【書評】『リーダーのための! ファシリテーションスキル』(谷益美)

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 お薦めの本の紹介です。
 谷益美さんの『リーダーのための! ファシリテーションスキル』です。

 谷益美(たに・ますみ)さんは、ビジネスコーチ、ファシリテーターです。
 企業、大学、官公庁など多くのクライアントを抱える人気コーチとしてご活躍されています。

すべての組織のリーダーに求められる力


 IT(情報技術)の進歩によって、個人間のコミュニケーションギャップが広がった現代社会。
 そのなかで、多種多様なメンバーを束ね、結果を出すのは容易なことではありません。

 個々の能力を最大限に引き出し、組織が長期的に成果を出すために必要とされるのが、リーダーの「ファシリテーションスキル」です。

 ファシリテーション(facilitation)は、直訳すると、「促進すること・容易にすること」
 谷さんは、企業でスピードと成果の両方を求められるリーダーにとって、ぜひとも押さえておきたいビジネススキルだと述べています。

 ファシリテーターに必要なのは、メンバーから引き出し、チームをまとめ、成果を生み出そうという強い意志と力
 谷さんは、それは方法さえわかれば決して難しいものではないと強調します。

 本書は、チームを回すためにリーダーに求められる「ファシリテーション」のスキルを、具体的な方法も交えてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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メンバーから「引き出して」「まとめる」


 谷さんは、リーダーに期待される「ファシリテーションスキル」を以下のように説明しています。

 ファシリテーションとは、ひと言で言うと「促進すること」。メンバーの仕事、チームの仕事がやりやすいように、手助けする、というイメージです。そして手助けするスキルは、大きく2つに分類されます。
 まずは、「引き出す」です。
「引き出す」とは、働きかけて、隠れているものを表に出すこと。
 人はお互いに様々なものを引き出し合います。意見ややる気、目標、アイデア、才能、強み、といったポジティブなものから、妬みや不安、苛立ち、怒りや文句など、ネガティブなものが引き出されることも。

 できればポジティブなものだけを引き出したい。そう思う人も多いかもしれません。しかし、チームの力を最大化するためには、そのどちらも引き出すことが大切です。
「臭(くさ)いものには蓋(ふた)をする」方式のチームでは、問題が表面化せず対策が後手に回りがち。日常のやりとりから、会議やミーティングまで、様々な場面でメンバーに積極的に働きかけ、どんな意見も言えるし聞いてもらえる。そんな自由な発言の雰囲気と仕組みを作り出すとことが、結果的にポジティブなチームの土台を作るのです。

 そして、引き出した後は、「まとめる」です。
「まとめる」とは、ばらばらのものを集めてひとかたまりのものにすること。物事の筋道を立てて整えること。そして、お互いの意思を一致させることです。
 私たちは、様々な方法でコミュニケーションを取り合っています。メールやFAXなど、後に残るものもありますが、対面での会話や電話など、後に記録が残らないやりとりも多いもの。「言った言わない」の揉め事が起きやすいのも、対話の「空中戦」の特徴です。

 ミーティングや会議など、複数のメンバーが集まる場を「空中戦」にしないために役に立つのがホワイトボード。引き出した意見や情報をみんなに見えるように書いておくことで、まずはみんなの視線がまとまります。ホワイトボードのようなツールをうまく使えば、多様な意見を素早くまとめることができるのです。

 『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第1章 より 谷益美:著 すばる舎:刊

 考え方は人それぞれです。十人集まれば十通りの意見が出てきます。
 個々の意見をすべて「引き出して」、一つの方向に「まとめる」のがファシリテーションです。
 まさに、今の時代に必要なスキルといえます。

シンプル&パワフルな「定番フレーズ」


 ミーティングで、目の前のメンバーから意見をもっと引き出したい。
 そんなときに必要になるのが、リーダーの「質問力」です。

 相手に良質な思考の時間を与えるために、質問はシンプルに、かつ一度に一つだけと意識するといいとのこと。

 谷さんは、シンプルかつパワフルな「定番質問フレーズ」として、以下の二つを挙げています。

 その①「具体的に言うと?」
 私たちは、問題や課題、現状や目標をぼんやりと曖昧に捉えていることが多いもの。「具体的に」と聞かれると、自然と事実や出来事に意識が向きます。なんとなくそう思ってるだけだった、と気づくことも。
「Aくんは、基本やる気ないんですよ」

 あるメンバーのやる気がないことを問題だとそのメンバーが思っているなら、それはぜひ改善すべき、とても大切なテーマです。しかし、得てしてこういう台詞は「ただの愚痴」。このまま終わらせては全く意味がありません。こんな台詞にはこう返しましょう。

「そうなんだ。具体的にはAくんの何が問題だと思ってるの?」

 こういう愚痴にも近い言葉こそ、「具体的には?」と切り返す。そうすることで、何が問題なのかを意識させ、考えさせて改善思考に導きましょう。愚痴や文句も一つのチャンス。切り返し方を知っていれば、チームの問題解決の機会として活用できるのです。

 その②「他には?」
 一つの質問には一つの答え。
 もしこう思い込んでいるとしたら、多くのチャンスを逃しているかもしれません。目標や課題、アイデアや企画など、まずはたくさん引き出して広げ、その後で優先順位をつけてまとめることが大切です。

 質問をして、一つ答えが返ってきたら、「他には?」と聞いて広げましょう。私たちは一つ答えが返ってくると、ついついそこで満足してしまいがち。「他には?」と聞くことで、より深く考えることになりますし、思いもよらない本音が飛び出したりします。最初に出てくる答えは、無難な答えが多いもの。

「他には?」のバリエーション、「まだある?」「もっとあるでしょ」「一人最低10個出そう」などの言葉を使って、答えをどんどん引き出しましょう。

 『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第2章 より 谷益美:著 すばる舎:刊

 意見を出すのが特定の人にかたよってしまう。
 沈黙する時間が長くて意見を言いにくい雰囲気がある。

 そのような場合、中身の濃いミーティングにはなりにくいです。

 誰もが本音で意見の言える場をつくり、活発に意見交換できるようにする。
 ファシリテーターの腕の見せどころですね。

「親和図」でたくさんの意見を集約できる


 会議を活発にするために有効な道具が「ホワイトボード」です。
 谷さんは、ホワイトボードの活用法のひとつとして、「親和図」(下図3−2参照)を挙げています。

①親和図
 みんなでたくさんアイデア出し、いろんな意見が出て盛り上がった!
 ・・・・で、これからどうやってまとめよう。
 ディスカッションがこうなりがちなら、この「親和図」を使いましょう。
 アイデア出しの段階で、それぞれの意見を大きめの付箋紙(75ミリ角や長方形のものなど、各種でています)や情報カード(名刺サイズから葉書サイズくらいまでの厚めの紙)に書き出します。後で見やすいように、できれば太めのマジックで書きましょう。

 ある程度の枚数が集まったら、グループ分けスタート!
「これとこれって同じじゃない?」「これって関連してるよね」など、メンバーの直感で、関連しているカード同士を集めてグルーピング。複数のグループに関連しているものがあれば、同じことを書いたカードを増やしてそれぞれのグループに含めます。
 もちろん、他のカードに刺激されて新しいアイデアが出てくれば、それもどんどん書き足しましょう。グループ分けしにくいものは、「その他」グループに入れてもよいかもしれません。
 グループに分けられたら、それを見ながらみんなでグループに「名前」をつけていきましょう。

 『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第3章 より 谷益美:著 すばる舎:刊

親和図 第3章P167
 図3−2 「親和図」で、たくさんの意見を集約できる 
 (『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第3章 から抜粋)

初対面でも、必ず盛り上がるコツ


 ファシリテーションのスキルは、飲み会や交流会などのプライベートの集まりでも活躍します。

 知らない人同士の集まりを盛り上げるコツは、できるだけ早くお互いを知る時間を持つこと。
 谷さんはそのための方法として、「偏愛マップ」(下図4−2参照)というコミュニケーションツールを紹介しています。

「偏愛マップ」とは、教育学者、齋藤孝さんが考案したもの。まず、自分の大好きなモノやコトをできるだけ具体的に紙に書きます。書いたら、それをお互いに見せ合いっ子しながらおしゃべりするだけ。大きさや書き方に制限はありません。
 ポイントは、できるだけ固有名詞を使うこと。「うどん」と書くより、「〇〇というお店の釜バターうどん」と書くほうがより盛り上がるのです。「読書」と書くより著者名や書名を。「音楽」とは書かずに曲名、ジャンル、アーティスト名を。会の最初にマップを書く時間を取ってもいいですし、事前に書いてもらってから参加してもらう方法もあります。

 初対面でも、世代が違っても、自分とは合わなさそうな外見でも、いざマップを見せ合ってみると、意外な共通点が見つかることも多いもの。ドンピシャ同じ好みなら盛り上がりますし、全然知らないことを書いていたとしても、「それってなあに?」と盛り上がる不思議な便利なツールです。もちろん、ビジネスの交流会や全社研修にも使えます。
「お見合いパーティーのカップル成立数を増やすために、何かいいアイデアないですか?」
 そうおっしゃる結婚相談所の経営者にオススメしたところ、実際にパーティーで取り入れてみて効果絶大! バーティーの最初から盛り上がり、結果、カップル成立数も増えたそうです。

 マップを応用して、「これからやりたいこと」とか、「知りたいこと」などを書くのもオススメ。お互いのニーズを知ることで、新しい何かも生まれやすくなるというもの。楽しみながら、世界を広げていきましょう。

 『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第4章 より 谷益美:著 すばる舎:刊

偏愛マップ 第4章P241
 図4−2「偏愛マップ」があれば、初対面から盛り上がります!
(『リーダーのための!ファシリテーションスキル』 第4章 から抜粋)

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 日本には、会議などで「自分の意見は極力言わずに、黙っていたほうが得」という風潮があります。
「沈黙は金」という言葉もありますね。

 昔のように、上からの命令をただこなすだけなら、それでも問題なかったかもしれません。
 しかし、今は違います。

 問題が複雑化し、決まった枠組みの中だけで仕事ができなくなりつつあります。
 よく知らない人同士があるプロジェクトのために集まり、短期間で成果を出さなければならない。
 そんなことも珍しくありません。

 今後、組織の流動化はますます進んでいくでしょう。
 限られた資源(人、時間、資金など)で最大限の成果を上げるために、「ファシリテーションスキル」はますます重要になってきますね。

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