【書評】『いま中国人は何を考えているのか』(加藤嘉一)
お薦めの本の紹介です。
加藤嘉一さんの『いま中国人は何を考えているのか』です。
加藤嘉一(かとう・よしかず)さんは、コラムニストです。
高校卒業後、日本を飛び出して中国へ渡り、北京大学の国費留学生として中国語や中国の内情や風習などを学ばれました。
現在は、英フィナンシャルタイムス中国版コラムニストや北京大学の研究員などを務められ、“中国の今”を世界に向けて発信されています。
いま、中国人は何を考えているか?
中国は、10億人以上の人口を抱え、豊富な労働力と旺盛な国内消費を武器に、今なお、高度経済成長を続けるアジアの大国です。
日本にとって、中国は、単なる隣国に留まりません。
経済的にも、安全保障の観点からも、まったく無視できない。
いや、最も重視しなければならない国となりつつあります。
貿易や人的な交流の拡大は、今後も続きます。
それにより、日中関係は、より深まっていくことでしょう。
中国は、日本人にとって、“理解しがたい不気味な隣人”というイメージが、少なからずあります。
よりよい関係を築くには、まず相手に関心を持ち、お互いをよく知る必要があります。
加藤さんは、最初に以下のように述べています。
「同じ職場に中国人」というのはすでにある現実だが、今後そういった環境におかれる日本人はもっと増えていくにちがいない。中国の若者はハングリー精神を持っている。成長に飢えている。
本書はそんな中国人がいま何を考えているのかを、その言動や行動原理から解き明かすものである。 一党独裁政権による締め付けはあるものの、中国国内には5億人以上のネットユーザーが育った。
(中略)
彼ら・彼女らには日本人にはうかがい知れないパワーがある。一方で、鬱屈した形で経済成長をとげてきた社会に、ひずみが浮き彫りになっている。生々しい中国社会、そのなかで今を生きる中国人の思想を知ることは、今後の日本の成長を考えるとき、重要なファクターになることには疑う余地がない。「いま中国人は何を考えているのか」 まえがき より 加藤嘉一 著 日本経済新聞出版社 刊 』
今後の日本の成長を考えると、「中国人を理解すること」は、必要不可欠です。
本書は、さまざまな中国国内の事件も交えて、中国人の考えや実情を、現地にいる人ならではの観点でまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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中国人は、「面子」が命より大事!
加藤さんが、まっ先に挙げるのは、中国人の「面子文化」です。
中国のカフェを例に挙げて述べています。
「はっとした。そう言えば、中国のスタバにはショートがないのだ。サイズはトール、グランデ、スーパーグランデの三つから成る。中国全土すべてのスタバに行ったわけではないが、少なくとも筆者はショートサイズに出くわしたことがない。
中国に行ったことのある読者はご存じだろうが、大衆レベルにおける中国人の飲食は量で始まり、量で終わる。たくさん頼み、たくさん残す。
これも面子文化に関係している。特に遠方からやって来たお客さんを接待する際はより極端な展開になる。「食べきれないほど注文しないと面子が立たない」とホスト側が主観的に思っているのだ。
言い換えれば、接待の席においては、おごる人間がケチだと思われるのを極端に嫌がるため、とにかくたくさん注文する。お客さんが「もう食べられない」と降参する。料理はたくさん残っている。接待者はその状態を確認して、初めて面子が保たれる。「いま中国人は何を考えているのか」 第1章 より 加藤嘉一 著 日本経済新聞出版社 刊 』
中国人は、何よりも、面子や体面を気にします。
彼らを、大勢の前で叱り飛ばすなんて、もっての他です。
そういうことを理解して、付き合う必要があります。
もちろん、それは政治にもいえること。
共産党指導部は、民衆を食わせること、より豊かにすることによって面子を保っています。
経済発展は、彼らにとっても、命綱です。
民衆は、共産党指導部が外国に対して、下手に出ることを許しません。
外面上、強気を押し通すのが常ですが、面子を保つ意味合いが強いです。
とくに、日本に対しては、過去の因縁があり、反感も大きいです。
よけいに、下手な譲歩は、できないでしょう。
経済発展のためには、物事を荒立てずに仲良くしたい。
けれど、民衆を刺激しないために、高圧的な態度で臨むしかない。
そんな中国政府のジレンマも、透けて見えます。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
中国人にとって、日本という国は“未知の憧れ”でもあります。
筆者の肌感覚であるが、中国国民の「日本に行きたい、日本の社会を見てみたい、そして色々買いまくりたい!」という欲望は尋常でない。条件さえ整えば、将来的に我々が想像もつかないほどの中国人が日本へと向かうだろう。
(中略)
日本が門戸を解放さえすれば、国民の税金を使うまでもなく、中国人は、若者も記者も含めて、自らのお金をはたいて日本に来てくれるはずだ。「いま中国人は何を考えているのか」 第1章 より 加藤嘉一 著 日本経済新聞出版社 刊 』
これから日本は、超高齢化社会を迎え、労働力が足りなくなる懸念があります。
いずれ、海外からの移民を受け入れて、彼らの力を借りなければならない時が来るでしょう。
加藤さんも必要最低限の労働力輸入は避けて通れないのも事実である。まず候補に挙げられるのは中国人
であると述べています。
多くの中国人と接してきた加藤さんや、中国人のビジネスパーソンが感じたこと。
それは、意外にも日本人と中国人は価値観、人付き合いが似ている
ということです。
中国人の考え方の特徴や、国家の成り立ちなどを、もっとよく知る。
そうすれば、必要以上に恐れることはなくなり、より良い関係を築けるでしょう。
本書は、タイトル通り、中国人を知る導入書として最適です。
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