【書評】『進化する強さ』(クルム伊達公子)

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 お薦めの本の紹介です。
 クルム伊達公子さんの『進化する強さ』です。

 クルム伊達公子(くるむ・だて・きみこ)さんは、プロ・テニスプレーヤーです。
 96年にWTA世界ランク10位以内を保ったまま、一度引退されていますが、08年4月に復帰を宣言し、その年の日本選手権のシングルス、ダブルスを制覇し、完全復活を果たしました。
 40歳を過ぎてもなお、世界の舞台の第一線で活躍されています。
 11年の全英オープンで、ヴィーナス・ウィリアムズ選手との死闘は、まだ記憶に新しいところですね。

進化し続けるための秘訣は?


 伊達さんの底知れない強さの源は、どこにあるのでしょうか。

 “自分”をあきらめさえしなければ、人はいくつになっても成長し続けるものなのです。
 不安や怖さはつきもの。覚悟を決めてまずは動き出してみる。すると、思わぬ可能性の扉が開く。まさかという能力がどんどん花開く。
 もうダメじゃない。まだまだ行ける―。
 私は絶対にあきらめません。自分に期待し続けています。まだまだ、進化できると信じています。そしてこれは、誰にでも起こりうることだと確信しています。
 挑戦することは本当に楽しいこと―。
 好きなことを続けられることは幸せなこと―。
 今、私はそれを十分に実感しながら生きています。

 「進化する強さ」 はじめに より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

「絶対にあきらめず、自分の好きなことに積極的に挑戦し続けること」

 “ライジングショット”(地面で跳ねて上がりきらないうちにボールを打ち返すショット)が武器である、伊達さんのテニススタイルそのままの生き方ですね。

 本書は、40歳を超えてなお、進化を続ける「クルム伊達公子の強さの秘密」をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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内なる強さを持つ


 20代の頃と今の自分とで一番大きく変わったのは、強がらないところです。昔はかなり気が強かったし、強がっていないとやっていけなかったことも多くありました。
(中略)
 以前の私は、勝ち続けることにこだわるあまり、堅い殻で心を覆っていました。
しかし今は、強さの質が変わりました。つらい時は素直につらいと言えますし、弱さも見せられるようになりました。経験から得られた心の余裕なのかもしれません。
 ためこんで頑なになるより、多少弱音を吐いて消化したほうがいいこともあります。いつも強気でいる頑なさの代わりに、しなやかさを手に入れました。周りに見せる強さではなく、やっと自分に勝つ、内なる強さを身につけることができたと思います。

 「進化する強さ」 第1章 より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

 本書で、まず目に付くのは、表紙の伊達さんの「笑顔」です。

 以前から爽やかな笑顔が印象的でしたが、最近は、柔らかさが増して更に魅力的です。
 そんなところにも、精神的な余裕みたいなものを感じますね。
 年齢を重ねたことのメリットでしょう。

楽しいから、頑張れる


 頑張ってきたことは、自分でも認めます。でも、頑張っているという実感は、それほど私にはないのです。楽しいことはいくらでも時間を忘れて没頭できるし、自然と力が湧いてきます。
 周りの人にすごいと言われたらもちろんうれしいです。プレッシャーを感じることもあまりありません。今は、テニスに関しても嫌なことは何もないのです。
(中略)
 テニスをやらなければやらないで平気でいられます。それでいて今の私にとって、シーズンの一年はあっという間で、昔に比べて密度も濃いです。普通の人の3倍くらい人生を楽しませてもらっていると感じています。

 「進化する強さ」 第1章 より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

『テニスに関して嫌なことは何もない』

 そう言い切れるのは、伊達さんの凄さです。
 一度、引退したことで「自分が本当にテニスが好き」なことを再認識できたのでしょう。

 今まで嫌だと思っていたことも、ひっくるめて、テニスを楽しめている。
 だから、体力的には極めてハードなトレーニングも、「楽しんで」頑張れるのでしょう。

継続は同じことの繰り返しではない


 物事を簡単に放棄する、現実逃避する、中途半端に終わらせてしまう人を見かけることがあります。言い訳がましく、責任逃れをするのはどうかと思います。
(中略)
 何かを途中で終わらせてしまうと、クセになると思うのです。問題が起きて、嫌になって逃げてしまうと、また同じ問題がめぐってきます。
 解決に向かって果敢に努力しないと、乗り越えるチャンスを失ってしまいます。
1つのことを続けるということは、とても大切なことです。成果というものは、そんなにすぐに出るものではないし、簡単にダメだと判断するのは早計だと思います。可能性は、ある程度続けていくうちに見えてくるものです。嫌だったらやめていい、逃げてもいいと、自分を甘やかしすぎてはいけないのです。
(中略)
 やり続けるためのモチベーションは、明確な目標を持つこと。人間は、漫然と継続することはできないものです。ここまではやり抜こう、あそこまで目指そうという目標があればこそ、続けられるのです。

 「進化する強さ」 第2章 より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

 伊達さんに限らず、多くの一流アスリートが同じようなことを言っていますね。

 ただ漠然と続けるのではなく、目標を持つこと。
 そして、その目標に向け、自分で工夫しながら努力を続けること。

 途中で諦めることは、「自分の力で乗り越えた」という自信を奪うことになります。

スケジュールに隙間を作らない


 スケジュールは前々から、計画的に入れていきます。朝起きて、思いつきで行動するなんてありえません。時間に対してシビアに考えていますから、たった1日でも大切に使います。
 取材、撮影、打ち合わせ・・・・・仕事となったら丸1日ぎゅうぎゅうに詰めてくださいとスタッフにも頼んであります。ポツポツと、変に時間が空くことが苦手です。1日1つだけ用事があるというのではなく、びっちりと予定を埋めたいのです。
(中略)
 一分たりとも時間をムダにしない。そのほうが精神的なストレスがありません。
 それは、一分でどれだけのことができるかを体感で知っているからかもしれません。一分あれば、試合の流れは変えられる。一分あれば逆転できます。
 時間は貴重。どんな一日であっても、有意義に過ごしたいと思っています。

 「進化する強さ」 第7章 より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

 長い間、プロ選手として世界中を転戦してきた、伊達さんらしい発想です。

 ひとつのショットや少しの中断でも、流れがガラッと変わる。
 それがテニスという競技です。

 1分の怖さを熟知しているから、時間の貴重さを誰よりも認識しています。
 私たちも見習いたいですね。

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 最後に、伊達さんは、以下のようなエールを送られています。

 もし、私の挑戦に対する称賛が、40歳という年齢を過ぎても、プロとして世界で戦っているという驚きだとしたら・・・・・・。それは、誰もがきっと無理だろうと多くのことをあきらめている証拠なのではないかと思います。
「今さらチャレンジするなんて、心から好きと言えるものを楽しめるなんて、伊達さんだからできるのだろう」。そう思ってもらえるのもうれしいのですが、本当にそうなのでしょうか? 私は今、誰だって好きなことを、やりたいことを、全力を持って取り組めば、何でもできると、と思っています。
 誰もが内に秘めた力を持っている。それが発揮できるきっかけがあればいいと思うのです。少しの勇気と行動で自分の世界は変わるのではないでしょうか。

 「進化する強さ」 おわりに より  クルム伊達公子:著  ポプラ社:刊

 多くの人が、挑戦することができない。
 その理由は、年齢や忙しさなどを言い訳にして、「自分には無理」と諦めているからです。

 打ち返されるのが怖くても、自分がサーブを打たないと、テニスになりません。
 まずは、そこからですね。

『少しの勇気と行動で自分の世界は変わる』

 このメッセージを多くの人に伝えるべく、世界中を飛び回り続ける伊達さんの、これからのご活躍を願っています。

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