本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『15歳若返る脳の磨きかた』(苫米地英人)

 お薦めの本の紹介です。
 苫米地英人先生の『15歳若返る脳の磨きかた』です。


 苫米地英人(とまべち・ひでと)先生(@DrTomabechi)は、脳科学者です。
 ご専門は機能脳科学や認知心理学、人工知能など多岐に渡ります。

これからは「脳の若さ」による格差社会となる!

 最近、医療の分野を中心に、「クオリティー・オブ・ライフ」という言葉が盛んに使われています。
 クオリティー・オブ・ライフとは、「生活の質、命の質」という意味です。
 命の質は、社会的地位や職業とはまったく関係がありません。
 生きている間にどれくらい多く楽しんだか、喜んだか、充実したか、満足したかで決まります。
 苫米地先生は、命の質を決めているのは「脳の若さ」で、これからの時代は、脳の若さが格差をつくると指摘しています。
 若い脳を保つことができれば長生きができ、人生はいつまでも楽しいものになります。
 脳の若さを簡単に失っていく人は短命に終わり、人生は楽しみの希薄なものになります。

 十年後、二十年後には、人間の寿命がいまよりもはるかに延びているでしょう。
 そのため、脳の若さによる格差は、すさまじい開きになると予想されます。
 では、脳を若返らせるためにはどうすればいいのでしょうか。

 本書は、最先端の機能脳科学の観点から、脳を15歳若くする方法について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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脳があなたの年齢を決定する

 苫米地先生は、四十代半ばから肉体改造をして、物理的なトレーニングや薬物に頼らず、二十代のころの筋肉体型に戻しました。
 その方法とは「就寝する二、三時間前に、自分の腕や足、腹などに筋肉がつくというイメージをしっかりと頭の中で浮かべる」というものです。
 つまり、脳が成長ホルモンをたくさん出すようにした結果、筋肉が生まれたということ。

 一般に、成長ホルモンの分泌は、年齢とともに減少することが知られています。なぜ減っていくのかといえば、成長を終えて安定した大人は少年や青年と異なり、活発に細胞分裂をくり返す必要がなくなるからです。
 このとき大切なポイントは、決して脳が衰えたために成長ホルモンが出なくなるわけではないということです。脳が必要ないと判断するがために、それは出なくなるのです。
 したがって、頭の中に筋肉が成長するイメージを定着させ、脳がふたたびホルモンをたくさん出すように導いてやれば、かつて身体を鍛えていたころと同様に筋肉がついてくるわけです。
(中略)
 私は、脳と肉体について、ある仮説を立てています。

 脳をコントロールすれば、人間に不可能はない。

 もちろん、鳥になって空を飛んだり、時速100キロで走ったりすることはできない相談です。しかし私は、およそ人間として「こうしたい」「こうありたい」と望む願いはすべてかなえることができるはずだと考えてきました。
 肉体改造はその証明の一環であり、私はそれを成功させました。
 私の仮説が正しいとするならば、人間の若さについても、次のように言うことができるはずです。

 脳が人間の若さを決める。

 これが私の若返り法のコアとなる考え方です。
 脳のコントロールという内部からの働きかけによって、人間は若さを取り戻し、維持することができるのです。

 『15歳若返る脳の磨きかた』 第1章 より 苫米地英人:著 フォレスト出版:刊

 若さの源ともいえる成長ホルモンの分泌量も、脳がコントロールしています。
 脳に「若々しく、成長している自分」をイメージさせることができるかがポイントです。
 思考をコントロールすることで、人はなりたい自分になることができる、とよくいわれています。
 肉体的な若さも例外ではありません。

「耳が遠い」は物理的原因ではない

 幼いころにつくられた神経回路は、後々までずっと残っていきます。
 代表的な例は、「言葉を聞きわける能力」です。
 言葉を聞きわける能力は、一般的に年配者ほど衰えていき、うまく聞き取れなくなっていきます。
 特に、子音「T(ティー)」と「D(ディー)」などのまぎらわしい発音は認識しにくくなりやすいのだそうです。
 苫米地先生は、その理由について以下のように説明しています。

 こうしたことが起こる原因は、鼓膜が硬くなって振動が伝わらないなどの物理的なものではなく、脳の老化、つまりソフトウエアの劣化なのです。
 言葉の聴き取りというのは、じつはけっこう複雑な問題です。子音と母音が時系列上でどのように組み合わさっているか、また子音と母音が空間系列上でどのようなノイズを含んでいるか。聴き取りの能力は、脳がそれらをはっきり認識できるか否かにかかっています。
 じっさい、電話で話をするときは、若い人同士の会話でも聴き取りにくい言葉がたくさんあると思います。アルファベットを「タンゴのT、デンマークのD」といったり、「テー(T)、デー(D)」とドイツ語的な音で伝えたりする習慣が生まれたのも、過去にたくさんの人が聞き間違いを繰り返してきたからです。
 子音と母音を組み合わせた音声を聞きわける能力は、ここに紹介したように音声の脳の時間系列と空間系列の分解能にかかっています。
 年配者が言葉を聞き取れないのは、年をとるとこの分解能がどうしても下がってしまうからなのです。
 ところが、子供のころに音楽の訓練をした人は、この時間系列と空間系列の分解能が比較的高く維持され、歳をとっても下がり方が緩やかです。訓練によって神経回路が生まれ、ハーモニーやリズム、音の強弱などを認識する神経細胞を死なせずにすませたからです。
 そういう人は、その後とくに音楽に携わらなかったとしても、音楽をやらなかった人とは違う形で音の情報をふんだんに耳に入れています。
 そのため、時間系列と空間系列で微妙に異なる音を認識する脳の機能は、無意識のうちにその後もずっと維持され、分解能は歳をとってもさほど下がりません。

 『15歳若返る脳の磨きかた』 第2章 より 苫米地英人:著 フォレスト出版:刊

 人間の大脳皮質の神経細胞は、生後半年から一年の赤ん坊のときが最も多く、その後、歳を重ねるごとにどんどん死滅していき、基本的に再生しません。

 神経細胞が死んでいくばかりで、減り続ける。
 その現象を考える上で、重要なポイントは「クリティカルエイジ」の存在です。
 クリティカルエイジとは、「DNAに刻まれた遺伝情報で、脳の学習限界年齢のこと」です。

 一般的に8歳〜13歳にかけての時期にあたり、クリティカルエイジまでに学習した場合と、それ以後に学習した場合とを比較すると、身につく技能にたいへんな格差が生まれます。
 子供のころに、楽器などの耳を使った訓練をしていた人は、そうでない人よりもはるかに高い演奏力や音楽的理解力を示し、音声の聞き分けを司る神経回路の衰えも緩やかになるとのこと。

「IQ」の本来の意味

 使われない神経細胞はどんどん失われ、二度と取り戻すことはできません。
 それでも、脳の働きを回復させ、脳を若返らせるには、脳を使い、神経ネットワークの働きを維持、拡大させていくしか方法はありません。
 苫米地先生は、神経ネットワークを拡大するには、抽象度の高いところの能力を磨き、それを維持・向上させていくことが重要だと指摘しています。
「抽象度の高いところ」とは、脳のコネクションの問題であり、神経細胞が減る間にもどんどん増やすことができます。

 脳の神経細胞のコネクションを増やすことは、「IQ(知能指数=Intelligece Quotient)を高める」ことと大きな相関があります。
 苫米地先生は、「IQが高い」とはどういうことなのか、以下のように説明しています。

 ではほんらいのIQはどういうものでしょうか。それは、たくさんの情報の中から抽象化されたシンプルな情報を取り出す能力を指しています。
 抽象化というのは、具体化の反対です。たとえば、安倍晋三、和田アキ子、浅田真央・・・・・というふうに名前を上げていけば具体化ですが、これを「日本人」とひとまとめにすれば抽象化になります。
 また、このとき「人間」というくくりを用意すれば、抽象化はさらに高まります。
 抽象度というのは、際限なくさらに上の高みがあるもので、「霊長類」や「生物」、あるいは「生命」というくくりへと考えを進めていくことができます。そうやって考えを、もうひとつ上へ、もうひとつ上へと深めていくことが抽象思考の本質です。

 本当にIQが高い人は、膨大な情報の中から、これまでにない、誰も気づかなかった、まったく新しい抽象化のパターンを見つけ出します。その、まったく新しい抽象化のパターンを見つけ出す力こそが、IQで表される能力なのです。

 『15歳若返る脳の磨きかた』 第3章 より 苫米地英人:著 フォレスト出版:刊

 苫米地先生は、物理空間からより遠くに離れた思考をすればするほど、抽象度は上がっていくと述べています。
 より抽象度の高いところで思考すればするほど、学問でもビジネスでも、より新しいモデルの創造につながり、ブレークスルーをもたらします。

読書がなぜ脳に「効く」のか?

 IQを高め脳の衰えを回復させるために即効性のある方法が、「読書」です。
 IQの高さというのは、じつは読んだ本の数にほぼ比例します。

 なぜ本を読めばIQが高まるのか。
 それは、知識のゲシュタルトができるからです。知識のゲシュタルトとは、ある事柄に関連するひとまとまりの知識という意味です。
 すでに述べたようにIQの高さとは、抽象化の能力です。そして、私たちが抽象思考をするときの脳は、神経ネットワークの同時発火を起こしています。
 抽象化を行うときは、記憶の中のたくさんの知識のゲシュタルトから、共通するシンプルな情報を見いだすわけですから、そもそも知識がなければ何も始まりません。
 また、新たな知識を獲得することなく昨日までと同じ知識の状態を維持しているかぎり、神経ネットワークの同時発火も起こりません。なぜなら、昨日までの知識によって神経ネットワークは過去に同時発火を起こしており、それ以上に抽象思考を行おうとしても、抽象化が進まない状態にあるからです。
(中略)
 新しい知識を獲得する方法は、もちろん読書だけではありません。先達の話に学んでもいいし、経験から学んでも問題はありません。
 しかし、話を聴きに行こうすれば、けっこうな手間と費用がかかります。話の中から吸収することのできる知識は、それほど多くもありません。経験から学ぼうとすれば、費用対効果はさらに小さくなるでしょう。
 それに対して、読書は手間も費用もたいしてかかりません。相手があることは相手の都合に合わせなければなりませんが、本はいつでもあなたの都合に合わせてくれます。
 また、著者は、一冊の本の中で伝えたいことを論理的に展開しているのが常です。そのため、吸収するに値する知識も豊富で、知識のゲシュタルトをつくることも容易です。より速く、より多くの知識を獲得しようとするなら、これに勝るものはありません。
 世の中で一般的にIQが高いとされている人たちは、みな読書家です。その事実を見ても、読書はIQを高める一番の手段だと理解できるのではないでしょうか。

 『15歳若返る脳の磨きかた』 第4章 より 苫米地英人:著 フォレスト出版:刊

 たしかに読書は知識を吸収するためには、最適な方法です。
 ただ、IQを上げるための読書としては、小説やマンガは向いていないとのこと。
 それらの中には、抽象思考というべきものが存在していないためです。
 
 苫米地先生は、より効果的な読書法として「読みたいと思わない本を読むこと」を勧めています。
 読みたいと思わない分野の本は、まだ獲得していない知識の宝庫です。
 知識のゲシュタルトをつくるには、もってこいですね。
 読書も、食事同様、偏らずにいろいろな種類のものを吸収するのが大事だということです。

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 苫米地先生は、過去の記憶の中に甘んじて生きている人は、老化が早まり、死んでしまうとおっしゃっています。
 脳を若返らせ健康的に生きるためには、新しい知識を吸収しようとする好奇心を持つこと。
 吸収した知識を自分の中に蓄えられている知識と組み合わせる。
 すると、より高い抽象思考ができ、認識できなかった「新しいもの」が見えようになります。
 
 高性能な機械でも、使わずにほったらかしておいたら、錆びて使いものにならなくなります。
 人間の脳も、それと一緒だということですね。
 使わないと、どんどん劣化していってしまいます。
 脳の若返りのために、抽象思考を生活の中に習慣として取り入れていきたいですね。

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