本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『聞く力』(阿川佐和子)

 お薦めの本の紹介です。
 阿川佐和子さんの「聞く力 心をひらく35のヒント」です。

 阿川佐和子(あがわ・さわこ)さんは、エッセイストです。
 リポーターやニュース番組のキャスターなどを数多く務められて、的確で鋭い(時にユーモラスな・・・)コメントで人気の方です。
 阿川さんが聞き手役の、某週刊誌上の対談ページも長年に渡り好評連載中です。

「聞きたいこと引き出す」ための極意とは?

 阿川さんは、聞き役の魅力について、以下のように述べています。

「同じ話も新しい話も、可笑しい話も、感動的な話も、人に話を聞くことで、自分の心をときめかせたいのです。素直な気持ちで好奇心の赴くまま人の話を聞いたとき、聞き手は自分の記憶や気持ちをそこに重ね合わせ、必ず何かを感じ取るはずです。そして、聞かれた側もまた、語りながら改めて自分の頭を整理して、忘れかけていた抽斗(ひきだし)を開け、思いも寄らぬ発見をするかもしれません。

  「聞く力」  まえがき より   阿川佐和子:著  文春新書:刊

 変な先入観を持たない。

「目の前の相手はどんな考え方の持ち主なんだろう?」
「どんな貴重な体験をされた方なんだろう・・・?」

 など、つねに相手に対する興味を持っている。

 そのワクワク感が伝わってくるから、彼女の対談集は、読み手を引き付ける魅力があります。

 本書は「聞き役のプロ」阿川さんの、“聞きたいことを引き出すための極意”が詰まった一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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質問の柱は3本

 阿川さんは、事前に用意する質問の数は少ない方がいいとして、質問の柱を3本だけに絞って対談に臨みます。

 ある先輩アナウンサーの著書から得たノウハウです。
 その先輩アナがいうには、「インタビューをするときは、質問を一つだけ用意して、出かけなさい」とのこと。

 その言葉の背景には、以下の理由があります。 

 でもその先輩は、こういう解説を加えていらっしゃいました。
「もし一つしか質問を見つけるためのヒントはどこに隠れているだろう。隠れているとすれば、一つ目の質問に応えている相手の、答えの中である。そうなれば、質問者は本気で相手の話を聞かざるを得ない。そして、相手の話を聞けば、必ずその答えのなかから、次の質問が見つかるはずである」
 そうか・・・・。まさに目から鱗の驚きでした。質問をする。答えが返ってくる。その答えのなかの何かに疑問を持って、次の質問をする。また答えが返ってくる。その答えを聞いて、次の質問をする。まさにチェーンのようなやりとりを続けてインタビューを進めていくことが大事なのだと教えられたのです。

  「聞く力」  第Ⅰ章 より   阿川佐和子:著  文春新書:刊

 インタビューや対談は、“生もの”です。
 どのような展開を見せるか、実際にやってみないとわかりません。

 事前にシミュレーションして、たくさんの質問を用意すると、それに頼ってしまいます。
 すると、本当に引き出したかった答えが、引き出せなくなる恐れがあります。
 
 それよりも、相手の反応に集中し、話の流れを掴む。
 そして、臨機応変に、相手への質問を組み立てる。

 その方が、より核心に迫ることができます。

「事前の準備もほどほどに、本番で最高のパフォーマンスをすることに全てを集中する」

 参考になりますね。

相手の目を見る

 相手が真剣な話をしている時は、必ず「相手の目を見る」ことが大切です。
 頭ではわかってはいますが、実際になかなかできません。

 人と会話をするときは、相手の目を見るのが礼儀というものです。いつの頃からか、そんな教育を受けてきた覚えがあります。それゆえ私はずっと、特に礼を尽くすべきお相手の場合や、真剣に話を聞かなければいけない場においては、相手の目をじっと見つめる癖がついていたようです。
 テニスプレーヤーのマルチナ・ヒンギスさんにインタビューをしたとき、私が日本語で質問をしている途中に突然、彼女が笑い出したので、「どうしたのですか」と尋ねたら、
「あなたの目は日本人らしくない」
 どういう意味だ? 私の目って、外国人みたい? そんなにパッチリ大きく愛くるしいのかしらと、ちょっと有頂天になりかけたら、どうやら目の大きさや色のことではなく、睨みつける力が強いという意味だったようです。

  「聞く力」  第Ⅲ章 より   阿川佐和子:著  文春新書:刊

 本書で、まず目に入ったのは、表紙の帯の顔写真。
 真剣で、鋭い目つきをしています。

 対談中の写真でしょうか?
 まさに、「睨みつける」という感じです。

「この人は、真剣に自分の話を聞いてくれている」
「この人は、自分に大きな興味を持ってくれている」

 対談の相手は、阿川さんの、この目つきを見て、そう共感を抱くでしょう。

 見習うべきは、やっぱり、目の前の相手に真剣に向き合うこと。

 そうすれば、自然と視線は相手の目に行きます。
 相手の心を開く第一歩ですね。

 こちらが真剣になれば、相手も真剣にならないはずはないということです。

「聞き手」としての決意

 阿川さんは、「プロの聞き手役」としての決意を、以下のように述べています。 

 人の話はそれぞれです。無口であろうと多弁であろうと、語り方が下手でも上手でも、ほんの些細な一言のなかに、聞く者の心に響く言葉が潜んでいるものです。でもそれが、決して「立派な話」である必要はない。
(中略)
 オチもないような下らぬ話の隙間にも、その人らしさや人格が表れていて、そこに共感したくなるような、なにか小さな魅力があれば、それだけでじゅうぶんです。そして、そんな話をする当の本人にとっても、自ら語ることにより、自分自身の心をもう一度見直し、何かを発見するきっかけになったとしたら、それだけで語る意味が生まれてきます。
 そのために、聞き手が必要とされる媒介だとするならば、私はそんな聞き手を目指したいと思います。

  「聞く力」  第Ⅲ章 より   阿川佐和子:著  文春新書:刊

 自分の知識や考えを、振りかざさない。
 つねに、読者や視聴者目線で、対談を進めていく。

 阿川さんの、謙虚でまじめ、それでいて好奇心や向上心の旺盛な人柄が出ています。

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 人と真剣に向き合うことで、自分も磨かれる。
 いや、人と真剣に向き合い、そこから何かを得ようとすることでしか、自分は磨けない。

 いつまでも若々しく、ハツラツとした阿川さんを見ると、そう思わない訳にはいきませんね。
 見習いたいところばかりです。

 阿川さんの、これからのご活躍を楽しみにしています。

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