【書評】『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』(渡辺尚彦)

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 お薦めの本の紹介です。
 渡辺尚彦先生の『血液循環の専門医が見つけた 押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』です。

 渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)先生は、高血圧を中心とした循環器内科がご専門の医学博士です。

手の中に「長生きスイッチ」があった!


 私たちの「手」には、あらゆる体の不調を取り除いてくれる“長生きスイッチ”があります。
 それは、東洋医学や鍼灸の世界で「合谷」と呼ばれる部分です。

 合谷は、その効果効能から、その世界でも「万能ツボ」といわれています。

 合谷は英語で「union valley(ユニオン・バレー)といいます。
「union」は2つ以上のものが1つに結合すること。「valley」とは「谷」。
 これは、解剖学的な見地から、親指と人さし指とで「谷」を形づくっているようにみえることから名づけられたそうで、別名を「虎口(ここう)」と呼ばれることもあります。まさに、虎が口を開けたように見えますね。

 筋肉の視点から見てみると、合谷の近くには、2つの筋肉が存在しています。手の甲側にあり、4本の指をつなげている「第一背側骨間(はいそくこつかん)筋」と、手のひら側で、親指をその他4本の指にくっつける動作をするときに使う「母趾内転(ぼしないてん)筋」という筋肉です。
 これら2つの筋肉がうまく連携することで、私たち人間は指先を使い、ものをつかんだり、持ち上げたり、回したり、ひねったり、さまざまな作業をすることができます。そして、その指先を使った作業が、脳を活性化させ、人間を社会的な動物にしたといえます。合谷は、これら大切な2つの筋肉が重なって形成された場所にある。

「親指の骨と人さし指の骨が結合している地点」でもあり、人間の脳を活性化させ、人間を社会的な動物たらしめた指先の動作に大きく関わる2つの筋肉の重なる場所・・・・・。
 そこに位置しているのが「合谷」なのです。
「合谷」とは、健康を左右し、全身をつかさどる“谷”。進化の名残のようなこの場所こそ、体全体に指令を出す「谷間の要塞」だったのです。

『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 イントロ より 渡辺尚彦:著 サンマーク出版:刊

 本書は、万能な「長生きスイッチ」である合谷を押すことで、さまざまな体の不調を改善する方法をわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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その場で血圧が劇的に下がった!


 渡辺さんは、合谷は、ここを押すだけで体じゅうの血流が増加する、「血流増加スイッチ」だと述べています。

 すぐにお感じいただけると思いますが、合谷を押してみると、体がポカポカしてきます。寒い冬でもじっとり額に汗が出てきます。夏では、ポタポタと流れ落ちるほどになることもあります。
 これは血管が開いて、血行がよくなったというしるしです。
 血流が増えると、血圧は下がりますから、合谷指圧の効果として、まずお話したいのが、「降圧効果」なのです。

 高血圧の人であれば、合谷を5分ほど押すだけで、10分後には血圧が20〜30mmHgほど下がります。
 外来にいらした患者さんのなかには、約170mmHgだった最大血圧が、短期間で120mmHgまで下がった人もいます。
 思いきり合谷を押すと、痛みに弱い人では、強い痛みが原因で自律神経のバランスが崩れる迷走神経反射が起こり、脈拍や血圧が下がりすぎることはおすすめできませんし、現在低血圧の方や心臓にトラブルを抱える方は行ってはいけませんが、血管が開くことによる降圧効果は、高血圧に悩む方には朗報です。
 60代女性、Sさんの値を見てみましょう。1週間ずっと、30分おきの血圧を測定し、それを、合谷指圧をする前後で見比べてみました。
 指圧を開始する前に、30分間隔で24時間の血圧測定を7日間続けてもらいました。そして合谷指圧を1日2回、1回あたり片手5分ずつ、合計1回10分の指圧を3か月間続けてもらい、そこから1週間、同じように血圧を7日間測定し、1週間の血圧を時刻ごとに平均しました。
 すると、血圧のうち収縮期血圧(最高血圧)の平均値は139.9mmHgから135.6mmHgに下がりました。24時間血圧の平均値が約4下がるというのは、4gの減塩をしたのと同じ効果です。

『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 第1章 より 渡辺尚彦:著 サンマーク出版:刊

合谷指圧前後の血圧変化 長生きスイッチ 第1章
図1.合谷指圧前後の血圧変化
(『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 第1章 より抜粋)

 1日2回、片手5分ずつの合谷指圧をするだけで、24時間血圧の平均値が4下がる。
 驚きの調査結果です。

 合谷指圧は、長く続けるほど効果が上がります。
 ぜひ、習慣にしたいですね。

合谷は、「脳内麻薬」が出る魔法のスポット


 合谷を押すと、首や肩の痛み、歯痛、顎関節の痛みなど、上半身のあらゆる痛みが消えていきます。

 渡辺さんは、合谷指圧で痛みが取れる理由のひとつに脳内物質(βエンドルフィン)の放出を挙げています。

 合谷を指圧すると、合谷を押すことによって起こった鈍い痛みの刺激が脳に伝わり、視床下部からホルモンが出て下垂体を刺激し、下垂体から「副腎皮質刺激ホルモン」と「βエンドルフィン」という2つのホルモンが分泌されます。
 ジョギングをする人が、ある一定の距離を過ぎると、苦しさが快感に変わってくる「ランナーズハイ」という言葉を聞いたことがある方も多いここと思います。このランナーズハイのときには、このβエンドルフィンが多く分泌された状態にあります。
 βエンドルフィンは、神経に存在する「オピオイド受容体」という受け皿に作用することで、モルヒネの6.5倍もの鎮痛効果を発揮します。これが、脳が感じていたあらゆる痛みの感覚をマヒさせ、痛みをやわらげます。
 合谷指圧は、βエンドルフィンの強力な鎮痛効果と、前項で説明した、脊髄後角でのゲートコントロールによる鎮痛効果が合わさって、ダブルの鎮痛作用によって痛みを軽減させるものと思われます。

 また、βエンドルフィンが増えると、中脳の一部に作用して、「ドーパミン」の分泌を促進します。これが、多幸感や心地よさを引き起こします。
 合谷を押すことで、体じゅうのさまざまな痛みが取れ、かつ、「痛きもちいい」「リラックスできた」と感じるのは、この、「βエンドルフィン」と「ドーパミン」との2つのホルモンのなせる技なのです。

 これら、合谷にあった、驚きのメカニズム。
 これがあれば、われわれ人間にとって非常に耐えがたい痛みの1つである歯痛をはじめ、さまざまな「痛み」が瞬時に止まってしまっても不思議ではありません。

『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 第2章 より 渡辺尚彦:著 サンマーク出版:刊

 合谷を押したときの、「痛きもちいい」の中にある快感。
 それは、βエンドルフィンの分泌の影響だったのですね。

 やればやるほど、癖になる。
 それが合谷指圧の大きな魅力です。

合谷の位置の探し方


 具体的な合谷の位置の探し方は、以下のとおりです。

 改めて、「長生きスイッチ」合谷の見つけ方をここに紹介しますが、大切なのは、なるべく毎日、長期間継続していただくことです。
 厳密に位置の正しさを追求していると、疲れてそのうちに飽きてしまい、三日坊主で終わってしまうかもしれません。適当でもよいのでまずは少しずつ続けてみてください。

▶合谷①(下の図2を参照)
 親指と人さし指にできる「三角デルタ地帯」をもんで探す

 まずは、親指と人さし指のつけ根にできる三角形の「水かき」のような場所、三角デルタ地帯を探してみましょう。
 親指と人さし指の間隔を少し広げるようにするとできるこの場所を、もう一方の親指と人さし指で少し強くはさみ込むようにもみます。
 そうして「痛きもちいいと感じるコリコリした場所」があれば、それがあなたの合谷です。

▶合谷②(下の図3参照)
 人さし指の骨のキワを探す

 鍼灸理論に基づく「合谷」の場所は、親指と人さし指の骨が交わるところから、やや人さし指の骨を少し指先寄りにずらしていくと、骨がへこんだところとされます。これが、冒頭のカラーページで合谷②と表現している場所です(下の図3を参照)。
 簡単にいうと、親指と人さし指の骨が交わる根本に近い、人さし指の骨の側面(親指側)にあるところ。いわゆる骨の「キワ」にあります。
 人さし指と親指との骨とが交わる点を探して、そこからわずかに指先寄りに、人さし指の骨を探っていくと、骨がへこんでいる場所があります。そこを押すとジーンと痛いとと思います。そこが合谷②です。

▶合谷③(下の図3を参照)
 合谷②よりさらに指先へとたどった場所

 ②の、親指と人さし指の骨が交わるところより少し指先寄りにある骨のくぼみが、ツボとしての合谷の場所としてもっとも有名ですが、人さし指に沿って、もう少し指先寄りに上がったところにも、コリコリとした、押してみると「痛きもちいい」場所が見つかります。この合谷③は個人差があるので、人さし指のキワを指先に向かって広めに探してみるといいでしょう。

 大きく分けて、合谷の探し方としてはこれら3つがあります。

『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 第3章 より 渡辺尚彦:著 サンマーク出版:刊

合谷① 長生きスイッチ イントロ
図2.合谷①の場所
(『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 イントロ より抜粋)


合谷②③ 長生きスイッチ イントロ
図3.合谷②③の場所
(『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 イントロ より抜粋)

 渡辺さんは、合谷は「厳密な1点」というよりも、「500円玉」くらいの大きさの中にいくつかあると述べています。
 自分で押して確かめながら、「痛きもちいい」部分を探しましょう。

入浴中の「合谷指圧」は厳禁!


 渡辺さんは、合谷指圧は、決してお風呂の中では行わないでくださいと述べています。

 合谷というスイッチは、血管を一時的に開き、血流を増加させます。
 本来それはすばらしいことですが「合谷指圧」に「入浴」が加わると、話は180度変わってしまいます(ここでいう「入浴中」とは、湯船につかることをさします)。
 みなさんもご存じのように、入浴すると血管が開き血流が改善するので、入浴は血流改善法として、もっともてっとり早い方法の1つです。
 しかし合谷指圧も「血管を開く」という作用があります。
 入浴によって「血管が開く」うえに、さらに合谷指圧で血管が開く。つまり過剰に血管が開きすぎてしまいます。
 そうなると、血圧が急激に下がりすぎる可能性が生じてしまうのです。

 みなさんは長湯をしていて急に立ち上がったときに、立ちくらみがしたことがありませんか?
 お風呂に入ると心身ともにリラックスし、末梢(まっしょう)血管が開いて血圧が下がります。
 しかし、あまり長湯をしすぎると血管が開ききってしまいます。
 末梢血管が開いたままで、足のほうに血液がたまってしまい、頭のほうに行く血液量が少なくなった状態のときに急に立ち上がると、目の前が真っ暗になります。これは、「脳虚血」といわれるいわゆる脳貧血を起こしている状態なのです。
 これが、「長湯後に起こる立ちくらみ」のしくみです。
 長湯をしていなければ、急に立ち上がったとしても交感神経の働きで末梢血管が収縮し、足のほうから血液を押し上げて血圧を維持できるため、立ちくらみは起きません。
 しかし、長くお湯につかっていると足の血管が拡張してしまうため、足元に血液がたまってしまい、立ち上がったときに血圧が下がる「起立性低血圧」が起こり、ひどいと脳貧血を起こすのです。

『押すだけで体じゅうの血がめぐる長生きスイッチ』 第4章 より 渡辺尚彦:著 サンマーク出版:刊

 お風呂に入るだけで、血流は大きく増えます。
 それに加えて合谷指圧を行えば、血管が開きすぎてしまうということですね。

 合谷指圧は、入浴中ではなく、入浴後に。
 この決まりは、しっかり守りたいですね。

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 東洋医学において、とくに重視されているのが「血の巡り」です。

 すべての体の不調は、血流の滞りから起こる。
 そういっても過言ではないほど、重要な要素を占めています。

 その血の巡りを大きく改善するスイッチが、実は、「両手の中」にあった。
 しかも、いつでも誰でも簡単に操作できるスイッチだった。

 この事実には驚かされますし、東洋医学の奥深さに感心させられます。

 万能な「長生きスイッチ」である合谷。
 その効果は、最新の実験データでも証明されています。

 1日に2回、5分ずつ、しっかり揉んで、病気知らずの健康人生を歩みたいですね。


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