【書評】『スライトエッジ』(ジェフ・オルソン)
お薦めの本の紹介です。
ジェフ・オルソンさんの『スライトエッジ』です。
ジェフ・オルソン(Jeff Olson)さんは、米国の起業家、会社経営者です。
人生を成功に導く「スライト・エッジ」とは?
大学で落ちこぼれて、「海辺の遊び人」となり、始めた事業は、失敗。
若くして、人生のどん底に落ち込んだ、オルソンさん。
しかし、あるときを境に、人生を劇的に変えることに成功します。
大学をオールAで卒業し、次々と事業を起こし、億万長者となりました。
これまでの僕の人生はたくさんの成功に恵まれた。だが、最初からそうだったわけではない。何しろ大学で落ちこぼれ、ゴルフコースの芝刈りをして暮らすゴージャス・ジョージとしてスタートを切ったのだから。そこで秘密を1つ教えよう。実を言うと、今の僕はその頃の僕と何も変わっていないのだ。いろいろな経験したのに大して変わらなかったという意味じゃない。人はみな、経験を通じて変わるものだ。僕が言いたいのは、今の僕もあの頃の僕も、深いところでは全然変わっていないということだ。雷に打たれたように、一夜にして変貌を遂げたというわけではない。山籠りをしたわけでも、悟りを開くような経験をしたわけでもないし、普遍的人類愛に目覚めるような臨死体験をしたわけでもない(そうは言っても相当ひどい失敗は何度かしたし、そのときはほんとうに死ぬかと思ったけれども)。
変わったのは、自分自身ではなく自分の行動だ。
自分という人間を変えたわけではない。専門家やセラピストが何と言おうが、自分をほんとうに変えられる人などいないと僕は思っている。所詮、自分は自分でしかない。長じて現状に満足できない海辺の遊び人となった少年は、学校の成績もスポーツも社交性もごく平均的な普通の子どもだった。信じられないほど幸運で心の底から幸福な今日の僕にしても、いまだにごく平均的な子どものままであって、それ以上でもそれ以下でもない。謙虚なふりをして言っているわけじゃない。正真正銘、ほんとうのことだ。海辺の遊び人だった僕が今のような億万長者へと生まれ変わった理由は、ただ1つ。途中のどこかの時点で、スライト・エッジ(わずかな違い)というものに触れる幸運に恵まれたからにほかならない。『スライトエッジ』 第1章 より ジェフ・オルソン:著 藤島みさ子:訳 きこ書房:刊
オルソンさんは、今どんな状況にある人だって、なりたい自分になることができる
と強調します。
そのカギを握るのが、「スライト・エッジ(わずかな違い)」の考え方です。
本書は、「スライト・エッジ」を使って、“なりたい自分になる”方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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99.9%の人がやっていないこと
オルソンさんは、自分の成功と失敗を分析します。
そして、僕を失敗から救った行動――すなわち失敗ラインから生き残りラインまで僕を引き上げてくれた行動――と、生き残りラインから成功ラインまで僕を引き上げてくれるであろう行動は、全く同じもの
だということに気づきます。
生き残りラインの少し上まで到達して成功の域に差し掛かると、僕は気がつかないうちに、自分をそこまで導いてくれた行動をやめていたのだ。すると当然、再び沈み始め、生き残りラインを越えて失敗ラインに向かって落ちていくことになる。しかも僕はいつもそれを繰り返していた。
毎回だ。
それが浮き沈みから抜け出せない唯一の理由である。ただそれだけのことなのだ。人は失敗から抜け出して生き残りラインを超えるやいなや、自分をそこまで引き上げてくれた行動をやめてしまうものなのだ。
それが何を意味するか、お分かりだろうか? 大成功を収めるのに必要なあらゆることのやり方を、あなたはすでに知っているということだ。あなたはそのやり方で今まで生き残ってきた。そして生き残ることができるのなら、成功することだってできるのだ。成功するためには、何かすごいこと、とてもできそうにないことをやらなければならないわけじゃない。とんでもなく難しい技能を身につけたり、今までにない新しい発想の妙案を思いつかなきゃならないわけじゃない。ただ、自分をそこまで引き上げてくれことをやり続ける。それだけでいい。
それこそが、99.9%の人がやっていないことなのだ。
ジェットコースターのような激しい浮き沈みの波の中に、深遠な成功の秘訣が隠されていることを僕は理解し始めた。最初に失敗から生き残りへと自分を引き上げてくれたこと、つまりやり方をすでに知っていてそれまでもやっていたことをやり続ければ、いつかは成功に辿り着くものなのだ(下図を参照)。
それは正確にはどのようなことなのだろう?人を上昇曲線に乗せる行動、そして人を下降曲線に乗せる行動とは、どのような行動なのだろう? 一言で答えるなら、それは「ちょっとした」という言葉で表現できる。
失敗から成功へと引き上げてくれる行動というのは、ちょっとしたことなのだ。実際、あまりに些細なことなので、見過ごしてしまいがちなくらいだ。こういう行動というのは、極めて見過ごしやすいものである。なぜなら、見た目には重要なことには見えないからだ。大きな努力を要するような大掛かりなことではないし、大胆なことでも劇的なことでもない。ほとんどの場合、それはあなたが毎日やっていても他人は誰も気づきもしないような小さなことだ。とても簡単に実行できて、成功する人は実際にやっていることだが、成功しない人はただ眺めているだけで行動に移さない。そんなことなのである。
例えば、給料の中から2、3ドルを貯蓄にまわすとか、1日もさぼることなく数分間の運動を続けるとか、人生を変えるような感動的でためになる本を毎日10ページ読むとかいうようなことだ。あるいは、感謝の気持ちを人に伝えるために時間を割く。それを毎日、何ヶ月、何年と続ける。やっているときには些細に思える小さなことでも、長い間積み重なると非常に大きな結果を生むことになる。
それを「小さな美徳」とか「成功習慣」と呼んでもかまわないが、僕は「ちょっとした日々の自己管理」と呼んでいる。長い間一貫して続ける、ちょっとした生産的な行為だ。
簡単に言えば、それがスライト・エッジ(わずかな違い)なのである。『スライト・エッジ』 第1章 より ジェフ・オルソン:著 藤島みさ子:訳 きこ書房:刊
図.99.9%の人がやっていないこと
(『スライト・エッジ』 第1章 より抜粋)
結果には、必ず、原因があります。
どんな成功も、その裏には、それなりの努力がある、ということです。
「ちょっとした日々の自己管理」を徹底して続けること。
まさに、“塵も積もれば山となる”ですね。
「あなたの哲学」を手に入れること
オルソンさんは、人生のどの領域においても、持続的な成功をおさめることができるようになる秘密の要素
があると述べています。
秘密の要素とは、あなたの哲学のことなのだ。
早合点しないでほしい。ここで言う哲学とは、何も難解な秘伝のようなもののことではない。複雑に入り組んだ、頭が痛くなるような思想体系のことでもない。ずらりと並んだ箇条書きのポイントを覚えたり、独創的な略語を暗記したりする必要もない。ましてや自己催眠めいたことを言っているわけでもなければ、神秘的な力やインチキを使って何もないところからありもしないものを取り出そうとしているわけでもない。
そしてここが何よりも大切なのだが、僕が言っているのは簡単にできることなのである。
「あなたの哲学」という言葉で僕が言おうとしているのは、日々のちょっとしたことに対する考え方を変えるということにほかならない。それができれば、自分に必要なハウツーへと通じる道を歩むことができるようになる。
(中略)
成功をもたらす行為とはどのようなものかをハウツー本などで知ることも、成功につながる心の姿勢を持つことも必要だが、それを生み出しきちんと機能させるのは、哲学なのである。あなたが何を知っており、それについてどう考え、それがあなたの行動にどういう影響を与えるか――それがあなたの哲学だ。つまり、毎日のちょっとしたことについての考え方ということだ。それが本書のテーマである。
(中略)
哲学を変えるのに大学院に行く必要はない。ギリシャ語を学び、19世紀のドイツ人作家が書いた分厚い本を延々と読まなくても、哲学を変えることはできる。人生哲学というのはとてもシンプルで、6歳の子どもにも理解できるくらい基本的なものなのだ。
例を1つ挙げてみよう。ラルフ・ワルド・エマーソンの『Essay on compensation(仮邦題:償いについて)』という随筆から取ったものだ。まず行動することだ。力はあとからついてくる。
極めてシンプルであると同時に、非常に力強い言葉である。日々の生活の中で実際に活用できるのは、こういう種類の知恵だ。
(中略)
心の姿勢は、権利意識の強いタイプと自分の価値観を重んじるタイプの2つに大きく分けられる。「私が役に立てることは何だろう?」と考えるのが後者のタイプで、「最近私は何をしてもらっただろう?」と考えるのが前者のタイプだ。前者のタイプの人が「給料を上げてくれるならもっと一生懸命働きます」と言うところを、後者のタイプの人は「今よりさらに一生懸命働くので、給料を挙げてくださるのが楽しみです」と言う。
エマーソンの哲学「まずは行動することだ。力はあとからついてくる」に合致しているのは、この2つの態度のうちどちらだろうか?
あなたが何を知っており、それについてどう考え、それがあなたの行動にどのような影響を与えるか。それがあなたの哲学だ。他人の行為を観察すれば、その行為の背後にある心の姿勢を通してその元となる哲学までもが見えてくる。誰がどんな行動を取っているかを教えてくれれば、僕はその人の哲学を言い当てることができる。『スライト・エッジ』 第2章 より ジェフ・オルソン:著 藤島みさ子:訳 きこ書房:刊
どんな行動にも、その裏には、必ず「意思」が働いています。
その意思を形づくるのが、「哲学」です。
作物を大きく育てるには、栄養豊かな「土」は欠かせません。
哲学は、人間の行動にとって、「土」のようなもの。
養分をいっぱい含んだ、とびっきりの言葉を選びたいですね。
変化を起こす「宇宙最強の力」とは?
「つねに前向きに変化し続けるよう、自分の人生を方向づけたい」
そう願う人は、変化を起こす宇宙最強の力を利用する
必要があります。
その力とは、「時間」です。
時間の秘密は単純だ。あなたが日々やっていても他人にはほとんど気づかれもしないような重要とは思えない小さなことを、ものすごく大きくて止めようのないものへと変えてくれる力。それが時間なのである。
一貫して続ける日々の行動+時間=達成不可能と思われたことの成就
あなたが提供するのは日々の行動。宇宙が提供するのは時間。あらゆるものを増幅する時間という味方を得たときに、自分が望む結果がもたらされるような行動を選ぶこと。それが秘訣だ。言いかえれば、時間が自分にとって不利にではなく有利に働くように日々の行動を位置づけることである。
(中略)
人生には自然な進展がある。種をまき、育て、そして収穫する。農耕社会だった頃は誰もがそれを知っていた。誰も考える必要のない自明のことだった。それが物の道理というものだった。種をまき、育てなければ、収穫はできないということが。しかし状況はすっかり変わってしまった。今では学ばなければそれが分からなくなっている。
今の世の中では誰もが種まきから収穫へと一気に進みたがる。フィットネス・クラブに入会して種をまいたはいいが、2、3日経っても目に見える効果という収穫が得られないと人はイライラし始める。フィットネス・クラブに入った。何時間も頑張った(とはいえ、ここまで全部合わせてもたったの3、4時間なのだ)。そろそろもっと筋骨隆々としてきてもいいんじゃないのか。そう考える。だが、それは宝くじの論理だ。ひと稼ぎするだけのために、なんでスキルや人間関係や経験を磨かなきゃならないのか? くじを買うだけで手に入れることはできないのか、というわけだ。
僕たちは今、(目に見えない)ほんとうの力が宿る「育てる」というステップとのつながりを失っている。そしてこのステップは、種まきや収穫とは異なり、忍耐を要する時間という次元にしか存在しない。
(中略)
老子は何千年も前にこう記している。「上善は水の如し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所に処(お)る。故に道に幾(ちか)し」(訳注:最高の善は水のようなものである。それは万物に命を与え、しかも何ものとも争わない。たいていの人が嫌うところへと流れる。それゆえ道(タオ)に近い)と。
僕が好きなのは「たいていの人が嫌うところへ流れる」というくだりだが、これは言いかえれば、たいていの人はそこまで到達しないということだ。彼らは静かなものが持つパワーを理解しない。科学者たちが「万能溶媒」と呼ぶ水は、昔から時間のメタファーとして使われてきた。先ほどの老子の言葉の「最高の善」を時間に置き換えてみても、やはり同じように成り立つ。「時間は水のようなものである。それは万物に命を与え、たいていの人が到達しないところへと流れる」
同様に、スライト・エッジという言葉で置き換えることも可能だ。『スライト・エッジ』 第5章 より ジェフ・オルソン:著 藤島みさ子:訳 きこ書房:刊
欲しいものが、何でもすぐに手に入る世の中。
そのせいで、コツコツと努力を続けることが、軽んじられる風潮もあります。
しかし、本当の成功や幸せは、時間をかけて育むべきもの。
作物に毎日、水をやるように、ですね。
時間の大切さ、肝に銘じたいです。
「幸せ」が成功への鍵
オルソンさんは、成功が幸せをもたらすのではなく、幸せが成功をもたらす
のだと述べています。
それを裏付けるのが、2000年以降、急激に進歩した「ポジティブ心理学」の研究成果です。
より大きな成功、より多くのお金、より良い結婚生活を手にしている人たちの幸福度が高いのは、それらのものを手にしていることによるのではないというのが、幸せの秘訣の根底となる部分だ。最初に幸福があって、その結果としてそれらのものが手に入るのだということをこの研究ははっきりと示している。
幸福の研究という取り組み全体の中核を成す発見の1つは、幸せをつかむ方法を理解することに関してはほとんどの人は方向が逆になっているということだ。「成功すれば幸せになれる」と僕たちは信じている。あるいは「もっと健康になれば・・・・・そういう人と巡り会えれば・・・・・住みたいところに住めるようになれば・・・・・ストレスなしに生きていけるほど収入が増えれば・・・・・そうすれば幸せになれるだろう」と。
だが、実際はそうではない。実際にそうなのだと僕たちは思っている。僕達はみな、そう思い込んでいる。これをすれば、そして十分長い間続ければ、やがては幸せになれるのだと。それは理屈としては正しいが、実際にはそうではないのである。それどころか、それでは順序が逆だということを幸福の研究は示している。日々の幸福度を上げるのに必要なことをすれば、その結果あなたはもっと成功し、より健康になり、望む相手に巡り会えるのだ。自分の幸福度を上げれば上げるほど、達成したいと望むすべてのことが実現しやすくなるのである。
幸せは、メリーゴーランドで1周したあとに貰う真鍮のリングではない(訳注:1990年頃のアメリカでは、メリーゴーランドに乗りながら手を伸ばして真鍮のリングをつかんだ人はもう1度乗れるというルールがあったことから、人生で手に入れたいものを真鍮のリングと呼ぶことがある)。幸せは他のすべてのものを正しく整えた結果として手に入るものではなく、今すぐに行うものなのだ。そしてそれが他のすべてのものを正しく整えることへとつながっていく。僕は先日、ある落書きを目にしたのだが、そこにはこのことが完璧に言い表されていた。それは「幸せになりなさい。そうすれば、その理由も一緒についてくる」という落書きだった。僕はそれがとても気に入った。
幸せは最後にやって来るのではない。まず始めに幸せが来るのだ。アルベルト・シュバイツァーはこれを次の言葉で見事に表現している。「成功は幸せへの鍵ではない。幸せが成功への鍵なのだ」と。『スライト・エッジ』 第7章 より ジェフ・オルソン:著 藤島みさ子:訳 きこ書房:刊
不平や不満、苦しみや悲しみ。
その原因のほとんどは、「過去」や「未来」にあります。
幸せになる秘訣は、「今」この瞬間を生きること。
今、できることを、着実に積み重ねる。
その過程が幸せを生み、やがて大きな成功へと導いてくれます。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
人生を一瞬で、劇的に変えてくれる“魔法の杖”はありません。
成功した人はすべて、成功するに値する努力を続けているということ。
本書に書かれていることはどれも、誰にでもできる簡単なことばかりです。
問題は、「するか、しないか」ではありません。
「続けるか、続けないか」です。
「スライト・エッジ(わずかな違い)」の驚異的な力。
皆さんも、ぜひ、味わってみてください。
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