【書評】『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』(魚住りえ)

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 お薦めの本の紹介です。
 魚住りえさんの『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』です。

 魚住りえ(うおずみ・りえ)さんは、フリーアナウンサー、ボイス・スピーチデザイナーです。
 テレビ番組やCMのナレーションを数多く担当し、その温かく、心に響く語り口には定評があります。

人生は「声」と「話し方」で決まる!


 人前でのスピーチ、営業トーク、プレゼンテーション・・・・。

 仕事でも、プライベートでも、「話す」ことを求められる場面は多いです。
 声や話し方は、多くの人にとって大きな悩みの種ですね。

 魚住さんは、声も話し方も、ちょっとしたコツで劇的に変わると述べています。

 簡単なコツを実践するだけで、本当にたった1日で、声も話し方も劇的に変わります。これは誇張でも何でもありません。
 私は現在、アナウンサー活動の傍ら、オリジナルの「話し方のレッスン」を行っています。
 25年にわたる経験で培った声と話し方のスキルを「魚住式メソッド」としてまとめ、生徒さんに教えていますが、本当にたった1回のレッスンで声も話し方も驚くほど変わります。みなさん、口々に「自分でこんなに変わると思わなかった!」と驚かれるほどです。
「話の最初に『えー』『あー』をいわないだけで、グンと聞きやすくなる」
「『少し声のトーンを高くするだけ』で明るい印象になる」
「相づちは下手にたくさん打つより『黙ってうなずく』ほうが効果的」
 一つひとつは、じつに簡単なコツですが、それを積み重ねることによって驚くほど聞きやすく、好印象をもたれる話し方ができるのです。

 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 はじめに より 魚住りえ:著 東洋経済新報社

 本書は、魚住さんが自身の経験から学んだ、「聞きやすく、好印象を持たれる話し方」のコツをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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話すことは音楽を奏でること


 魚住さんは、「声を整える」ことは上手な話し方の基本中の基本だと述べています。

 同じ言葉でも声が違うだけで、聞き取りづらかったり、逆に聞き取りやすくなったりします。どんなにすばらしいコンテンツでも、肝心の「声」かイマイチだったら相手に伝わりません。
 私は「声」というのは洋服と同じだと思っています。人前に出たとき、「普段の声」で話すのは、ノーメイクのパジャマ姿で外出するのと同じこと。
 仕事の場合はスーツにネクタイ着用で出かけますが、散歩やショッピングのときはカジュアルなジーンズやシャツ姿に着替えるなど、誰もが服装を替えますよね。
 声もそれと同じです。服と同じように、その場にふさわしい声というのがあると思うのです。シチュエーションによって、まわりからどう見られたいか、どういう自分を演出したいかによって、声を使い分けていくべきだと思うのです。
(中略)
 私は長くピアノをやっていましたが、話すことは音楽を奏でることと同じだと思います。
 楽器を演奏するとき、いきなり楽曲を弾きはじめるのではなく、まず「美しい音色」を出す練習から始めますよね。
 楽器にたとえるなら、声は「音色」で、話し方は「演奏」
 どちらか一方が欠けていても人の心を打つ音楽にはなりません。両方が融合してこそ、その音楽は我々に感動を与えてくれます。だから、まずは「声」こそが大切です。
 ピアノにチェロ、バイオリン・・・・。演奏家は、それぞれの楽器から美しい音色を発します。その音は、磨き抜かれたテクニックや考え抜かれた解釈によって曲として演奏され、聞き手に伝えられていく。
「音色と演奏」の関係性が、「声と話し方」にも通じていると考えているのです。

 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 第1章 より 魚住りえ:著 東洋経済新報社:刊

 聞いている相手に、説得力のある話し方をする。
 そのためには、その場に応じた「声」であり「話し方」をする必要があります。

 話すことは、音楽を奏でることと同じ。
「声を整える」ことの重要性がよくわかりますね。

「滑舌」を良くするには?


 魚住さんは、「いい声」を出すためのポイントとして、以下の3つを挙げています。

  1. 肺にたっぷりと空気を入れる(=たっぷりと吐き出す)
  2. (口をきちんと開けるなどで)きちんと共鳴させる
  3. (舌や顔の筋肉を巧みに動かすことで)滑舌よく言葉を発する
 ここでは、そのなかの1つ、「滑舌よく言葉を発する」トレーニングを紹介します。

▶滑舌トレーニング

①舌のストレッチ
 最初に、舌の動きを円滑にするためのストレッチを行います。
[1]口は閉じたまま、舌でぐるりと歯ぐきを舐める。逆回りも同様に。それぞれ3周
[2]舌を横に出して、左右に動かす。往復10回
[3]舌を思いきり出して、上下に動かす。往復10回

②唇まわりを柔軟にする
 アナウンスやナレーションの直前にも行うウォーミングアップです。

[1]しっかりと口を動かして、発音する。少しずつ、速く、長くいえるように。
   パパパパパパパパパパ・・・・
   ママママママママママ・・・・
   タタタタタタタタタタ・・・・
   カカカカカカカカカカ・・・・
   ララララララララララ・・・・
[2]唇を軽く閉じて、小刻みに振動させる。
   プルプルプルプルプルプルプルプル・・・・
    ※本番前に行うときは、唇が乾燥しないように気をつけること
[3]巻き舌
[4]ほおの筋肉を上下させながらマッサージする。
[5]冬場の乾燥する時季はリップクリームを塗り、できたらお肌に乳液を! 話しやすくなりますよ。

③基本の口の形
 基本となる母音をクリアに発するための口の形は、イラスト(下図を参照)のとおりです。徹底的に体に覚え込ませてしまいましょう。
 鏡を前にして、「やりすぎ?」と思うほど極端に口を動かします。顔の筋肉が鍛えられることで、普段の会話における口の動かし方は格段にラクになります。

④変顔エクササイズ
 顔の筋肉を動かすことで滑舌をよくするための簡単なエクササイズです。声を出さなくてもできるので、発声練習に比べれば場所を選ばないかもしれません。
 1日のスケジュールに組み込んで、リフレッシュも兼ねての毎日の習慣にしてみてください。
[1]目を見開いて、口の形をきちんと顔に覚えこませましょう。

 ア→オ
 ア→ウ
 ウ→エ

[2]目元をゆるめて、笑顔で。けれど口の動きははっきりと。

 イ→ウ
 イ→エ
 ア→エ

 滑舌トレーニングを①〜④まで紹介しましたが、回数と頻度はみなさんの無理のない範囲で決めてください。①〜④をすべて毎日行うのが理想的ですが、①〜③だけでも結構です。
 また毎日でなくても構いません。大事なことは少しずつでも続けること。最初の3日だけ一生懸命やってそれっきり・・・・というパターンは避けたいですよね。
 ゆるく、無理せず、続けてみてください。

 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 第1章 より 魚住りえ:著 東洋経済新報社:刊

基本の口の形 第1章 P59
図.基本の口の形
(『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 第1章より抜粋)


 ポイントは、普段動かしていない筋肉を鍛えること。
 顔の筋肉をしっかり鍛えて、歯切れのよい発音を身につけたいですね。

低い声でも明るい印象をもたれるには


「声が低くて、暗い人に思われる」
 そういう悩みを抱えている人は多いでしょう。

 魚住さんは、声の高さを変えなくても、明るい印象に変えることは可能だと述べています。

 まずは、いつものとおりに(とはいえ鼻先を振動させる共鳴を意識しながら)「こんにちは」といってみてください。
 次に、笑みをつくって同じように「こんにちは」といってみましょう。
 口角を上げながら、同時に口を横方向にも開きます。多少は不自然に感じても大丈夫です。あなたが思っているほど、人から見て変化はないものです。
 そして笑みをつくった顔をキープしながら、「こんにちは」といってみてください。
 2つの声はかなり違う印象になっていませんか? 余裕があれば、録音して聞き比べてみたり、まわりの人にその違いを確かめてもらったりして下さい。
 口角を上げた状態で音を発するだけで、感じのいい、やさしい話し方になります
 口角を上げることで口腔も少し緊張し、舌が少し上向きになります。そうすると、「こ、ん、に、ち、は」の一つひとつの音がはっきりと発音されるのです。聞き手には、明るい印象を与えるのです。
(中略)
 ちなみにもうひとつ。今度は、口をやや縦方向に開けて「こんにちは」と発音してみてください。
 すると、どんなふうに聞こえますか? 野太い、堂々とした発音になっているはずです。聞き手には、強くたくましい印象を与えます。
 口をやや縦方向に開けて音を発するだけで、堂々とした、強くたくましい話し方になるのです。口の開け方によっても、音色(声の印象)は変わるのです。
 逆にいえば、どんな印象を相手に持ってほしいかによって、口の開け方を意識することも可能だといえるでしょう。
 細かいテクニックはいろいろありますが、まずは「口角を上げて横に開いて」できる音色を意識してみてください
 即効性のあるテクニックでもあり、ことあるごとに意識することで、やがては自然にできるよう心がけるとよいのではないでしょうか。
 ありがたいことに、この方法は「『腹式呼吸』や『共鳴』『滑舌』なんて意識している余裕はない!」という緊急事態においても即効性アリなのです。

 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 第2章 より 魚住りえ:著 東洋経済新報社:刊

 口の開け方ひとつで、声の印象は大きく変わります。

 日常の会話は、口角を上げて口を縦方向に開ける。
 会議の場での発言は、口を縦方向に開ける。

 そんなふうに、状況によって意識して使い分けられるようにしたいですね。

会話が途切れそうなときは?


 初対面の人や面識の浅い人と会話を弾ませるのは難しいものです。
 魚住さんは、試行錯誤のすえにある「コツ」を覚えてから、会話のキャッチボールがグンと楽になったそうです。

 あるコツとは、相手に「はい」や「いいえ」で答えさせないということです。

 局アナ時代のまだ若かりしころ、24時間で100キロという長距離を走るマラソンランナーAさんにインタビューする機会がありました。生中継です。
「その場の空気をどうしたらお茶の間に伝えられるか?」
「グッと来るコメントをもらえるか?」
 前日から緊張しつつ、質問事項をリストアップして、万全の準備でのぞみました。
 当日、Aさんは途中で足を痛め、その痛みに耐えながら涙のゴール。その感動を伝えるべく、インタビューを始めたのですが・・・・。それはとんでもない結末を迎えてしまったのです。

 魚住    「ふくらはぎが痛いんですね?」
 ランナーA「はい・・・・」
 魚住    「とっても痛そうですね?」
 ランナーA「・・・・はい」
 魚住    「走り出して30分後くらいに痛そうにしていましたね?」
 ランナーA「はい・・・・(そのとおりです)」
      (・・・・終了)


 新人だった私は、もう対処のしようもなくオロオロするばかり。ディレクターからは「魚住、お前がしゃべるな。とにかくAさんにしゃべらせろ」というカンペ(カンニングペーパー)が出される始末。散々でした。
 私の最大の失敗は、自分で先に答えをいってしまったこと
 当然、インタビューの相手は「はい」か「いいえ」で答えるしかない。すると話はそこから展開しようがないわけです。
 いまなら、たとえば次のようにインタビューします。

 魚住    「足を引きずって走っていらっしゃいましたが・・・・?」
 ランナーA「どうやら、ふくらはぎを痛めてしまったみたいで、かなり痛かったです」
 魚住    「いつごろから痛みを感じたのですか?」
 ランナーA「走り出して30分経ったころかな・・・・」
 魚住    「たしかにそのあたりで、ちょっとスピードが落ちた感じでしたね・・・・」
 ランナーA「そうなんです。やっぱりわかりましたか。それからどんどん痛みが強くなってきて・・・・」
 魚住    「大変でしたね。処置はされましたか?」
 ランナーA「それがまだなんです。とにかく、すぐに冷やそうと思っています」


 このように展開すれば、相手がいろいろ話してくれたと思うのです。
 経験が浅く、融通の利かなかった私は、すでに自分が知っていることや用意した資料にあるデータと同じ内容を取材相手から欲しがってしまい、失敗したのです。

 『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』 第4章 より 魚住りえ:著 東洋経済新報社:刊

 相手から答えを引き出したいなら、それなりの質問の仕方があるということ。
 まさに『会話はキャッチボール』ですね。

 相手が投げ返しやすいボールを投げてあげること。
 それが、会話を途切れさせないためのポイントです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 2020年の東京オリンピック開催を決定づけ、大きな評判を呼んだ日本のプレゼンテーション。
 このプレゼンを指導したのは、マーティン・ニューマンさんです。
 魚住さんは、そのニューマンさんの言葉を借りて、「どんなことを話すか」よりも「どんな話し方をするか」、それが最も大事だと強調されています。

 話の中身は素晴らしいのに、声や話し方がよくないせいで、相手に伝わらない。
 そんなスピーチやプレゼンは、とてももったいないですね。

 声や話し方は、誰でも、ほんの少しのコツをつかむだけで、驚くほど変わります。
 魚住さんの20年以上のプロ・アナウンサーとしての経験の集大成である「魚住式メソッド」。
 ぜひ、皆さんもお試し下さい。

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