【書評】『自己肯定感、持っていますか?』(水島広子)

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 お薦めの本の紹介です。
 水島広子先生の『自己肯定感、持っていますか? あなたの世界をガラリと変える、たったひとつの方法』です。

 水島広子(みずしま・ひろこ)先生は、精神科医です。
 ご専門は、「対人関係療法」で、その方面の第一人者としてご活躍されています。

自己肯定感を高めるカギは、「他人をリスペクトすること」


 自分と他人の意見が違うときに、「私はいいです」と、つい譲ってしまう。
 他人に頼まれた仕事を断れずに、自分はすっかりボロボロになってしまう。

 そのような行動の根っこには、「自己肯定感の低さ」があります。

 自己肯定感の低い人は、他人の価値よりも自分の価値のほうが低いと思ってしまうので、自分の意見や都合、体調や好みなどを自己主張することができない傾向にあります。

 水島先生は、自己肯定感を高めるカギは、「他人をリスペクトすること」だと指摘します。
 ここでいう「リスペクト」とは、ありのままの相手に敬意を持つ、尊重するという感じのもの。

 本書は、「他人をリスペクトしてみる」という手法で、自己肯定感を高めるための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜ、自分で自分をいじめてしまうのか?


 水島先生は、「自己肯定感」を持つことの重要性について、以下のように説明しています。

「自己肯定感」とは、「優れた自分」を誇りに思うことではありません。
「ありのままの自分」をこれでよいと思える気持ちです。


 これは、それほど具体的に感じられるわけではありません。
 心地よく温かい空気のように、自分をぽかぽかと満たしてくれる感覚です。
 普段はその存在を意識しないことが多いでしょう。
 まるで、空気のようなものだからです。空気は、あまりにも当たり前のものなので、その恩恵を感じずに生きている人が多いと思います。でも、空気が足りなくなると、にわかにその存在が致命的に重要だということに気づくものです。
 自己肯定感もそんな感じです。
 自己肯定感は、人がネガティブな思考にとらわれずにのびのびと温かい人生を歩むための「空気」のようなもの。
 自己肯定感が高いと、自分のダメなところ探しをすることもなく、自分らしい人生を生きていくことができます。自分や身の回りの人や物事、景色を、明るい目で見ていくことができるのです。
 もちろん、問題がなくなるわけではありません。でも、自己肯定感が高まれば、問題が起こったときに「もうダメだ」と絶望的になるよりも、「まあ、なんとかやってみよう」「なんとかなるだろう」という感覚を持ちやすくなります。問題解決がうまくできなくても、そんな自分を責めることなく、「今回は仕方がない。次はうまくやろう」という前向きなとらえ方をすることができるのです。
 
 つまり、多くの人が得たいと思っている「幸せな人生」こそが、そこにあります。

一方、自己肯定感が低いと、「こんな自分はダメだ」と自己否定的になったり、「こんな自分が、どうやって生きていけるのだろうか」と不安になったり、「何をやってもどうせ意味がない」と無力感を覚えたりします。
 あるいは、自分を大切にすることができないため、心身を傷つけるようなことをしたり、絶望感の中、問題行動を起こしたりする場合もあります。
 自己肯定感が低い人は、「自己肯定感が低い」ということについても、自分をネガティブな目で見ています。「私は、自己肯定感が低いから、ダメだ」「どうしてこんなに自己肯定感が低いのだろう」という具合に、です。もちろん結果として自己肯定感はさらに下がってしまうでしょう。

 自己肯定感が低いということは、自分で自分をいじめているようなもの。

 つねに自分を「これではダメだ」「どうせできない」という目で見ていくことは、自分を傷つけ続けるようなものです。結果として心の病になっても不思議はありません。
 実際、心を病んで治療に入る人たちは、往々にして自己肯定感がとても低いものです。

 ですから、治療という、「自分を肯定する作業」が必要となるのです。

 『自己肯定感、持っていますか?』 レッスン1 より 水島広子:著 大和出版:刊

 時に冷たく吹きつけてくる人間関係という“風雨”から、身を守ってくれる防寒着。
 それが、「自己肯定感」だということですね。

 相手の何気ない一言によるダメージの深刻さも、受け取る側の自己肯定感にで大きく左右されます。
 自己肯定感の有無は、生死に関わるほどの大きな問題といえます。

自己肯定感のカギは、「無条件のリスペクト」


 自己肯定感を持つためのカギは、「他人をリスペクト(尊敬)する」ことです。

 一般的に、リスペクトは、「他人の人格・行為などを尊び敬うこと」という意味で使われます。
 水島先生は、このような「優れている」という条件のもとに「尊敬している」という感覚を持つもの「条件つきのリスペクト」と呼んでいます。

 一方、リスペクトには、無条件で、その人の存在に対して感じることができる「リスペクト」もあります。
 日本語では、「尊重」「敬意」に相当します。

 自己肯定感を高めるのに重要なのは、この「無条件のリスペクト」です。

 この世の中では、それぞれの人が、いろいろな事情を抱えて生きています。
 生まれ持った性質、体質、能力も違えば、育てられた環境も違い、周囲にいた人たちも違い、経験してきたことも違うでしょう。
 そうした事情の中、それぞれができるだけのことをして生きています。もちろん、「できるだけのことをしている」ようには見えない人もいるかもしれません。

(例)努力をしないのに、えらそうなことばかり言う上司を見下してしまう。

 実際に、このような上司を「尊敬」することは難しいでしょう。
 しかし、その人が努力しない(ように見える)のは、生まれつき集中しにくい性質なのかもしれませんし、虐待やいじめの結果として集中しにくくなっているのかもしれません(集中困難は、トラウマやうつ病の症状のひとつです)。
 あるいは、過去に努力したことが報われず、その心の傷が癒えていないのかもしれません。なんの理由もなく努力しない(ように見える)人などはおらず、よくよく聴いてみると、努力できない(ように見える)理由があるのです。
 また、それなのにえらそうなことばかり言う、というのにも理由があるはずです。あまりにも自己肯定感が低いためには、一生懸命自己を正当化して虚勢を張っていないと社会的に自分を保てないのかもしれません。下手に出たら人から侮られる、と思っているのかもしれません。
 いずれも、持って生まれた性質や、ここまでに体験してきたことの影響を受けて、今があるのです。
 そうした事情を知ると、「いろいろ大変なことがあるのに、その人なりの試行錯誤をしながら頑張って生きているのだな」という感覚を得ることができるかもしれません。

 これが、無条件のリスペクトです。

 その人が何かに優れていなくても、頑張って生きている、ということに敬意を感じることができる。
 敬意とまではいかなくても、その存在を「努力しない人間には意味がない」と切り捨てることなどせず、「かけがえのない存在」として尊重できる。あるいは、傷つきながらも、不器用であっても、その人が生きていることに愛おしさを感じられる。

 そういった感覚です。
 そうは言っても、関わる人の事情をすべて知ることなど不可能です。
 それぞれの事情は、本人にしかわからないわけですから。しかし、「事情があってのことなのだ」と思うことは、誰に対しても可能です。

 つまり、無条件のリスペクトとは、「◯◯だから」とか「◯◯した人は」などと条件をつけずに、ありのままを無条件に受け入れる、ということ。

「おかしいのではないか」「こうしたらよいのではないか」などと、評価を下したり、相手を変えようとしたりすることなく、「いろいろな事情の中での現状が、これなんだろうな」と思うことなのです。
「ええ!? 神様でもないんだから、そんなことできない!」
「なんでそんなことをしなければならないの?」
 と思うかもしれませんね。これを、「どんな相手も受け入れるべき」と道徳の教科書のように読んでしまうと、確かに苦しくなるでしょう。
 しかし、ここで思い出していただきたいのが、本書の目的です。
 それは、自己肯定感を高めることでしたね。
「無条件のリスペクト」という考え方を知ることが、自己肯定感を高めるカギになる、ということだけここでは押さえておいてください。

 あの人の現状には、いろいろな事情があるんだろうな。

 そう思えるとき、私たちはどんな人に対しても、優しくなれますし、リスペクトすることができます。
 相手のことを「かけがえのない存在」として尊重すること。社会的な立場や業績などとは関係なく、それぞれが与えられた事情の中で一生懸命に生きているのですから、すべてが貴重な存在なのです。

 『自己肯定感、持っていますか?』 レッスン2 より 水島広子:著 大和出版:刊

 相手に対して「無条件のリスペクト」を持つ。
 それは、相手のためというよりも、むしろ、自分のためです。

 他人に対して寛容になることは、自分に対しても寛容になることにつながります。

「あの人の現状には、いろいろな事情があるんだな」

 どんなときでも、そう思える心の余裕を身につけたいですね。

お互いの「領域」を守る


 他人をリスペクトする上で重要となるのが、『お互いの「領域」を守ること』です。
 領域とは、持って生まれた条件や、生きてきた中での様々な事情のこと。

 持って生まれた条件や今まで生きてきた中での様々な事情、これらは、本人の「内心」に関わるもので、本人にしかわからないですし(本人すらわかっていないこともあるのですが)、他人が決めつけるような性質のものではありません。

例 彼女にはいつも幸せでいてほしいから、ネガティブなことを言うとイライラして、「もっとポジティブになりなよ」と言ってしまう。

 これは一見、「親切な、思いやりのある態度」と思えるかもしれません。
 しかし、彼女がネガティブなことを言うのには、それなりの事情があります。それは「彼女の領域」内でのことです。
 もちろん、幸せでいてほしいと思うことは、決して「いけないこと」ではありません。しかし、おそらく自己肯定感が低いであろう彼女にダメ出しをしてしまうと、彼女はますます自己肯定感を低下させて幸せから遠ざかってしまうでしょう。

「相手の領域」を守る、ということは、その人の「ありのまま」を尊重することです。

 しかし、多くの人が、この例のように、「相手の領域」について、「ありのまま」では許せず、決めつけるようなことを言ったり決めつけるような態度をとったりしています。
 たとえば、大切な人を失った、ということに対して「おかげさまで命の大切さを知りました」などと言うことは、喪失体験まっただ中の人にとっては、「不適切」「傷ついた」「うるさい」「余計なお世話」と聴こえることでしょう。
 大切な人を失った場合は、誰もが「悲しみのプロセス」を通るものですし、そんな中で本人や周りは確かに「命の大切さを知った」という心境になることもあります。
 しかし、悲しみのまっただ中にいて、未来に絶望しているとき、あるいは様々な後悔の念に苦しんでいるときに、他人が「おかげさまで命の大切さを知りました」などと言うのは、ハラスメントと呼んでもよいものです。相手のデリケートな喪失体験の意味を勝手に決めつけるようなものだからです。
 多くを語ってくれない相手の「ありのまま」を受け入れる、というのは、ただ、大変なときなんだな、という目で見守る、ということになるかもしれません。
「命の大切さを知った」などと決めつけるのではなく、その人にとって大切な人が生きていたという事実、そして亡くなったという事実をリスペクトすることが重要なのだと言えます。お葬式に参列するなどというのは、それをリスペクトする行為と言えますね。

『自己肯定感、持っていますか?』 レッスン3 より 水島広子:著 大和出版:刊

 人には人の価値観、考え方があります。

「自分がそう思うから、相手もそうすべき」と考えるのは、単なるこちら側の都合であり、決めつけにすぎません。

 相手の意見に同意する必要はありません。
 ただ、「そういう考えもある」と認めることが大切です。

 相手の「領域」を守ること。
 いつも意識したいですね。

「自己肯定感」を高めるためにできること


 自己肯定感を高めるために、「ありのまま」の自分を受け入れることは必要条件です。

「ありのまま」の自分を受け入れるための最短距離は、「他人をリスペクトする」こと。
 なぜなら、自己認識より他人についての認識を変化させるほうが簡単だからです。

 すでに見てきましたが、相手をリスペクトしているときの私たちは寛大です。
 相手に「え?」と思うところがあっても、「まあ、事情があるのだろうな」と考えることができます。そんなときの自分は、決して嫌な感じがしないと思います。相手に向けている優しさを、自分でもそのまま受け取っているはずだからです。
「自分」に目を向けている限り自己否定しか出てこないかもしれませんが、「相手」に目を向けて、相手をリスペクトしていくと、その「リスペクト感」が自分にも及んでくるものです。

 なんと言うのでしょうか。
「リスペクトの空気」を一緒に吸うという感じでしょうか。


 もちろんこのリスペクトが、「条件つきの尊敬」であればうまくいきません。
「Aさんは、◯◯大学を出ているからすごい。それに比べて自分は・・・・・」
「Bさんは、スタイルがよくて、素敵。なのに私は・・・・・」
 こんなふうに、自分の「条件」と比較して、逆に自己肯定感が下がってしまうかもしれません。
 しかし、無条件のリスペクトであれば、どうでしょうか?
「Cさんも、いろいろある中で、頑張っているんだな。私もいろいろあるけれど、まあ、これでいいよね」
 そんなふうに、自分にも適用できる気がしてくるはずです。

 つまり、「人間、みんな頑張っているな」という感覚が出てくるのです。

 ここが、無条件のリスペクトのおもしろいところです。
「頑張っている」という感覚にも、「条件つき」のものと「無条件」のものがあります。「あの人は今回のプロジェクトを見事に成功させた」「あの人はキャリアアップをした」というようなとき、私たちは、相手を「頑張っている」と思うと同時に、「頑張れていない自分」を責めたりするものです。
 しかし、無条件のリスペクトの際にじわーっと感じる「頑張っている」感は、比較するようなものでもなく、自分も含めて「人間は頑張る生き物なんだな」というふうに感じられるのです。
 自分についても、「決めつけ」とリスペクトが両立しないのは同じです。
「自分はダメだ」と決めつけている限り、自分をリスペクトすることはできません。
 だからこそ、そこから生産的に目をそらすためには、「決めつけを手放し、他人を無条件にリスペクトする」という習慣をつけることが案外役に立つのです。
 それが習慣になれば、いつも他人をリスペクトできる自分に、よい感じを抱けるようになるでしょう。そして、いつも「リスペクトの空気」を吸い込みながら生きていくことができます。そうすることで、自己肯定感は高まっていくのです。

『自己肯定感、持っていますか?』 レッスン4 より 水島広子:著 大和出版:刊

「ありのまま」の相手を認めているうちに、「ありのまま」の自分も認められるようになります。
 自己肯定感を持てるかどうかは、普段の考え方の習慣で決まります。

 周りのすべての人に対して、「無条件のリスペクト」を持つこと。
 続けていると、いつの間にか、“自己肯定的な”考え方を身につけられるということですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

『自己肯定感を高める』というと、これまで、自分と自分との関係からのアプローチが主流でした。
 しかし、本書の方法は、まったく逆のアプローチをとります。
 すなわち、「他人を無条件にリスペクトすること」から始めるということ。

 この方法では、他人との関係、つまり、「自分が他人をどう見るか」がポイントになります。

 他人の「ありのまま」を認め、無条件のリスペクトをしてあげること。
 それが、結局は、自分の「ありのまま」を認め、無条件のリスペクトをすることにつながります。

 対人関係の心理を知り尽くした水島先生ならではの、まさに「目からうろこ」の発想です。
 皆さんも、ぜひ、一度試してみてください。


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