。全身の筋肉の7割が集まっているのが下半身ですから、その下半身を動かすことがいちばん効率よくNOを増やすのです。歩くことは、下半身の筋肉をしっかり動かすとともに、血管を内側からマッサージしてNOをバンバン増やす行為です。「血管が喜んでいるな〜」と想像しながら、歩きましょう!
心臓から全身へと血液を送る、太い幹のような血管である大動脈は、股の部分で左右の足に分かれていきます。この枝分かれした部分を「腸骨(ちょうこつ)動脈」といい、さらに、太ももの部分を通る「大腿(だいたい)動脈」、膝裏を通る「膝窩(しっか)動脈」などと足先までつながっています。
足の血管に動脈硬化が起こると、どこかの部分が狭くなって、やがて完全に詰まってしまうこともあります。そうすると、その先の血流が途絶えるので、痛みやしびれが出たり、傷が治らなくなったりするわけです。
ただ、多くの場合、詰まりかけてくると足先で酸素や栄養が足りなくなるので「側副血行路」と呼ばれる“迂回路”がつくられます。
道路でイメージするとわかりやすいと思います。
国道(=足の動脈)で山崩れが起きて通れなくなったら、その先に住んでいる人たちは、移動も荷物の運搬もできなくなって困りますよね。そこで、山のなかにけもの道がどんどんつくられていく、そんなイメージです。
まさに、けもの道のような血管ができるのです。
こうしたことは、足だけではなく、心臓でも起こります。ゆっくりじわじわと詰まっていった血管の場合、血液を欲するところに新しく血管ができて、詰まりかけている血管をカバーしてくれるのです。
このときに大事なのが、「もっと血液が必要!」「血流が不足して困っています!」と、体に訴えることです。血流が足りないことを足に認識させれば、そこに新たな血管がつくられます。だからこそ、歩くことが大事なのです。
歩けば、ふだんの10〜20倍の血流が必要になるので、足の血管が衰えていると、「もっと血液が必要!」と足が認識して、新しい血管ができていきます。
1章で、足の血管がいったんは詰まったものの 歩くことで手術を回避できた患者さんのことをご紹介しました。なぜよくなったのかというと、歩くことで代わりの血管ができて、それが発達して、狭くなった血管をカバーしてくれたからなのです。
逆に、歩かない生活をしていると少ない血流でもなんとかなってしまうので、どんどん衰えてしまいます。歩くだけで足の血管力がアップする3つ目の理由は、足の動脈硬化を招く「三大生活習慣病」を遠ざけることができるからです。
ウォーキングをはじめとした運動で高血圧、糖尿病、脂質異常症を予防・改善できることは、国内外のいろいろな研究で明らかになっています。例えば、高血圧治療の指針となるガイドラインには「運動降圧療法」という項目があります。つまり、運動には血圧を下げる効果があるということです。しかもその降圧効果は一時的なものではなく、22時間ほど持続することもわかっています。
ただし,ハードな運動は、交感神経を刺激してかえって血圧を上げてしまいます。そのため、ウォーキングのようなほどほどの運動がベストなのです。
また、歩くには当然、大きな筋肉を動かすためにエネルギーを必要としますよね。そのエネルギー源として使われるのが、糖や脂肪です。
余計な糖や脂肪が使われれば、血糖値も中性脂肪値も下がります。ですから、糖尿病、脂質異常症の予防・改善につながります。さらに糖尿病に関しては、運動によって「血糖値が下がりやすい体になる」という効果もあります。
食事によって血糖値が上がると、体は血糖値をコントロールするために、すい臓から「インスリン」というホルモンを出します。そのインスリンに反応して、細胞が余った糖を取り込むと、血糖値が下がるのです。
ところが、糖尿病や糖尿病予備軍の人たちは、インスリンへの反応が鈍くなっています。
「インスリン抵抗性」といって、インスリンは出ているのに、糖が細胞へ取り込まれない、インスリンの利きが悪くなっている人が多いのです。
この「インスリン抵抗性=インスリンの利きが悪い状態」も、運動で改善することがわかっています。
こうした理由から、歩くことは、足の動脈硬化を招く三大悪である高血圧、糖尿病、脂質異常症を改善する、シンプルな解決策なのです。・三大生活習慣病を遠ざけて、血管を老けさせる原因を取り除く
・NOを増やして、血管を若返らせる
・新しい血管をつくって、血流を保つこの3つが「歩くだけで足の血管力がアップする」と断言できる、三大理由です。
マッサージでも足の血管を刺激することはできます。足をもむとスッキリしてむくみがとれたり、疲れがとれたりしますよね。それは血流がよくなるからです。ただ、皮膚の表面に近い部分を走っている静脈やリンパ管にはアプローチできますが、深部に入っている動脈にまではアプローチしにくいのです。
歩いて足の筋肉を動かせば、深部の動脈にも刺激がいきます。ですから、歩くことは最強の血管力アップ法なのです!動脈硬化は名前の通り、血管のなかでも「動脈」が硬くなっていく病気です。
血液の“帰り道”である「静脈」の病気を予防・改善するためにも、「歩く=足を動かす」ことは欠かせません。
そのことがよくわかるのが、「ロングフライト血栓症」です。
「エコノミークラス症候群」という名前のほうが有名でしょうか。以前はそう呼ばれていましたが、エコノミークラス以外の席でも起こる病気なので、最近ではロングフライト血栓症と呼ばれるようになりました。ちなみに、「静脈血栓塞栓症」が正式名称です。
飛行機の長旅のように、同じ姿勢のまま、長時間足を動かさないでいると、足の血流が悪くなり、静脈で血栓(血のかたまり)ができてしまうことがあります。
なおかつ、静脈は、動脈よりも血流が弱く、圧も低いので、血液の流れが停滞して詰まりやすいのです。血栓が、足の中心を走っている心臓への戻り道をふさいでしまうと、足全体やふくらはぎがパンパンに腫れたり、皮膚が変色してしまったりします。
もっと怖いのが、足の静脈でできた血栓が血流に乗って、心臓の右心房、右心室をすり抜けて肺にまで達してしまった場合です。心臓から肺へと向かう血管は、肺胞を取り巻く毛細血管につながっていてだんだん細くなっていくので、血栓がそこを越えられず詰まってしまうのです。
肺の血管を詰まらせれば、「肺梗塞」という死に直結する怖い病気を引き起こします。ロングフライト症候群を起こすのは、飛行機のなかだけではありません。震災時にも多く、石巻赤十字病院の先生らが調べたところ、東日本大震災直後の2011年3月には、避難所で下肢静脈エコー検診を行った人のおよそ半数(114人中52人)に血栓が見つかったそうです。
車中泊避難だともっと窮屈(きゅうくつ)な姿勢のまま過ごすことになりやすいので、より危険です。私のクリニックの患者さんでは、20代の若い方でお2人、肺梗塞を起こした方がいます。飛行機で長旅をしたわけでも、震災で避難していたわけでもなく、日常生活のなかでじっと同じ姿勢を続けていたら血栓ができて、肺の動脈を詰まらせてしまいました。
実はお2人とも同じことをやっていたのですが、何だと思いますか?
オンラインゲームです。
ゲームに夢中になると、つい何時間も座ったままになってしまう人は多いかもしれません。でも、20代の若い血管でも血栓をつくって詰まらせてしまうことがあるのですから、じっと座りっぱなしで何時間も過ごすのはそれだけ危ないということです。●「下肢静脈瘤」も歩くことがいちばんの予防法
静脈の病気でもう1つ代表的なものが、「下肢静脈瘤」です。足の静脈が太くなって、コブ状に浮き出てしまう病気です。
静脈は、血液を心臓に戻す血管ですよね。
心臓から出ていく血液は勢いよく送り出されていくので、しかも、足から心臓に向かうには、重力に逆らって上っていかなければいけません。
そのため、そもそも逆流しやすいつくりになっているので、静脈には逆流を防ぐための「弁」が備わっています。ところが、何らかの原因で弁が壊れてしまうと、血液が逆流して、停滞してしまいます。そうすると、静脈の壁に余計な圧力がかかって、壁が引き伸ばされて、静脈が太くなり、それがグネグネとヘビのように曲がりくねってコブ状に膨れてしまうのです。足の動脈硬化は男性のほうが多いですが、下肢静脈瘤は女性に多い病気です。特に妊娠・出産経験のある女性はなりやすく、女性ホルモンが一部関係しているのではないかといわれていますが、女性は筋力が弱いことも大きな理由です。
下肢静脈瘤は、簡単にいえば、静脈の内側の弁が壊れて血流が逆流してしまう病気です。足の筋肉があると、重力に逆らって血液が足から心臓に戻るのを助けてくれるのです。特に「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を動かすことが大事で、血液を心臓へと戻すポンプの役割を果たしています。
歩くと、ふくらはぎの筋肉をしっかり使いますよね。下肢静脈瘤を防ぐにも、歩くことが欠かせないのです。
逆に、男性でも歩かない生活をしているとなりやすく、特に、板前さんや美容師・理容師、教師、警備員など、立ちっぱなしの仕事の人の場合、下肢静脈瘤は珍しくありません。狭い場所に立ちっぱなしで、足を動かさないでいると、うっ血しやすいのです。そして、なぜ静脈の弁が壊れてしまうのかというと、血管力が関わっています。
弁も血管の内壁の一部ですから、血管の壁をしなやかに保つことが、下肢静脈瘤を防ぐために何より大切なのです。
弁がちゃんと機能するように、血管力を高めること。
静脈の血液が滞らないように、血流をよくすること。
この2つが下肢静脈瘤を防ぐ基本です。下肢静脈瘤は加齢とともに増えます。それは年齢とともに血管力が低下するとともに、血液を押し戻すポンプ機能を果たす筋力も衰えていきやすいから。
歩いて足を動かせば、血管力も筋力も同時に鍛えられます! それは下肢静脈瘤やロングフライト症候群を防ぎ、静脈の健康を守ることにもつながります。『血管の老化は「足」で止められた』 3章 より 池谷敏郎:著 青春出版社:刊
「歩くこと」は、誰でも簡単にできます。
これは日々の習慣にしない手はありませんね。
歩くことも、他の習慣と同じで、身についてしまえば、苦もなく続けることができるようになります。
いかに「歩く習慣」をつけるかが、足の血管力を上げるポイントになります。
「足の血管力」アップには1日“トータル30分”
足の血管力を上げるには、「歩くこと」が一番。
では、具体的にどれだけ歩けばいいのでしょうか。
池谷さんは、まずは「1日トータル30分」を目安に歩いてほしい
と述べています。
ポイントは「トータル」というところです。
ウェアを着替えて、ウォーキングシューズを履いて、30分のウォーキングを毎日するのは、もともと歩く習慣のない人にとってはハードルが高いのではないでしょうか? すでにウォーキングが日課になっている人はぜひ続けていただいて、そうでない人は、細切れの歩行をトータルで1日30分めざしましょう!「運動は30分続けないと意味がない」という説を聞いたことがある人もいるかもしれません。この説はすでに覆されています。
運動中は筋肉を動かすためにエネルギーの消費が増えますが、そのエネルギー源の主体が脂肪に切り替わるのが運動を始めて20分以上経過してからです。そのため「続けて30分くらいやらないと意味かない」とまことしやかにいわれていたのですが、最初からブドウ糖(グルコース)だけではなく、脂肪もエネルギー源として使われます。
つまり、運動のし始めは糖と脂肪の両方を燃やしてエネルギーをつくり出していて、20分くらい経ってくると、脂肪主体に切り替わっていくということ。初めからちゃんとどちらも使っているので、5分、10分といった細切れの運動でも十分に意味があるのです。
1日30分まとめて運動しても、10分の運動を3回分けて行っても減量効果に差はないとの報告もあります。
むしろ、こまめに歩くほうが血管にとってプラスになる面もあります。
例えば、1日30分のウォーキングは日課になっていも、それ以外の時間にはほとんど歩かない人もいるでしょう。その場合、肥満はある程度予防できるかもしれませんが、食後高血糖や食後高脂血症(食後に中性脂肪値が急増すること)の問題は残されます。特に今は血糖値の問題を抱えている人が多いので、その場合、1日3回の食後に10分でも5分でも軽く動いたほうがいいのです。細切れの歩行で1日トータル30分をめざすには、“動きグセ”をつけることがポイントです。歩けるチャンスは、生活のなかに結構たくさんあるもの。あとは、歩くほうを選ぶかどうか、です。
〈自宅編〉
・買い物には歩いて行く。余裕があればあえて少し遠くのスーパーに
・こまめに掃除をする
・何かを使ったら、もとの部屋、場所にその都度戻す
・テレビは立って観る
・キッチンで炒め物や煮込みをしているときには、かかとの上げ下げを
・朝食は時間の節約も兼ねて、キッチンカウンターで立って食べる〈会社・外出編〉
・通勤は一駅手前で降りて歩く。複数駅から歩ける場合は、いちばん遠い駅を選ぶ
・オフィスや駅のフロア移動は階段を使う
・コピーは人に頼まず、自分でとりにいく
・コピーや駅などの待ち時間は、かかとの上げ下げのチャンス
・トイレはあえて別のフロアに。特に昼食後は遠いトイレを使って歩行タイムに
・昼休憩は自分のデスクではなく場所を変える。または外に買いに行く私も、普段から動きグセをつけるよう意識しています。
医者の仕事は、朝から夜まで診察室で過ごすので、意識しなければ座りっぱなしになりやすいのです。以前は立派な背もたれのある椅子にもたれかかって座っていましたか、それでは立ち上がるのに「ヨイショ」と気力を使ってしまうので、立ち上がりたくなる椅子に変えました。
今、診察室で使っているのは、背もたれのない椅子です。すぐに立ち上がりやすく、例えば何か検査が必要になったら、「こちらにどうぞ」と患者さんと一緒に歩いていくなど、ちょこちょこ動いています。●食べすぎたらその日のうちに調整する
また、午前の診療は1時ぐらいに終わり、午後の診療が始まる3時まで少し時間があるので、その隙間時間を利用して、ランチを食べたあとに近くのスポーツジムに行くこともあります。あるいは、夕食を食べすぎちゃったなと思ったら、ジムに行って少し有酸素運動を行います。
「夕食後に外に出るなんて面倒では?」と思うかもしれません。家から歩いて5、6分のジムとはいえ、正直なところ、私も面倒に感じることはあります。でも、食べすぎたときにはその日のうちに調整して寝ることをマイルールにしています。
食べすぎたら、夜に燃やしてから寝る。そうすればエネルギー収支が合って、太ることはありません。内臓脂肪をたくわえれば血管も老けます。
カロリーや糖質量などを計算しているわけではありませんが、食べすぎたときには「やっちゃったな」と自分でわかりますよね。その罪悪感を持ったまま眠りにつかないようにしています。血管力アップをめざして歩くときには、いつもよりも5cm歩幅を広げて歩きましょう。足の筋肉を大きく支えて、血管を若返らせる天然薬「NO」の分泌も増えます。
ついでに、「自分のメタボ腹をまわりの人に見られている!」と妄想して、下腹部を凹(へこ)ませながら歩くと、さらに効果的です。
お腹を凹ませた状態をキープしながら呼吸を続ける動作を「ドローイン」といいます。腹筋群を鍛えるトレーニングです。このドローインをしながら歩くと、足だけではなく、お腹まわりの筋肉もより使えて、効果が倍増します。
例えば、「トイレに行くときには必ず歩幅はプラス5cm、お腹は凹ませて歩こう」などと決めてもいいですね。それから、ガラスや鏡に自分の姿が映ったときに、必ずお腹を凹ませることを習慣づけるのも、わかりやすくておすすめです。
また、脂肪燃焼効果を上げるには、なんといっても早歩きです。ハアハアと息が切れるようなスピードではなく、心地よさを感じられ、隣の人と会話ができるくらい、鼻歌がなんとか歌えるくらいの早歩きがベストです。
スポーツジムで有酸素運動を行うときには、私は、心拍数110くらいを目安に、ランニングマシーンで早歩きをしています。
最大心拍数の60〜70%の心拍数で運動をすると、いちばん脂肪燃焼効率が良いのです。最大心拍数は年齢によって異なり、いくつか計算式がありますが、昔から使われていてわかりやすいのが次の式です。最大心拍数=220-年齢
この値に「0.6」または「0.7」をかけて出た数値が、もっとも脂肪燃焼効率のいい心拍数です。私の場合は「(220-60)×0.7=112」なので、食べすぎた夜にジムに行って有酸素運動をするときにはだいたい110を目安に、30〜40分早歩きをしています。
血管力アップにもっとも効果的な歩き方は、「下腹部をちょっと凹ませながら大股で早歩き」です!
NOがバンバン出ていることを想像しながら歩きましょう。●階段は1段飛ばしよりも1段ずつ?
それから、階段を上るときには以前は1段飛ばしを心がけていましたが、最近は、「1段飛ばし」と「1段ずつ上がること」を使い分けています。
1段飛ばしでリズミカルに上るほうが筋力はつきます。でも、1段ずつ上ったほうがいい面もあるのです。それは、時間がかかる分、消費エネルギーは大きいということ。
ですから、筋力をつけたいときには1段飛ばしが、食べすぎたときなどエネルギーを消費したいときには1段ずつ上るほうがおすすめです。いずれにしても、大前提としてエスカレーターではなく階段を使うということですね。また、室内だけではなく外も歩いてほしいと思います。
外に出れば、風が吹いたり、人の流れがあったり、段差があったりして、ちょうどいい負荷がかかります。幼少期の下校時を思い出して、段差が会ったら上ってみたり、坂道を見つけたら下ってみたり、余裕のあるときには落ち着きのない歩き方をするのも楽しいものです。筋肉にも骨にもいい刺激になります。外来で患者さんに「できるだけ歩くようにしてくださいね」と伝えると、なんだかんだと言い訳をして歩かない「クララ症候群」の方が半分、歩くようになって血液データも体調も肌の調子もよくなっていく人が半分くらいでしょうか。
でも、この本を手に取ってくださった方は「10年後も20年後も元気に過ごしたい」「若々しくありたい」というモチベーションの高い人だと思いますので、きっと動きグセをつけて、歩く生活、足を使う生活を実践してくれると信じています!「歩きましょう、歩きましょう」といっても、足にトラブルがあるとなかなか歩く気にはなれないでしょう。「歩ける足」を作ることも大切です。
家の中でスリッパを履いていますか?
家に帰ってきたらすぐに靴下を脱ぎすてて、裸足でペタペタ歩いていませんか?
裸足生活は足に負担がかかります。足の裏への刺激が強すぎるのです。固い床の上で裸足で生活していると特にかかとに負担がかかり、痛めてしまうことがあります。
例えば、「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」という病気。
かかとから足の指のつけ根まで、足の裏を扇状に覆っている膜が硬くなって、かかとを引っ張ってしまうためにかかとが痛くなる足の病気です。特に朝起きて立ち上がるときにイタタタと鋭い痛みが走ります。足の裏の膜に過度な負担がかかることで生じるので、ランニングなどのハードな運動や立ち仕事、肥満などが原因になります。
この足底腱膜炎のセルフケアでまず大事なのがストレッチです。足の裏を伸ばすストレッチのほか、ふくらはぎやアキレス腱が硬くなるとかかとへの負担が増えるので、ふくらはぎとアキレス腱を伸ばすストレッチも有効です。
そして、スリッパ生活で足の裏を守ってあげることも大切。外出時の靴は選んでも、家のなかでは無頓着な人が結構多いのです。私は以前はスリッパを使っていませんでしたが、スリッパ生活に変えてから「こんなにも違うのか!」と実感しました。
昔の家は畳が多かったのでスリッパはいりませんでしたが、今はフローリングがほとんどですよね。私の家も畳は一部で、基本はフローリング。一部タイル貼りの部分もあります。カーペットを敷いている部分もありますが、それでも裸足では床の硬さが直に足に伝わるので痛くて、もうスリッパなしには戻れません。
ただし、サイズの合わないスリッパはつまずきや転倒のリスクになるので、歩きやすいものを選んでください。●「外反母趾(がいはんぼし)」を防ぐには、靴の選び方から
女性に多い足のトラブルが「外反母趾」です。足の親指が人差し指のほうに「く」の字に曲がってしまう病気です。親指のつけ根が出っ張ってしまうので、靴を履くと当たって痛みが出やすく、そうなると「隙間時間に歩こう」「ウォーキングしよう」とはなかなか思えません。さらにひどくなると、靴を履いていなくても痛むようになります。
外反母趾のいちばんの原因は、靴です。先が細くなったハイヒールを履いていると外反母趾になりやすいことがよく知られています。先の細い靴は親指のつけ根から先を圧迫し、ヒールが高いとさらにつま先に負荷がかかるので、外反母趾を起こしやすいのです。それに加えて、肥満や筋力の低下があると、なおさら負担がかかります。
外反母趾を防ぐ、悪化させないために、なんといっても靴の選び方が肝心です。次のようなポイントを意識してください。・足指のつけ根はフィットしているもの
・つま先はゆったりして足指が動かせるもの
・ヒールは低めでやわらかい素材
・足裏のアーチをサポートする中敷き(インソール)を使うのもよい靴の選び方に迷ったら、シューフィッティングサービスのあるお店を利用するのもおすすめです。実際に足の計測を行った上で、その人に合った靴を提案してくれます。
また、足指が曲がったまま固まらないように、足指を動かすエクササイズも有効です。「グーパー運動」
①足の指をすべて内側に折り込む=グー
②すべての指をパッと広げる=パー
③グーとパーを繰り返す
「タオルギャザー運動」
①床に置いたタオルを足の指を使って手繰り寄せる
②5本の足指でタオルをつかんだら、少し持ち上げてから離すどちらのエクササイズもテレビを観ながらでもできます。足指も動かさないと動かしにくくなります。足だけではなく、足の指も動かす習慣をつけましょう!
『血管の老化は「足」で止められた』 3章 より 池谷敏郎:著 青春出版社:刊
毎日、まとまった時間をとって歩くのは、なかなかハードルが高いです。
しかし、細切れで、しかも30分で効果があるのなら、続けられそうですね。
生活の中で工夫して、できるだけ歩く時間をつくること。
歩くことを習慣化し、足の血管力を上げていきましょう。
60歳からの食事は「量」より「質」!
血管力を高める生活習慣で、特に重要なのは「食事」です。
池谷さんは、年齢とともに糖質は別として、食べる量は減ってしまうので、60歳からは「質」で勝負
する必要があり、まず意識していただきたいのが、タンパク質
だと指摘します。
タンパク質の摂取が減ると、「アルブミン値」が下がります。
血液中には100種類以上のタンパク質が含まれていて、その総称を「総タンパク」といいますが、そのうちの6割以上を占めているのが「アルブミン」です。総タンパクもアルブミンも、健康診断や人間ドックの血液検査の項目で見覚えのある人もいるでしょう。
アルブミンは肝臓でつくられるので、肝機能が低下したときにもアルブミン値が下がりますが、アルブミンはタンパク質の一種なので、食事でとるタンパク質の量が少ないと値が低くなるのです。アルブミン値が低くなると、なぜいけないのでしょうか。
まず、アルブミン値は栄養状態を表す指標といわれていて、一般的に「3.7〜5.5g/dl」が基準値です。「3.5g/dl」以下になると「低栄養」と判断されます。
そしてアルブミン値の低い低栄養の人は、次のようなリスクが高いことがわかっています。・筋力、体力が落ちている
・脳・心血管障害になりやすい
・免疫力が落ちて、がんや感染症になりやすい
・認知機能が低下しやすい(認知症になりやすい)
・介護が必要になるリスクが高い
・手術後の死亡率が高い
・総死亡率が高いアルブミン値を改善して低栄養から脱するには、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品といった、タンパク質をしっかりとることが欠かせません。
タンパク質は筋肉の材料にもなるので、歩ける足を保つにも欠かせない栄養素です。
1日に必要なタンパク質の量は、女性は50g、男性は60gといわれています。
肉、魚、大豆製品を、それぞれ片手にのるくらい食べると、タンパク質は合計で40g前後になります。それに豆乳や牛乳、卵、ヨーグルトなどを加えると、目安をクリアできます。
いつもの食事を思い返してみてください。タンパク質はとれていますか?
自信がない人は、タンパク質を増やす工夫が必要です。次のページから、食事があっさり気味になってきた人でもしっかりタンパク質がとれる裏ワザをご紹介しましょう!「タンパク質をしっかりととりましょう」といっても、胃もたれを起こしてまで「肉を食べてください!」といいたいわけではありません。
日頃食べているものでも、原材料が違うものを選べば、意外にもタンパク源になります。例えば、だんだん肉が重たくなってきた、肉料理を食べると胃がもたれやすい人は「大豆ミート」をぜひ試してください。
大豆ミートとは、肉のような大豆製品のこと。最近ではスーパーでも普通に売られるようになっているので、買いやすくなりました。
ひき肉タイプや、薄切りのひと口サイズになったフィレタイプ、コロコロとしたひと口サイズのブロックタイプなど、調理して使うタイプのほか、ハンバーグやミートボール、ナゲット、大豆ミートまんといった温めて食べるレトルト食品、冷凍食品、さらには大豆ミートのハム、ソーセージなど、種類も増えています。
見た目と食感はほぼ肉で、クセのない肉という感じでしょうか。でも、大豆でつくられているので、本物の肉より胃にもたれにくく、それでいて、豚肉や鶏肉と同程度のタンパク質が含まれています。肉が重たく感じられるようになった人にかなりおすすめです。また、夏場は口当たりのいいそうめんばかり食べてしまうとか、おかずはなしで、うどん・そばなどの麺類で1食をすませることが多い人もいるでしょう。そうすると、ほぼ糖質のみの食事になってしまいます。
具材でタンパク質をとる作戦もありますが、食欲があまりなくてそうめんですまそうというときに、具だくさんのそうめんにしようとはあまり思いませんよね。そうであれば、主役の麺を変えてしまいましょう。大豆や豆、豆腐でできた麺が市販されています。
原材料が小麦ではなく、大豆、豆なので、糖質が少なく、タンパク質が多いのです。
「味はどうなの?」と思うかもしれませんが、意外とおいしいです。
例えば、こんにゃく麺が好きになれなかった人でも、大豆麺や豆麺はおいしく食べられるのではないでしょうか。商品によって、味も食感も違うので、いろいろな種類を試してお気に入りを見つけましょう。●高タンパクのお菓子がおすすめできない理由
ご飯を炊くのが面倒で、パン食の高齢者が増えているという話も耳にします。パンは手軽に食べやすい一方で、パンだけで食事が完結しやすいデメリットもあります。そうすると、糖質のみの食事になって、タンパク質はほとんどとれません。
これの解決策の1つも、パンを、いろいろな栄養素が入ったものに変えることです。例えば、最近コンビニで「BASE BREAD」というパンを見かけるようになりました。これは、普通のパンに比べると糖質は少なめで、タンパク質は多く、食物繊維や必須脂肪酸、26種類のビタミンとミネラルが含まれているというパンです。
タンパク質は、1個(1袋)で13.5g含まれているので、手のひらサイズのお肉を食べるのとほぼ同じです。
なおかつ、シナモンやメープル、チョコレートといった味のバリエーションもあり、おいしさという点でもおすすめできます。
1日3食このパンでもいいとはいえませんが(どんなに多様な栄養素が入っていても、同じ食事では偏ります)、パンにしても、麺類にしても、「糖質オンリー食」になるから他のものを食べたほうがいいというわけではありません。食べ方次第なのです。
ここまで紹介してきたように、原材料が違うものを選べば、食べたいものを食べながら、栄養バランスをよくすることができます。ちなみに、最近、高タンパクを謳(うた)ったお菓子も、スーパーやコンビニで見かけるようになりました。プロテイン(タンパク質)が入ったチップス、栄養バー、クッキーなど種類も増えていますよね。
私もいくつか試しましたが、正直なところ、みなさんに紹介したいなと思うものとはまだ出合えていません。味がどうも今一つなのです。
そもそもタンパク質は、それだけではおいしくありません。タンパク質をいちばんおいしく食べられるのは、やっぱり肉、魚、豆、卵料理といったおかずです。
間食は、おいしいものを食べて、一息つきたい時間ですよね。その間食にタンパク質をとる習慣は、あまり続かないのではないかというのが私の結論です。ですから、主食の原材料を選ぶことも含め、食事でタンパク質を増やしましょう。食事の質という点では、意外といいのがチャーハンです。
子どもがまだ中学生だった頃、私は弁当づくりを担当していたのですが、とにかく慌ただしくて、時間のない朝に、なるべく効率よく栄養価の高い食事をつくりたいと思って、気づいたのがチャーハンの栄養バランスのよさでした。
肉、卵、野菜と、家にある食材を目一杯入れられて、しかもフライパン1つでできます。ひと皿に必要な栄養をギュッと詰め込められるのです。同じように、食材をなんでも入れられるのが、みそ汁です。
豚汁のように具だくさんのみそ汁にすれば、立派なおかずになって、肉も野菜もいろいろとれます。
一緒に食べるご飯を、納豆ご飯に変えれば、さらにタンパク質をプラスにできます。
私も、最近、朝食に納豆ご飯を食べるようになりました。
これまでは、「手づくりの野菜ジュース」と「蒸し大豆をトッピングしたヨーグルト」にホットコーヒーというセットが定番の朝食メニューでしたが、最近、ちょっと変わったのです。ヨーグルトをあまり食べなくなって、代わりに納豆ご飯が加わりました。
ヨーグルトを食べる機会が減ったのは、妻が体質的に苦手なことがわかったという単純な理由なのですが、蒸し大豆でタンパク質をとっていたので、代わりのタンパク源を、ということで納豆ご飯が定番化しつつあります。パン食派の人は、トーストをジャムやバターを塗って食べるのではなく、ピザトーストのようにするといいでしょう。ハム(ベーコンやソーセージでも)や卵、チーズなどをトッピングするわけです。それだけでタンパク質がとれますよね。
こんなふうに、今食べているものをちょっと工夫するだけで、実は簡単にタンパク質は増やせます。
膝が悪くて歩けなくて、それでいて食べることは大好きなので太ってしまい、ますます膝が悪くなる・・・・・という悪循環に入っている人がいます。この悪循環を断ち切る唯一の方法は、やせることです。
「膝が痛いから歩けない」ではなく、「歩ける体をめざす」ことが先決でしょう。「膝が痛くて歩けない」という問題があるのなら、膝まわりの筋肉を鍛えるのと同時に、今までと同じように食べていてはダメなのです。では、どう食べればいいのかということで、私がおすすめしているのが「なんちゃって糖質制限」です。
ご飯、パン、麺類、いも類といった主食と、甘いものやフルーツなどの間食を控えるのが「糖質制限」です。糖質制限をすると、確かにやせられます。太る原因になるものを食べないのですから、体重はスルスル落ちていきます。
でも糖質制限は諸刃(もろは)の剣(つるぎ)のようなもので、簡単にやせられる一方でリスクを伴うダイエット法です。
何より、リバウンドしやすいのです。
まわりに「糖質制限でやせた」という人はいますか? その人たちは、その後、やせた体型をキープできていますか?
おそらくまた戻っていると思います。というのは、私も苦い経験があるのです。うら若き頃の話です。結婚式の少し前に妻の友人に笑顔で「ぽっちゃりしてますね」といわれて、男のプライドがすっかり傷ついた私は、「よし、格好いい新郎になってやる!」と一念発起してダイエットしました。
今から30年も前のことなので、当時は糖質制限という言葉はありませんでしたが、「ご飯やパンが太る原因だろう」と思い、間食はもちろん食べない、主食もどんどん減らす、今でいうところの糖質制限ダイエットを実行したのです。そうすると、結婚式の頃には見事にやせていました。指輪もサイズが合わなくなって買い換えて、タキシードも2サイズくらい下げたでしょうか。自分史上いちばんやせて、60kg近くまで体重が落ちました。
ただ、体重こそ減りましたが、やせて格好よくなれたのかというと、逆でした。鏡の前に立って、「えー」と驚いたことを覚えています。
まるで、やせこけたおじいちゃんみたいだったのです。
ただ食事を減らすだけでまったく運動もしていませんでしたから、脂肪だけでなく、筋肉もすっかり落ちてしまったのですね。
しかも、蕁麻疹(じんましん)出るなど体調も悪くなって、さんざんでした。
そして、当然ですが、すぐにリバウンドしました。それも、もとに戻ったわけではなく、さらにうれしくない体形になったのです。
筋肉と脂肪の両方が落ちたところに、リバウンドして脂肪だけがついたので、さらにぷよぷよ体形に。若いときには安いハムだったのが、リバウンドして脂肪が増えた結果、霜降りの高級ハムに変わってしまったのです。●私が13kg減に成功した理由
霜降りハム体形のまま、30代半ばには79kgまで増えました。この頃はクリニックの開業と3人の子育てに夫婦ともども追われていた頃。しかも私は霜降りハム体形だったので、とにかく疲れやすくて、当時は歩こうという気力もありませんでした。現在はというと、体重は66〜67kgをキープしています。ピーク時よりも10kg以上減りました。
結婚式の頃の60kgよりも6、7kg多いのは、運動をして筋肉がついたからです。
霜降りハム体型で80kg目前までいっていた体重を今の体重まで落ちしたときに行ったのが、「なんちゃって糖質制限」です。
「なっちゃって」なので、糖質を食べないわけではありません。主食も間食もルールさえ守っていただければ食べてOKです。
「1日◯g」「1食◯g」などと糖質量を縛っても実践できませんから、そんな細かいことはいいません。
だからこそ、無理なく続けられるので、リバウンドもしませんし、体調が悪くなることもなければ、筋肉も落ちません。「なんちゃって糖質制限」は自信をもっておすすめできるダイエット法です。池谷式「なんちゃって糖質制限」ダイエットのポイントはたったの1つです。
それは、ご飯やパン、麺類といった糖質を、今食べている量の半分にすること。
ただそれだけです。いつもご飯をおかわりしていた人は、おかわりをやめる。
いつもおにぎりを2個食べていた人は、1個にする。
いつも牛丼を大盛にしていた人は、並盛にする。
いつもご飯は1膳だった人は半膳にする・・・・・のですが、これは抵抗があるかもしれませんね。半分しか盛られていないご飯茶碗を見ると、「少なっ!」と、物足りなく感じるのではないでしょうか?
そのときには、ごはん茶碗を小さくするのも1つの案です。器が小さくなれば、中身が少なくても見た目には少なさを感じさせません。
または、それこそ納豆ご飯の出番です。軽くよそったご飯の上に納豆をトッピングすると、見た目にも満足できて、タンパク質もプラスできます。
私は、ご飯にたっぷりの蒸し大豆やきのこを混ぜて食べる、混ぜご飯スタイルもよくやります。糖質の量を半分に減らせますし、蒸し大豆もきのこも食物繊維が豊富なので満腹感が出るのです。
麺類も同じで、例えば家で焼きそばをつくるときには、1人分の麺で、妻と2人分をつくります。その代わり、肉や野菜、きのこをたっぷり使って、具を増やすのです。もやしを使うと見た目が麺に似ているので、麺の少なさも薄れます。
一人暮らしの方は、半分を使って、残りの半分は次回に取っておけばいいですね。あるいは、いちばん手っ取り早いのは、朝食、昼食は普通にご飯を食べて、夕食は抜くなど、「3食のうち1食分、主食を抜く」作戦です。毎回の主食を半分にするよりもわかりやすいので、より続けやすい思います。
メタボ体形の人というのは、基本的に糖質を食べすぎています。
特に私と同世代の60歳前後の方で体重がオーバーしている方は、タンパク質や脂質を取りすぎなほど食べている人はまずいませんから、問題は糖質です。一方、やせている人は糖質を気にしなくていいのかといえば、糖質の多い食事は高血糖を招くことを考えると、やっぱり糖質のとり方には注意が必要です。
健康診断で測る空腹時血糖値は正常でも、食後だけ血糖値が急上昇している「かくれ高血糖」の人は結構多いのです。そういう人は、食事のたびに血糖値の乱高下を起こしているので、血管のなかではそのたびに活性酸素が大量発生して、傷つけられます。
食後高血糖は、太っていようとやせていようと関係なく起こります。
ですから、ダイエットの必要のない人も、糖質のとりすぎはよくありませんし、「そうめんだけ」「素うどんだけ」「菓子パンだけ」といった糖質オンリーの食事は食後高血糖を招いて血管を老けさせるもとです。それともう1つ、血糖値をむやみに上げないためには「食べる順番」が大切です。
間違っても、ご飯、パンなどの主食から先に食べないこと。食事の最初に糖質を食べてしまうと、血糖値の急上昇を招きます。
コツは、食物繊維を多く含んだものから食べること。
それが、よくいわれる「野菜から食べましょう」なのです。食物繊維が豊富な食べ物の代表が、野菜です。食物繊維は、糖質が体内で分解・吸収されるスピードをゆるやかにして、血糖値の急上昇を抑えてくれます。
野菜以外では、海藻、きのこ、豆類も食物繊維が豊富です。
私がたまに実践するのは、食事の前に豆乳を飲む「ソイファースト」です。大豆の食物繊維に加えて、「大豆サポニン」という成分が糖の吸収を抑えてくれます。糖質オンリー食を避けること、食べる順番に気をつけることは、ダイエット中か否かにかかわず、血管を守るためのマナーだと心得ましょう。
『血管の老化は「足」で止められた』 5章 より 池谷敏郎:著 青春出版社:刊
ポイントは、糖質(炭水化物)を減らし、タンパク質を増やすこと。
どれだけやれば問題ないという正解はありませんが、やればやるだけ効果があるのは間違いありません。
とはいえ、こちらもウォーキングと一緒で、無理は禁物です。
池谷さんの「なんちゃって糖質制限」も参考にして、自分に合った方法を見つけたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「人は足腰から老いる」
そんな言葉もあるように、歩かなくなる、もしくは歩けなくなると、急激に老けていきます。
それは足の筋肉の減少は、「血管の老化」に直結するからです。
1日30分の歩く習慣が、いつまでも続く若々しい体を作ります。
善は急げ、です。
皆さんも、本書を片手に「血管力」を高めて、体を内側から生まれ変わりましょう。
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