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【書評】『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』(上月マリア)

 お薦めの本の紹介です。
 上月マリアさんの『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』です。

 上月マリア(うえづき・まりあ)さんは、ノブレス・オブリージュ指導家です。
 由緒正しい日本古来の家に生まれ、日本とヨーロッパ両方の紳士淑女教育(ノブレス・オブリージュ)を受けて育ちました。
 真の国際人の養成を目的とし、紳士・淑女教育のサロンを開設、受講生は延べ2万5000人を超えています。

気配りは、誰にでも備わっている「コミュニケーション能力」

 上月さんが長年、各界の第一線で活躍するビジネスエリートと呼ばれる方たちと接して実感すること。
 それは、世間から「本物」と評される人であればあるほど「気配り」が見についているということです。

 気配りとは、「相手が何を望んでいるのかを知ろうとする心を持ち、状況に合わせたふるまいができる」ことです。

 気配りは、誰にでも備わっている「コミュニケーション能力」です。
 一定のルールやコツを知って実践することで、誰でも気配り上手になれます。

 国際化が進むこれからの社会では、ますます必要とされるスキルです。

 本書は、どんな場面でも礼儀知らずの「困った人」にならないための、社会人としての心の持ち方や考え方、立ち居ふるまい、基本的なルールなどをまとめた一冊です。
 その中からピックアップしていくつかご紹介します。

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どこでも、誰とでも仲よくできる「気配り」のルール

 上月さんは、人間関係でも国交でも、トラブルの根源には感情があると強調します。

 様々なトラブルのもとになる「人の感情」を害さずに、世界中の人々が仲良く過ごすためには、一定のルールや決まりごとが必要です。

 そのような観点から研究され、1000年以上かけて作られてきたものが「国際儀礼(プロトコール)」と呼ばれるものです。

 もともと、国際儀礼は、歴史は文化が異なる国同士の交流が円滑に行われるために生まれた世界共通のルールです。
 ここでいちばん大切にされているのが、お互いの地域の慣習や文化を尊重すること。つまり地域慣習・異文化への理解(Local customs respected)です。自分ももちろん大事だけれども、まず相手を理解しようと努め、それに合わせるということです。

 国際儀礼が「世界共通・人類共通の行動規範」とも言われるのは、こうした歴史ある理由からで、ゆえに、国際儀礼の基本を知ると、迷ったときに、何をどう考えればよいのかが分かり、適切な言動やスムーズなビジネスを実現するための環境づくりができるようになります。
(中略)
 人種、言葉、文化、生活、慣習が違うもの同士でも「お互いに気持ちよく過ごす」ために定められたルールは、日常でも使えますから、私は人としての「生き方」の土台になるものだと思っています。「気配り」を持って人を尊重し、相手の感情を害さないための考え方と形式・様式が整えられているからです。

 これを知って実践すれば、お互いに好感を持ち合い、安心してお付き合いできますから、非常に優れたコミュニケーション・スキルだとも言えます。
 また相手が国際儀礼を知らなくても、自分が知っておくことで、相手を不快にさせず、好感を持って受け入れられるので、結果的に信頼されるようになります。

  『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』  第1章 より 上月マリア:著  ダイヤモンド社:刊

 上月さんは、ヨーロッパ発祥の「国際儀礼」や「紳士淑女教育」と、日本古来の「礼儀作法」や「帝王学」には多くの共通点があると指摘します。

 日本人は、もともと気配りの上手な民族です。

 あとは、それに気づいて恥ずかしがらずに表現すること。
 そうすれば、国際的にも通用するマナーの良い人間になれるということです。

世界共通の「名刺のマナー」

「国際儀礼」などの気配りは、ビジネスの場面ではとくに重要となります。
 特に初対面での印象は、商談や交渉そのものに大きな影響を与えるものです。

「名刺」の取り扱いにも、日本でのローカル・ルールとは別に、世界共通のマナーがあります。

 また、初対面でのふるまいのうち、日本と海外との違いは何だと思いますか?
 それは、日本では「まず名刺を見る」のに対して、海外では、「まず相手を見る」ということです。
 随所でお伝えしていますが、国際社会では多民族で構成されており、ゆえに、人間性を見る習慣というものが、長い歴史の中ででき上がっているわけです。そしてその中で頭角を現し、キープし続けた人たちが、エグゼクティブです。観察眼が鋭く洞察力が深くなければ、エグゼクティブというポジションまで上がっていくことはできません。
 ですから、エグゼクティブは、自分の目に自信を持っています。もちろん、自分が見られていることも自覚しています。だから、身なりにも人一倍気を配っています。こうしたことは、今後、ビジネスがますますグローバル化する中では、ビジネスパーソンとして知っておくべきことでしょう。

  『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』  第2章 より 上月マリア:著  ダイヤモンド社:刊

「郷に入れば郷に従え」

 相手に不愉快な思いをさせないためにも、海外の人とやりとりするときには、相手や現地のやり方をよく見て合わせるようにしましょう。

その人の印象が9割決まる要素とは

 相手に好印象を与えるためには、見た目の清潔さとともに「声」のイメージが大事です。

 ある研究では、人の印象は“話し方” “顔の表情”で9割以上がつくられ、言葉そのものの影響力は1割にも満たないという結果が報告されています。

「声」は、言うまでもなく「音」です。
 それは、「響き」であり「波動」です。

 波動は、その場を作る要因であり、また、相手の脳にも自分の脳にも届き、脳の働き、感情や思考を左右します。

 一般的に世界標準のいい声というのは、低めで明るく落ち着いた声です。低めとは、位ということではありません。聞く人が安心感や信頼感を抱く「深み」や「優しさ」のある音です。そして、このいい声は誰にでも備わっています。その声を引き出すには、声の土台である体を整えること、つまり、正しい姿勢になり、正しい呼吸をすることが、人の心を開く魅力的な声を引き出すための基本です。
 では逆に「悪い声」とはどのような声でしょうか?
 これは、聞く側にとって、「声がキンキンと直線的できつい」「声のトーンが不自然」「なんだか嫌な感じ」といった類いの声です。いわゆる「のど声」です。こうした声を出していると、相手に強い印象や怖い印象、きつい印象を抱かれたり、心地悪いと思われたり、この人で大丈夫?信頼できる?などと不安を抱かれたりします。これは、ビジネスにおいても大きなデメリットとなるでしょう。

  『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』  第3章 より 上月マリア:著  ダイヤモンド社:刊

 上月さんは、自分の声や話し方を客観的に知るには、録音して聞いてみることがいちばんだと述べています。

 自分自身の声を聞くのは恥ずかしいし、なかなか勇気のいることです。
 ですが、最も有効な手段であることは間違いありません。

「いい声」は、身につけることができれば、一生ものの財産になります。
 試してみる価値はありますね。

「一回一動作」の習慣を心がける

 最後に、「立ち居ふるまい」についてです。
 ここでも日本とヨーロッパで多くの共通点があります。
 それは「ながら動作」をしない、「一回一動作」を心がけることです。

 日本の礼儀作法では、優雅で奥ゆかしい立ち居ふるまいとは、無駄な動作が最も少ない動きであるとされています。動作に無駄がないと、その姿は美しく見え、しかも心が落ち着きます。
 その反対に、一度にいくつものことをすることはタブーとしています。たとえば、日本の作法には「諸起(もろおこし)」というものがあります。これは、茶碗を受け取るときに両手を同時に出すことは避けましょうというマナーで、右手、左手とややタイミングをずらして手を差し出すと良いとされています。
 なぜ礼儀作法上において、ながら動作は慎むべきなのでしょうか。
 それは、私たち人間のあり方として一つ一つの動作に心を込めて行う「一意専心」「一所懸命」が大切であり、これは同時に、相手に対する思いやりのある親切なふるまいでもある、という考え方によるものです。
 この考え方の根底にあるものは、落ち着いた精神性を理想とし、それを探求してきた礼儀作法の歴史です。
 気持ちが落ち着くと自分のことも周りの状況も把握でき、相手の気持ちを慮ることができるようになります。

  『どんな場でも、「困った人」にならない気配りの習慣』  第4章 より 上月マリア:著  ダイヤモンド社:刊

 ビジネスのシーンでは、何かと慌ただしくバタバタして、つい「ながら動作」をしてしまいがちです。

 本物の品格を身につけるためには、気持ちは急いでいても、落ち着いて丁寧な行動が必要です。
 それがミスをしないための有効的な手段にもなります。

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 ルールや決まりは、ただ守るためにあるのではありません。
 そこに住んでいる人たちが、お互いに気持ちよく生活するためにあるものです。

 それはマナーや気配りでも一緒です。

「そうするように決まっているからやる」というだけでは、相手に伝わりません。
 かえって悪い印象を与えてしまうこともありえます。

「気配り」は、方法よりも気持ちが、まず大切です。
 相手のことを最優先で考えて行動すれば、それがそのままマナーになり、気配りになります。

「気配り」は「コミュニケーション」。
 つねに周りに気を配れる、余裕のある人間になりたいですね。

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