本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『応援思考』(辻秀一)

 お薦めの本の紹介です。
 辻秀一先生の『応援思考』です。

 辻秀一(つじ・しゅういち)先生は、スポーツドクターです。
 スボーツ心理学とフロー理論を基にしたメンタルトレーニングによる、パフォーマンス向上がご専門です。

いつもご機嫌でいる秘訣は、「応援思考」にあり!

 辻先生は、自分がご機嫌でいれば、人間関係は必ず好転すると述べています。
 自分自身の機嫌をいつもよくする。
 そのポイントは、私たちの「思考」にあります。

 人間は脳でできていると言っても過言ではありません。身体と精神を司る脳の働きにはさまざまなものがありますが、その中心は思考です。思考の習慣こそが、すなわち自分自身でもあります。どのような思考習慣が人間関係を穏やかで実りあるものにしていくのかのヒントをみなさんに知っていただき、自分のものにしていただきたいと思います。
 しかし、それは思考を全面的に変えるのではなく、新たな思考習慣をプラスしていただく感じです。変える、というとこれまでの思考や今までの自分を否定していかなければならないと考えてしまいます。本書で申し上げたいのは新たな思考習慣を“アドオン”する、すなわちつけ加えていただくイメージです。
 それは決して難しいことではありません。今までの自分はそのままにしておいてよいのですから。
 新たな思考習慣の中心にあるのが「応援の思考」です。つまり、この「応援」が本書のテーマです。応援は自分や周りの人を元気にして、その元気は自分に還(かえ)ってきます。それはとてもシンプルです。
 思考の習慣が新たに加われば、結果的に自分が変わってきます。「赤」という思考だけで生きていたのが、赤は保持しながらも「青」という思考を持つようになると、赤とも考えられるし、青とも考えられる。それだけでなく、両者を混ぜ合わせて、「紫」とも考えられるようになるのです。
 そうです。自分の可能性が3倍にも広がることになります。脳が新しくなれば自分も新しくなる。そうなれば周りは変わらず同じ状況でも自然と周囲に対する見方や行動が変化し、気づけば人間関係は今までとは劇的に違ったものになっていくのです。

 『応援思考』 はじめに より 辻秀一:著 清流出版:刊

 本書は、人間関係を劇的に改善する画期的な思考法、「応援思考」を身につける方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「応援」は自分自身を強くする

 辻先生は、他人と強く良好な関係を築きながら生きている人には「応援の思考習慣」が必ずあると述べています。
 応援の思考習慣とは、どのようなものでしょうか。

 応援とは他人に対してするものですが、実は自分自身のためにするものでもある、ということを知っている人はあまり多くありません。
 ある有名なプロゴルファーが、ラウンド中に自分自身の感情を穏やかにしなやかに強く保ち、安定したプレーをするための最大・最良の方法は、常に応援の思考ですべてのプレイヤーや事象に接することだ、と述べていたことが印象的です。
 例えば、首位を争っているライバルがパッティングしているとします。それが入らなければ自分が優勝する。しかし、入ればプレーオフに勝負はもつれ込む。このとき、外れたら優勝なので「外れろ」と願うのではなく、反対に「入れ」と願うのでもなく、ただただがんばってほしいと応援の思考で見守るというのです。その思考が自分の心の安定を生み出すのだと。
 仮にプレーオフになったとき、「外れろ」や「入れ」と考えた場合と応援の思考でいた場合では、その後のプレーに如実に影響してくるといいます。「外れろ」と考えたからといって外れるわけでもなく、心は乱れ、パフォーマンスの低下をもたらすことでしょう。一方、応援の思考は外側の結果に心を持っていかれることが少なく逆に心の安定を自らにもたらします。
 みなさんも、応援の思考でいた方が、その後何が起こっても自分自身の心が安定した状態になることは何となくイメージできるのではないでしょうか?
(中略)
 ここで言う応援とは、相手に勝ってほしいと願うのでもなく、実際に相手に応援の気持ちを伝えなければならないのでもなく、応援するために何か行動を起こさなねばならないものでもありません。応援団やチアリーダーになる必要はなく、「応援しよう」と考えるだけでも、心の状態にエネルギーが芽生え、自分自身の状態をよい方に導くものなのです。
 そういう体験が多いほど、こうした思考習慣が強固に形成され、いつでもどこでも応援の思考で周りに接していることで自分自身を元気にし、対人関係に翻弄されがちな人間社会、過酷なビジネスシーンにおいても自分を平成に保ちながら生きていくことができるのです。
 応援なんてこれまであまり考えたことがないという方も、まずは、この応援思考に注目していただきたいと思います。

 『応援思考』 序章 より 辻秀一:著 清流出版:刊

「入れ」と願っても「外れろ」と願っても、相手のパットの結果次第で、心は大きく揺れ動きます。
 とても、安定したパフォーマンスができる状態ではないですね。

 逆に、ただ、相手を「がんばれ」と応援する。
 そうすれば、相手の結果で、自分の心を乱されることは少なくなります。

「機嫌のよさ」を自らつくり出す

 人間は、「認知脳」と呼ばれる脳の機能が、他の動物よりも格段に優れています。
 認知脳とは、外界に接着し、解決策を考え行動を促していく脳のことです。
 人間は、この認知脳を使い、さまざまな問題を解決し、文明を発達させてきました。

 認知脳には、「意味づけ」という、やっかいな性質があります。
 認知脳が暴走し、偏見や思い込みが過ぎると、不機嫌な心の状態をつくり出します。

 一方、人間には、ストレスをセルフマネジメントし、機嫌のよさをつくり出せる“脳力”も兼ね備わっています。
 それが、「ライフスキル脳」です。
 ライフスキル脳とは、外界に依存することなく自らをもって心に機嫌のよいフローな風を吹かせる脳のことです。

「認知脳」の暴走を止める。
 そのための手段のひとつが、「感情への気づき」です。

 ライフスキル脳は自らの内側を担当し、感情に気づく役割を果たします。この気づきによって、認知脳の暴走を沈静化してくれるのです。
 感情への気づきは慣れないと上手くできません。人間は認知脳を第一の脳として生きているため、ついつい環境や出来事、他人への気づきのほうに思考がいきがちです。
 感情に気づいてください、と言うと、「誰かにキツイことを言われた」とか、「電車の中にこんな人がいた」とか、「息子がこんなことをしでかした」とか、「夫が家事を手伝ってくれない」・・・・などを言いがちですが、おわかりのように、これはすべて外側で起きた出来事であって、自分の内側に起こった感情ではありません。
 さらにわたしがセミナーなどで参加者の方に、自分の感情に気づくワークショップをやっても、今抱えている問題が噴出してきて「逃げたい」とか「辞めたい」とか「投げ出したい」とか「やり込めたい」などを挙げる人がいますが、これも感情ではなくすべて考え(欲求)です。すなわち、認知脳がどのような行動を取るべきなのか、あるいはどのようなことをしたいのかを判断しようとする思考なのです。
 感情とはそのような状況の中で、自分自身の心の状態という概念として表現できるものです。思考とは違ってあくまでも内側にある自分の心の状態として表現できる概念を指します。「嬉しい」とか「悲しい」とか「ウザい」とか「面倒くさい」とか「がっかり」とか「ムカつく」とか「嫌だ」などの表現はわたしたちが心の状態として感じるものです。
 どのような心の状態が今自分の中に生じているのかということに気づく練習が必要です。出来事や思考ではなく、それらによって起きた心の状態に気づき表現してほしいのです。
 自分事といっても身体の状態ではありません。「眠い」とか「痛い」とか「だるい」などは、心の状態の表現としては違います。心の状態は目に見えませんが、認知脳の意味づけによって起こる内なるさまざまな感情に気づくことがライフスキル脳の役割です。
 感情に気づけるようになると認知脳の暴走が沈静化され、フローな風が自分自身の中に吹いてくれます。

 『応援思考』 第1章 より 辻秀一:著 清流出版:刊

 認知脳は、自分の外側の事象を解釈して、意味づけする働きをします。
 事実にばかり気を取られていると、どんどん“認知の罠”の深みにはまっていきます。
 ですから、認知脳では捉えられない部分、自分の内側から湧き出た感情に気づく。
 それが大切なのですね。

「考える」のではなく、「感じる」。
 ライフスキル脳を働かせるという意味でも、重要なことです。

「応援」は、機嫌よく生きるための知恵

 応援思考とは、相手にエネルギーを与えることで自分自身が元気になれる思考のことです。

「応援は相手のためにするものだ」とほとんどの人が思っています。しかし、応援の本来の意義は、自分の心にエネルギーを生み出すこと、つまり機嫌よく元気に生きるための人間の知恵なのです。人を応援することの多い人は、自分自身がそれによって元気になることを知っているのです。
 応援の反対とも言うべき思考が嫉妬です。嫉妬はエネルギーを相手から奪おうとする思考です。つまり嫉妬は、自分そして相手をもノンフローにします。認知脳は自分を他人と比較したり、他人への嫉妬を生み出す傾向があります。動物界でも知能の高い猿や犬には嫉妬に近い現象が見られるようですが、認知脳の優れた人間のようにしばしば嫉妬することはないでしょう。嫉妬は人間関係を悪化させることはあっても、よくすることはありません。
 まずは、嫉妬している人自身がノンフローになっていることに気づかなければなりません。極端な例ですが、藁(わら)人形を打っている人がフローであるはずがありません。
 成功や幸せは人の数だけあるのですから、嫉妬したり人の足を引っ張ったりしたとしても、現実的に自分が成功したり幸せになることはなく、心はまったくフローにはならないのです。ただただとらわれて、そして自分の心の機嫌を失っていくだけなのです。
 ところが嫉妬はある意味で人間にとってごく自然なことなので、嫉妬はよくないと知識で知っていても、裏切りつい嫉妬してしまうのです。嫉妬も人間の仕組みの1つであるということです。
 嫉妬が何ももたらさないばかりか自分をノンフローにすると知ることが重要ですが、ただ知っているだけでは、人間は前述のように感情に任せてその知識を簡単に裏切る生き物なのです。
 そこで応援の思考でいる方が自分の機嫌がよくなることを体感としてつくっていくことが、嫉妬すなわち認知脳の暴走を止めてくれるようになるのです。応援思考の価値をしっかり自分のものにしていきましょう。
 しかし応援も、5W1H「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」で考えてしまうととたんに難しくなります。認知脳が働き始めて下手をすれば暴走し、「やっぱりあの人だけは許せない」「何で俺があいつにそんなことしなければならないんだ」などと嫉妬の方に傾いてしまうでしょう。
 ここで大事なことは、理由などから離れてただ“がんばれ”と考えることの価値を体感してほしいということです。もしくは応援しようとただ考えることが自分の気分をよくするという体験を増やしましょう。

 『応援思考』 第2章 より 辻秀一:著 清流出版:刊

 応援は、相手のためではなく、自分のため。
 そう考えれば、相手は関係なく、応援することができますね。

 応援する対象のことを考えるから、応援できない。
 ならば、応援する対象なんて、気にしなければいい。

「理由などから離れてただ“がんばれ”と考える」

 自分のご機嫌をとるために、応援思考を身につけたいですね。

「わかってあげる」が人間関係をよくする秘訣

 人は誰でも、「自分の感情と考えをわかってほしい」と願って生きています。
 相手を「わかってあげる」には、「わかってもらう」という前に、「わかってあげる」と考える思考習慣を自らが持っていることが大切です。

 ここで大切な「わかってあげる」は同意ではなく、受け入れるという感じです。英語で言えばagreeではなくunderstandです。同意ではなく理解して受け入れることは、いつでもどこでも誰に対してもできやすいはずです。
 これは教育者、あるいはプロスポーツのコーチで名伯楽と言われる人がすべからく身につけている思考です。教育者にしてもコーチにしても、教える方と教えられる方の信頼関係がなければ(つまりフローな風が吹く関係でなければ)、よい結果は得られないでしょう。
 わたしは教育者でもコーチでもない、という人もいるでしょうが、人間関係の中で誰もがこうした立場に立つ機会があるはずです。自分が高次に立つ思考なので傲慢にならないように気をつけましょう。
 まずは、人間関係を生きる上でわかってあげると考える自分づくりが重要です。さらに相手が主役なので、相手が「わかってもらった」と感じなければなりません。「俺はわかっているんだ」では独りよがりの発想になります。あくまでも相手が「わかってもらった」と感じないかぎり相手にフローな風は吹かないのです。
 そのためにはどのようにすればいいのでしょう?
 答えは2つ。「聴く」こと、そして「伝える」ことです。まず、相手の話をちゃんと聴かないと相手が何をわかってほしいのかを把握できません。そして、人の話に耳を澄ませてちゃんと聴くには、聴く方がフローな状態でなければなりません。集中力を欠いた状態では、相手の話を深く理解し、共感することはできないのです。
 さらに、聴いただけでは不十分です。聴いてわかった、理解したと相手にちゃんと伝えることが何よりも重要です。相手はそこで初めてわかってもらったということが自覚できるからです。聴くこと同様、伝えるためにもこちらがフローじゃなければ難しいのです。
 自分がフローでいる⇒聴く⇒伝える⇒相手がフローになる⇒自分にもフローが還ってくる⇒自分のフローが倍増する。この仕組みを理解し、相手のためを思う姿勢は、それだけで深い信頼関係を築く魔法です。

 『応援思考』 第3章 より 辻秀一:著 清流出版:刊

「わかってあげる」ことは、相手に同意する、という意味ではありません。
 相手の話に耳を澄ませて、深く理解することです。

 そのためにも、自分がフローな状態、ごきげんな状態でいること。
 精神的に余裕がないと、聴いて伝えることはできませんね。

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 誰かを励まして、応援することで、逆に相手から力をもらう。
 そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
「応援」には、そんなすごいパワーが詰まっています。

 応援は思考です。
 考え方次第で、いつでも、どこでも、誰に対してでも、応援することはできます。
 つまり、応援のパワーを、つねに受け続けることができるということ。

「応援」は人のためならず。
 自分のためにするもの。
 
 いつでも、自分がごきげんな状態でいられる「応援思考」。
 ぜひ、身につけたいものですね。

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