本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(久世浩司)

 お薦めの本の紹介です。
 久世浩司さんの『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか? 実践版「レジリエンス・トレーニング」』です。

 久世浩司(くぜ・こうじ)さんは、レジリエンスを専門とするメンタルトレーナーです。
 大学を卒業後、大手化粧品メーカーを経て、現在は国内初のポジティブ心理学の社会人向けスクールを設立、コーチ・講師などの実務家を育成されています。

ハードワークのカギは「レジリエンス」

 ハードワークしながら一流の業績を残している人に共通する特徴。
 それは、「レジリエンス」と呼ばれる能力が高いことです。

 レジリエンスとは、逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセスのことです。
 変化の激しい今の時代には、欠かせない能力といえますね。

 久世さんは、レジリエンスの高い人の特徴を以下のように説明しています。

 レジリエンスが高い人の特徴としては、次の三つが挙げられます。
 一つめが「回復力」で、逆境や困難に直面しても、心が折れて立ち直れなくなるのではなく、すぐに元の状態に戻ることのできる、竹のようなしなやかさをもった心の状態です。
 二つめが「緩衝(かんしょう)力」で、ストレスや予想外のショックなどの外的な圧力に対して耐性がある、テニスボールのような弾力性のある精神、いわゆる打たれ強さを示します。
 三つめが「適応力」で、予期せぬ変化や危機に動揺して抵抗するのではなく、新たな現実を受け入れて合理的に対応する力です。道路の亀裂から芽を出して生存し、花を咲かせて繁栄するタンポポが「変化適応力」のひとつのメタファー(暗喩)となります。

 『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 はじめに より  久世浩司:著  SBクリエイティブ:刊

 レジリエンスは、誰でも鍛えれば高めることができる能力です。

 本書は、レジリエンスを鍛え、「ハードに仕事をしながらも、心が疲れにくい人」になるための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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ネガティブ感情の悪循環から脱出するためには?

 レジリエンスを高める技術のひとつが、「ネガティブ感情の悪循環から脱出する」ことです。
 そのための効果的な方法のひとつが、『「気晴らし」をすること』です。

 ネガティブな感情は、とてもしつこいことに特徴があります。たとえば、不安な気持ちがうまれると、いつまでたっても忘れられないことはありませんか? ときには芋づる式に別の心配事が呼び出されて、不安な気持ちが地獄の堂々巡りのように繰り返されてしまいます。
「気晴らし」とは、そのネガティブ連鎖を断ち切るために、ネガティブな気持ちを「別のことに注意を“そらす”ことにあります。ネガティブな感情や思考から、自分の意識を別の対象にシフトすることです。その結果、ネガティブな感情の繰り返しがストップし、悪循環からスーッと抜け出すことができるのです。
 効果的な「気晴らし」をするコツは、まず体を使うことです。頭だけを使って別のことに注意を向けようとしても、しつこくて粘着性のあるネガティブな感情に負けてしまうからです。そして、自分に合った気晴らしの方法を選ぶことです。できれば、没頭できるぐらいのものがおすすめです。科学的根拠のある気晴らしには、主に四つのカテゴリーがあります。

 ①エクササイズやダンス、ジョギングや各種スポーツなどの「運動系」
 ②好きな音楽を鑑賞したり演奏したりする「音楽系」
 ③ヨガや瞑想、散歩など呼吸を落ち着かせる静かな活動である「呼吸系」
 ④日記や手紙など手を使って書くことで感情を表出化する「筆記系」

 これらはβエンドルフィンやセロトニンなどの良性ホルモンの分泌に作用するため、生理的に体の内側からもよい効果が期待できます。

 『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 序章 より  久世浩司:著  SBクリエイティブ:刊

 お酒や薬に頼っても、不安を和らげる効果は一時的で、続けると体への負担も大きいです。
 不安な気持ちを忘れるためには、「夢中になって、体を動かす」ことが重要なポイント。
 自分にぴったりな「気晴らし」の方法をいくつか見つけておきたいですね。

「早足散歩」が怒りの感情を抑える

 代表的なネガティブ感情のひとつが、「怒り」です。
 怒りの感情は激しく、一度火がつくと、自分でも制御不能なくらい爆発することもあります。

 久世さんは、怒りの感情を抑えるための習慣として、「早足散歩」を勧めています。

 早足散歩は、スピーディーに歩くことのエクササイズ効果に加え、呼吸の乱れを正す作用も兼ねた、運動系と呼吸系を合わせた素晴らしいネガティブ感情の気晴らし法です。
 アンガーマネジメントが必要な社長に、その根本原因である「批判犬」を手なずけるために私がこの早足散歩をアドバイスしたところ、勉強熱心な社長はすぐに実行に移しました。効果はすぐに見られ、散歩後の会議では、以前ほど怒り続けることはなくなったと聞いています。
 会議で不満や苛立ちを感じたときに、「ちょっと休憩にしよう」と言ってしばらく外を散歩する習慣を取り入れただけで、怒りの感情がコントロール可能なレベルにまで落ち着き、会社全体が明るくなったのです。
 ただ、それでもときどきかちんときて頭に血が上ることかあるそうです。そのときは、しばらくしてクールダウンした後に、LINEなどを使って社員に謝ることもあるそうです。誠実で社員思いの社長と働ける社員の方は、ある意味で幸せだと思います。
 早足散歩は、パートナーや家庭内での口論のときにも役に立ちます。お互いに一歩も譲らない膠着(こうちゃく)状態になると、相手の顔を見ているだけで腹が立つこともあるでしょう。
 そんなときは「少し頭を冷ましてくる」と言って外に出て、近所を早足で歩きまわる。コンビニに寄って、飲み物を買ってもいいでしょう。ただ、歩いている間は、相手の言ったことなどを思い出さずに、歩く行為と呼吸の流れに意識を集中することがコツです。自宅に戻る頃には、頭もクールダウンして、より優しい自分に変わっているはずです。

 『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 1章 より  久世浩司:著  SBクリエイティブ:刊

 怒りで興奮しているときは、頭に血が上り、呼吸も浅くなっている場合が多いです。
 外の新鮮な空気で頭を冷やし、呼吸を深くすることで、気分がリフレッシュされます。

「歩く」という一定のテンポの動きを続けることは、気持ちを落ち着ける効果もあります。
 怒りっぽいと自覚している人は、ぜひ試してみたい方法ですね。

「ありがとう」と言うだけで幸せになれる

「不満」も、私たちに大きなストレスを与えるネガティブ感情のひとつです。
 久世さんは、慢性的な不満を抱えている人は、自分が恵まれていることを実感せず、感謝の念をもつ習慣に欠けているのだと指摘しています。

 感謝というポジティブ感情の効果については、数多くの研究がなされています。特に海外では「Gratitude is a great attitude!(感謝することは素晴らしい態度ですよ)」と言って、子どもたちにこの美徳ある行為をすすめるしつけがなされています。
 感謝の研究の第一人者である米・カリフォルニア州立大学デービス校のロバート・エモンズ博士は、感謝にはさまざまな良い効果があることを実証しています。
 たとえば感謝の感情が豊かな人は、幸福度が高いことがわかっています。たしかに、感謝深い人に不幸せな人はあまり見られません。その一方で、感謝の気持ちを忘れて自分のことばかり考えている人は、不幸せそうに見えるものです。
 また「ありがたいなあ」と感じることは、ストレスに対しての緩衝力があることもわかっています。感謝の気持ちとは、まるで「毛皮のコート」のようなもので、外側からの重圧や人からのネガティブな批判から私たちの心を守ってくれます。漫画の『ワンピース』が好きな私の息子には「感謝をすれば、まるで武装色の覇気のようにストレスから守ってくれるよ」と説明しています。感謝の念にあふれている人は、打たれ強いのです。

 『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 2章 より  久世浩司:著  SBクリエイティブ:刊

 他にも、感謝のポジティブ感情には、血圧が安定する、免疫系が改善されて風邪や頭痛が減るなどの健康における効果、さらには助力やモラルのある行為が促進されて、職場や家庭での関係がよくなるも見出されています。

 感謝の気持ちを持つことは、相手のためだけでなく、自分のためでもあります。
「ありがとう」を口ぐせにし、相手に感謝することを習慣にしたいですね。

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 今の社会は、「ストレス社会」といわれています。
 IT(情報技術)の進歩などで便利になる反面、仕事の負荷は重くなる一方。
 情報はますます氾濫するなどの負の側面も問題になっています。
 このような社会に身を置いている限り、ストレッサー(ストレスを与えるもの)から逃れることはできません。

 身近にあるストレスから、どうすれば身を守ることができるか。
 現代社会に生きるすべての人が直面している問題です。

 ストレスはなくならない。
 その前提のもと、「ストレスを受けても、それに抵抗できる耐性を身につける」ことが重要です。

 自分の身は自分で守らなければならない厳しい時代。
 今後、「レジリエンス」の能力がますます求められることは間違いありません。

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