本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『自分を超える勇気』(久瑠あさ美)

 お薦めの本の紹介です。
 久瑠あさ美先生の『自分を超える勇気』です。

 久瑠あさ美(くる・あさみ)先生(@kuruasami)は、メンタルトレーナーです。
 トップアスリートや各界アーティスト、ビジネスパーソンなど、数多くのクライアントから絶大な信頼を得るなど、多方面でご活躍中です。

限界の壁の前に立ちはだかる“魔物”

 人は生まれてから、様々な限界を超えながら成長していきます。

 それまで「できなかったこと」を「できる」ようにしてきたのが「人の生の歩み」。
 しかし、多くの人は、いつの間にか、自分の限界を「これまでできたこと」に限定し、成長することを諦めてしまいます。

 なぜ、そのようなことが起こってしまうのでしょうか。
 久瑠先生は、その理由を説明するために、ある「魔物」の存在を指摘します。

 あなたがどこに着くのかもわからない一本道をひたすら進んでいます。すると、大きな門にたどり着きました。そこには一人の門番がいます。彼はあなたを呼び止め、こう言いました。
「ここから先は危ないから、引き返しなさい」と。
「何があるのですか?」とあなたは聞き返します。すると門番はこう答えました。
「あなたが見たことのないものです。とにかく危険なのです。止めたほうがいい」
「魔物」とは、いわばこの門番のような存在です。そして、門番が立っている大きな門が、あなたの限界の壁です。そして、あなたに限界の壁を超えさせないようにしている存在、それが魔物なのです。
 では、魔物は単なる邪魔者で、魔物さえいなければ誰もが、もっと自由に自分の限界を超えていけるのでしょうか。それは違います。
 魔物は単にあなたを邪魔するだけの存在ではありません。ここにあげた喩(たと)え話でも、門番=魔物はあなたに敵対しているわけではありません。あなたに問いかけているのです。少なくとも、この先に行かなければ、あなたは安全であると忠告してくれているのですから。魔物は、私たちが自分の限界を超えた場所へと足を踏み入れないように見守っているのです。
 魔物は、自分に変化を起こそうとするときに現れる、自分の潜在意識の中に潜む「もう一人の自分」なのです。
 あなたが自分自身の限界の壁を突き破り、「これまでの自分」を超えようとするときに直面するメンタル上の反応が、「魔物現象」なのです。

 『自分を超える勇気』 第1章 より  久瑠あさ美:著  KKベストセラーズ:刊

 魔物の正体は、自分の潜在意識の中に潜む「恐怖心」のこと。

 人は本能的に、経験したことがないことに対して恐れを抱き、ストッパーがかかります。
 未知の脅威から自分の身を守るために、人間の心の中に備わっている機能ですね。

 新しいことに挑戦するためには、この魔物と対峙(たいじ)する必要があります。 

 今の自分の実力が本当の実力ではありません。
 久瑠先生は、あなたにはとてつもない力が在る。そう信じることで、自分でも驚くような「新しい自分」に出会うことができると強調します。

 本書は、人生を輝かせるための原動力、《自分を超える勇気》の創り方を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自分を変えてはいけない

 人の意識は、自分で知覚できる部分(顕在意識)は10%にも満たないといわれています。

 残り90%以上を占める、自分では知覚できない部分(潜在意識)を働かせること。
 それが、眠っている能力を呼び覚ますためのカギになります。

 潜在意識には法則があり、久瑠先生はそれを「マインドの法則」と呼んでいます。

「マインドの法則」で潜在意識へとアクセスするためには、以下の三つのプロセスがあります。

  1. [want]原動力

      「〜したい」という熱意や意志などの内的エネルギー

  2. [イマジネーション]創造性

      「想像」が「創造」を生む、生産的でオリジナルな発想力

  3. [マインド・ビュー・ポイント]心の視点

      自分を高みに上げ、俯瞰(ふかん)して可視化する心の視野

[want]が高まるにつれて、[イマジネーション]は拡がり、それにつれて[マインド・ビュー・ポイント]は引き上がります。
[マインド・ビュー・ポイント]が引き上がると、自分が望んでいる未来がビジョンとしてより明確になり[want]はさらに高まっていきます。

 注意しなければならないのは、「自分を変えようとしてはいけない」ということ。
「自分には潜在能力が在る」と信じることは、「自分自身の未来に可能性が在る」と信じることです。

 久瑠先生は、頭で理解している自分ではなく、自分の知らない自分も含めて、「今以上に凄いことができる自分」に期待することが重要だと述べています。

 人は過去に挑戦して、成功したことのあるものに対しては、「きっと、またできる」と思えるかもしれません。例えば、鉄棒の逆上がり。小学生のときにできていたとしたら、今でも「できそうだ」あるいは「ちょっと頑張ればできるかもしれない」と思えるのではないでしょうか。
 けれど、新しいことに挑戦しようと決めるときは、当然ながら過去の経験や実績などありません。「自分にできるかどうか」を判断するための根拠を持ちようがないのです。
 実のところ、自信に根拠は不要です。これから起きることに、根拠はつくりようがないからです。この先の未来のことにおいては「根拠のない自信」でいいのです。
 根拠のある自信は、過去においての自信でしかないのです。積み上げた根拠はたった一度の失敗で無残にも崩壊します。
「やったことないけど、何だか自分にはできる気がする」それでよいのです。私はこれを「勘違いの才能」と呼んでいます。
 これは「凡」と「非凡」を分ける才能のひとつです。「無いのに、在る」と信じて疑わないこと、そのマインドこそが、「できないこと」を「できる」に変えていくのです。

 無理して背伸びする必要もありません。大事なのは「心地よさ」です。常に自分のマインドを「快」の状態にしておくということです。今在る自分を否定することは、「不快」なマインドの状態を生み出します。
 何をするときにおいても、今の自分を肯定したうえで、「好きでやっている」そういったマインドの状態にしておくことが、自分を成長させるためには不可欠です。
 大切なのは周囲から求められた要請で動くのではなく、自分自身がワクワクできるビジョンに自ら進んでいくこと。それが「自分を超える」ための燃料となります。
 自分を変えようとするから、上手くいかないのです。
 私がメンタルトレーニングにおいて、常に伝え続けていることです。

 『自分を超える勇気』 第2章 より  久瑠あさ美:著  KKベストセラーズ:刊

 新しいことに挑戦するときは、誰もが未経験です。
 当然、不安を感じるでしょうが、それを乗り越えなければ先に進めません。

 必要なのは、「根拠のない自信」です。
 自分に正直に[want]を追い求めて、今の自分を超えていきたいですね。

ストイックな生き様を魅せつけた浅田真央選手

「限界超えの達人」といえば、トップアスリートたちが真っ先に思い浮かびます。
 彼らは様々な困難を克服し、肉体の限界、メンタルの限界を超えていきます。

 例を挙げると、ソチ・オリンピックでの浅田真央選手の活躍です。

 浅田選手は、ショートプログラムで、まさかのジャンプで転倒の連続。
 16位に沈みメダルは絶望的な状況となりました。

 ところが、一夜明けたフリープログラムでは、見違えるような素晴らしいスケーティングを披露し、多くの感動を与えてくれました。

 浅田選手は自分が選んだ「トリプルアクセルを跳ぶ」という選択に、後悔などみじんもないのです。表彰台を逃しながらも「自分の演技はできました」と清々(すがすが)しい笑顔を浮かべていました。そこには大きな充足感がうかがえました。本気のチャレンジをしたことによる達成感があったのです。
「跳べるか、跳べないか」ではなく、「跳びたい」を選んだ彼女の勇ましさが私たちの胸を強く打つのです。自分の美学を貫く、芯が通った生き様が一つ一つの滑りに現れていました。
 最終的に6位で終えた浅田選手。それだけにショートプログラムでの失敗はもちろん悔やまれました。
「もっと大技を抜かした無理のないプログラムにしていれば・・・・」
「もしとトリプルアクセルをショートプログラムで回避していれば・・・・」
 そんな声も聞かれました。

 フリーの演技終了後、彼女の目には歓喜の涙が溢(あふ)れ出ました。これまでの自分を全肯定する透明な涙です。あの瞬間こそが、彼女の「在り方」を物語る、最高の「人間美」を世界に魅せつけてくれました。
 彼女の最大の魅力とは、泣いたり笑ったり、不安げに自信をなくしたりする純真な「人間臭さ」だと感じます。
「魔物」に向き合い続け、「魔物」に対峙し、人として当たり前に心は揺さぶられ、弱音だって吐く。一喜一憂し、浮き沈む表情もまた、彼女の魅力なのです。

 『自分を超える勇気』 第3章 より 久瑠あさ美:著 KKベストセラーズ:刊

 浅田選手のフリーでの会心の演技は、まさに自分の[want]を貫いた結果もたらされたものです。

 目標が「金メダルを獲る」という自分の外の基準だけだったら、ショートプログラムの失敗から立ち直ることはできなかったでしょう。
「トリプルアクセルを跳ぶ」という、さらに大きな目標、自分を駆り立てる内側の欲求に土壇場で立ち戻ることができたことが、フリーでの完璧な演技につながりました。

 たった一夜で見事に切り替えることができたのは、数々の試練を経て磨かれた、彼女の人間としての強さがあってこそですね。

これまでに到達したことのない高みを目指す

「魔物」は、自分がこれまで到達したことのないところまで進んだときに現れます。
 逆にいうと、「魔物」に出会わないということは、自分が過去に行ったことのある範囲内でしか行動していないことになります。
 それでは、今の自分を超えて成長することはできません。

 人はともすると魔物との対峙を避ける人生を送りがちです。魔物との闘いを制した先に拡がる世界を知り得ない人生は、むしろもったいないことに思うのです。
 魔物と対峙する人生を進むということは、「飛行機」が離陸する瞬間のイメージに近い。飛行機が離陸するとき、高く飛ぶために地上でグングン速度を上げていきます。けれど、それだけで飛び立てるわけではない。トップスピードに加速して、揚力を得ることで機体は空へふわっと高く飛び立つのです。この間はものすごい重力との闘いが生じているのてす。
 飛行機は離陸するときに最も大きく揺れます。十分に高度を上げて、安定したと思ったら、また凄い乱気流に巻き込まれるように不安定な状態になる。その不安定な状態に慣れていなければ、当然「落っこちるんじゃないか」「危険だ!」と多くの人は不穏な感情を抱き、飛行機に乗ってしまったことを後悔し、降りたくなったり引き返したいとさえ思うでしょう。その瞬間、恐怖心に飲み込まれ、肝心の「旅先での楽しみ」はまったく見失った状態です。
 不安定な揺れを通り過ぎた先に、ようやく機体は安定し、大空を伸びやかに飛ぶことができるのです。
 その飛び立つまでの不安定な時間の長さは、時に応じて様々ですが、そこを超えるとあとは素晴らしい景色が拡がってくる。

 私自身の経験を振り返ると、十代の頃から、「君は茨(いばら)の道を行く」と、知人からことあるごとに言われました。無意識ではあるけれど、言われてみれば私は、何かの決断をするとき、「今の満足度ではなく、その先の満足度」で選んでいたような気がします。それは「選ばないわけにはいかない」という想いに近かったかもしれません。

 『自分を超える勇気』 第4章 より 久瑠あさ美:著 KKベストセラーズ:刊

 未知の世界へ足を踏み入れることは、誰にとっても不安なこと。
 その不安の向こう側に、まだ見ぬ「新しい自分」がいます。

 魔物から逃げずに、「今の満足度ではなく、その先の満足度」を求める勇気を持ち続けたいですね。

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 “魔物”とは、「自分の心の中に潜んでいる不安や怖れ」のことです。
「こうありたい」と願う自分になるのを妨げるのは、実は自分自身にほかなりません。

 魔物に出会わないようにビクビクして生きていれば、大きな失敗することはないでしょう。
 その代わりに、大きく成長することもありません。
 その先の「新しい自分」にも出会うことも、決してありません。

 人生を輝かせるために最も必要な、《自分を超える勇気》
 どんなときも忘れず、持ち続けたいものですね。

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