【書評】『「陽転」コミュニケーション』(和田裕美)
お薦めの本の紹介です。
和田裕美さんの『「陽転」コミュニケーション』です。
和田裕美(わだ・ひろみ)さん(@wadahiromi)は、コンサルタント、セミナー講師です。
コミュニケーションやモチベーションアップのためのセミナーや講演等を中心に国内外で活躍されています。
どんな知識よりも、「コミュニケーション力」が重要!
和田さんにとっての一番の幸せは、「誰かと心でつながったと感じるとき」です。
コミュニケーション力を身につけることは、どんな知識を得るよりも重要だと強調します。
和田さんは、あるビジネス雑誌で「コミュニケーション」をテーマに、コラムを書く機会を得ます。
その際に二つのポイントをベースにして、連載の構成を考えることにしました。
一つ目は、コミュニケーションは単なる知識ではなく、ノウハウでもなく「考え方」がベースになっていることを理解してもらうこと。
二つ目は、ユーモアを取り入れながら、頭がほぐれてくすっと笑える、そんなコラムにすること。
本書は、そのコラムの連載内容を再構成して整理して、一冊にまとめたものです。
和田さんらしい、誰にでも分かりやすくて読みやすい、温かみのある内容となっています。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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【陽転思考】【単純思考】【感情移入】が基本
【陽転思考】とは、マイナスの事実からでも「よかった」といういい部分を見つけて、できる限り早く切り替える思考法のこと。
「事実は一つ。考え方は二つある」という考え方です。
この【陽転思考】に、【単純思考】【感情移入】を加えた3つ。
それらが、コミュニケーションの基本となります。
事実は一つ、考え方は二つ。仕事で失敗しても「あれはなかったことにしてください」とはなりません。だからといって落ち込んで泣いて「もう降格だ」と嘆いたまま会社に行っても何の進歩もない。ならば涙をふいて「慣れてきておごったからミスしたんだ、気を引き締めよう」「大きな損害を出す前でよかった」と考えるとか、そこにある小さな「幸せのタネ」に気付いて「よかった」と言える自分を探して切り替える。
こうして私なりの【陽転思考】ができるようになったことで、すぐに落ち込んでいしまう私の性格は、すぐに切り替える性格に変化したのです。さらに、「どんなことでもやってみないとわからない。言われたことを素直に実行する人が成功する」とも教えてもらいました。それが【単純思考】です。
それから、「結果が出ている人の感情を持て」と結果が出ていないときに言われました。「表彰されて気分いいなぁ」と【感情移入】できる人が成功しやすいみたいです。
【感情移入】しやすい人は子供の無邪気さを持っています。風呂敷を首に巻いて「ヤァ、仮面ライダーだぁ」となりきれた感覚をいまだ大人になっても密(ひそ)かに持っている人の多くは、人に好かれてさらに成功しているように思います。【陽転思考】【単純思考】【感情移入】はとっても大切な、人としての考え方なのです。
『「陽転」コミュニケーション』 第1章 より 和田裕美:著 日経BP社:刊
気持ちの切り替えが早く、素直で、感情豊かな人。
そんな人は誰からも好かれるし、「一緒にいたい」と思われます。
一緒にいるだけで楽しい、落ち着ける、安心できる。
そんなコミュニケーションの達人を目指したいですね。
【陽転思考】で楽しく坂を登ろう
【陽転思考】の思考パターンを身につけると、性格も変わり、人生も好転します。
それでも、つらいことや悲しいことが、まったくなくなることはありません。
和田さんは、だからこそ、陽転思考を継続して、早く切り替えるクセを身につけておくことが大事
だと述べています。
私も陽転思考をしたのに痛みや悲しみを受け続けました。仕事で結果を出し、高い評価をもらって幸せになった一方で、人の死やリストラ、裏切りなどを経験しました。一つの問題が解決したらまた別の問題がやってきました。
だからこそ、その都度、「悲しい事実にもきっとなにかの学びがあるはず」と考え、闇の中から一点の光を探し続けました。
今になってわかることは、自分が明らかに以前より痛みに強い心を持つようになったということ。「痛みに鈍感」になったのではなく、「痛みから学ぶ」コツがわかってきたという感じです。どんな事実に直面しても、いい側面を探す。テレビを見ていても、新聞を読んでいてもそれが当たり前になってきたのです。私にとって目の前で起こる数々の問題は、自分を鍛えるための「心のトレーニング」だったのです。
人生は刺激的でドラマチックなほうが学びが多く、心を鍛えられるのかもしれません。登山家が危険で苦しい山に何度も挑戦するように、私たちはドラマチックなシーンを体験するために、人生の山をときどき登ってしまうのではないでしょうか。私は「どうせ登るならば、景色を楽しみながら登ろう」と思えるコツを伝えたい。陽転思考とはそういう考え方なのです。
『「陽転」コミュニケーション』 第1章 より 和田裕美:著 日経BP社:刊
自分の身に起こる出来事は変えることはできないし、なかったことにもできません。
私たちが変えることができるのは、その出来事の「捉え方」です。
嫌なこと、つらいことに直面したとき。
「大変だったけど、いろいろ学べてよかった」と思えるかどうか。
どんな状況でも、闇の中から一点の光を探し続け
る気持ちを持ちたいですね。
嫌われてるかも・・・と思ったら鈍感に振る舞うべし
ものすごく苦手な人が職場などにいた場合の対処法について。
「相手に嫌われてるかも・・・」
そうと思うときには、「鈍感になる」という方法があります
あえて「空気を読まない人」に変身してしまうということです。
そう、嫌われているという空気を読まない、ということです。企画を叩き潰されても、「〇〇さんの企画がOKだったから、僕のも大丈夫だと思ったのですが。部長、なぜダメなのか、ぜひ教えて下さい!おねがいしまーす」と熱く真剣なまなざしでにじり寄ります。
さらに飲み会などで隣に座ってしまいます。それもニコニコしてうれしそうに座るのです。
あなたは鈍感なのです。だから気にしないのです。
怖い熊に「噛んでもいいよ、痛くないから」と言って近づいていくムツゴロウさんみたいに、相手を怖いとぜんぜん感じないのです。そのうち相手も変わってきます。もう、いじめるのが面白くなくなってくるのです(笑)。じめじめしないあなたを、好きになってくる可能性も少なくありません。
そうなれば後は「こういう人とも仲良くできる僕ってすばらしいかもしれない。僕もレベルが上がったもんだ」と、自画自賛でハッピーです。それから私は相手を「苦手な人」と思わないで、ゴリラ(かばでも豚でもいい)くらいに思って思いつめないようにしています(笑)。なにかされても「おお、ゴリラが吠えている!もう、うるさいなぁ・・・、けど、意外にかわいいなぁ」と。
そんなふうに笑って過ごせば運勢も好転してくると思っています。それでいいんじゃないかなと思います。楽しく生きる権利は誰にもあるのですから。
『「陽転」コミュニケーション』 第2章 より 和田裕美:著 日経BP社:刊
「怖い熊に近づくムツゴロウさん」ですか。
なるほど・・・・。
【陽転思考】の達人、和田さんならではの、素晴らしいアイデアですね。
こちらが相手を怖がったり、警戒したりすると、相手もそれを感じ取って、こちらを怖がったり、警戒するものです。
あえて「空気を読まない人」になって、相手との間合いを詰めてみる。
それも、苦手な人とのコミュニケーションを深めるひとつの方法ですね。
「共感する心」を持ち人とのつながりを深めよう
和田さんにとって、人生で一番大切なものは、「人とのつながり」です。
人とのつながりを強くする。
そのためには、「相手に共感する心」を持つことがとても大切になります。
和田さんのいう「共感」とは、相手の立場や置かれている状況を考え、相手がなぜ、どんな気持ちで、そのような話をしているのかを理解する
こと。
ときには、自分の欲求だけで動いてもいいのですが、あなたにとっていいことが、相手にとってはそうでない場合があります。
逆に、あなたにとって面倒で不快なことでも、相手にとっては切実な願いであることもあるのです。自分の思いや立場ばかり優先させず、それと裏腹であるかもしれない相手の思いや立場を考えてみましょう。
こうした人間同士のコミュニケーションにおける機微(きび)を理解して、相手の立場に立って考えることができるようになれば、“共感力”はぐっと高まります。「そうそう、あなたの言っていることは、わかるよ」と、相手の気持ちに寄り添うことができるようになってくるのです。
これは自分の意見が違っても、相手が納得するように「あなたの気持ちはすごくわかりますが、私はあなたと違う立場なので」と、自分の立場と気持ちをきちんと伝えることができるようになってきます。すると相手もこちらの理解してくれるようになります。
『「陽転」コミュニケーション』 第2章 より 和田裕美:著 日経BP社:刊
自分と相手は立場も考え方もまったく違います。
それを無視して、自分の意見や希望を押し通すだけは、相手に受け入れられません。
相手の考え方を理解した上で、相手の気持ちに寄り添えるか。
それが、コミュニケーションを深める“共感力”を身につけるポイントです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
インターネット、電子メールなどのIT(情報技術)が発達した、今の世の中。
それにより、場所や時間などの制限を受けることなく、手軽に多くの人とつながることができるようになりました。
逆に、そのせいで「コミュニケーションを深める」ことが、難しくなった面もあります。
人は一人では生きてはいけないし、生活するためには多くの人の支えが必要です。
その意味でも、コミュニケーション力は、そのまま、その人の「人間力」になります。
怖がらず、勇気を持って、心を開くこと。
日頃からコミュニケーション力を磨く努力を怠らないようにしたいですね。
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