【書評】『脳は休ませると10倍速になる!』(苫米地英人)

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 お薦めの本の紹介です。
 苫米地英人先生の『脳は休ませると10倍速になる!』です。

 苫米地英人(とまべち・ひでと)先生(@DrTomabechi)は、脳科学者です。
 ご専門は機能脳科学や認知心理学、人工知能など多岐に渡ります。

「正しい睡眠」が脳を最大限に活性化する!


 現代社会で多くの人が抱える大きな悩みのひとつが「睡眠」です。
 苫米地先生は、正しい睡眠をとり、「脳を休ませる」ことで、脳の機能を最大限に活性化することができると述べています。

 厳密に言うと、脳がその機能を止めて休むことはありません。心臓が止まると人間が死ぬのと同じように、脳が動きを完全に止めてしまえば、人間は死んでしまうからです。

 睡眠中、脳は覚醒時とは別の活動をしています。一番代表的なのは、昼間に体験したことを長期記憶として整理する働きでしょう。
 人間の自我というのは過去に見たり聞いたりした記憶の集積の上に成り立っていますので、睡眠中に記憶を整理できないと、長い目で見れば自我が崩壊して、いわゆる「統合失調症」のような状態になってしまいます。
 また、睡眠は精神ばかりでなく、その間に成長ホルモンを分泌させ、子どもの場合は成長を、大人の場合は傷ついた細胞の修復などの体のメンテナンスを促す働きがあります。

 このように物理的な意味で、脳が活動を完全に停止することはないですが、「脳が休んでいる」ように見える状態というのは存在します。それは脳波で言えば目を開けた状態で、低いα(アルファ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波が出ている状態です。すなわち、「脳を休める」とは、厳密に言えば禅僧やヨガ行者が行う瞑想のことを指すのです。このとき、瞑想を行っている脳の中からは雑念が消えています(雑念はβ(ベータ)波として表されます)。
 睡眠と瞑想は、後者が自分自身で脳の状態を意識的にコントロールしているのに対して、前者が無意識のうちに脳を働かせている点で異なりますが、θ波、δ波が主流になった状態であることにおいては共通しています。
 したがって、本書では便宜的に「θ波、δ波が主流になった状態=瞑想≒睡眠」と規定し、「脳を休める」という文学的な表現を、「より良い睡眠をとること」と同義として使うことにします(もちろん、脳自体が本当に休むことはありません。また、レム睡眠時には脳波はαやβに上がっています)。

 『脳は休ませると10倍速になる!』 はじめに より  苫米地英人:著  宝島社:刊

 苫米地先生は、「普通の睡眠」「自然な睡眠」をとりさえすれば、脳は自然に活性化し、覚醒時10倍速で働くことが可能となると述べています。

 本書は、脳科学の見地から「正しい睡眠」を解説し、その実践を通して、より充実した生き方を目指す方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」


 睡眠のメカニズムについてです。
 人間の睡眠は、「レム睡眠」「ノンレム睡眠」の2つが約90分のサイクルを繰り返すことから成り立っています。

 レム睡眠とは、「Rapid Eye Movemet(急速眼球運動)」の頭文字REMをとったもので、眼球がグルグル動く浅い眠りを指します。このとき、体は休息していますが、脳は活発に動いています。
 海馬と大脳新皮質の間で膨大な情報のやりとりがなされ、記憶の整理と定着が行われるのは、このレム睡眠中のときです。

 実は夢を見るのもレム睡眠時なのです。長期記憶として定着させるために、神経回路を張り巡らす作業が夢として知覚されるのです。
 だから、夢をたくさん見るヒトは、「レム睡眠のとり過ぎ」、すなわち「長く寝過ぎている」と言えます。
 レム睡眠の時間は、約90分のサイクルの中で、覚醒に向けてだんだん長くなっていき、自然の目覚めは通常レム睡眠状態から起こります。

 一方、ノンレム睡眠(Non Rapid Movement)とは、レム睡眠ではない状態を表し、眼球は動きません。熟睡している状態で、普通は入眠直後から現れます
 ぐっすり眠っている状態のノンレム睡眠中に無理に起こされたりすると、寝ぼけたような行動をとったり、熟睡できなかったと感じたりするのは脳の活動が低下している(いわば、脳が休息している状態)からですが、とは言え、心臓や肺などの人間の臓器と同じで完全に機能を停止しているわけではありません。
 また、昼間にどうにも眠くて我慢ならないときに少しだけ眠るだけでスッキリするのは、ノンレム睡眠の働きによるものです。

 『脳は休ませると10倍速になる!』 第1章 より  苫米地英人:著  宝島社:刊

 ひとくちに「睡眠」といっても、レム睡眠とノンレム睡眠では、役割がまったく異なるということ。

 レム睡眠の役割は、記憶の整理。
 ノンレム睡眠の役割は、脳の休息。

 このどちらも十分に行われているのが、良質の睡眠だということですね。

適切な睡眠は約6時間?


 苫米地先生は、“理想的な睡眠”として、「6時間睡眠」を勧めています。

 睡眠がその役割を十分に発揮して、脳の機能を高めるためには、ノンレム睡眠・レム睡眠のサイクルを最低2回とる必要があります。
 つまり、90分×2=180分です。
 しかし、「ベッドに入った瞬間に眠って、2回のレム睡眠が終わった瞬間に目が覚める」というまったくムダのない睡眠をとることはほぼ不可能です。
 だから、ベッドに入って、ある程度の睡眠状態に入るまでの約30分、2回目のレム睡眠が終わって目覚めるまでの約30分、合計1時間ぐらいは余裕を見ておいたほうがいいでしょう。
 また、光や音などの外的刺激に邪魔されて、ノンレム睡眠がもっとも深い段階(δ(デルタ)波支配下)にまでいかない場合もあります。そうすると、もちろん成長ホルモンが出ず、体のメンテナンスが十分にできなくなります。
 加えて、深いノンレム睡眠を2回とるためには、サイクルを3回にして、余裕を持たせておくことも必要です。
 したがって、私は「6時間睡眠」をお勧めしています。
 90分×3(270=4.5時間)+1時間=5.5時間、つまり、約6時間なのです。

「6時間睡眠」がいいとは言いましたが、必ずしも6時間きっちりと眠らなければならないというわけではありません。
 大切なのは、あくまで「ノンレム睡眠・レム睡眠」のサイクルを2回以上とることであり、「6時間睡眠」はあくまでもその目安にすぎません。
 それにあまりにも6時間という数字に拘泥(こうでい)し過ぎると、睡眠時に緊張状態になり、眠りが浅くなってしまい、結果的に脳に悪影響を与えてしまいます。
 眠りの質が悪いと、たとえ6時間寝ても、7〜8時間寝ても、脳に対して必要な働きかけができなくなります。
 正しい眠りをとるには、最低限の睡眠時間(4〜6時間)を確保しつつ、適切な睡眠環境を整えて、質の高い睡眠を作り出すことが大切なのです。

 『脳は休ませると10倍速になる!』 第2章 より  苫米地英人:著  宝島社:刊

 睡眠がその機能を十分に果たすためには、90分の睡眠サイクルを2回とることが必要です。
 そのためには、6時間程度の睡眠時間を確保する必要があるということ。

 健康のためにも、脳のパフォーマンスのためにも、毎日の習慣として心がけたいですね。

脳を活性化する「黙って食え瞑想」と「歩行禅」


 苫米地先生が、脳を活性化するために、「睡眠」とともに勧めているのが、「瞑想」です。

 正しい瞑想をすることで、脳の前頭前野にドーパミンが流れるようになるとのこと。
 ドーパミンが前頭前野に流れ込むと、思考が一気に活性化して、高い抽象思考ができるようになります。

 苫米地先生は、「入門的な瞑想法」として、以下の2つを紹介しています。

 まず、入門的瞑想としてやりやすいのが「黙って食え瞑想」です。この瞑想法は、釈迦が若い頃に実践していた瞑想です。その名のごとく、目の前に食事があったら、黙って食べる。それだけです。
 ただし、食卓にご飯があったら「この米はどこで栽培されたのかな?」「どんな人が育ててくれて、どんな人がどこまで運んできてくれたのかな?」と考えます。牛肉があったら「この牛はどんな牛だったのだろう?」「牛の命はどこに行ったのだろう?」とイメージを広げていきます。
 自分という自我の視点を止めて、とことん客観的に見るという行為が重要なのです。
 禅寺に修行体験に行くと、「食事中は話をしてはいけません」と注意を受けます。それは、「食事中にぺちゃくちゃおしゃべりをするのは行儀が悪いから」という理由ではなく、「目の前の食べ物を徹底的に見ろ」という意味なのです。
「黙って食え瞑想」は、身のまわりのすべての物事に対しても行なうことができます。たとえば職場のデスクにはパソコンや書類、携帯電話などが置いてあります。それら一つ一つを見ながら、「なぜ、これはここにあるのか」と考えるのです。

 そして、もうひとつお勧めしたい入門的瞑想法は、「歩行禅」です。
 歩行禅とは、その名の通り、歩きながら行う禅のことです。「行功(ぎょうこう)」とも言います。
 歩行禅の方法は次の通りです。

 ①右足のかかとが地面に着くときに、1回息を吸い込む
 ②右足のつま先が地面に着くときに、もう1回息を吸い込む
 ③左足のかかとが地面に着くときに、息を吐く
 ④左足のつま先が地面に着くときに、呼吸を止める

 この①〜④を繰り返し行ってください。両腕を大きく振りながら行うと効果的です。
 重要なことは、一步足を踏み出すごとに、「かかとが着いた」「今、つま先が地面に着いた」「右足に体重が乗った」・・・・・と一つ一つの体感を意識に上げながら歩くことです。
 釈迦は一生歩き続けたと言われていますが、単に移動するために歩いていたのではありません。
 彼は、歩くために歩いていました。自分の体に対して、意識を持っていく訓練を常にしていたのです。
 歩行禅は歩いているときだけではなく、朝起きてから、夜寝るまで、すべての訓練を常にしていたのです。
 つまり、自分自身を徹底的に見つめることが、歩行禅の真髄なのです。

 『脳は休ませると10倍速になる!』 第4章 より  苫米地英人:著  宝島社:刊

 苫米地先生は、これらの瞑想法を昼間、起きているときに習慣化することで、睡眠中も瞑想状態が深化し、脳の機能(特に抽象思考力)がさらに活性化すると述べています。

 生活の中で気軽にできる瞑想法、ぜひ試してみたいですね。

「疲労」の原因は脳にある?


「脳を休ませる」というのは、あくまでも比喩的な表現です。
 実際の脳は、睡眠中も活発に活動しています。

 睡眠時と覚醒時においての脳のエネルギー消費量はそれほど差がなく、「脳が疲れる」ということはありません。

 苫米地先生は、筋肉の疲労についても、脳が出した指令によって作り出されたものだと指摘します。
 これまで筋肉の疲労の原因とされていた乳酸は、疲労物質でも老廃物でもないことが、最近の研究によって明らかにされました。

 乳酸が疲労の原因ではないとすると、「疲労」という現象はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。
 繰り返しになりますが、それはすべて脳の仕業なのです。
 脳が「疲れた」というサインを出したから、体は疲労を感じるのです。
 ここで、米国で行われた興味深い実験を紹介しましょう。
 ラットを台車の中をリタイアするまで走らせたあと、ラットの細胞を調べてみると、まだまだ運動のためのエネルギーがたっぷり残っていたのです。
 それはおそらく脳が判断して、筋肉に「疲労」を感じさせる指令を出し、まだエネルギーが残っているにもかかわらず、ストップをかけたのだと思われます。
 もし、脳がストップをかけないと、筋肉や骨が壊れてしまうでしょう。そうならないために、脳は「疲労」という信号を送って、体を守ったのです。

「火事場の馬鹿力」という言葉があるように、人間は時として信じられない力を発揮することがあります。それは生きるか死ぬかという極限状態に直面すると、脳のストッパーが外れるからです。
 しかし、平常時にそんなことをやっていると、大きな負荷が筋肉や骨にかかり、肉体は大きなダメージを受けてしまいます。

 つまり、「疲労」という感覚は脳が体を守るために出した指令と言えるのです。

 脳が疲労の指令を出していることについては、次の実験からも明らかです。
 まず、2人の人間にウォーキングマシンで運動をさせます。1人の人間にはヘッドフォンで音楽を聴かせ、もう1人の人間には音楽なしで走ってもらいます。もちろん、2人の体力や運動能力は同じとします。
 その結果、音楽を聴いていた人のほうが、聴いていない人よりも、長い距離を走ることができたのです。
 このことから、音楽が脳に何らかの刺激やリラックス効果を与えたために、筋肉に疲労という指令を出すのが遅れたのではないかという仮説が導き出されます。
 つまり、疲労を肉体が感じるのは、すべては脳のせいと言えるのです。

 『脳は休ませると10倍速になる!』 第5章 より  苫米地英人:著  宝島社:刊

 疲労は、体を守るために脳が出す指令です。

 実際に体が疲れたから「疲れた」と感じるのではありません。
「疲れた」と感じているから、体が疲れた状態になるということです。

「疲れた」を口ぐせにしている人は、自分自身で疲れた状態をつくり出しているということ。
 気をつけたいですね。

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「睡眠は、体と頭(脳)の疲れをとるためのもの」

 それが、今の世の中の一般的な考えです。
 しかし、本書を読むと、睡眠には、疲れをとって健康を維持すること以上に重要な意味をもつことがわかります。

 成功者や各界の「超一流」の人たちの多くは、「眠ること」に大きなこだわりを持っています。
 メカニズムは知らなくても、経験から睡眠の果たす役割をよく十分理解しているのでしょう。

「たかが睡眠、されど睡眠」

 私たちも、正しい睡眠をとる習慣を身につけて、気力あふれた毎日を送りたいですね。

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