【書評】『絶対的な自信をつくる方法』(森川陽太郎)
お薦めの本の紹介です。
森川陽太郎さんの『絶対的な自信をつくる方法—「OKライン」で、弱い自分のまま強くなる』です。
森川陽太郎(もりかわ・ようたろう)さんは、 メンタルトレーナーです。
元サッカー選手で、度重なるケガで引退し、心理学やメンタルトレーニングを学び自ら会社を設立。
「OKラインメンタルトレーニング」という独自のトレーニング方法で、トップアスリートや企業向けに「結果を出す」ためのメンタルサポートサービスを展開されています。
自信のある人とない人の差はどこから生まれる?
どんなときにも自信満々で、人前でアガることも、大切な場面で緊張することもない。
私たちは、「そんなスーパーマンみたいな人になれたら・・・・」と憧れを抱きます。
しかし、実際にはそんな鋼のような心を持った人間は存在しません。
自信をなくす瞬間は、誰にでもあるもので、森川さんによると、どんなに精神的に強い人でも自信をなくすことは起こりえる
とのこと。
プロのアスリートや向上心の高い人ほど、自分に厳しく、ストイックで完璧を求めてしまうもの。
ストイックになればなるほど、自分に「OK」をあげることが難しくなり、努力すればするほど自信を失ってしまうという悪循環に陥ってしまうからです。
「自信をなくす瞬間」というのは、具体的に以下の三つに集約されます。
- 「できなくて」自信をなくす――能力不足に直面する
- 「本番に弱くて」自信をなくす――本来の力を発揮できない
- 「他人と比べて」自信をなくす――劣等感を覚える
森川さんは、「自信をなくしてしまった」という気持ちの奥には、『身の丈以上の理想を持ちすぎている』という深層心理が隠されているケースが多いと指摘します。
言ってしまえば、プライドが邪魔をして、「できない自分」を認められないということです。
「自分の能力不足が原因でできない、だから自信をなくす」というパターンに陥りがちな人によく見られるのが、プライドが邪魔をしているというケースです。
自分ができないことを受け入れられない、認められない。心のどこかで「本当の自分はこんなもんじゃない。自分にだってできる」と思い込んでいるのです。
プライドがそうした心理状態にさせてしまうのです。これは非常によくあるケースです。言い換えれば、誰もが陥りやすい心理というわけです。自信がない人ほどプライドが高いというのが、これまでの経験から得た実感です。
自分が「できない」ということを感覚的にはわかっているけれど、それを受け入れたくない自分がいる。そういう人が自信をなくすと、できない自分と向き合わなくて済むようにあえて「高い目標」を掲げようとする傾向があります。「高い目標に向かってがんばっている自分」でプライドを保とうとするのです。
本来なら「できない」という事実を受け入れて、できるように練習や経験を積み上げていくことが大事なのに、思い切り高い「努力目標」を掲げてしまいます。
勉強もしなくて成績もよくない、でもプライドだけは高いという受験生が、偏差値の高い「E判定」の大学ばかりを「記念」受験するようなものです。
そこそこの大学に万が一落ちてしまったら恥ずかしいけれど、難しい大学なら、落ちて当たり前。恥をかかず、プライドも傷つきません。
「できない」という事実を認めたくないばかりに、できなくても傷つかないように高すぎる目標を掲げてしまう。自己防衛の意識が働いているのです。『絶対的な自信をつくる方法』 プロローグ より 森川陽太郎:著 ダイヤモンド社:刊
森川さんは、自信のある人と自信のない人の差は、「ありのままの自分を受け入れるか、受け入れないか」だけ
だと指摘します。
本書は、弱い自分のままでも揺るがない「絶対的な自信」を生み出す方法を解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「感情」と「思考」を一致させ、「行動」だけを切り離す
森川さんは、絶対的な自信を持つための方法として、「OKライン」という考えを提唱しています。
OKラインとは、自分自身が「ここまでは確実にできる」と思えるライン
のこと。
OKラインを設定するときの最大のポイント。
それは、できないことを受け入れた上で、「今、自分ができること」に目標設定する
ことです。
OKラインは、自分で設定することに意味があり、他人と比較して決めてはいけません。
走り高跳びのバーのように、具体的な数字で表せるもので、高すぎても低すぎてもいけません。
最初のバーの高さは、「全力を出せばいつも飛べる高さに設定する」ことが重要とのこと。
具体的にOKラインの設定は、以下の三つのステップで行ないます。
- 自分の感情を評価しない
- リアリティのある目標設定をする
- 成功体験を積み重ねる
ステップ1の「自分の感情を評価しない」とは、どのような意味でしょうか。
「感情」は100%自分の中から湧き出てきたもので、変えることはできません。
感情自体はどれも自然なもので、いいも悪いもありません。
森川さんは、自分の素直な感情と向き合うことが大事
だと指摘しています。
不安や自信のなさという感情があるのに、そこからは目を背けて、無理にポジティブに思考して行動する。できないと思っているのに、「できる」と言い聞かせて行動する。
しかし、これではなかなかうまくいきません。
等身大の自分である感情が、置いてけぼりになっているからです。また、常に思考を重視して感情(本当の自分)を抑え込んでいては、ストレスがたまる一方です。感情はコントロールできないので、思考を感情に合わせていくべきです。
もし感情で『できない』と思うのなら、その感情を受け入れて、そのままで行動を起こせばいい。行動だけ切り離すことが大事なのです。【感情と思考を切り離している例】
オレにはできないよ(感情)→甘い、だからダメなんだ。できないことはない(思考)→自己の感情を否定し、無理やりポジティブシンキングに変換
↓
気合でやろう(行動)→思考を行動に移している→感情を押し殺すストレス、自己否定が生まれ、苦しくなる【感情と思考を一致させている例】
オレにはできないよ(感情)→たしかにそうだね、しんどいかもね(思考)
↓
まずは今できることだけ確実にやろう(行動)→今やるべきことに集中できる今の日本はポジティブシンキング、「前向きであれ」という意識が強すぎる気がします。そのために「できない」とか「無理だよ」といったネガティブな感情は、最初から否定されてしまう。そうではなく、ネガティブな感情も含めて、自分の今の状態を丸ごと受け入れる。ネガティブな感情も今の自分の姿だと肯定すればいいのです。
「できないと思う自分はダメ」というように、自分の感情を否定するのは、自分自身を否定することになってしまいます。それは自分を知ることをやめてしまうことでもあるのです。
だから「できないと思う自分」を否定せず、今の等身大の自分なのだと受け入れる。
そして「できないと思っている自分でも今できること」を基準にOKラインを設定して、それを目標にしていけばいい。それが本当の自信をつくるためのファーストステップになります。『絶対的な自信をつくる方法』 Part1 より 森川陽太郎:著 ダイヤモンド社:刊
湧き上がってくる感情は自然なものですから、思考の力で押さえ込むには無理があります。
ネガティブな感情を含めて、「今の等身大の自分」を受け入れる。
とても勇気のいることですが、何ごとにも動じない自信をつけるためには避けては通れません。
テンション低めの目標設定にする
何かを始めてはみたものの、すぐに挫折してしまったことは誰にでもあることです。
その原因は、「◯◯をやろう!」と決めたときのモチベーションやテンションにあります。
森川さんは、目標設定をするなら、テンションがあまり高くないときのほうがいい
と述べています。
ノリノリのときは、勝手に自分のモチベーションも上がります。そうなると自己分析がうまくいかなくなり、OKラインも高く設定されがちです。しかしテンションが高いときに勢いでできてしまうことは、自分の実力ではありません。どちらかと言うと「瞬間最高値」だと思います。
むしろ、テンションが低いとき、モチベーションが低いときにできることが、「自分が確実にできること」つまり「実力値」なのです。
体調やテンション、モチベーションに関係なく、朝六時に起きられるのは、せいぜい週一回だろう。うん、週一回が、正直限界だろうなあ・・・・。
ここがOKラインなのです。
こんな具合に、自分の本音に素直になれるのは、案外テンションが低いときかもしれません。テンションが低いとき=OKラインの決めどきです。ここで注意が必要なのは、「今朝は二日酔いだから無理だけど、元気がいいときは起きられるかもしれない。だから週一日ではなく週二日を目標にしよう」などと考え始めることです。これは「今現在の本音」ではありません。その段階で、すでにそのOKラインは自分に合ったものではなくなっているのです。
がんばれば二日はできるかもしれない、調子がよければいけるかもしれないという、「かもしれない願望」は、頭の中から排除することが重要です。
OKラインは、確実に果たすべき、自分との約束ごとです。
「かもしれない」を持ち込むことは、実行する前に約束を破ってしまうことになります。『絶対的な自信をつくる方法』 Part3 より 森川陽太郎:著 ダイヤモンド社:刊
なにか行動を起こすときは「勢いが大事」だといいます。
しかし、それを継続するためには勢いだけでは不十分だということですね。
テンションが低いときでもできることが、本当の自分の実力です。
『「かもしれない願望」は、頭の中から排除する』
目標を設定するときには、いつも意識したいですね。
「緊張してもできた」体験をつくる
「緊張=悪いこと」という思い込みがあるのは、過去に緊張して失敗したことやうまくできなかった体験があるからです。
森川さんは、そもそも緊張は、いいものでも、悪いものでもない
と指摘しています。
同じ人でも状況しだいで気分はコロコロ変わります。
大切なのは、「緊張してもできた」という成功体験を積むこと
です。
実は、たいていの人はすでに成功体験があるはずです。
本当に、100%毎回緊張して失敗している人などいません。
緊張しても試験で合格点をもらった、面接を通過した、人前で話ができた、試合に勝った。何かしら経験があるはずです。
緊張している自分を受け入れて、できなかったことではなく「できたこと」に意識を向ける。そうすることで、緊張している自分にもだんだん「OK」をあげられるようになります。
ここで重要になるのがOKライン(=自分で自分にOKをあげられる基準)なのです。
例えば、人前で話すのが苦手な人が、大勢の前でスピーチをすることになったとします。もちろん緊張します。「間違えてはいけない」「声が裏返ったらダメ」「足が震えたらカッコ悪い」などさまざまな不安が頭をよぎります。
それらの不安の元凶になっているのは、流暢(りゅうちょう)に、何のミスもなく、堂々と話せなければダメだという考えです。完璧にできなければ自分にOKをあげられない状態、つまりOKラインがすごく高い位置に設定されてしまっているということになります。 ならば、OKラインを下げればいいのです。
自分の今の実力を受け入れて、それに見合ったこと、その実力で確実にできることにOKラインを設定しなおせばいい。
「そもそも人前で話すことが苦手な自分が完璧に話せるわけがない。だから、一度でも顔を上げられたらOK、声が裏返っても最後まで話せたらOK」
と考えます。OKラインを、自分の実力レベルまで低くするのです。
そうすれば結果として流暢に話せなくても、足が震えても、そのラインさえクリアできれば自分にOKをあげられる。その成功体験が、「緊張していてもできた」という自己肯定感につながっていきます。
緊張に限らず、どんな感情を持っている自分にも自己肯定感を持つこと。
それは自分に対し、安定した自信を持つということでもあるのです。『絶対的な自信をつくる方法』 Part4 より 森川陽太郎:著 ダイヤモンド社:刊
緊張の裏には、自分に対する過大評価があります。
「自分はこれくらいはできるはずだ」と思い込み、OKラインを高く設定する。
すると、本番で自分の実力以上を出そうとして力が入って緊張し過ぎてしまいます。
頭の中にある「理想の自分」はいったん置いておくこと。
「今の自分」の実力をもとにOKラインを設定することを心がけたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
どんなときも崩れない自信を持つには、今の自分を丸ごと受け入れることが不可欠です。
過小にも過大にも評価しない本当の実力を知らなければ、最適な目標はつくれません。
“自信の種”は誰の心の中にも眠っています。
それを育てるのは自己肯定感、今の自分への「OK」です。
千里の道も一歩から。
小さな成功の積み重ねが、大きな自信を育みます。
皆さんも本書を片手に、その最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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