【書評】『人を動かす2』(D・カーネギー協会)

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 お薦めの本の紹介です。
 D・カーネギー協会の『人を動かす2:デジタル時代の人間関係の原則』です。

「人を動かすコミュニケーション」とは何か?


 デール・カーネギーが対人力の原則を記した歴史的名著、「人を動かす」を世に出したのは、1936年。
 以来、全世界で読み続けられるベストセラーとなり、80年近くのあいだに5000万人以上に読まれて多くの支持を集めてきました。

 時代は移り変わり、インターネットやソーシャルメディアの普及などIT技術の発達で、メッセージは一瞬で伝わり、コミュニケーションのメディアも多様になりました。

 それに伴い、言葉の間違いや誤解が大惨事を引き起こ危険性高まるなど、今まで以上に適切なコミュニケーション力が必要とされるようになりました。

 コミュニケーションは、たんに思考、意図、周囲の人間に関する結論などを人に伝えること。
 それは、「内側からあふれ出るもの」が、リーダーとそうでないものを分けると本書では述べられています。

 人を動かす力が最も大きくなるのは、次の二つの場合だ。

 1 あなたが何かしてあげたために、人があなたに従うとき。
 2 あなたの人柄のために、人があなたに従うとき。

 言いかえるなら、あなたの影響力が最高になるのは、気前のいいあなたが信頼感にあふれる行動をとるときだ。そういう行動が、相手が2人だろうが200万人だろうが、大きくて持続的な影響力をもたせる。ただし両者がお互いに利益を得るには、気前のよさと信頼感が、上手に確実に伝わらなければならない。
 有名人の影響力がたやすく借りられて、ただ声が大きいだけでメディアに取り上げられるこの時代には、コミュニケーションの機会の一つひとつを大事にすることが、それだけ重要になる。すなわち、あなたのあらゆるコミュニケーションが信頼を築き、感謝を伝え、受け手に価値あるものを運ぶメッセージで満たされていることが重要となる。カーネギーの時代から変わっていないことのひとつは、借り物の(したがって持続しにくい)影響力と、自ら獲得した(深く根を張った)影響力とは、はっきりと違うことだ。カーネギーはもちろん獲得することの大家だった。
 彼の基本的な原則を思い出してほしい。批判せず、非難せず、小言も言わない。相手が関心をもっていることを話題にする。自分が間違っていたら、直ちにきっぱりと認める。相手の顔をつぶしてはいけない・・・・。こういう原則は、人を話し上手にも賢い評論家にもしない。これらの原則が語ることは、しゃべる前に相手のニーズを考えなさいということだ。難しい話題に誠実に、礼儀正しく取り組みなさいということだ。もっと温かくて謙虚なマネジャーや、配偶者や、同僚や、セールスパーソンや、親でありなさいということだ。結局のところこれらの原則は、人を動かせるのは演出や操作ではなく、深い敬意や思いやりや好意を表すことのできる本物の習慣だけだと言っているのである。
 その報酬は何か。豊かで長い友情であり、信頼できる取引であり、強いリーダーシップであり、そして今日の自分主義(ミーイズム)の氾濫のなかで、くっきりときわだつ、あなたというブランドだ。

 『人を動かす2』 はじめに より  D・カーネギー協会:著 片山陽子:訳 創元社:刊

 カーネギーの原則は、「思いやり」とか「共感の力」といった、「ソフトスキル」と呼ばれるもの。
 ソフトスキルは、しばしばプログラミングや営業や設計などのハードスキルの補足だと思われがちですが、それは逆です。

 ハードスキルを、生産性向上や組織力や利益に結びつけられるかどうか。
 それは、ソフトスキルの力で、周囲から熱意や努力や献身を引き出せるかにかかっています。

 本書は、「真心から」はじまる人間関係を説いたカーネギーの原則を、デジタル時代の現代に当てはめて理解し、役立てるための解説本の位置づけの一冊です。

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批判、非難をしないこと


 今日のコミュニケーションメディアでは、同情よりも批判が、ゆるしよりも裁きが幅を利かせています。

 他人に非があるとき、誰もが我先に「言う権利」を振りかざす。
 一方、自分の旗色が悪くなると、ふいに「沈黙の権利」のなかに逃げ込んでしまう。

 そんなことを繰り返すと、人間関係は「戦場」となります。

 人を動かすことのできる人、影響力のある人。
 彼らは、相手がどんなに間違っていようが、こうした無分別が人間関係を早々に壊してしまうことを知っています。

 世界がどれだけ言いたい放題になっても、メッセージを目立たせようとか、重要性やニュース性を増そうとして他人を非難することは、どんなときにも得策でもなければ必要でもない。今日、人に話をどこまで聴いてもらえるかは、自己責任と考えるのが最もいい。その責任を受け入れて、謙虚と思いやりと確かな熱意とを持って果たしていこうとする人々は、人よりずっと早く出世するだろう。みんなが話を聴こうとするからだ。会社でも家庭でも友人同士のあいだでも、最も尊敬される人というのは自分の考えをしっかりもちながら、同時に相手を思いやれる人間だ。そういう人々が他人の考えや行動を変え、私たちを動かしていく。
 言葉の威力で相手を変えようとすることは、場合によっては圧力とよばれ、犯罪になることがある。同僚や仲間や友達同士のあいだなら違法ではないかもしれないが、相手から悪い感情をもたれなくなければ、同様に考えたほうがいい。
 最も簡単なのは、相手ではなく自分のほうを改善することに集中することだ。

 『人を動かす2』 PART1 より  D・カーネギー協会:著 片山陽子:訳  創元社:刊

 批判は、相手を防御へ駆り立てます。
 いったん防御的になられると、そのあとどう取りなそうと、その壁を突破することはできません。
 こちらの言うことは、すべて疑われるか、信用されなくなります。

 批判的な発言は、目に見えないブーメランのように働き、投げた者の頭へ戻ってくる。
 それを忘れないようにしたいですね。

相手の関心事に関心をもつ


 人は自分自身に、他の何よりも興味があるものです。
 しかし、相手と仲良くなろうと思ったとき、最大のお荷物は、「自分本位」です。

 人間には、生来「闘うか逃げるか反応」(恐怖などのストレスに出会ったときの自律神経系の防衛反応)というものが組み込まれています。
 気をつけないと、人を自分のなかに閉じこもらせることになります。

 相手の関心を引きコミュニケーションを取るには、まず「相手の関心事に関心をもつこと」です。

 この「相手に関心をもつ」という原則の皮肉なところは、相手が自分のことを考えていないと役に立たないことだ。すなわち相手の利己心が根本的に必要になる。これについて言っておきたいことが二つある。
 第一には、純粋なかたちの利己心は、人間の特性のひとつだということだ。「闘うか逃げるか反応」という事実がそれを示している。だからこの原理は、私たちの生活のすべてに利己心が住みついていることを否定するものでは決してない。そうではなくて、たいていの人はたいていの時間、他人のことを忘れていると言っているのだ。たいていの人は利己心を自己中心主義にまで発展させている。だから人が日常的に自分以外の人間のことを考えようとすることはめったにない。そこにこの原則の意味がある。大方の人とは反対に、日常的に他人の関心事に関心をもとうとする人は、とても目立つことになる。私たちはそういう人を忘れない。そういう人と友達になり、より深く信頼するようになる。人を動かす力とは、結局は相手の信頼感の表れである。信頼されればされるほど、人を動かす力は大きくなる。
 第二には、この原理が目指すのは完全な自己否定ではないことである。相手の関心事を自分の関心事にしなさいとは言っていない。相手の関心事に関心をもちなさいと言っているのだ。そこにこの原則の秘密がある。他人の関心事をあなたのそれに組み込むと、たんにマーケットが明瞭になるとか、自分の聴衆の傾向がつかめるといったことだけではなく、他人のために何かをしながら、その過程であなた自身の関心も満たされていくのがわかるだろう。

 『人を動かす2』 PART2 より  D・カーネギー協会:著 片山陽子:訳  創元社:刊

 カーネギーも、利己心自体は否定していません。
 利己心を自己中心主義にまで発展させてしまうのが問題だ、ということです。
 相手の利己心を意識するということが、「相手の関心事に関心をもつ」ということにつながります。

まずは「ほめる」こと


 人間は、他人の長所やいいところより、短所や悪いところが目についてしまいます。

 批判に傾きがちな生来の傾向を認識して、他人のポジティブなところに注目する。
 そのことにより、私たちはその不都合な本能を克服できます。

 組織内で、ネガティブなことを伝えなければいけない。
 そんなときは、まず、ほめ言葉によって「あなたは組織にとって重要な存在だ」と伝えること。
 そうすれば、率直な話し合いのための明るい舞台ができます。

 では、どうすれば好ましくない話題で話し合いができるのか。いいところをほめられたあとなら、不愉快な話を聴かされてもあまり苦にならないことは想像がつく。だがほめ言葉がわざとらしかったり、ほめ言葉から唐突に批判へ変わったりすると、この方針は台なしになる。そうならないよう次のことに留意する。

 1 ほめ言葉は正直な、心からの言葉でなければならない。たんに批判の前置きではいけない。
 2 ほめ言葉から自然に次の話題へと話が流れていかなければならない。
 3 ほめ言葉のあとは、批判ではなく建設的なアドバイスをする。

 こういう話の仕方は、手紙やメールなどの書く文章ではなかなか難しいかもしれない。話題を滑らかに転換していく会話の自然な流れがないと、取ってつけたようなおせじに見えることがある。難しい話のときは、実際に顔を合わせて話をするべきだ。
 ほめ言葉で話をはじめても、「しかし」という言葉で話題を変える人が多いが、これはいまから批判をはじめるという信号だ。相手はこれを聞いたとたん、今までのほめ言葉は何だったのかと思うかもしれない。「しかし」のかわりに「で」とか「そこで」とか「だから」を使い批判ではなく建設的なアドバイスをする。これはおそらく文書でも効果的だ。ほめ言葉を裏切らずに問題に取り組むことができる。

 『人を動かす2』 PART4 より  D・カーネギー協会:著 片山陽子:訳  創元社:刊

 ほめられて嫌な気持ちになる人は、いません。
 人のいいところに注目すれば、話し合いも人間関係も、必ずいい方向へ向かいます。

 相手の欠点や短所には目をつむり、長所に目を向ける。
 日頃から、そのような意識を持っていたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 どんなに時代が変わろうとも、人と人との関係、コミュニケーションの基本は変わりません。
 長い時代の風雪に耐えて、今なお人々に読み継がれている名著には、普遍的な真理が多く含まれています。

 80年前のカーネギーの原則は、当時とコミュニケーションの方法が大きく変わった現代でも、十分通用するものです。
 それどころか、ハードスキルの進歩により個人個人の発信力が高まった今こそ、カーネギーの原則で強調されているソフトスキルの力がますます必要とされています。

 今こそ、「思いやり」「共感」といったコミュニケーションの原点に返るべきだと改めて実感させられる一冊です。


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