【書評】『血流がすべて解決する』(堀江昭佳)
お薦めの本の紹介です。
堀江昭佳さんの『血流がすべて解決する』です。
堀江昭佳(ほりえ・あきよし)さんは、漢方薬剤師、不妊カウンセラーです。
「血流」がすべてを解決する
堀江さんは、心と体のすべての悩みの原因は、血流にある
と述べています。
血流をよくするというと、「血液サラサラ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、血流が悪い女性の多くは、ドロドロしていて流れないのではなく、血不足のために、流れが悪いのです。そのために、いくらがんばってサラサラにしたり、温める努力をしたりしても、血の量そのものが足りないので血が流れず、血流改善の効果を実感できません。とても残念なことになっているのです。
めざすべきは、「血液サラサラ」ではなく、「血流たっぷり」だったのです。
この血不足の状態を漢方では、「血虚」といいます。実際、ぼくが相談の現場でみてきた女性の九割以上が、この血虚状態にありました。「自分に自信がもて、休職していた仕事に復帰することができました」
「不妊治療をいくらしてもダメだったのに、妊娠することができました」
「体重が減ったら、彼氏ができて結婚しました」
「何をしても三日坊主だったのが、続けられるようになりました」こんな声がぼくのお客様からはたくさん寄せられます。なぜ血流を増やすと、病気や症状よくなるだけではなく、心の状態もよい方向に進んでいくのでしょう?
重要なのは、「血の質」が影響しているということです。詳しくは後からお話しますが、漢方でいう「血」とは血液だけでなく、血液中の栄養やホルモンなどをも含む概念です。
つまり、血を増やすというのは、血の質をよくするという意味もあったのです。セロトニン、ドーパミンといった、幸せホルモンややる気ホルモンと呼ばれる脳内の神経伝達物質も、血流によって左右されます。
漢方の視点から見ても、血がつくれない体質だと無気力に、血が不足すると不安に、血が流れないとイライラすることが知られています。血流の不調のせいで、負の感情が生まれてしまい、結果として心も悪い方向に進んでしまうのです。『血流がすべて解決する』 はじめに より 堀江昭佳:著 サンマーク出版:刊
体と心の不調は、すべて「血流」がもたらすもの。
では、血流をよくするためには、どうすればいいのか。
堀江さんは、漢方薬を使うよりも生活の中でできる工夫のほうがはるかに効果的で、重要
だと述べています。
本書は、東洋医学と現代医学の見地から、血流を増やし、改善し、心と体の悩みを解決する方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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体を生かすも殺すも、「血流」がすべて
心臓を出た血液は、1分で全身の血管をめぐり、心臓へと帰ってきます。
この流れが「血流」です。
全身を流れる血液の大切な働きは、大きく以下の5つです。
- 水分を保つ。
- 届ける(酸素、栄養、ホルモンを運ぶ)。
- 回収する(老廃物、二酸化炭素を回収する)。
- 体温を維持する。
- 体を守る(免疫力)。
血流をよくするということは、血液がこの5つの仕事をしっかりとできるようにするということです。血流がよいとあなたの体にある60兆個の細胞の1つひとつに酸素や栄養、熱を届けてくれ、温かい環境まで整えます。そして、細胞は元気に、若々しく働いてくれるのです。
血流が悪くなると、体の働きは根本から崩れてしまいます。水分のバランスが悪くなるため、むくむ。
酸素が届かずカロリーを燃やせないために、太る。
老廃物が回収されずたまるので、だるい。
熱が足りないために、冷える。
免疫力が下がるので、病気がち。血流が悪くなると起きるこれらの症状をよくみてください。一つひとつの症状はささいなものにみえます。しかし血流が悪いと、これらの不調が同時に起こります。もしかして、あなたを悩ませている症状そのものではないでしょうか?
そうです。
現代の日本人女性の悩みをつくり出しているのは、血流の悪化にほかならなかったのです。
最初は単なるむくみや冷え、肩こりといった何気ない症状でしかないかもしれません。しかし悪いことに、これら五つの不調は、お互いに協力しあって、不調をさらに大きく重症化させていきます。
生理不順、生理痛、不妊、更年期障害などはもちろん、ホルモンや自律神経のトラブル、はてはがんといった大きな病気へと育てていってしまうのです。体は悪循環の深みにはまってしまいます。しかし、血流を増やせば不調は、どんどんよくなっていきます。最初は小さな変化にすぎないようにみえても、悪いことを引き起こす悪循環を断ち切ってくれるのです。
あなたが不調に悩んでいるとしたら、あなたが悪いためではありません。単に、血流が届かず細胞の一つひとつが本来のチカラを発揮できていないだけです。しっかりと血流を増やし、血を届ければ、あなたは今よりももっと元気に、もっと若々しくなることができます。
体を生かすも殺すも、血流によって左右されているのです。『血流がすべて解決する』 第一章 より 堀江昭佳:著 サンマーク出版:刊
私たちに起こる、すべての体の不調。
その根本をたどると、「血流の悪さ」に行き着きます。
逆にいえば、血流をよくするだけで、体の不調は改善できるということ。
普段の生活から、「血流をよくする」習慣を心がけたいですね。
「気虚体質」のひとは疲れやすく、やる気が出ない
血流が悪くなる本当の理由は、以下の3つです。
①血がつくれない →「気虚体質」。
②血が足りない →「血虚体質」。
③血が流れない →「気滞 瘀血(おけつ)体質」。
この3つの原因には順番があり、①から③の順番で起こります。
堀江さんは、血流を悪くしている3つの体質を順番に解決していくと血流がよくなるのはもちろん、体質そのものの改善
につながると指摘します。
血が不足し、血流が悪化するそもそもの原因を引き起こしているのが、血がつくれないということです。この血がつくれない体質を漢方では「気虚(ききょ)」といいます。
どうして血がつくれなくなってしまうのでしょうか。その理由は胃腸にあります。胃腸が弱ってしまうと、栄養を充分に吸収できなくなってしまいます。すると血液の原料そのものが体に入ってこなくなるのです。
胃腸の働きの重要さは、動物の体の成り立ちからもわかります。肝臓、心臓、腎臓(じんぞう)、肺などさまざまな臓器がありますが、あらゆる臓器の中で最初にできたのが消化器系である腸です。食べることでエネルギーをとって生きるのは、動物の原初の形です。人間、口にしたものでしか体はつくれません。水や食物など体を構成するすべての物質は胃腸を玄関口として体内に入ってきます。その胃腸の力が正常ではない、弱っているということは、何を食べても消化吸収できないということなのです。
そしてこれは、血液をつくるということに限りません。サプリメントなどをとっても効かない、効果がわからない場合の多くは、胃腸がうまく働かず吸収できていないからだと考えられます。
胃腸の力が弱くなるというのは、生命力の原点が弱くなるということなのです。
また漢方では、この胃腸や消化の働きを「脾(ひ)」といい、血をつくる大本とされます。実際にぼくは血をつくる漢方薬をよく使いますが、その内容を見ると胃腸に働きかける生薬が非常に多いのです。
「丹田(たんでん)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。おへその下、下腹部の腸のあたりにあって、全身の気のエネルギーが生み出され、力が集まる場所です。武術をするときや、スポーツをするときでも、丹田を意識するとしっかりと力が入りやすくなります。
この丹田とは丹(赤いもの=血)の田(つくられるところ)を意味するともいわれます。古来、経験の積み重ねの中で、胃腸が血をつくるうえで重要な働きをしていたことを見抜いていたかと思うと、非常に不思議な気持ちになります。『血流がすべて解決する』 第二章 より 堀江昭佳:著 サンマーク出版:刊
堀江さんによると、日本人というのは世界有数の胃腸の弱い民族
とのことです。
普段から胃腸をいたわり、その働きを強めること。
それが血流をよくするための、最初の大事なポイントです。
満腹より「空腹」がいい
血流をよくするのに重要なのは、「食事」です。
人間の体は、「食べたもの」でつくられます。
それは、血液も同じです。
堀江さんは、血流が悪い原因は間違いなく、「空腹の時間がない」ことに
あると指摘します。
ここで注意してほしいのは、「空腹」と「空腹感」はまったく異なるということです。空腹は、実際におなかが空っぽの状態です。それに対して空腹感は、おなかには食べ物が残った状態であるにもかかわらず、おなかが空っぽの感じがしているだけのこともあるのです。あなたの「空腹感」は、本当の「空腹」でしょうか。
空腹の反対語は「満腹」です。
血のもととなる栄養をとるために、「たくさん食べなきゃ!」と思いがちですが、たくさん食べて満腹になることは本当に必要なのでしょうか?
胃というのは、食べ物がやってくると、グッグッと収縮することによって、食べ物を細かくし消化・吸収していきます。ところが不思議なことに、胃が収縮するのは、消化・吸収のときだけではありません。
食事をしたあと、およそ90分たつと胃は空っぽになります。すると食べ物を消化しているときよりもずっと強くぎゅーっと収縮します。このときの収縮は非常に強力で、その刺激は胃だけではなく小腸まで連続的に伝わっていきます。そして、この強い収縮は、空腹が続くと、90分おきに15〜30回ほど行われます。胃がこのような強い収縮をするのには、理由があります。
胃腸を掃除するためです。
強い収縮を起こすことで、胃や腸の中にある食べ物の残りカスや古い粘膜をはぎとり、胃腸をきれいにしていくのです。
おなかがグーッと鳴って恥ずかしい思いをすることがあるかもしれませんが、これは掃除のために胃が収縮している音です。おなかが鳴るのは、「おなかがすいたよ、食べたいよ〜」という合図ではなくて、「掃除中だよ〜。食べないで〜」の合図だったのです。
もし、空腹の時間がないと、胃は掃除することができません。
すると、食べ物のカスは残り、腸壁は汚れ、どんどん胃腸の働きが低下して、消化力が弱くなり、もたれたり、十分な栄養が吸収できなくなったりしてしまいます。『血流がすべて解決する』 第三章 より 堀江昭佳:著 サンマーク出版:刊
食後90分たって初めて「空腹時間」になり、そこから胃や腸の中の掃除が始まります。
おなかが「グーッ」となるのは、掃除の始まる合図です。
空腹感を覚えても、極力、間食をしないこと。
食事と食事の間の時間をしっかり取ること。
満腹になるまで食べないこと。
血行をよくするために、普段から心がけたいですね。
「三陰交」「血海」を押せば、血流の泉がわく
女性が血流をよくするために重視すべきは、「静脈」です。
堀江さんは、むくみや下半身の冷えといった悩みのあるひとにとって静脈の血流をよくするための対策は必要不可欠
だと述べています。
女性の血流改善に、とくにおすすめのツボが、「三陰交(さんいんこう)」と「血海(けっかい)」です。
この2つのツボが足にあるのは、ある意味当然ともいえます。これまで見てきたように女性の血流の要(かなめ)は静脈。何より、足から心臓に向かう静脈の流れこそが、血流を考えるうえで欠かせないからです。
まず女性にとって一番効果もあり有名なツボ「三陰交」。
この三陰交というのは、足のすねの内側にあるツボで、くるぶしの最も高いところから指の幅四本上に行ったところにあります(下図を参照)。
三陰交とは、三つの陰の経絡すべてが交わるという意味で名づけられていて、一か所で三つの効果が期待できます。女性が「陰」であることを考えれば、女性のために存在するといっても過言ではないツボなのです。
この三つの経絡というのは、「太陰脾経(たいいんひけい)」「厥陰肝経(けついんかんけい)」「少陰腎経(しょういんじんけい)」の三つ。専門用語でちょっとわかりにくいかもしれませんが、ざっくりいうと、太陰脾経は胃腸、厥陰肝経は血液、少陰腎経は水のめぐりと呼吸にかかわります。
今まで学んできたような文字が並びませんか? そうなんです。胃腸を元気にし、血をつくり増やし、めぐりをよくしていく。まさに血不足から血流が悪くなっている女性のために存在するようなツボです。
ちなみに妊娠中の女性の三陰交を刺激して子宮の血流がどう変わるかを調査した研究があるのですが、実際に血流量が増えたことが証明されています。そしてもう一つの「血海」。
これはひざを曲げてお皿の上、内側の角から指の幅三本分上がったところにあります(下図を参照)。
海には、あちこちから戻ってきて集まるところという意味があります。この「血海」には血を胃腸に戻す働きがあり、無数の河川が集まって海に帰っていく様子から名づけられています。足に集まってきた血液が静脈に集められて上に向かって流れていくことを考えれば、まさにぴったりの名前といえます。『血流がすべて解決する』 第五章 より 堀江昭佳:著 サンマーク出版:刊
図.「三陰交」と「血海」 (『血流がすべて解決する』 第五章 より抜粋)
ツボを押すときのポイントは、「集中すること」です。
お気に入りの音楽を流したり、アロマをたいたりして、リラックスできて集中できる環境をつくってから押すと、効果が高まるとのこと。
時間のあるときに、ぜひ、試してみたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
現代医学の主流である「西洋医学」は、病気の症状に対して処置を行う、対処療法が基本です。
それに対して、「東洋医学」は、病気の原因の根本に対してアプローチする、根本治療が基本です。
血流は、東洋医学にとって大本の大本、基礎の基礎になる、重要な働きです。
「心と体の悩みの原因のすべては、血流にある」
この言葉はまさに、数千年の歴史をもつ東洋医学の真髄を表していますね。
私たちの命を、24時間365日休まずに支え続けている血管や心臓などの循環器。
それらを普段から労り、充分な血を、体の隅々にまで行き渡らせる。
それが健康長寿の秘訣です。
血流にいい生活習慣を守り、いつまでも元気ですこやかな人生を送りたいですね。
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