【書評】『未来を発明するために今できること』(ティナ・シーリグ)

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 お薦めの本の紹介です。
 ティナ・シーリグさんの『未来を発明するために今できること』です。

 ティナ・シーリグさんは、米スタンフォード大学で神経科学の博士号を取得し、現在は同大学工学部に所属するSTVP(スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム)の責任者を10年に渡って務めるかたわら、dスクールの愛称で呼ばれるハッソ・ブラットナー・デザイン研究所で、クリエイティビティとイノベーションを教えています。

「イノベーション・エンジン」を動かそう!


 シーリグさんは、クリエイティビティは高められると自信をもって断言できると述べています。

 ジャズミュージシャンやラップ歌手が即興の曲を作っている時は、判断をつかさどる前頭葉の活動が大幅に低下していた。

 シーリグさんは、この実験結果を例にとり、クリエイティブな人たちは、この機能を停止させるコツを身につけていて、アイデアが次々と溢れ出て、想像力をいきいきと働かせることができているためだと述べています。

 シーリグさんは、クリエイティビティは様々な要素が密接に絡み合い、影響を与え合うことで発揮されるとし、「イノベーション・モデル」という新しいモデルを提案しています。

 イノベーション・エンジンの内部は、知識、想像力、姿勢の三つで構成されています。
 ・知識は、想像力の燃料です。
 ・想像力は、知識をアイデアに変える触媒です。
 ・姿勢は、イノベーション・エンジンを動かす起爆剤です。

 イノベーション・エンジンの外部は、資源、環境、文化の三つで構成されています。
 ・資源とは、あなたが所属するコミュニティに存在するすべての資産です。
 ・環境とは、家庭や学校、職場など、あなたが過ごす場所を指します。
 ・文化とは、あなたが所属するコミュニティの集団思考、価値観、行動様式を指します。

 『未来を発明するために今できること』  はじめに より  ティナ・シーリグ:著  高遠裕子:訳  阪急コミュニケーションズ:刊

 イノベーション・エンジンは、上記の3つの内部要素と、3つの外部要素から構成されています。

 本書は、6つの部品がいかに連動して、影響し合いながら想像性を高めていくかを示し、「イノベーション・エンジン」を自力で起動させる方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「観察力」を発揮しよう!


 シーリグさんは、鋭い観察力は、身の周りに貴重な情報を発見する強力なスキルです。観察によって得られた知識は、想像力の源になると述べています。

 子どもは、もともと好奇心のかたまりで、観察魔であり、世界がどう動いているのかを知ろうとします。問題は、年を重ねるにつれて、生来の好奇心や観察眼にフタをしてしまうことなのです。世の中のことをわかった気になって、既に知っているパターンを追い求めてしまいます。パーム・コンピューティング社、ハンドスプリング社、ニューメトラ社の創業者のジェフ・ホーキンスは、著書の『考える脳 考えるコンピューター』(ランダムハウス講談社)で、こう言っています。「人間の脳は生来、パターン認識装置であり、目の前の現実と、こうあるべきだと考える像のギャップをつねに埋めようとする」。私たちは、将来経験することを予想するのが得意になると、予想した通りの経験をするようになるのです。
 自分が予想する以外のことに注意を向けるのは、かなりの努力を必要とします。自分が慣れた行動をしている場合は特にそうです。そこには三つの落とし穴があります。第一に、たとえば、決まった道を歩いたり、運転したりするなど、繰り返しの行動をしている時には、注意がおろそかになります。第二に、目の高さにあるものばかりに気を取られ、広く見渡すことができません。第三に、自分が期待しているものには目が向きますが、それに合わないと無視してしまいます。

 『未来を発明するために今できること』  第4章 より  ティナ・シーリグ:著  高遠裕子:訳  阪急コミュニケーションズ:刊

 観察とは、能動的なプロセスであり、それなりの努力が必要です。
 しかし、練習すれば、確実に、観察力は上がります。

 シーリグさんは、日々、五感を総動員して積極的に身の周りに関わり、そこで発見したことは、言葉にしたり、絵にしたり、写真に撮ったりするなどして記録することが必要だ述べています。

プレッシャーをアイデアの触媒にする


 月に向かうアポロ13号は、重大事故により、空気濾過装置が損傷を受けて、キャビン内に二酸化炭素が充満し始める危険な状態に陥ります。
 しかし、地上のエンジニアたちの必死の努力で、奇跡的に乗り切りました。

 シーリグさんは、この出来事を例に挙げ、迅速な対応が求められる大きなプレッシャーがかかる時ほど、クリエイティビティを発揮できる状況が生まれると述べています。

 こうした極端な例をヒントに、あらゆる環境で制約がどのように創造性を刺激するかを考えることができます。創業まもないベンチャー企業では、資金が足りず、人材も揃わないなか、短期間で製品を市場に投入しなければならない場合がほとんどです。大半のベンチャー企業にとって、こうした経営上の制約はじつはプラス要因であり、創造性を生み出す触媒なのです。
 ベンチャー・キャピタルのフラッドゲイト・ファンドのパートナー、アン・ミウラ・コーもこうした見方に同意します。制約は、全ての企業に必要なものであり、とくにベンチャー企業には必要だと強調します。制約がなければ、間違った戦略を追い続けるばかりで、なんとか目標を達成する方法を見つけようとはしません。経営資源が限られているからこそ、創業者は何かを達成するために何かをあきらめるという痛みを伴う決断を下し、工夫して問題を解決しようとするのです。必要なことをするために、したいことをあきらめざるをえません。制約がるので、徹底的に考え抜くようになり、物事に優先順位をつけ、革新的にならざるをえないのです。

 『未来を発明するために今できること』  第6章 より  ティナ・シーリグ:著  高遠裕子:訳  阪急コミュニケーションズ:刊

 有り余る時間や資金は、余裕のある生活を生み出します。
 しかし、クリエイティビティを発揮するときには、邪魔者となります。

 自分の能力を、より引き出す。
 そのためには、あえて慣れた環境を飛び出し、より過酷な舞台へ飛び込む必要があります。

 スポーツの世界でも、レベルの高い海外に活躍の場を求める選手が、後を絶ちません。
 それも、同じ理由ですね。

がんがん動いて、どんどん壊せ!


 発明家として有名なトーマス・エジソン。
 エジソンは、電球のフィラメントに、何千という材料を試した末に、ようやく発光する材料を探し当てます。

 そのときの有名な言葉が、次の言葉です。

「私は失敗したのではない。うまくいかない方法を1万通り見つけたのだ」

 シーリグさんは、これを引用して、つねにチャレンジし続ける姿勢の重要性を説いています。

 意識して欲しいのは、私たちは日々、何かしら実験しているということです。自己紹介したり、初めての料理を食べたりといった、単純なことでも、実験は実験です。つまり、予想外の結果にどう対処するかを練習し、そこから学ぶ機会が数多くあるわけです。訓練された科学者は、この点をよく知っているので、重要な疑問の答えを得るために、実験の設計に最善を尽くします。結果は二の次です。毎回の実験から有益な手がかりが得られ、理解が深まりことを知っているのです。こんな諺があります。「天才とは、失敗を最短期間で最大限に生かせることのできる人間のことである」。実験が上手くいかなくても、データが得られ、何かしら新しいことを学ぶ機会が得られるのです。科学者にならって、自分が予想しなかった結果が出た時に、失敗したと考えるのはやめましょう。「失敗」は「データ」なのだと、言葉を変えることによって、試してみようという意欲は高まります。これは大発見です!

 『未来を発明するために今できること』  第9章 より  ティナ・シーリグ:著  高遠裕子:訳  阪急コミュニケーションズ:刊

 何事も試してみなければ、本当のところはわかりません。
 新しいことを始めようというのなら、なおさらですね。

 つねに新しい発見をしようと意識し続けること。
 それがクリエイティビティを身につける大きなカギです。

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 財政問題や産業構造問題など、多くの課題を抱える日本。
 追い討ちをかけて東日本大震災が発生し、まさに、崖っぷちに追い込まれている状況です。

 しかし、そのような状況だからこそ、「イノベーション・エンジン」が働く環境が整っているとも言えます。

 一人ひとりの「イノベーション・エンジン」が動き出し、クリエイティビティが高まる。
 それらが合わさることで、この国の“未来”が“発明”されます。

 最大のピンチは、最大のチャンスでもあります。
 失敗やリスクを恐れずに、この困難な時代を乗り切っていきたいですね。

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