【書評】『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』(石原加受子)
お薦めの本の紹介です。
石原加受子先生の『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』です。
石原加受子(いしはら・かずこ)先生は、心理カウンセラーです。
性格改善、対人関係、親子関係などのセミナーやグループワーク、カンセリングを20年以上続けておられ、その方面の著書も多数お書きになられています。
「自分中心心理学」で、もっと自分らしく生きられる!
「自分中心心理学」とは、「自分を愛し、自分を解放し、もっと楽に生きる」ことを目指す心理学です。 本書は、「しつこい怒り」が生じる原因やその対処法について、「自己中心心理学」の観点から分かりやすくまとめられた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「作り笑顔」は、自分本来の気持ちをごまかす行為
傷ついているはずなのに、つい、笑顔を作ってしまうことがあります。
いわゆる、“作り笑顔”ですね。
ふだんから“いい顔”をする人ほど、自分の本音とは関係なく、瞬時に作り笑顔で反応してしまいがちです。
石原先生は、作り笑顔で反応してしまうのは、その奥に“恐れ”が隠れているから
だと述べています。
自分にとって大きな問題と直面するのを恐れていたり、自分と向き合うのを恐れていたりするときに、その恐れから目を背けようとして、つい、笑ってしまうのです。
とりわけ対人関係においては、相手と争いが起こるのではないか、予測不可能なことが起こるのではないかといった恐れから、つい、笑顔を作って回避しようとするものです。
相手の顔色をうかがったり相手の動向を気にしたりして、相手のことで頭と心の中がいっぱいになってしまう「他者中心」の人ほど、恐れを回避するために、つい「作り笑い」をしてしまうでしょう。『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』 第1章 より 石原加受子:著 すばる舎:刊
石原先生は、トラブルになることを恐れて、いい顔をしたり笑顔を作ることが「さっさとわすれてしまいたいことなのに、なかなか忘れられない」自分を作っている
と指摘します。
「作り笑顔」は、自分本来の気持ちをごまかす行為です。
作り笑いでごまかした感情(小さな怒りや恐れなど)は、小さなものなので、なかなか自覚できません。
しかし、その時のスッキリしない気持ちは、実は解消されることなく、心の中に澱(おり)のように降り積もっていきます。
そして、それが大きな「しつこい怒り」に成長してしまうのです。
相手は「表情」より裏の「感情」をキャッチする
いい顔をする。作り笑いをする。
そのような行為は、固定化された言動パターンの一つです。
その言動パターンは、自分の“信念”から派生しています。
この信念が変わらない限り、そこから生み出される言動パターンも変わりません。
結局、「あのとき~であったら・・・かもしれないのに」という後悔や怒りを、自分の中に溜め込み続け、「しつこい怒り」に苦しみ続けます。
「~であったら」「~でさえなかったら」という発想にはきりがありません。
この上司がいなければ。この同僚さえいなければ。こんな親でさえなかったら。この人と結婚さえしていなければ。子どもさえ産んでいれば。逆に、この子供さえいなかったら。
この発想のどこがあなたを苦しめてしまうのでしょうか。
それは、あなた自身が「いまを生きていない」ということです。
「いまを生きることができない」から、あなたの思いは過去や未来に飛び、過去のことが思い出されては後悔し、未来に期待してもそれも「とても叶わない望み」のような気がして、また過去を悔やむという悪循環に陥っていくのです。
思い出したくないのに、思い出して、しょっちゅうつらくなる。
あのときあの場面、あの人、あの一言に、どうしようもなく腹が立つ。
そんな状態から脱出するには、「いまを生きる」スキルを知る必要があります。『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』 第1章 より 石原加受子:著 すばる舎:刊
「しつこい怒り」を抱えて生きている人は、「自分の過去」も一緒に抱えて生きている人です。
自分の過去とは、「過去の経験」やそこから生まれる「過去の考え方」「過去の言動パターン」など。
石原先生は、このような状態から脱出するには、「いまを生きる」スキルを知る必要がある
と述べています。
「いまを生きるスキル」が、「私を守る」「私を愛する」スキルになります。
「感情」はエネルギーである
自己中心心理学では、感情を「エネルギー」としてとらえています。
何か否定的なことを考えて、否定的な感情が起こったとしたら、それは、その否定的な思考が否定的な感情を“生産した”ということになります。
感情をエネルギーととらえるならば、マイナスのエネルギーへの対処法としては、「解消させる」という方法が最も効果的です。
石原先生は、「感情をコントロールしよう」とする発想は間違っている
と断言します。
それは、問題の取り残しや先送りで「どうしても忘れられない。許せない感情」を蓄積させていくだけ
です。
石原先生は、「感情をコントロールする方法」は「他者中心」の考え方、「感情を解消する方法」を「自分中心」の考え方
だと指摘します。
例として、道を譲ってほしいときに「どけ!どけ!邪魔だ」と言う場合と、「急ぎますので、お先に失礼」と言う場合を比較して以下のように述べています。
まず、「どけ!どけ!邪魔だ」と言うとき、自分の意識はどこにあるでしょうか。「(お前)が邪魔なんだ」というように、相手を見ています。
しかも、相手を敵だと無意識に思っているから「自分がちゃんと言葉で断れば、相手は道を空けてくれる」とは信じていません。
だから相手を蹴散らすように、「どけ!どけ!」と言いたくなって、脳内で怒りが増幅するのです。他方、「急ぎますので、お先に失礼」と言うとき、相手よりも、自分の欲求の方に焦点が当たっています。
そして、自分がそうしたいことを、ただシンプルに実行し、それを言葉にしています。そのとき「相手が自分の行く手を邪魔する敵だ」とも、思っていません。
もっと言えば、相手が自分の行く手を邪魔したいと思っていようが、空けてあげたいと思っていようが、それに対して気にしていません。「相手がどんな意識でいるかどうか」などと詮索する気持ちも抱いていません。
「私がそうしたい」からそうする。それを自分が心から認めているので、相手と戦ってそれを手に入れる必要がありません。相手(敵)を蹴散らさないと、前に進めないなどと思っていないのです。『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』 第2章 より 石原加受子:著 すばる舎:刊
石原先生は、「しつこい怒り」は、自分で考えている以上に根が深いもので、遡ると、自分の家庭環境、親子関係など、身近な環境の中での「傷ついてきた過去」にたどり着く
と指摘します。
つまり、どんな場面においても、無意識のところで、自分が過去に経験した実感と、その場面との実感が重なっているということです。
「現在の自分」は、「過去の自分」の延長線上にいます。
石原先生は、だからこそ、過去に戻らなくても、今の自分を変えることで、あなたは、過去の自分の痛みを癒すことができる
と指摘します。
「ありがとう」は相手のためではなく、自分のため
「他者中心」の人は、どうしても相手に「認めてほしい、受け入れてほしい」と必要以上に望んでしまいがちです。
そのような人に足りないのは、“自己信頼”です。
自己信頼感を高める方法の一つが、『「自分中心」の意識で感謝の言葉を発すること』です。
言葉もエネルギーです。感謝の言葉は”プラスのエネルギー”です。あなたがその言葉を発したとき、それを感じるのは、自分自身です。その言葉の語調が、あなたの肉体と心に”気持よく響いて”います。
もちろん、このときあなたBさんに対して述べる感謝の言葉は、あくまでも、卑屈な気持ちで言うのではなく、その言葉が「あなたの心と身体に気持ちよく響くような声」で言うことです。
あなたのその声の「気持ちよい響き」が、自己信頼の感覚なのです。
まさにその感謝は“人のためならず(自分のため)なのです。
(中略)
たったこんな小さな出来事でも、あなたが「自分で能動的に行動した」ことが、あなたをそんな気持ちにさせるのです。
これが「いま、自分ができることをする」ということです。『「しつこい怒り」が消えてなくなる本』 第3章 より 石原加受子:著 すばる舎:刊
自分自身を意識していると、発した感謝の言葉が、相手のためであるけれども、「ほんとうは、自分のためである」と気づきます。
「ありがとう」のあいさつひとつでも、どのような意識でするかで、自分の感情には大きな違いが生まれます。
言動の一つ一つを「自分中心」に考えて「自分から」やろうとする。
それだけで精神的なストレスは、かなり軽減されますね。
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「自分中心」になって、そのとき、その場面で自分の「小さな感情」を大事にする。
それができれば、しつこい感情が蓄積することはありません。
そのプロセスで、自分の感情を解消する気持ちのよさや解放感、満足感を味わうことができるので、自分への“自己信頼”も育っていきます。
「しつこい怒り」の正体。
それは、過去から今までに味わった、さまざまな「負の感情」が積もり積もったものです。
それらを氷解させるには、「自分を守る。自分を愛する」ことが何よりも大切です。
「自分中心心理学」は、そのような考え方を身につけるには、うってつけの考え方です。
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