本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『“隠れ酸欠”から体を守る横隔膜ほぐし』(京谷達矢)

お薦めの本の紹介です。
京谷達矢さんの『“隠れ酸欠”から体を守る横隔膜ほぐし』です。

京谷達矢(きょうたに・たつや)さんは、治療家です。
アプライド・キネシオロジー(応用運動機能治療学)などの技術をもとに試行錯誤を重ねられ、「楽健術」という独自の治療法を開発されました。

「横隔膜」をほぐせば、呼吸と体が一気に変わる!

「最近、なんだか疲れやすい」
「肩こりがひどく、もんでも治らない」

こんな症状に悩む人たちの体の中で共通に起こっていること。
それが「隠れ酸欠」です。

 ストレスにさらされつづけたり、悪い姿勢のまま長時間過ごしたりすると、私たちの呼吸は浅い状態が続きます。浅い呼吸が慢性的に続き、それが「いつもの呼吸」になってしまうと、体にとりこむ酸素の量も減っていきます。その結果気づかないうちに、体の中で酸素不足が進むのです。
新型コロナウィルス感染症が世界中で猛威をふるう中、人々は日々ストレスにさらされています。また、感染予防のためにマスクをしていると、酸素の摂取量が減ってしまいます。
今は多くの人にとって、隠れ酸欠が進行しやすい状況なのです。
それにしても酸素不足になれば、自分で気づきそうなものだ・・・・・と、思われるかもしれません。しかし、呼吸が浅くなることも、それによる酸素不足も、少しずつ進み、そして私たちの体はその状態に徐々になれていくので、なかなか気づきづらいのです。

酸素不足におちいると、心身にはさまざまな不調や不具合が現れます。
酸素は60兆個ある全身の細胞のエネルギー源。そのエネルギー源が不足すれば、内臓や筋肉や脳、血管や骨など体のあらゆる組織や器官の機能が低下するからです。冒頭の不調の他にも、風をひきやすい、寝つきが悪い、食欲がわかない、便秘や下痢に悩まされる、めまいがする、やる気が起きない、といった不調がある場合、それは体の中で起きている酸素不足が原因のことが多いのです。

さらに、酸素不足は、「免疫力」も下げることがわかっています。
免疫機能を担っている免疫細胞も、酸素というエネルギー源が不足すれば、その力を十分に発揮できません。
免疫力が弱まれば、風邪やインフルエンザなど、あらゆる病気の原因となりますし、新型コロナウィルス感染症にもかかりやすくなるといえるでしょう。

この酸素不足を解消するための大きなポイントが、「横隔膜」という筋肉にあります。
肺は自力では動けないことをご存じでしょうか。肺は呼吸筋とよばれるいくつかの筋肉に助けられて動いています。呼吸筋の中でも大きな役割を果たしているのが、肺の下にある横隔膜です。横隔膜が上下に動くことで、私たちは、肺で空気を吸ったり、吐いたりできるのです。
浅い呼吸が続くと、十分に上下運動ができない、つまり、しっかり使われない横隔膜はどんどん硬く縮んでいきます。さらに、横隔膜はストレスや加齢、悪い姿勢によっても硬くなります。これらが重なって起こると、横隔膜の硬化に拍車がかかり、体はますます深い呼吸ができなくなります。無意識の呼吸がどんどん浅くなると、体にとりこめる酸素の量が減り、隠れ酸欠におちいるのです。
この悪循環を断ち切るには、硬く縮んだ横隔膜をやわらかくほぐすことが欠かせません。横隔膜がやわらかくほぐされれば、自然と深い呼吸ができるようになっていきます。

そこで私が考案したのが、本書で紹介する「横隔膜ほぐし」というエクササイズです。横隔膜の上に手を置き、腹式呼吸をおこないながらポイントをプッシュするーー。たったそれだけの簡単なエクササイズですが、横隔膜をやわらかくほぐすことができ、日々の呼吸を深いものに変える効果があります。
(中略)
実は、横隔膜ほぐしの効果は、呼吸を深くしてとりこめる酸素の量を増やすだけにとどまりません。おなかの圧力である「腹圧」を高めることもできます。この結果、体の歪みが改善され、体幹で骨盤や背骨をしっかりと支えられるようになるのです。
体の歪みが消え、体幹がしっかりすれば、肩こり・腰痛・膝痛・そして姿勢が改善されていきます。横隔膜ほぐしを続けた方の中には、長年のひざ痛を克服した方もいるのです。

また、横隔膜ほぐしは「心の安定」にも効きます。
おなかに手を当てて、深い呼吸をくりかえしていくうちに、緊張や不安が少しずつほぐれていき、脳波までリラックス状態に変わっていくのです。
今、コロナ禍の中で、ときに不安に押しつぶされそうになることもあるでしょう。ニュースを見聞きするたびに、神経がピリピリしている方もいるかもしれません。そんなときは、いったんテレビなどを消して、横隔膜ほぐしをやってみてください。全身がポカポカと温かくなり、心も少しずつなごんでいくはずです。

『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 はじめに より 京谷達矢:著 青春出版社:刊

本書は、深い呼吸を可能にし、誰でも簡単に隠れ酸欠を解消できる「横隔膜ほぐし」のメソッドをわかりやすく解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「横隔膜」とは何か?

「横隔膜」とは、呼吸を助ける筋肉で、横隔膜が上下に動くことで肺を動かし、そのおかげで私たちは空気を吸うことができます(下の図1を参照)。

図1 横隔膜と肺 横隔膜ほぐし 第1章
図1.横隔膜と肺
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第1章 より抜粋)

具体的には、どのような器官なのでしょうか。

「膜」という文字が入ってはいますが、横隔膜はれっきとした筋肉です。胸部と腹部との境をなす「仕切り」の役割をしています。
胸骨の剣状突起から始まり、肋骨(ろっこつ)の下5本の内側に付着して背中側の腰椎近くまで続き、膜状になっていて、形は丸天井のようなドーム型をしています。
健康な人の横隔膜は本来、やわらかくて、しなやかな状態にあります。
上部の丸天井の部分には大きな孔(あな)が3つ開いています。食道が通る「食道裂孔(れっこう)」、心臓から出た下行大動脈(かこうだいどうみゃく)の通過する「大動脈裂孔」、そして、下半身や腹部から心臓へ戻る下大静脈(かだいじょうみゃく)の通る「大静脈孔」です(下の図2を参照)。
このような孔が開いていることからも、横隔膜が体の真ん中を横切る形で大きな器官であることがおわかりいただけるでしょう。
また、横隔膜を境にしてそこから上には心臓と肺があります。下には肝臓や胃といった内臓があり、横隔膜と接しています(下の図3を参照)。
筋肉にもいろいろな種類がありますが、横隔膜は、どのような筋肉なのでしょうか。
筋肉は随意筋(ずいいきん)と不随意筋(ふずいいきん)に大別できます。
随意筋とは手足の筋肉など、自分の意思で動かすことのできるもので、それらは骨に付着している骨格筋でもあります。
これに対して、自分の意思で動かすことのできない筋肉が不随意筋です。たとえば、心臓を自分の意思で止めたり、動かしたりすることはできませんね。それは心臓を動かしている筋肉が不随意筋のためです。心臓に限らず、肝臓や脾臓(ひぞう)や胃や腸などの内臓の筋肉はいずれも、意識的に動かすことのできない不随意筋です。
不随意筋は生命維持のために、私たちの意思にかかわりなく、1日24時間、黙々と働きつづけています。
では、横隔膜はどちらの筋肉なのでしょう。
答えは「不随意筋であり、随意筋でもある」です。
ふだんは意思とは関係なく動いているのですが、その気になれば、意識的に動かすこともできるという変わり種の筋肉なのです。
この風変わりな筋肉は「第二の心臓」ともよばれることがあります。「第二の心臓」といえば、ふくらはぎを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、血流を高める力においては、横隔膜は、ふくらはぎを凌駕(りょうが)しているといえます。

『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第1章 より 京谷達矢:著 青春出版社:刊

図2 横隔膜は胸部と腹部の境をなす 仕切り 横隔膜ほぐし 第1章
図2.横隔膜は胸部と腹部の境をなす「仕切り」

図3 横隔膜と内臓器官の位置関係 横隔膜ほぐし 第1章
図3.横隔膜と内臓器官の位置関係
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第1章 より抜粋)

横隔膜は、胸部と腹部との境をなす「仕切り」です。

この仕切りの膜(筋肉)が動くことで、胸部にある肺には空気が入ります。
また、血液のめぐりもよくなり、腹部にある肝臓や胃などの重要な器官の働きがよくなります。

横隔膜をやわらかくほぐすことの重要性がわかりますね。

「隠れ酸欠」を放置すると、体が弱っていく理由

横隔膜が硬くなり、動きが悪くなって「隠れ酸欠」になると、体にはどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。

 肺は呼吸によって吸いこんだ空気の中から酸素をとりこんでいます。呼吸が深ければ深いほど、多くの酸素を摂取でき、逆に、呼吸が浅ければ浅いほど、酸素の摂取量は低下します。
体内にとりこまれた酸素は栄養とともに、血液によって運ばれて、全身の細胞に届けられ、そして、細胞内では栄養が酸素と結びつくことで、エネルギーがつくりだされます。
このエネルギー産生を細胞内で一手に引きうけているのが、60兆個といわれている全身の細胞の中に存在している「ミトコンドリア」という小器官です。ミトコンドリアはエネルギーを生みだす細胞内の「自家発電所」にあたります。
そして、この自家発電所でエネルギーを生みだすときに燃料として使われているのが酸素です。つまり、ミトコンドリアにとって酸素は「食事」なのです。
私たちはミトコンドリアが酸素を材料にしてつくりだしたエネルギーを使って内臓や手足を動かし、食べものを消化し、脳を働かせています。いいかえれば、呼吸によって得た酸素によって、私たちの生命活動は支えられているわけです。
酸素はエネルギーの材料となる点で、生命活動を続けるための「大元」であり、エネルギー源なのです。
では、呼吸が浅くて、肝心の酸素の量が減ったらどうなるのでしょう。
酸素という「食事」が入ってこないために、ミトコンドリアは十分にエネルギーをつくりだせなくなり、細胞はエネルギー不足におちいって、細胞の機能は低下し、代謝も落ちてしまいます。
私たちの内臓も脳も骨も筋肉も靭帯(じんたい)も皮膚も、あらゆる器官や組織は細胞が集まってつくられています。それらの細胞たちがエネルギー不足におちいれば、内臓も脳も骨も筋肉も靭帯も皮膚もすべて機能が低下して、本来の働きが十分にできなくなってしまいます。
浅い呼吸によって体が酸素不足におちいるということは、最小単位の細胞のすべてが劣化するようなもので、心にも体にもさまざまな不具合や不調が生じることはまぬがれません。しかも、この酸素不足はほとんどが隠れ酸欠であり、気づかないうちに忍びよるのですら、余計にやっかいだといえるでしょう。
では、隠れ酸欠状態におちいると、具体的にはどのような不調や病気になりやすいのでしょう。
まず、階段を何段かのぼっただけで、息切れしやすくなります。酸素の供給量が少ないため、それを補おうと、肺が酸素を求めて呼吸を速めているのです。
また、全身の細胞がエネルギー不足におちいることで、なんとなく体がだるくなり、体温も下がっていきます。冷え性になる人もいるでしょう。
さらに、酸素不足が消化器系に現れれば、食欲不振や消化不良、胸やけ、胃のむかつき、便秘などの原因になりますし、他にも肝臓、脾臓、膀胱(ぼうこう)などの消化器系以外の内臓の不調や病気がでることもあります。そして、恐ろしいことに、酸素不足になるとガン細胞が活発になるといわれているのです。
高齢の方では、認知症も気になるところでしょう。脳の重さは体重のわずか2%ほどですが、体内にとりこまれた酸素の実に25%もが脳へ行きます。脳は活発に活動するために、大量の酸素を消費する「大食漢」なのです。
呼吸が浅くなれば、脳への酸素の供給量も減りますので、脳の神経細胞の機能が低下し、このことが記憶力の低下につながることは十分に考えられるでしょう。
実際、認知症の予防には運動がもっとも有効だとされています。運動によって大量の酸素が活性化されると考えられるからです。
また、運動をすると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という脳の細胞の新生や発達を促す物質を増加させることや、脳の中で記憶を主につかさどる海馬(かいば)の神経の新生を促進することもわかっています。

高齢者の自立支援を提唱する「パワーリハビリテーション」の創始者、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授は、軽負荷の有酸素運動と水分補給による認知症の治療をおこない、めざましい成果をあげていらっしゃいます。
酸素の供給は認知症の予防とともに、治療にもなりえる可能性を秘めているのです。いずれにしても、酸素は脳の活性化に必要不可欠な物質であることに間違いはありません。
反対に隠れ酸欠状態で酸素が不足すれば、脳の機能低下がもたらされて記憶力が低下し、認知症にかかる可能性が高まるとも考えられるでしょう。

『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第2章 より 京谷達矢:著 青春出版社:刊

酸素は、細胞レベルでエネルギーを作り出すための「燃料」です。
その燃料が足りなくなれば、さまざまな器官の働きが悪くなるのは、当然ですね。

横隔膜は、心臓を助け、血液の流れをよくする役割も担っています。
横隔膜の動きが悪くなれば、当然、酸素を運ぶ血流も悪くなりますから、ダブルパンチですね。

実践! 横隔膜ほぐし

具体的な「横隔膜ほぐし」のやり方は、以下のとおりです。

回数とおすすめの時間帯

「ウォーミングアップ(下の図4を参照)→2種類の横隔膜ほぐし(下の図5、図6を参照)→プラスαの体操」のフルコースを1日1回おこなうのが理想ですが、それが無理なら、2種類の横隔膜ほぐしだけでも毎日続けましょう。一番のおすすめの時間帯は朝食前。便通を促しますし、頭も体もすっきりと覚醒した状態で1日のスタートが切れるはずです。

心構え

無理も頑張りも禁物。フルコースも2種類の横隔膜ほぐしもできそうにない日は横隔膜ほぐし[基本編]だけでOKです。また、横隔膜ほぐしをするときは、手を当てている箇所に“感謝”しなからおこないましょう。感謝することで体に意識を向けることができ、いっそう効果が高まります。

『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第3章 より 京谷達矢:著 青春出版社:刊

図4 1 ウォーミングアップ① 横隔膜ほぐし 第3章

図4 2 ウォーミングアップ② 横隔膜ほぐし 第3章
図4.ウォーミングアップ
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第3章 より抜粋)

図5 1 横隔膜ほぐし 基本編 ① 横隔膜ほぐし 第3章

図5 2 横隔膜ほぐし 基本編 ② 横隔膜ほぐし 第3章

図5 3 横隔膜ほぐし 基本編 ③ 横隔膜ほぐし 第3章

図5 4 横隔膜ほぐし 基本編 ④ 横隔膜ほぐし 第3章
図5.横隔膜ほぐし(基本編)
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第3章 より抜粋)

図6 1 横隔膜ほぐし 応用編 ① 横隔膜ほぐし 第3章

図6 2 横隔膜ほぐし 応用編 ② 横隔膜ほぐし 第3章

図6 3 横隔膜ほぐし 応用編 ③ 横隔膜ほぐし 第3章

図6 4 横隔膜ほぐし 応用編 ④ 横隔膜ほぐし 第3章
図6.横隔膜ほぐし(応用編)
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第3章 より抜粋)

一回たった数分。
毎朝の習慣として続けたいですね。

いくつになっても動ける体は「腹圧」からつくられる!

横隔膜ほぐしには、「呼吸を深くする」以外にも、重要な役割があります。
それが、腹圧を高めることです。

京谷さんは、腹圧を高められるかどうかは将来、寝たきりになるのを防げるかどうかの決め手になると述べています。

図7 腹腔を構成する筋肉群 横隔膜ほぐし 第4章
図7.腹腔を構成する筋肉群
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第4章 より抜粋)

 腹圧とは読んで字のごとく、「おなかの圧力」のことですが、解剖学の言葉を使えば、「腹腔(ふくくう)内の圧力」ということになります。
腹腔とは、横隔膜よりも下の腹部にあるスペースのことです(上の図7を参照)。腹膜に包まれ、その中は液体成分に満たされています。腹腔の上部は横隔膜に、底部は骨盤底筋群に、それらに挟まれた前部には、深部にある腹横筋と腹斜筋に、そして、後部は背筋に沿って走る脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)のさらに深部にある多裂筋(たれつきん)におおわれています。
腹腔は筋肉でできたボールをイメージしていただくと、わかりやすいかもしれません。
これら丈夫な筋肉におおわれた腹腔の中には胃、腸、肝臓、膵臓(すいぞう)、脾臓、腎臓などが収められていて、それらの臓器が消化、吸収、排泄、解毒をおこなっています。腹腔は、生きるために必要な新陳代謝の「中心地帯」なのです。
腹腔にはまた、女性では子宮や卵巣も入っています。腹腔は新陳代謝の中心地帯であると同時に、子孫を増やすための生殖の中心地帯でもあります。
このような重要な臓器の「入れ物」が腹腔であり、その腹腔の内部の圧力が腹圧です。そして、この腹圧は、横隔膜の上下運動によってつくられます。
横隔膜が弛緩すると、丸天井の部分が引きあげられるので、腹腔が広くなり、そのため、腹圧が低くなります。逆に、横隔膜が緊張して丸天井が押しさげられると、腹腔は狭まるために腹圧が上がるのです(下の図8を参照)。
ただし、このとき、腹腔を成す他の筋肉、骨盤底筋群、腹横筋と腹斜筋、および多裂筋の協力も必要になります。つまり、横隔膜が収縮して圧力がかかったときに、これらの筋肉がこの圧力に負けてプワーっと膨らんでしまえば、腹腔が広がるために腹圧を高めることができません。横隔膜からの圧力に屈することなく、それをギュッと受けとめられれば、腹腔の体積を広げないですみ、したがって、腹圧が高められるわけです。
ちなみに、骨盤底筋群、腹横筋と腹斜筋、多裂筋は横隔膜がやわらかくほぐされて大きく上下に動くようになると、その刺激を受けて、強化されます。
反対に、横隔膜の動きが悪いと骨盤底筋群もゆるみます。骨盤底筋群がゆるむと、尿もれ、子宮下垂、直腸脱などを引きおこします。
横隔膜が腹腔の底部、前部、背面を支える筋肉たちの協力も得ながら上下運動をすること、とくに下がる動きをすることによってつくりだされる腹圧。それは腹部を支え、腰を支え、体幹を支えることになります。腹圧は「自前のコルセット」としての働きをしているのです。
また、腹腔には、後部に腰椎があるだけで、前側の腹部には骨がありません。もし、おなかに骨があったら、上体を後ろへ反ったり、横へ曲げたり、前へ倒したりすることはできません。腹腔が骨に囲まれていないのは、体をいろいろな方向へ自由に動かせるようにするためだといえるでしょう。
この腹腔を、骨にかわって支えているのが腹圧ですーー。
さきほど腹腔を筋肉でできたボールにたとえました。ここに空気入れで空気を入れていくところをイメージしてください。空気が腹圧、そして、空気入れのハンドルが横隔膜にあたります。
ボールの空気が抜けている状態では、おなかから上の部分を立たせることができませんが、空気入れで空気を入れていくと、中の圧力が高まってボールが膨らんでいき、それにつれて、上体もだんだんと立ちあがっていきます。
そして、ボールという腹腔が空気ですっかり満たされて、パンパンに膨らんだとき、つまり、腹圧が高まったとき、おなかがしっかりと支えられ、体幹も安定することになります。
腹圧が高くて体幹が安定することは、重要な意味を持ちます。地球に対して垂直に立つことができるのです。20センチそこそこしかない小さな2つの足でピタッと地面をとらえて立て、すると、肩や首や腰や膝などに余分な力をかけずに、リラックスした状態で、自然体で立つことができます。

『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第4章 より 京谷達矢:著 青春出版社:刊

図8 横隔膜の動きと腹圧の関係 横隔膜ほぐし 第4章
図8.横隔膜の動きと腹圧の関係
(『“隠れ酸欠”から体を守る 横隔膜ほぐし』 第4章 より抜粋)

腹圧を高めるとは、腹腔という“ボール”に空気で満たしてパンパンに膨らませること。
横隔膜は、ボールに空気を入れるための“ハンドル”に相当する大事な役割を担っています。

腹腔内の内臓の働きがよくなり、姿勢もよくなる。
一石二鳥どころか、三鳥にも四鳥にもなる「横隔膜ほぐし」を試してみない理由はないですね。

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京谷さんは、横隔膜ほぐしの効果を一番実感できるのが、「息切れの度合い」だとおっしゃっています。

今まで階段を急いで駆け上がっただけでゼイゼイしていたのが、まったく息切れしなくなる。
「横隔膜ほぐし」には、そんな信じられないような効果が期待できます。

目に見える結果がすぐに出るというのは、続けていく上で大きなモチベーションになります。

なかなか体を思いっきり動かせずに、体も固まってしまいがちな今の世の中。
皆さんも、知らないうちに進行している“隠れ酸欠”対策に「横隔膜ほぐし」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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