本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(中野信子)

お薦めの本の紹介です。
中野信子さんの『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』です。

世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた

中野信子(なかの・のぶこ)さんは、脳科学者・医学博士・認知科学者です。

世界で通用する「頭のいい人」に誰でもなれる!

中野さんは、東京大学を卒業し、大学院の博士課程では医学系研究科で脳神経医学を専攻しています。
その後、フランス国立研究所にポスドク(博士課程修了の研究者)として勤務し、MENSA(世界の全人口の上位2%の知能指数に入る人のみが入会を許される団体)の会員にもなりました。

 このような経験を経てきて、強く思ったことがあります。それは、逆境も自分の味方にして、したたかに生き抜いていくのが、「世界で通用する、本当に賢い人の要件」だということ。時に日本人には、それが足りていないのではと感じました。

たくさんの世界レベルの人たちに出会い、そこから私が得た結論は次の通り。
「『世界で通用する頭のいい人』というのは、ただの秀才ではない」

例えば彼らは、「空気を読まない」「敵を味方にする」「ストレスを自分に与える」など、ちょっとした非常識だったり一見大人げないことをしてみたりすることで、周りを自分のペースに巻き込んでいく力を持っています。
実はこうしたことは、彼らのように、優秀な頭脳を持つ人だけにしかできないことではありません。ちょっと練習は必要かもしれませんが、簡単なコツやテクニックで習得できるものです。頭のいい悪いは、関係ありません。少し意識を変えるだけで、誰にでも今日からできることなのです。

さらに、脳を研究してきた端くれとして、彼ら「世界で通用する頭のいい人」がやってきたことが、脳のメカニズムから見ても理にかなっていることをお伝えしたいと思います。
本書で登場する人たちは皆、世界で評価されて優秀な成果を収めてきた人ばかりです。

本書が皆さんの仕事、勉強、そして人生をより楽しんでいくことのお役に立つのであれば、これほど嬉しいことはありません。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 プロローグ より 中野信子:著 アスコム:刊

本書は、中野さんが出会った、世界中の「頭のいい人」の習慣やノウハウを、脳科学的な知見を交えてわかりやすくまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

スポンサーリンク
[ad#kiji-naka-1]

空気は読まない!

中野さんは、世界で活躍している人には、実はKY(空気が読めない)人が多いのも事実だと述べています。

 私の先輩に、Sさんという日本人の研究者がいます。Sさんは日本だけでなく、ヨーロッパでも高い評価を得ていますが、「空気を読まない」ことで己を貫いています。
(中略)
「自分の得意なものが何なのかをよく知っており、自分が苦手なことはやらない」
つまり、
「周囲に自分を合わせるのではなく、周囲が自分に合わせるようにする」
これがSさんの最大の特徴でした。

Sさんは人の意向に自分を合わせるということを、まったくしませんでした。
「苦手なものは苦手」と言って譲りません。またSさんは、苦手なところを克服するために時間や労力を使うのではなく、自分の得意なところをブラッシュアップするために使うのに徹していました。
そして、「これはできそうもないな」という部分は、自分でやることを避けていました。得意な人を探してその人に任せるという方法で、苦手なところをカバーしていたのです。

実はこの方法、良い結果を出すには、非常に理にかなっています。
まず、自分が苦手なところをフォローしてもらうためには、他の人を頼りにします。人は誰かに頼りにされると嬉しいものなので、基本的には喜んで引き受けてくれます。
一方、自分が得意なことには、自分の能力をフルに発揮します。
結果的に、自分にも、協力した人間にも、素晴らしい成果がついてきます。

これは、Sさんが自分の得意分野を、「誰にも真似できないレベル」にまで高めていたからこそできることでもありました。「どんな仕事でも60点レベルで、無難にこなせる」より、「この仕事を90点以上のハイレベルでできるのは自分だけ」というものを徹底的に活かすわけです。
そして、「自分では30点以下のレベルでしかできない」ことは、「90点以上のレベルでできる人」を探してきて、その人に任せればいいという考え方です。

この方法は、何でも一人でやろうとする「ゼネラリスト傾向」の強い日本人にはやや抵抗があるかもしれません。ですが、ちょっと思考法を変えるだけで、誰にでも実行できる方法でもあるのです。
そして、結果的に、自分も相手もいい思いができる。さらに、「あの人ってすごいね!」と高い評価を受けることにもなるのです。
(中略)
オールマイティになれることなんて、めったにないのです。
野球を例にしましょう。豪速球や変化球が自在に投げられ、ホームランを多く打てて、足が速くて、守備もうまいなんてことは稀でしょう。人はだれでも、得意・不得意があるもの。自分が不得意なところまで無理してカバーするよりも、得意なところを伸ばすほうがいい結果を出せますし、何より自分が楽しめるはずです。

Sさんは現在、国立大学の医学部で40歳そこそこにして准教授。しかも、哲学や音楽にものめり込むなど、好きなことばかりしています。いわゆる、よくありがちな「学者バカ」的なタイプとは一味違う研究者でしょう。
また、ヨーロッパ時代の先生や同僚とは、今でも交流を持っています。国境を越えて共同研究を積極的に展開するなど、仕事の上でつながりがあるのはもちろん、人間的にも一目置かれ、友人としてもリスペクトされています。

「空気を読まない」というと、「周囲に気遣っていない」だとか「わがままだ!」というイメージがあるかもしれません。でも、周囲に迷惑をかけたり不快な思いをさせたりするとは限らないのです。
Sさんの場合は、彼を助ける仲間がいい思いをするわけですから、空気を読まないことがむしろプラスに働いています。
「得意なことだけを貫く」。これは一見自己中(ジコチュー)なようですが、好結果を残すには大事な要素。これを実践しているSさんこそ、「世界で活躍できる頭のいい人」だと思うのです。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 CHAPTER 01 より 中野信子:著 アスコム:刊

自分の長所・武器を徹底的に伸ばし、逆に、苦手なことは引き受けず、他の人に任せる。
それがスペシャリスト「替えの利かない人材」への道です。

周りにいる人の心をつかんで味方にしていくには?

中野さんは、輝いている人は、必ずといっていいほど、豊かな人脈を持っていると述べています。

彼ら彼女らは、いい人材を集め、いい友人を惹きつけるために、人の何倍も、何十倍も、心を砕いているとのこと。

中野さんは、その一例として、大学院で音楽理論を学び、作曲家として活躍するフランス系ユダヤ人のAさんを紹介しています。

 頭の回転がとても速い人で、人を飽きさせるということがありません。絶世の美女というタイプではありませんが、小柄で愛嬌があります。いつも楽しいことを探していくようなキラキラした瞳と、かわいらしい容姿とは対照的な低めのセクシーな声が彼女の魅力です。

音楽分野で活躍していくには、自分一人がいい作品を書くだけでは不十分。演奏家、プロデューサー、音響など、様々な人の協力を仰ぐ必要があるということは、私が指摘するまでもないことです。
そこでAさんは、自分が作曲家として技術を磨くだけでなく、周りにいる人の心をつかみ、虜にするための努力をひそかに続けています。

周りにいる人の心をつかんで味方にしていくというワザは、音楽分野に限らず、どんな仕事をする上でも役に立つスキルでしょう。ただ、役に立つことはわかっていても、そのためにはどうしたらいいのか、すぐには思いつかないものかもしれません。

Aさんが実行していたのは、相手の「自尊心」をうまくくすぐることでした。つまり彼女は、とても褒め上手だったのです。

人間は「理解されたい」と思うもの。また、自分を深く理解してくれる人に対して、感謝の気持ちを抱き、その感謝の心を示したいと思うものです。
科学的にいうと、人間は「給料が上がる」「宝くじが当たる」などの「金銭的報酬」と同様に、「あの人はすごい!」と誰かに認められるといった「社会的報酬」を求める生き物です。脳には報酬系と呼ばれる部位があり、ある刺激によって報酬系の活動が高まると、大きな快感を覚えるということがわかっています。

また、報酬系は女性よりも男性のほうがずっと活発な活動をしています。つまり、一般的に男性が女性よりも出世欲が高い傾向にあったり、縄張り意識があったりというのは、この社会的報酬を求める衝動、自尊心を満たそうとする傾向がより強い、ということにほかなりません。

では相手の自尊心を満たしていくにはどうすればよいでのでしょうか。
Aさんはまず、相手の話をよく聞くことを心がけていました。ここで重要なポイントは、「この人は自分のことをよく理解しようとしてくれている」という信頼感を持ってもらうことです。話を聞く力をつけることが、相手の心をつかむ第一歩になるでしょう。

しかし、ここで失敗すると、相手はがっかりしてしまうのと同時に、あなたに対して味方になるどころか、マイナスの感情を抱きます。「自分の話を聞いてくれないのは、自分が『大したことない人』だと思われているからだ。こんな人の言うことなんか、聞いてやる義理はない」と。
なんといっても難しいのは、相手の話を聞いて、それに沿った形で、相手が満足するようにその人を褒めることです。
例えば、東大生が「頭がいいんですね」と褒められたとします。でもその東大生は、あまり褒められた感じがしないでしょう。
小さい頃からそんなことは言われ慣れているし、「自分は試験勉強が得意なだけで、そんなに頭がいいわけではない」と考えている人も少なくないからです。また、頭のいい人がたくさんいる環境にいる機会が多かったでしょうから、そこでもし、自分より頭のいい人を見慣れていたら、「そんな人と比べれば、自分の頭の良さはそれほどじゃない」と感じる可能性もあります。「自分は本当の意味で頭がいいとは言えない・・・・・。でも、そんなことを言ったら『嫌味』だと思われやしないだろうか」とまで考えてしまうことも。それに、成績が良いことで、逆にいじめられた経験がある人もいるかもしれません。

「この人は上っ面のことばかり言っていて、自分のことを理解してくれていないんだ」と、悲しい気持ちになってしまう東大生もいるでしょう。

では、本当に褒めるのがうまい人は、どうやって褒めるのでしょうか?
やはり、相手をしっかり観察してあげることが基本となります。その人がもし、試験勉強とはまったく関係ない分野のエキスパート(「オタク」という言い方もできるかもしれませんが)だったとしたら、その分野のことを言葉を尽くして褒めてみます。

例えば、鉄道が好きな人なら「今度、九州に行こうと思っているんですよ。電車で移動しようと思っているんですが、何かオススメの電車ってあります? 〇〇さんなら、いい路線をいっぱい知っていると思いましたから」なんていう褒め方(持ち上げ方)ができると思います。また、文章が美しい人なら、「□□さんからメールがこないかな?って、いつも楽しみにしているんです。言葉の選び方にアートを感じるんでよすよね」褒めたりすることもできるでしょう。
学歴、肩書、勤め先といったネームバリューなど、表面的な部分を安易に褒めるのは、あまりおすすめできません。あなたが見つけた、その相手の素晴らしいところを、心を込めて褒めてあげる。そうすると「この人は自分のことを理解してくれている」と、その相手はぐっと、あなたに惹きつけられるのです。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 CHAPTER 02 より 中野信子:著 アスコム:刊

褒められて、嫌な気分になる人はいないでしょう。
ただ、褒め方には、コツがあるということですね。

ポイントは、「この人は自分のことをよく理解しようとしてくれている」という信頼感を持ってもらうこと。
私たちも、“頭のいい”褒め方をマスターしたいですね。

「やらないことリスト」を作る

ドイツ人のEさんは、神経内科の優秀な医師です。
彼女は、研究に対する意欲が高く、臨床もこなしながら、研究者としてのキャリアを積み上げていっている女性です。

Eさんの強みは、自分にプレッシャーをかけて最高のパフォーマンスを発揮していることです。

 自分のプレッシャーをかけることと関連するかもしれませんが、彼女は目標を達成するまでの制限時間というのを自分で定めていました。すると自動的に「やるべきこと」が明確になります。あとはただその「やるべきこと」をこなしていくだけです。
ただし、ここからが肝心なのですが、彼女がすごいのは、「やるべきこと」を考えると同時に、「やらないこと」を明確にしていたところにありました。Eさんが研究者としても医師としても一歩抜きん出て、皆に評価され、優れた成果をあげることができた秘訣は、この「やらないこと」を上手に見つけていくところにあったのです。

研究者の世界の話ではなく、もっと多くの人に身近な題材を例に説明します。
例えば、「TOEICで今年は800点以上を取ろう」という目標を決めたとします。「やるべきこと」は簡単ですよね。必要な教材を集めて勉強することです。
ただ、期限を今年中にすると、何でもかんでもやるとというわけにはいきません。そこで、「やらないこと」を、次に探さないといけないわけです。よくよく考えると当たり前のことなのですが、「やらないこと」まで最初に決める人は、意外と少ないでしょう。

では、どんなことをやめたらいいのでしょうか。
ありがちなのが、新しい参考書や問題集を買い続けること。買っただけで英語ができるようになった気分になってしまうのでしょうか。でも、教材を手元に置いておくだけでは点数は上がりません。つまり、こういう人は「新しい本を買う」のを「やらないこと」が必要です。

また、勉強するときにモチベーションが上がるからといって、勉強仲間を増やすのに精を出す人もいるようです。でも、800点以上をとるという目標からいえば、無駄が多い行動ともいえます。
目標はあくまで、スコアアップであり、勉強仲間を増やすことではないからです。仲間が増えたところで、勉強をしないと、当たり前ですが点数は上がりません。
驚くべきことに、満点を取った人など、ハイスコアの人と友だちになると、それだけで自分がハイスコアを取ったように錯覚してしまう人がいるようです。ウソのようですが、これはTOEICに限らず、大学受験などでもよくある話なのです。
ハイスコアの人と知り合いになれば、いい勉強法を教えてもらったり、刺激は受けるでしょうから、これはこれでいいことです。しかし、そのあとに自分で勉強をしないと、まったく意味がないのです。
つまり、こういう人が決めるべき「やらないこと」は、「目標達成にはまったく無意味な人付き合い」となります。

期限が決められた目標を達成するには、できるだけ「やること」の数を減らすべきです。それで余った時間や労力を、「やるべきこと」にまわす必要があるわけです。
「この問題集さえやれば大丈夫だから、これだけは3回繰り返して、モノにしよう」というやり方が効果的なのです。できる限り単純にするようにしないと、目標達成のための方法を探し続けているだけで、あっという間に一年が終わってしまいます。また、目標達成ができなかったのに、「目標達成のための方法論を調査した」ということに満足してしまっている人も意外に多いようです。実に残念なことです。

「やらないこと」を決める大切さを、わかっていただくことができたでしょうか。これを決めておかないと、目標達成のために「やること」はどんどん膨れ上がってしまい、1日24時間ではとてもじゃないけど足りなくなってしまいます。それで実現不能な計画を設定してしまい、「こんなの無理だ!」と目標を投げ出すことになります。しまいには、「できる人と私では、生まれつきの才能が違うんだ」という、非論理的な結論を導き出すことになってしまうのです。

やろうと思っていたんだけど、挫折してしまって・・・・・というのは、怠惰だからできないのではありません。こうして、やることがどんどん増えていってしまった結果、できなくなってしまうということも多いのです。
とはいえ、「やらないこと」をついやろうとしてしまうのも人間の性(さが)。プレッシャーがかかっていると特に、冷静な判断力を失って、自分に無理難題を課してしまうのは、よくあることかもしれません。

そこで、可能であれば、一日ごとに、「やるべきこと」「やらないこと」のチェックリストを作ることをオススメしたいと思います(下の図を参照)。これを一日の終わりにチェックすることで、「やらないこと」をしないようにする習慣をつけるのです。
TOEICの勉強でいえば、こんな感じです。
□目標達成の期限を切ったか?
□「やるべきこと」「やらないこと」を決めたか?
□必要のない問題集を買わなかったか?
□無意味な人脈構築に時間を割かなかったか?

また、チェックリストは、だんだん変わっていってもよいのです。前ページの最初の二つの項目は、目標を決めて行動し始めた頃に必要となるものですが、努力している途中ではあまり意味のないことになってしまうでしょう。そうしたら、「『やらないこと』をやっていないか?」に変えていきます。

普通、チェックリストとは、「何かをするためのもの」だと考えられていますが、実は「何かをしないためのもの」でもあるのです。
例えば、TOEICの勉強と称してFacebookで好みの外国人とのチャットに励む人もいます。でもこれは、長文読解や文法事項も問うTOEICの出題傾向からは、大きく外れている英語の勉強にしかならないのです。下心のある(かもしれない)相手とのなんちゃって英語チャットには、ほとんど効果がないことを理解しなければなりません。
チェックリストがあって、そこに「Facebookに時間を割かない」があれば、その時間をTOEICの点数アップで本当に必要な勉強に充てることができます。

目標達成のために何よりするべきことは、やるべきでないにもかかわらず普段からやってしまっていることを、「削り取る」ことなのです。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 CHAPTER 03 より 中野信子:著 アスコム:刊

図 やるべきこと リストと やらないこと リストの例 世界の 頭のいい人 がやっていること CHP 03
図.「やるべきこと」リストと「やらないこと」リストの例
(『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 CHAPTER 03 より抜粋)

限られた時間の中で、より効率的に学ぶ。
「やるべきことリスト」は、もちろん大切ですが、それ以上に重要なのが「やらないことリスト」です。

私たちが、普段、いかに意味のないことに多くの時間を費やしているか。
それを可視化することは、生産性を上げるための第一歩です。

「見た目」を大切にする。

「人は見かけによらない」という言葉があります。

中野さんは、この言葉は100%ウソだと思っていると述べています。

 20代の前半、私は見た目のことで随分不快な思いをしたものでした。確かに私は、絶世の美女というわけでもありませんし、仕方ないのかな・・・・・とも思いました。しかし、私の周りにいた、そう美人とはいえない人でも、外見で好感を持ってもらえることがあるという事実を目にして、何が違うのだろう?と考え始めていました。
私が外見で好感が持たれない理由は、顔立ちとかそういうことではないのだろうと思いました。そこで私が推測したのは、全体的に醸し出す雰囲気が、相手にとって快いものになっていないということ。
私はただでさえ、東京大学の、しかも理系の女子学生であるということから、先入観として相手の脳内に「怖そう」「やり込められそう」「生意気」「スキがない」というようなキーワードが並んでいたはずなのです。
それに加えて、実際に会ったときの雰囲気まで威圧的だったら、相手が私にいい印象を持てないのも当然ですよね。

でも、こんな分析をしてみたところで、最初はどうしたらよいのかわかりませんでした。なんとか小ぎれいな格好をするように努力してみたり、メイクを頑張ってみたりもしたのですが、「もしかして、今日、夜のバイトですか?」なんて言われてしまったり・・・・・。

「これはなんとかしなくては!」と、私がいよいよ焦り始めたのは、院試(大学院入試)のときのこと。名前を出すことはできませんが、ある有名国立大学で准教授になった年上の知人が、ポロッと院試の面接の裏事情を話してくれたことがあったのです。
「別に皆、研究計画書なんて読んでるわけじゃないんだよね。そもそも、『教授』といったって、自分の分野のこと以外わからないんだし。教授たちは、受験してくる女の子が美人だったら5(満点のこと)をつけるんだよ。受験生の話なんか聞いてない。僕、びっくりしたよ」と・・・・・。
私もびっくりしました。大学院がどこでもそうだとは限りませんけど、この話が、私が外見を真剣に考えるきっかけとなったのは間違いありません。本当に外見だけで合否が決まるかどうかはさて置き、これは、人間評価の心理について、真実の一面を物語る事実であると思ったのです。

運良く院試を突破したとしても、実際に大学院で教授が私の研究を評価するとき、研究内容の良し悪しより見た目で、研究を評価する傾向があるのではないか?と考え始めたのです。そうなると、外見が与える印象が悪ければ、いくら研究業績をあげてもその努力は割り引かれてしまうことになるのです。

私は、背もそんなに高くなく、日本人女性の平均的な身長ですし、体重も標準的(健康的ともいう・・・・・)で、痩せ型というわけではありません。モデルをしている女性のような、長身でスレンダーな美人になることは不可能です。また、顔立ちも特に際立った部分がないので、人気女優のような絶世の美女を目指すというのも無理のある話です。
そのような条件でも、「なんとか感じよくするにはどうすればよいか」ということを、私は必死に考え始めました。しかしそこで、小ぎれいにしておきたい気持ちのあまり「夜遊びに行くんですか?」なんて聞かれるようなことがあってはなりません。まして、院試の面接会場にそんな学生が来たら、教授たちは間違いなくその学生を落とすでしょう。

私ははじめに、教授たちが求める学生像について考えました。教授はどんな学生に来てほしいと思っているか、についてです。もちろん、学生には賢いことを求めているでしょう。また、教授の言うことを素直によく聞くこと。そして恐らく、努力家であること、信頼関係を持てそうな人間であることも大切なポイントでしょう。
このように考えたとき、高価で派手な衣服や靴、ブランド物は逆効果であると私は思いました。できるだけ、清楚で、賢そうであるという印象を持ってもらうために、なるべくシンプルで清潔感のある服装や髪型を心がけ、メイクもごくひかえめにしました。
また、私が受験したのは理系の大学院です。実験を頻繁に行う研究室では、特に爪を伸ばしていることが嫌われますから、爪はきれいに切って、マニキュアなどはひかえました。

院試は無事に突破することができました。試験には筆記試験もありましたから、見た目だけで合格というわけではなかったでしょう。でも、先生方に与える印象は悪くないようだという感触、またそのことによる安心感や自信のようなものが試験当日にはありました。それで、面接試験で落ち着いて話すこともできたのだと思っています。

とはいえ、私は気を抜くと、こうした清潔感のあるスタイルを忘れてしまい、ほとんど別人のようになってしまうことも、しょっちゅうありました。「オンとオフの差が激しいね」と、友だちに言われることもしばしばです。場面によってあまりにも雰囲気が違ったせいか、何度か会ったことのある知人なのに、「よろしくお願いします」と、名刺を渡されたことも・・・・・。
しかし裏を返せば、服装、髪型メイクなどを変えるだけで、まったく違う人のようになれるということでもあるのです。

「後背(ハロー)効果」という心理効果があるのを知っていますか? 外見や経歴が、性格などの内面的な要素と直接の関係があるわけではないのに、その人の評価に意外なほど影響を与えてしまうという心理効果です。「見た目が良いだけで、性格が良い、あるいは頭がいいと思われる」「学歴がきちんとしているだけで、人間性がきちんとしている印象を与える」などです。

さらに、アメリカの心理学者のレオナルド・ビックマンは、「身なりの違いがどのような反応の違いを生むか」に関する興味深い実験結果を報告しています。
まず、電話ボックス内のよく見える位置に、10セントコインを置いておきます。そして、誰かがボックスに入ってしばらくした後に、「10セントコインが置いてなかったか?」と尋ねるのです。
これに対して、ちゃんとした受け答えをしてコインを渡してくれた人の割合は、こちらの服装がきちんとしたものであった場合は8割弱。これに対して、汚らしい身なりであった場合は3割強と、大きな差が見られたのです。つまり、外見がだらしないと思われると、ナメた態度をとられやすくなるのです。

いかがでしょうか? 人は他人を評価するとき、こんなにも見た目を重視しているのです。「私は実力で勝負するから、見た目は関係ないの」と考えているあなたも、同じ実力の人間がいたら、見た目が少しでも良いほうが得なのです。
何も、整形手術を勧めているわけではありませんし、絶世の美女や超イケメンになる必要はないのです。ほんの少しでいいので、自分がなるべく良く見える髪型や、服装を研究してみてください。また、自分ができるだけ魅力的に見える顔も、練習してみてください。できれば笑顔がいいと思います。
そこに注意してみるだけで、印象をかなり変えることができます。そして徐々に、周りの人が好感を持って接してくれることも、実感できるのではないかと思います。

『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』 CHAPTER 04 より 中野信子:著 アスコム:刊

人間は「中身」が大事。
といっても、初対面の人にはなかなか伝わらないものです。

第一印象が悪ければ、自分の人となりを知ってもらう前に、相手との関係が切れてしまうこともあります。
そうなったら、いくら実力があっても、宝の持ち腐れです。

たかが「見た目」、されど「見た目」。

普段から、自分が「こう見られたい」という印象を与えるような身だしなみを意識したいですね。

スポンサーリンク
[ad#kiji-shita-1]
☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

日本人は、謙虚であることが美徳だという意識が強いです。
それはもちろん長所ではありますが、自分自身を過小評価してしまうという短所にもつながります。

中野さんは、日本で頑張る人たちが、世界で通用する自分を築いていくのに必要なことは、「自分自身に対する正当な評価ではないかな」と感じたとおっしゃっています。

「頭のいい人」とそうでない人の差は、知識の量などの実力以外の部分が意外と大きいものです。

自分に自信を持ち、自分の強みを活かし、周囲の人を上手に使う。
本当に「頭のいい人」は、それが徹底されているので、周囲から一目置かれる存在となるのでしょう。

世界の天才たちを知る中野さんがまとめた、世界に通用する「頭のいい人」になるための方法。
ぜひ、皆さんも試してみてください。

世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ(←気に入ってもらえたら、左のボタンを押して頂けると嬉しいです)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です