【書評】『ズルい仕事術』( 勝間和代)
お薦めの本の紹介です。
勝間和代さんの「ズルい仕事術」です。
勝間和代(かつま・かずよ)さんは、経済評論家です。
情報技術(IT)を駆使した仕事の生産性向上について、多くの著書をお書きになり、セミナーや講演も数多く行なっておられます。
「ズルい人」とは、どんな人?
勝間さんがいう「ズルい人」は、「少ない時間や労力で大きな結果を出している人」のことです。
世間一般には、勝間さん含めて、そういう人も「ズルい人」の対象になっています。
「何かズルい手を使っているに違いない・・・・」
みたいにですね。
勝間さんは、最初に、以下のように述べています。
まず、日本が「まじめ病」「根性主義病」にかかっていることを強く強く理解してください。まじめ病や根性主義病の難点は何かというと、
仕事の成果というものを、付加価値、すなわち、(OUTPUT ― INPUT)
で計算されるものとしてとらえるのではなく、ひたすら、
INPUTを最大化すれば、OUTPUTもそれに比例して最大化されるはず
と思いこんでしまっていることです。
(中略)
ところが、小さいころから、「努力は美徳」「成果だけで人の価値を測ってはいけない。プロセスが大事」と言われ続けてきたわたしたちには、付加価値を最大化しなければならない、という発想が本当には身につかず、行動に結びついていません。
それどころかあまり努力をしない、すなわち、インプット(INPUT)が少ないのにアウトプット(OUTPUT)を出してしまう人は、「あいつはなにか裏技を使っているに違いない」ということで、「ズルい人」と呼ばれ、軽蔑されたりするのです。「ズルい仕事術」 はじめに 勝間和代 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
日本では、「頑張ること」自体が、目的となりがちです。
「頑張って努力さえすれば、結果が悪くても、許してもらえる」
そんな風潮さえありますね。
もちろん、頑張ることや努力すること自体が悪いことではありません。
要は、「求める結果」は何なのかを、しっかり考えてから努力すること。
そうしないと、労力の割に得るものが少ない、という結果になります。
まさに、今の日本人に足りない考え方です。
多くの人に真剣に考えてもらいたいです。
ズルい考え方は、技術であり習慣なので、誰でも習得できるスキル
です。
本書は、「ズルい人」になるための方法やアイデア、考え方を、具体例を交えてまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「ズルい考え方」は、3つの力の掛け算
「ズルい考え方」は、次の3つの力の掛け算で成り立っています。
①自分の強み・弱みについての正しい自己分析力
×
②不確実な状況でも的確な判断を下せる論理思考力
×
③周りへの徹底したレバレッジ力
それぞれの項目を簡単に解説すると、以下の通りです。
①自分の強み・弱みについての正しい自己分析力
もともとわたしたちは自分たちが強い分野であれば、弱い分野の何倍もの生産性と精神力を発揮することができます。さらに加えて、そこに集中して専門特化していくことで、強みがますます強みになっていって、一般的な人の何十倍、何百倍もの生産性を発揮できるようになります。これは、ごくごくふつうのことです。
つまり、ズルい人は、得意でない仕事はやらないのです。
ズルくない人は、得意でないこともできるはずだと思ってやってしまう、あるいは、自分がやらなければならないと思って、やってしまうのです。「ズルい仕事術」 第1章より 勝間和代 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
自分の長所を把握して、それを磨くことに専念しろ、ということです。
自分のストロングポイントは何なのか。
しっかり考えることが、何より大事です。
②不確実な状況でも的確な判断を下せる論理思考力
2つ目の論理的思考力。わたしはこれを「見えないものを見る力」と呼んでいます。この力が欠けると、知っていることしかできなくなります。だからこそ、ズルくない人はすべてを知ろうとするし、調べようとするし、十分な知識を得てからでないと次に動けません。知らないことはなにひとつできなくなってしまうのです。
ところが、ズルい人は、知っている知識を組み合わせて、知らないこともできるようになる努力のほうに力を注ぎます。「ズルい仕事術」 第1章より 勝間和代 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
大事ですし、多くの日本人に欠けている部分です。
自分なりの論理(ロジック)をしっかり持つ。
そうしないと、他人の意見に左右される、受動的な人間になります。
③周りへの徹底したレバレッジ力
レバレッジ、つまり、「てこの原理」を効かせるということです。
少ない労力で大きな力を得ようとしたら、どうしても自分以外の力を借りる必要があります。
ズルい人は、自分の弱みはどんどん人に任せてしまいます。頼ります。しかも、とてもとても上手に頼るのです。頼られるほうが気持ちよくなるような頼り方をします。ズルくない人は、正攻法だけで突っ走ろうとして、かつ、人に頼むときにもフォーマルなルートだけで通そうとして失敗します。
では、どうやって、要領よくお願いできるような関係をつくるのでしょうか?
キーワードは、「長期的かつ対等な関係」でいられる相手とお付き合いをすることです。
それは、市場でも、人脈(対面)でもITでも同じです。信頼できるお店で売買をして、信頼される人とつき合い、信頼できるサービスや情報をITで活用します。「ズルい仕事術」 第1章より 勝間和代 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
勝間さんは、自分の得意技に関しては目先の報酬を考えることなく、どんどん他の人に与え続けましょう
と述べています。
「GIVEの5乗」という言葉を使い、その結果がいずれ自分に跳ね返ってくる
と強調します。
こうしてみると、人に対するレバレッジ力の成果がわかるのは、10年後、20年後です。10年後、20年後を目指してずっと順番にGIVEの5乗を行い続けられるのか、ということがポイントとなります。
ちなみに、GIVEの5乗とは、自分の得意技については、目先の報酬を考えることなく、できる限り人に与え続けましょう、ということを示すわたしの造語です。GIVE&TAKEではなく、GIVE&GIVE&GIVE&GIVE&GIVEぐらいの行動習慣をつけることで、はじめてレバレッジも効くし、人脈もできるということです。「ズルい仕事術」 第1章より 勝間和代 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊
「人は、他人に与えたものしか、受け取ることはできない」
この言葉は、真理です。
見返りを期待しない。
出し惜しみせず、与える続ける。
それが他人からの援助をもらうための、一番確実な方法です。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
毎度のことながら、勝間さんの情報分析力の高さには、驚かされます。
読書量も含めた情報収集力の豊富さも、尋常ではありません。
恐れ入ります。
勝間さんは、たしかに「ズルい人」かもしれません。
でも、決して「努力をしていない人」ではないです。
勝間さんと、頑張っても成果のでない人たちの違いは、どこから来るのか。
本書を読むと、よく分かります。
私たちも、この本を読んで、努力に見合った成果が出せる「ズルい人」になりましょう。
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