【書評】『その働き方ムダですよ』(おちまさと)
お薦めの本の紹介です。
おちまさとさんの『その働き方ムダですよ~コスパを高める仕事術~』です。
おちまさとさん(@ochimasato)は、テレビの人気番組のプロデューサーとして有名な方です。
最近では、WEBサイトやSNSゲームやファッションなどのプロデュースやデザインまで幅広く手掛けて、ご活躍されています。
サバイバルてきる道は、「働き方自体を変えること」
日々の生活や仕事の中で、省きたくてもなかなか省けない「ムダ」に悩んでいる人は多いでしょう。
しかし、「どうすればムダを省けるか」と、自分の毎日を客観的に見つめ直すことができる人は少ないです。
日本はこれから世界的もまれにみる少子高齢化社会に突入します。
2050年には、人口は9700万人に減り、高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は、38.8%にまで上昇すると予想されています。実に、2.5人に1人が高齢者という驚異的な時代です。
そのような厳しい状況の中、必要となるのが「働き方のパラダイムシフト」です。
おちさんは、既成概念を壊し、今までの当たり前を疑問視して、働き方自体を大きく変えていくしか、サバイバルできる道はない、と指摘しています。
本書は、「ムダ」を少しでも取り除き、仕事のパフォーマンスをあげる方法についてまとめたものです。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「自分の軸」を持つこと
「自分の軸」とは、生きていく上でのぶれない背骨のこと。
周囲に流されないためには、自分の道が必要です。自分なりの道ががないと、寄り道が多くなり、当然時間のロスが大きくなります。
おちさんは、時代を追いかけるよりも、「自分のどうしてもやりたいこと」を見極めて、それを一貫して突き詰めるべきだ、と述べています。
自分をよく見せるだけの「自分らしさ」は、見せかけの「自分らしさ」です。
おちさんは、「自分らしく働く」ために考えなければならないことについて、以下のように述べています。
スタジオジブリ、サザンオールスターズ、ウォルト・ディズニー・・・・。私たちから見ると、彼らの作品はどれもオリジナリティに溢れ、彼らにしかできないクリエイティブのように見えます。まさに「自分らしい働き方」を体現している人たちです。しかし、それは決して「自分らしさ」だけで成り立っているわけではありません。彼らの作品は「こだわり」と「サービス」が絶妙なバランスで入っているからこそ、世代を超えて長く愛されるのです。
仕事は、自分のしたいことを盛り込む「こだわり」の部分と、消費者や取引先、クライアントの要望に応える「サービス」の部分から成り立ちます。「こだわり」が9.9で「サービス」が0.1なら、ただの「我」。黒澤明も村上春樹も、その作品には何らかの「サービス」が含まれています。「Mr.childrenはいいなー、思いのたけを歌って」と思っても、「ここは売れる感じでつくってる、ここはコンサートを考えてるな」という「サービス」の部分があります。人に“響く”ものをつくるには、「こだわり」と「サービス」のバランスが大切です。
『その働き方ムダですよ』 その1 より おちまさと:著 宣伝会議:刊
どんな仕事も、自分のこだわりだけを詰め込んでも、大多数の消費者から相手にはされません。
逆に、消費者のニーズだけを追い求めても、すぐに飽きられてしまいます。
「こだわり」と「サービス」のバランスを常に意識したいところです。
“しゃかりき”だと何がムダか
「こんなに頑張っているのに、何で認めてくれないの!?」とアピールする人はどこの世界にもいるものです。
おちさんは、そんな“しゃかりき”な人はムダだらけだ、と述べています。
あなたの“しゃかりき”は、結果につながっていますか? 評価されるのは「アイツ、いつも定時に帰るけど、結果出してるよね」というヤツ。コスト削減のために「早く帰れ」という企業も徐々に増えていますが、「あれもこれも終わってないし・・・」と、深夜までオフィスにいる人がいる。そして残業している人のメンツは大体同じ。それはやっぱり、どこか効率が悪いんです。「終わらないお前がおかしい」と考えましょう。
今は、仕事のスケジュールやアポイントがすべてクラウド上で共有され、個人の仕事ぶりがガラス張りになっていると言っても過言ではない状況。特に、成果物が全てとされる現在、毎日誰がどれだけ会社に貢献しているかは昔よりも一目瞭然です。「アイツ、あんなに遅くまで仕事しているのに、全然結果が出ていないじゃないか」と思われたら、会社にとっても「コスパの悪いヤツだ」とすぐに低評価を下されます。
あなたは考えたことがありますか? あなたが残業するほど、残業代や光熱費にムダがかかる。残業代が1万円で、あなたが残業で生んだ収益が3千円なら、その残業は完全にムダ。むしろ赤字です。頑張っているかどうかは関係なく、会社にとって収益をもたらしていなければ、ムダなのです。
『その働き方ムダですよ』 その4 より おちまさと:著 宣伝会議:刊
コンプライアンス(法令遵守)の絡みで、サービス残業に対する風当たりも以前より厳しさを増しています。
ただ“しゃかりき”に働くのではなく、自分に掛かる時間当りのコストとアウトプット(成果物)の量と質を常に意識して仕事に取り組みたいところです。
「チャンス貧乏性」になること
おちさんは、実はチャンスを見つけ出すことも、自分でつくりだすことも、とても簡単だ、と述べています。
チャンスを見つけ出す一番簡単な方法は、「チャンス貧乏性」になることです。
おちさんは、人と会うときも、仕事をするときも、四六時中「チャンスはないだろうか」と、意識して生活しているとのこと。
「チャンス」と聞くと、大きなことにばかり注目してしまいがちですが、そういうことだけでなく、仕事上の小さな出来事もチャンスのひとつです。
クレームがきたら業務を見直すチャンスだし、商品が売れなくなったらマーケットの変化を見直すチャンス。このとき、99%の人は「あ~あ、クレームが来ちゃった」「売れなくなっちゃった」と落ち込むだけで、それが挽回するための新たなチャンスだとも気付いていないし、改善するための行動も起こしていません。
しかし、「チャンス貧乏性」になってチャンスに気付き、それをつかむ運動神経があれば、向かってきたチャンスをエイッとつかむことができるようになります。
そのとき気をつけなければならないのは、「チャンスは突然やってくる、しかもクソ忙しいときに」ということです。「大事な仕事を抱えていて、休みもない」というときに限って、クライアントから「明日の午前中に、急に社長の時間があいた、プレゼンしてくれないか」と連絡が入ったりするのです。
そのとき、「それ、無理!」と考えて断ってしまわずに、チャンスと捉えてつかみに行くこと。忙しいときにさらに巡ってくるということは、あなたは大チャンスの状態。このチャンスを逃せば、もうその社長には会えないかもしれないし、他社に大きなチャンスが行ってしまうかも知れない。つかむなら今しかありません。
『その働き方ムダですよ』 その6 より おちまさと:著 宣伝会議:刊
「チャンスがない」と嘆いている人は、「チャンスを見逃している」だけということ。
ピンチなときこそ、実は大きなチャンスが隠れています。
同じ出来事でも、観る視点を少し変えるだけで、大ピンチが大チャンスになることもあります。
「ソーシャルメディア」を上手に使う
おちさんは、2年後、3年後には会社の看板ではなく「自分看板」で仕事をする新しい働き方が台頭するようになる、と指摘します。
「自分看板」時代の強力なツールは、ツイッターやフェイスック、ラインに代表されるソーシャルメディアです。
おちさんは、ソーシャルメディアはコストパフォーマンスが高く、これらを使わないのはそれこそムダだ、と指摘しています。
ソーシャルメディアで“自分マーケティング”を実現させるために重要なのは、自分を飾り立てたり大きく見せたりすることではなく、自分のことをフラットに書くこと。プロフィールも、日々の投稿も、正直にそのまま書くことが大切です。
ソーシャルメディアでは、極力感情を抑えて、良い部分だけでなくダメな部分も、喜怒哀楽をそのまま書けばいい。ソーシャルメディアにおいて必要以上に飾り立ててよく見せようとする“盛り”は、現代における一種の病にも近いと思います。ソーシャルメディアで“盛った”はいいが、実際に会ってみたらソーシャルメディアとは全く違う人だった、あるいは、あなたを知っている人からの信頼を失ってしまった。そんな風に、むしろデメリットになってしまう可能性もあります。
一つ”盛り”始めると、その“盛り”が積み重なり、時間を経るごとにモンスターのように巨大な“盛り”になってしまう可能性があります。あなたが盛って語れば語るほど、あなたの人間性が小さく見え、逆に自分を「盛り下げて」しまうことにもなりかねません。それはせっかくのソーシャルメディアもムダになってしまいます。
『その働き方ムダですよ』 その8 より おちまさと:著 宣伝会議:刊
ソーシャルメディアは、個人が多数に向けて発信できるという利点があります。
逆にいうと、実態とかけ離れたイメージが広がって伝わってしまう危険性も高いということです。
あくまで「等身大」の自分を見せるということ。
自分自身が思ってもいないことは書かないこと。
肝に銘じたいところですね。
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ないようであるのが「ムダ」というものです。お金のムダ、時間のムダ、人間関係のムダ・・・・
「ムダ」は日々の習慣に組み込まれてしまっているので、なかなか気づくことは難しいです。
普段の生活や仕事の中で、ムダを探す意識を持つこと。
ずっと続けていることでも、「これって、やらなくてもいいのでないか」と感じたら、思い切って省いてみることも、ときには大事になります。
今の時代に合った、「高効率・省燃費」なエコ人間になって、スマートに生きていきたいものです。
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