本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『世界を歩いて考えよう!』(ちきりん)

 お薦めの本の紹介です。
 ちきりんさんの「世界を歩いて考えよう!」です。

 ちきりん(@InsideCHIKIRIN)さんは、関西出身の「おちゃらけ社会派」のブロガーです。
 2005年から書き始めている彼女のブログ「Chikirinの日記」は、月間100万回以上のページビューを獲得している超人気ブロガーのお一人です。

「旅をすること」の意義

 海外旅行をする醍醐味。
 それは、国によってどれほど常識が異なるかを知ることです。

 ちきりんさんは、この「同じことを全く異なる視点から見る世界の存在」に気がつくことが何よりも楽しい、と述べています。

 一例として、レストランで出てくる紅茶を挙げています。

 特に中進国以下の国における、比較的高級なレストランではよくあることです。そして、もちろん私もそうでしたが、これを初めて見た日本人の大半は驚き、「なぜこのレストランは、こんな変な形で客に紅茶を出すんだろう?」と不思議に思うのです。
 私たちの頭の中に「ティーバッグを使うのは、リーフで紅茶を作るのに比べて手抜きである」という感覚があるからです。
(中略)
 ところがこういった紅茶を出す店側の常識は、これとは全く異なります。まず彼らにとって、ティーバッグは茶葉より高級品です。
 それに対して「ティーバッグ」形式で売られているのは、欧米や日本から輸入された舶来モノのお茶です。
 だからいいレストランほど「うちは茶葉ではなく、ティーバッグを使っていますよ!」とアピールしたがるというわけです。
 さらに、ティーバッグの封を開け、紅茶を作ってから客のテーブルに運ぶ方式を採らないことにも理由があります。それは彼らにとって「リプトン」がグローバルな高級ブランドだからです。

  「世界を歩いて考えよう」 はじめに より  ちきりん:著  大和書房:刊

 たしかに驚きですね。

 本書は、“社会派”ちきりんさんが、20年以上に渡り、世界を歩きながら「自分のアタマで考えた」ユニークな発想や感想をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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自国通貨を欲しがらない人達

「通貨」についてです。
 日本人は、普段の生活で、お金を「円」以外の通貨を替えて使うことは、ほとんどありません。

 しかし、海外では、様子がまったく違います。

 80年代のインドなど、発展途上国を旅行して感じたこと、それは「自国通貨より遙かにドルを欲しがる国」がたくさんあるということに気が付きました。それらの国では、自国通貨では価値あるものが手に入らないのです。

 こういった経験をすると、自分が「自国通貨を信頼できる国」に住んでいることのありがたみを強く感じます。よく考えてみると、国際市場で自由に両替可能な 「ハードカレンシー」持っている国はそんなに多くはないのです。普通に働くだけでそういった通貨が得られる国で生活していることの有利さは、普段は意識もしないけれども、実はものすごく恵まれたことなのです。
 これらの経験もあり、ちきりんには輸出に有利という理由で円安を歓迎する風潮が今も理解できません。自国通貨への国際的な評価が高いことは、決して嫌がるようなことではなく、心から誇りに思うべきことなのです。

  「世界を歩いて考えよう」 第1章 より  ちきりん:著  大和書房:刊

 言われてみれば、その通りです。

 強い通貨の国に住んでいる、ありがたさ。
 それは、その通貨の通用しない他の国に行かないと、実感できません。

 やはり、日本人は世界から見ると、相当恵まれています。
 円高を嘆いてばかりはいられませんね。

恵まれすぎの南欧諸国

 今、世界的に注目されている、ギリシャやスペインなどの債務危機に苦しむ南欧の国々についてです。

 ユーロ危機で取りざたされている国には、ギリシャ、ポルトガル、スペインなど南欧の国が多いのですが、実はこういった国々は、すばらしく豊かな国ばかりです。まずは、どこも食事がすばらしいです。
(中略)
 また、太陽の光の量の違いも圧倒的です。旅行者として北欧に白夜やオーロラを見に行くのは楽しいでしょうが、あんな日照時間が短いところに住むのは気が進みません。反対に、ポルトガル、スペイン、ギリシャや南イタリアの日差しは、おどろくほど明るくて暖かく、ひなたぼっこをしているだけでリラックスできます。
 加えて、みんなペースがゆっくりでセコセコしていません。分刻みのスケジュールで動くのが好きな人には向いていませんが、日々のランチにさえ2時間もかけるなど、のんびり過ごしたい人にはぴったりのスローモードです。また、必ずしも収入が高そうでもないのに、涼しい高原に「夏の家」を、暖かい場所に「冬の家」を持ち、長期休暇に数週間の別荘生活を楽しむ人達を見ていると、経済力とは異なる生活の豊かさを感じます。

  「世界を歩いて考えよう」 第8章 より  ちきりん:著  大和書房:刊

 地中海沿岸の気候の素晴らしさ、食べ物の美味しさは、世界的に有名です。
 そういうところに住む人々は、考え方もゆったりと大らかになるのでしょう。
 ある意味仕方がないのかも、とも思いますね。

 とすると、環境に恵まれすぎるのも考えもの、といえるかもしれません。

「光」と「水」のありがたさ

 いま日本でホットな話題、電力つまり「光」と、これから多方面でクローズアップされるであろう「水」のありがたさについてです。
 これらについても、日本の豊かさを実感できます。

 海外を旅すると、日本の安全さ、豊かさを痛感しますが、その中でも豊かさと貧しさを強烈に分けるのは「光」と「水」の存在でしょう。
(中略)
 プノンペンで「完全な闇夜」を経験した時、私は自分が「闇がどんなものか知らなかった」と気づきました。何も見えない世界で、一歩先に何があるのかわからない状態、誰かが、何かが、突然あらわれるかもしれないという不安が、あんなに恐ろしいものだとは知らなかったです。
 日が沈むと完全な闇夜となる国に行って、私は「光が人に与えているもの」を理解しました。火や電気を使うようになって、私たちは「闇の恐怖」から解き放たれたのです。
(中略)
 飲料以外の用途でも水は人の命を左右します。水が不自由なエリアでは、レストランの料理人でさえ手を洗うのに苦労するし、お皿やカトラリー(フォークやナイフ)も流水で洗うことができません。ケガをした時に衛生的な水ですぐに洗えないと、たとえ擦りむいただけでも化膿する可能性が高まるし、きれいな水が手に入らない街で手術が必要な事故に遭えば、治療の安全性も保たれないでしょう。

  「世界を歩いて考えよう」 第10章 より  ちきりん:著  大和書房:刊

「完全な闇夜の世界」に「道端の水売りの水」。
 完全な未体験ゾーンで興味はありますが、体験したくはないですね。

 原発問題に限らず、日本のライフラインの脆弱さは、いろいろな方面から指摘されています。

「電力」と「水」の確保。
 今後の日本のエネルギー資源確保とインフラ整備の、大きな課題です。

若者の海外旅行離れについて

 ちきりんさんは、若者の海外旅行離れについて、「それが大きな問題だとは思っていない」と述べています。

 今、世界中を旅行し始めている中国人同様、昔の日本人も欧州、米国など遠く離れた国まで旅行に出かけていました。けれど今は日本人の旅行先も、中国、韓国など近隣諸国が消えています。近場の国や自国で、美味しい食事や面白いエンターテイメントが堪能できるなら、10時間以上も飛行機に乗って別大陸まで旅行に行く必要はないと考えるのも、ごく自然なことなのです。
 つまり私は、日本の若者が昔ほど海外旅行をしなくなったのは、日本が楽しい、いい国になったからだと思っているのです。若者が好きなコト、熱中するモノは時代によって変わります。若い人がネット・コミュニティやゲームに時間を使うことが海外旅行より好きだとしたら、それはそこに次世代の可能性、すなわち未来があると、彼らが感じとっているからです。それをむりやり「海外旅行へ行け!」というのは、団塊世代、バブル世代のエゴにすぎません。

「何かを学ぶため、視野を広げるため、成長するため、強くなるため」に旅行するなんて邪道です。「楽しい、わくわくする、おもしろい、また行きたい!」そう思える人だけで海外旅行を楽しみましょう。

  「世界を歩いて考えよう」 あとがきにかえて より  ちきりん:著  大和書房:刊

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 海外旅行に興味を持つ、日本の若者が減った。
 それは、日本が昔よりも豊かになった証拠とも受け取れます。

 苦労して遠い海外まで行かなくても、楽しい場所は、いくらでも日本の国内にあります。

 でも、海外に行くことでしか得られない体験も、たくさんあります。

 感度を高くして、好奇心を持ち、その土地のすべてを自分の肌で感じる。
 すると、日本にいるだけでは見えないものが見えてきます。

 今は歴史的な円高。
 日本人が海外旅行するには、絶好のチャンスと言えるでしょう。

 興味のある方は、本書を参考に、日本を飛び出して異なる常識に触れてみてはいかがでしょうか。

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