本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『しあわせになれる「はたらきかた」』(武田双雲)

 お薦めの本の紹介です。
 武田双雲さんの『しあわせになれる「はたらきかた」』です。

 武田双雲(たけだ・そううん)さん(@souuntakeda)は、書道家です。
 独自の世界観で、全国で個展や講演活動などを行われるなど、多方面でご活躍中です。

しあわせになれる「はたらきかた」とは?

 武田さんは、人が仕事を通じて幸せになるための最大のポイントは、“仕事を楽しむ”ことにあると述べています。

 人は仕事を頑張るものだと思っていますよね。仕事で成果を出すにはいろんなことを我慢して頑張って努力しなければならないと思っています。そして仕事にはそれだけの価値があると思い込んでいる。
 でも、僕は自分の体験を通じて、そういう世の中の常識や思い込みに、疑問を持っているのです。
 頑(かたく)なに張(は)ると書いて頑張る。頑張るからこそうまくいかないこともあるんじゃないか、と。

 いい仕事とは気持ちいい生き方ができているときに残せるものです。
 日常生活でつまらないとか、面白くないと言っている人が、仕事だけはきらきら輝くような成果を出せるとは、想像しにくいですよね。ましてやトラブルを抱えているような人は、仕事に集中できるはずもありません。
 ということは、やっぱりいい仕事をするためには、仕事をしていない時間こそが大切、仕事が楽しいと感じられる生活をすることが近道なのではないかと思うのです。

 そのことを僕は書道からも学びました。
「書は人なり」という言葉があります。書にはそれを書く人の人柄やその時の感情、つまりは生き様がストレートに反映されます。そういう意味では、書道家としての活動は、人としてよりよい生き方を探り、深めていく歩みでもあります。
 僕が書道家になったのは、自分の書でより多くの人に勇気や感動を伝えたいと思ったからです。そのためにはまず書き手である僕自身が感動や勇気や喜びに溢れた人間でなければならない。それが僕の信条です。
 毎日をどうすればもっと楽しく生きられるか、どうすればもっと感動しながら働けるか、というのは、僕にとって人生のテーマとも言うべきものなのです。
 だからこそ毎日の小さなチャレンジを、真剣に楽しみながら積み重ねてきました。その甲斐があって、今は朝から晩まで、起きている時間のほとんどが楽しくてしかたがありません。
 そんなありがたい生活を送ることができるのも、僕が書道だけを頑張ろうとしなかったからだと思います。

『しあわせになれる「はたらきかた」』 イントロダクション より 武田双雲:著 ぴあ:刊

 仕事していない時間を楽しい時間にすることで、仕事している時間も充実したものなる。
 仕事が充実し、楽しみが見いだせるようになると、仕事をしていない時間がより楽しくなる。

 そんな“しあわせのスパイラル”を描くことが、しあわせな人生を送る秘訣です。

 本書は、“しあわせ探しの名人”、武田さんが実践した、しあわせになるための工夫の数々をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「リラックス&エンジョイ」で生きる

 武田さんの人生のビジョンは、「楽」という一文字の言葉です。

 楽という字は「らく」という意味と、「楽しい」という意味がありますよね。
 英語で言えば「リラックス&エンジョイ」。これが僕自身の生活ビジョンであり作品作りのテーマでもあります。
 作品を見てくださる人たちにも、毎日がゆったりとらくな気分で、一つひとつのことが楽しいと心から思える毎日を過ごしてもらいたい。
 そう願いながら毎日、筆を取り、一文字一文字を書いています。
 らく〜な気持ちでいられて、いつも楽しい気分で過ごせたら最高いえ、最幸だと思いませんか?
 もし僕自身が忙しくてピリピリしていて、書くことをまったく楽しめていないようでは、見る人になんの感動も伝えられない作品になってしまいます。
 だからこそ僕は日々、筆を持っていない時間の過ごし方を大切にしています。
 日常生活のあらゆること、それこそ朝起きた瞬間から、顔洗い、歯磨き、食事、入浴、子どもとの遊び、妻との会話、睡眠と、日常の一つひとつになるべくらく〜に、そして楽しくなるように工夫しながら生活しています。
 僕がこの本で一番、言いたいことは、仕事を頑張るより「楽しむ」ほうにシフトしようということです。
 これは私の実感ですが、今の仕事に満足していると胸を張って言える人の割合は、とても少ないように感じます。というより、そもそも「仕事を楽しむ」という感覚さえなくなっているように感じます。
 今よりずっと日本が貧しかった時代でも、「仕事が楽しい」という大人がけっこういました。僕が幼い頃を思い出しても、なんだか知らないけど、とても楽しそうに働く大人をよく見かけました。
 それが最近ではすっかり、この人楽しそうだな〜っていう大人の姿を見かけなくなりました。そのせいか、これから社会に巣立っていこうとする若い人たちも、なんとなく将来に夢を持てず、不安を増幅させているように見えます。
(中略)
 では、どうすれば楽しくなるのでしょうか。
 仕事そのものを見直したり、高度なスキルを身につけたりするのかなと思いますよね。それも間違いではないと思いますが、それだけでは仕事ができるようになっても「楽しい!」とはなりません。
 ではどうすればいいか。仕事以外のところを見直すことにあります。毎日のささいなことを丁寧に、楽しくしようと工夫するだけで、毎日は楽しく、充実してきます。心がうきうきワクワクした状態で生活していると、仕事も楽しくなっていくのです。
 遠いようでいて、実はこれが一番の近道なのです。

 『しあわせになれる「はたらきかた」』 第1章 より 武田双雲:著 ぴあ:刊

 ピンと張り詰めたゴムは、それ以上伸びることはありません。
 それどころか、無理矢理に伸ばそうとすると、切れてしまいます。

 引っ張る力を弛めることで、“遊び”ができ、自在に動くことができます。
 多少の強い力がかかっても、それを吸収する余力もできます。

 日常のすべてのことに「楽しみ」を感じて、体と心を「楽」にすること。
 それが、人生をしあわせで満たすための秘訣ですね。

目の前のことに全力集中

 自分の能力は、自分では測れません。
 誰でも、想像できないほどの潜在能力を秘めているものです。

 武田さんは、自分の本当の実力を知らないまま、最初から自分の人生を小さく見積もってしまうのはもったいないと述べています。

 では、自分の力に気づくために、どうすればいいのかというと、僕の経験から言うと、社会に出て一定の期間、目の前のことを全力で楽しむといいと思います。
 これは、すでに就職している人にも言えることです。今、与えられている仕事に打ち込んでみる。そうやって何かに打ち込んでいるうちに、「あ、これをやっていると超気持ちいい」とか「すごく楽しい」と感じるものが見つかるはずです。自分の心がうきうき、ワクワクするものがあなたの適性です。
 ある日、何かのきっかけで周囲の人から「おまえ、これ才能あるな」とさりげなく言ってもらえたりします。その瞬間こそ、あなたの才能が見出される時なのです。

 僕もNTTに勤務していた当時は、与えられたことをとことん楽しもうと一所懸命でした。先輩に渡すメモに愛情をこめようと筆ペンで書くようにしたらうわさが広がり、同じ部署の人から名前を書いてほしいと頼まれるようになりました。女性の年配の社員などに、武田君は字が上手いから、お客様に持っていく資料に名前を書いてほしいとよく頼まれたんです。
 ちょうどその頃、たまたまある人のために、僕が筆でその人の名前を書いた名刺を作ってあげたんですね。すると、人生でこんなに喜んでもらったことはないというくらいに喜んでもらえたんです。それが自分でも嬉しくてしかたがなかった。他の人にも作ってほしいとお願いされるようになりました。
 その時、ある人がぽろっと「武田君はこれで食っていけるよ!」って言ったのです。その言葉が僕の脳みそにバチっと刻まれました。あ、そうか、オレ、これで食っていけるのかって。
 結局、それがきっかけで僕は会社を辞め、独立しました。

 人は、やってて気持ちいいことや、人にものすごく喜んでもらえると、どんどんそれをやりたくなりますよね。別に努力しているつもりじゃなくて、楽しんでやっているだけなのに、気づいたらやっている。野球好きのバットの素振り、バンドのギタリストと同じようにいつの間にか上達してしまいます。そうするとまた周囲の人からも認められるようになります。そしてもっと楽しくなります。この好循環に入ると、人生はどんどんハッピーになっていきます。
 そして、この好循環に入るためにはまず、今自分に与えられている仕事を、たとえ最初は気が進まなくても、全力で楽しむことです。
 これが好きだというものに出会うまで、とにかく目の前のことに打ち込んでみてください。そうすることで、いつか自分に秘められた才能を発見することができると思います。

 『しあわせになれる「はたらきかた」』 第2章 より 武田双雲:著 ぴあ:刊

 全力で取り組んでみて初めて、物ごとの本質が見えてきます。
 深く追求することで、本当の意味での「楽しさ」が理解できるということです。

 何ごとも「目の前のことを全力で楽しむ」。
 つねに意識したいですね。

すべてのことを「道」にする

 日々の何気ない作業を、一つひとつを丁寧に扱う、極めてみる。
 武田さんは、そんなことから、日常は変わっていくと述べています。

 日常の諸事を道として極めていくことが、最幸の生き方に繋がっていくと僕は思っています。
 これはつまり、一つひとつのことを丁寧にするということです。
 丁寧というと、ゆっくりやることと混同する人もいますが、それはちょっと違います。
 書道家の書く作品も、勢いよく、ささっ、ぱっ、って感じで書いていますが、けっして雑なわけではありません。実は一つの打ち込み、線、はらいと、それぞれのパーツを見れば、とても丁寧に書かれています。
 F-1レーサーは、時速300キロを超えるスピードでもマシンを正確にコントロールしますよね。ちょっとでも雑なことをしたら、あっという間にクラッシュです。超高速でも運転はめちゃくちゃ丁寧です。
 ゆっくりやれば丁寧ということではなく、むしろ丁寧は最速なのです。

 一流のアスリートは、体の関節の一つひとつまでに神経を行き渡らせていると聞いたことがあります。一つひとつの関節や筋肉の動きを高めていくことで、全体として素人が驚くようなパフォーマンスを生んでいるわけです。
 僕は仕事のパフォーマンスを上げるのも、それとまったく同じことだと思っています。
 たとえば挨拶のクオリティを高めてみる。
 そうすると朝の挨拶一つも「おはようございます」だけじゃないということにも気づいたりします。
 相手によって「ざ〜〜す」って感じで右手を挙げて言ったほうが親しみが伝わっていいかもしれない。しかし違う場面では、きちんとお辞儀をしながら、「おはようございます」とゆっくり言うのがいいときもある。
 それぞれの場面で最高の「おはようございます」が言えるよう、朝の挨拶を極めてみる挨拶道があってもいいんじゃないでしょうか。
 いつも2時間かかる会議。もしかしたらもう少し丁寧に準備をしていれば、1時間で終えられるかもしれません。そんなふうに会議の進行を極めていく。これは会議道です。
 他にも「思い通りにならない理不尽な上司への対処道」とか「予算がないときのコスパPR戦略道」といった「道」もあれば、「営業業績が下がっているときのとっておき戦略道」なんていうのがあってもいいんじゃないでしょうか。
 そんなふうに、一つひとつを楽しみながら極めていく。その積み重ねがやがて大きな成果に繋がると僕は考えています。

『しあわせになれる「はたらきかた」』 第3章 より 武田双雲:著 ぴあ:刊

 同じことの繰り返しの退屈な作業も、それを極めるのは大変です。
 いかに素早くこなせるか、正確にこなせるか、突き詰めるほど難しくなります。

 工夫と鍛錬で、「道」を極める。
 その意識を持つことが、日々の生活を楽しむコツです。

「未来ビジョン」の描き方

 武田さんは、夢は大きければ大きいほど叶いやすいと述べています。

 たとえばサッカー選手になって海外のチームで活躍するとか、プロ野球選手になってメジャーで活躍するといった夢は、なかなか叶いませんよね。
 なぜなら、夢が小さいからです。
 いやいやこんなに大きな夢ってないでしょう! と言うかもしれません。
 でもこれくらいの夢、男の子なら誰もが一度は持つものじゃないですか。
 ということは、夢としてはありふれているのです。ありふれているからこそ、競争率が異常に高くなるのです。
 ですから「サッカー選手になって海外で活躍する」という夢は、大きな夢っていうより、競争率が高い夢なのです。「難しい夢」と「大きな夢」の違い、わかるでしょうか。
 大きな夢は競争率が低いので、叶いやすいのです。
 たとえば僕の場合、書道家になるときに描いたビジョンは、「書を通じて世界の人達をハッピーにしたい」というものでした。「書道×楽しい」の組み合わせです。
 これまで「書道」に「楽しさ」をかけ合わせる書道家はいませんでした。
 だからこそ、僕の活動はメディアやその他多くの人たちに名前を覚えていただき、テレビに出演させていただいたり、こうして本を書かせてもらったり、文化庁の要請で海外に日本文化を普及させる特使として、書の楽しさ、ハッピーを伝える場を与えてもらえるようになりました。そう、最初に頭に描いたビジョン(夢)は現実になったのです。
 もし僕が「権威ある書道展で最優秀賞を受賞する」とか「書道会のトップになる」という、誰もが思いつく目標を掲げていたとしたら、いつかは偉い書道家になれるかもしれませんが、楽しさを伝えるとか世界の人をハッピーにしたい、作品で感動してもらいたいというビジョン(夢)を叶えるまでには、もっともっと競争が必要で時間もかかったことでしょう。
 だって日本だけでも書道を志す人はたくさんいますし、世界には書の達人や偉人、天才がゴロゴロいます。その人たちとの競争に明け暮れていたら、世界の人たちに僕の作品をみてもらうまでにどれだけ闘わないといけないでしょうか。もしかしたら、途中で疲れ果てて、あきらめしまうかもしれません。
 たまたま日本にはこういうビジョンを持った書道家がいなかったからこそ、周囲の人たちが背中を押してくださったり、そのステージに引っ張り上げてもらえているのだと思います。

 『しあわせになれる「はたらきかた」』 第4章 より 武田双雲:著 ぴあ:刊

 みんなが叶えたい夢、競争率が高い夢が、大きな夢というわけではないのですね。

 大きな夢は、他の人が考えもしないような、独創的な夢のこと。
 競争に勝つことだけが、夢を叶える方法ではありません。

 争わずに勝つことが、夢を叶える最善の道です。
 想像の翼を広げ、自分にしかできない、大きな「夢」を描きましょう。

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 しあわせは、努力に努力を積み重ねて、手に入れるもの。
 そう信じている人も多いことでしょう。
 しかし、武田さんはまったく違う方法で、しあわせになることを提案されています。

 繰り返される日々の生活や仕事のなかに、少しずつ「楽しみ」を増やしていくこと。
 それを積み重ねることで、心も体も「楽」になり、生活のすべてが「楽しみ」に変わります。

 特別なことを始める必要はなく、ただ、取り組む姿勢や意識を前向きに変えるだけ。
 それだけで、しあわせ度は大きくアップし、生活のすべてか好転します。

 だれでも簡単にでき、効果抜群の双雲流“しあわせ探し”。
 皆さんも、ぜひ実践してみてください。

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