【書評】『科学がつきとめた「運のいい人」(中野信子)

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 お薦めの本の紹介です。
 中野信子先生の『科学がつきとめた「運のいい人」』です。



 中野信子(なかの・のぶこ)先生は、脳神経医学がご専門の脳科学者です。
 脳神経医学専攻の博士課程を修了し、その後、2年間フランス原子力庁サクレー研究所の研究員を務められています。

人は「運」に主体的にかかわれる


「運者生存」という考え方があります。
 文字どおり、「運のいい者が生き残る」というものです。
 そこには、運というものは、「ただ身をゆだねるしかないもの」といった響きがあります。
 しかし、中野先生はそれを否定し、運・不運というのは、誰の身にも公平に起きているが、その運をどう生かすかを少なくとも人は主体的にかかわっていけると強調します。

 中野先生は、運がいいといわれる人たちの行動パターンや考え方をつぶさに観察していくと、それは結局、「よりよく生きること」につながっていると指摘します。
 逆にいえば、よりよく生きているからこそ運も味方をする、ということです。

 本書は、科学的なアプローチから、運を引き寄せるための行動や考え方を解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自分なりの「しあわせのものさし」をもつ 


 運のいい人は、必ず、自分なりの「しあわせのものさし」をもっています。
 どういう状態に、自分はしあわせを感じるかを把握しておくということ。
 運を自分のものにするには、この自分なりの「しあわせのものさし」をもっておくことが大事です。
 運のいい人は、自分のものさしで測った自分が心地よい、気持よいと思える状態を積極的につくり出す努力をすると指摘します。

 実は、「しあわせのものさし」にも人を呼び寄せる力があるのです。
 人間の脳の中には、「快感」を感じる報酬系という回路があります。これは、脳の中で比較的奥のほうにある回路で、外側視床下部、視床、内側前脳束、腹側中脳、尾状核といった、快感を生み出すのにかかわる部分の総称です。この部分が刺激されると人は快感を感じます。食欲や性欲など本能的な欲求だけでなく、人助けなど社会的な行動も含め「自分が気持ちよい行動」をとると活動する部分です。
 自分が心地よい、気持よいと思える状態を積極的につくり出している人は、常にこの報酬系を刺激していることになります。自分の報酬系を上手に操れる人は、自分のいまある状態にとても満足できる人である、ということもいえるでしょう。
 人がもっともしあわせを感じるのは、自分が心地よいと思える状態に心底ひたっているとき、といえます。「もっとああしたい」「もっとこうなったらいいのに」という欲を忘れ、「ああ、気分がいいな」「気持ちがいいな」としか感じない瞬間です。その瞬間には、「ああ、もう何もいらないな」とさえ思えます。
 つまり、常に快の状態をつくり出す努力をしている人(報酬系を刺激している人)というのは、心理学でいう自己一致の状態になるのです。

 『科学がつきとめた「運のいい人」』 第1章 より  中野信子:著  サンマーク出版:刊

 自己一致の状態とは、こうなったらいい、こうあるべきと考えている理想の自分と実際の自分が一致していること。
 もっと簡単にいえば、「自分で自分ことが好きな状態」です。
 自己一致の状態にある人は、一緒にいる人はとても楽で、人の話を素直に聞けるという特徴もあるため、人を惹きつける力があります。

「運がいい」「ツイている」と口にする


 運をよくするコツのひとつに、「自分は運がいい人間だ」と決め込むというやり方があります。
 何の根拠もなくていいので、とにかく「自分は運がいい」と決めてしまうことが重要です。
「自分は運が悪い人間だ」と思い込んでいる人は、うまくいかないことが起こった時、運の悪さを言い訳にして、改善のための努力を怠ってしまいます。
 結局、その差が「運の良し悪し」となって表れるということです。

 中野先生は、さらに運をよくするために、それを「声に出すこと」を勧めています。

 ところで、運をよくするためには「運がいい」「ツイている」と声に出して言うべきだ、とよくいわれます。
 これには私も大賛成で、自分は運がいいと思う練習をするときには、声に出して「運がいい」と言うのがおすすめです。
 というのは、人間が何かを記憶するときには、大脳深部の海馬という部位が働くからです。
 人の記憶は、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器から海馬に情報が送られ、そこで整理統合され、短期間記憶すべきも、長期に渡って記憶すべきもの、すぐに忘れてもかまわないものなどの判別がされるのです。
 この情報を送る際に、働かせる感覚器官が多ければ多いほど、記憶は強化されやすく、長期に渡って残りやすいとされています。
 よって、ただ心の中で「運がいい」と思っているより、声に出して「運がいい」ということが脳に定着しやすくなるのです。

 『科学がつきとめた「運のいい人」』 第2章 より  中野信子:著  サンマーク出版:刊

 中野先生は、さらに視覚を働かせるために、同時に「運がいい!」「ラッキー」「ツイている!」などと書いた紙を部屋の目につく場所に貼っておく方法も有効だ、と述べています。

誰かを助けたときこそ「ありがとう」と言う


 運のいい人は、他者を蹴落としてひとり勝ちしようとするのではなく、他者とともに生きていこうとします。
 自分以外のだれかを助けるときに心がけるのが、「ありがとう」という気持ちをもつこと。
 中野先生は、助ける側こそ、感謝の気持をもつべきだと述べています。

 人間の脳には、前頭前野内側部と呼ばれる部分があり、ここは自分の行動の評価を行なっています。
 人をだまして自分だけ得をするようなこと、たとえば仲間を蹴落として自分が出世したり、あるいは電車の中で目の前にお年寄りが立っているのに気づかないふりをしてしまったりしたら、「悪いことをしたな」と心が痛むのではないでしょうか。
 逆に、仲間を思って行動したときや、お年寄りに席を譲ったときなどは「よいことをしたな」とよい気分になります。
 このように、自分の行動のよしあしを判断するのが前頭前野内側部です。そしてこの部分が「よい行動だった」と判断すると、脳内の報酬系が刺激されて「ああ、よいことをして気分がいい」「私ってえらいな、すごいな」と思えるのです。誰かを助けたときには、当然「よい行動」と判断され、気分がよくなるでしょう。
 また、助けた相手から「ありがとう」「あなたのおかげで助かった」などと感謝されること(社会的報酬を得ること)も少なくありません。
 他人のために何かするには、時間や労力、ときにはお金が必要で、一見、自己犠牲を払っているように思える場合もあります。しかし実際は、他者を助けることで気分がよくなり、ときには社会的報酬さえも得ているのです。

 『科学がつきとめた「運のいい人」』 第3章 より  中野信子:著  サンマーク出版:刊

 日本でも、昔から「情けは人のためならず」ということわざがあります。
 相手にかけた情けは、巡り巡って、結局は自分のためになるという意味ですが、脳科学的にもそれが証明されているということですね。
 助ける側こそ、感謝の気持をもつ。これからの厳しい時代を乗り越える「運」を引き寄せる秘訣になりそうですね。

「ポジティブな祈り」をする


 祈ることは、心と体の健康にプラスに働く、ひいては運の向上につながる場合があるそうです。
 中野先生は、プラスに働く祈り、すなわち「よい祈り」とは、自分のことだけでなく、自分以外のだれかの幸福も願うポジティブな祈りだと述べています。
 つまり、自分が叶えたいと思う願いの先に、自分以外の人の幸福がないかを考え、そこに焦点を当てて祈ることがポイントです。

 脳がよい祈りと判断すると、ベータエンドルフィンやドーパミン、オキシトシンなどの脳内快感物質(脳内で機能する神経伝達物質のうち、多幸感や快感をもたらす物質を一般的に総称した用語)が脳内に分泌されます。
 なかでもベータエンドルフィンは、脳を活性化させる働きがあり、体の免疫力を高めてさまざまな病気を予防します。さらに、ベータエンドルフィンが分泌されると、記憶力が高まり、集中力が増すことも知られています。
 また、オキシトシンにも記憶力を高める作用があるといわれています。
 ちなみに、脳が「悪い祈り」と判断した場合には、ストレス物質であるコルチゾールという物質が分泌されます。コルチゾールは生体に必須のホルモンですが、脳内で過剰に分泌されると、脳の「記憶」の回路で中心的な役割を担う「海馬」という部位が萎縮してしまうことがわかっています。
 このように、「よい祈り」は心と体の健康にプラスに働き、「悪い祈り」はマイナスに働くのです。

 『科学がつきとめた「運のいい人」』 第4章 より  中野信子:著  サンマーク出版:刊

「自分だけ良ければ」という利己的な祈りや、相手の不幸を願う祈り。
 そのようなものは、当然「悪い祈り」なので、逆にマイナスに作用します。
 また、心から思ってもみないことを祈りに付け足しても、脳は「それは偽善だ」と判断して、ポジティブな祈りにはなりません。
 他の人はだますことができても、自分自身の良心はだますことはできないということです。

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 中野先生は、結局、運というのは、その人がもともともっているものではなく、生まれつき決まっているものでもなく、その人の考え方と行動パターンによって変わるとおっしゃっています。
 最近の研究では、脳のニューロン(神経細胞)が新しく生まれていることも発見されています。
 新しい刺激を受けることで、脳の中はどんどん変化します。
 つまり、何歳になっても「運のいい脳」を育てることは可能だということです。

 中野先生は、「運のいい脳」にする方法として、「祈りを習慣化すること」を挙げています。
 朝は、未来に目を向けた「将来なりたい自分」「成し遂げたい目標」などについて集中して祈る。
 夜は、その日一日を振り返り反省し、そのために、今日は何ができたのか、と反省し、明日できることを考えて祈る。
 是非とも試してみたいですね。

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