【書評】『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「ねこ背にならない」』(中野ジェームズ修一)

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 お薦めの本の紹介です。
 中野ジェームズ修一先生の『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「ねこ背にならない」』です。

 中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)先生は、フィジカルトレーナー・フィットネスモチベーターです。
 米国スポーツ医学会認定ヘルスフィットネススペシャリストとして、メンタルとフィジカルの両面の指導ができる、日本では数少ないスポーツトレーナーとしてご活躍されています。

ねこ背・肩こりを左右する「筋肉」


「姿勢のあり方」は、「肩こり」と切っても切れない関係にあります。
 その両者を結びつけるのが「筋肉」です。
 姿勢をよくするのも悪くするのも筋肉ですし、肩こりを改善するのも悪化させるのも筋肉です。
 中野先生は、姿勢や肩こりの改善ができれば、疲れなく健康的なからだを手に入れることも可能だと述べています。
 では、どのような運動をすれば筋肉を強化し、正しい姿勢を保つことができるのでしょうか。

 本書は、ねこ背・肩こりになるメカニズムとそれぞれの解消法を具体的に解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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からだが痛くなるのは歪みのせいか?


 人間の背骨(脊柱)は、「椎体(ついたい)」という円柱状の骨が二十四個連結してできています。
 椎体と椎体の間には「椎間板(ついかんばん)」という軟骨があり、クッションの役割を果たしています。

 ただ椎間板のクッションだけでは、歩いたり、走ったり、ジャンプしたりするときの衝撃を吸収するには不十分です。
 そのため、背骨は前後に湾曲したS字カーブを描いています。
 このカーブには理想的な角度があり、「ナチュラルカーブ(生理的湾曲)」呼ばれています。
 一般的に医学的には背骨のナチュラルカーブが正しく描かれている人=姿勢がいい人、ナチュラルカーブが崩れている人=姿勢が悪い人と診断されます。

 中野先生は、正しい姿勢を、「個々の関節に関わる力が最小となる位置である」と定義しているので、職業によって「正しい姿勢」は違ってきます。
 テニスプレーヤーにとっては、ラケットをもってテニスをしている姿勢が正しい姿勢となります。
 デスクワーカーにとっては、長時間椅子に座ってパソコンを使うことができる姿勢が正しい姿勢ということになりますね。

 私たちが普通に生活しているだけでも、背骨のナチュラルカーブは崩れていきます。たとえば、脚を伸ばして寝ていると腰椎のカーブが崩れ、椎間板に負担がかかります。腰痛持ちの人が、膝を立てて横向きで寝るのがラクだというのは、こういう理由があるからです。
 横になって寝続けても、重力の働きによって背骨は寝床の方向へとずれていきます。ですから、睡眠中に寝返りを打つのも当然です。寝返りとは、背骨が本来の並びを失うことで筋肉の一部が圧迫されたとき、それを解消しようとする自然の欲求から起こるのです。
 さらに、利き腕の影響によってもナチュラルカーブは崩れていきます。右利きのテニスプレーヤーは、右腕で何千回、何万回とラケットを振り続けますから、当然右腕の筋肉量が増えていきます。同時に、ボールを打つと右腕の骨はインパクトを受けるので、骨密度が高まっていきます。その結果、左腕と比較して圧倒的に右腕が重くなります。右腕が重くなると、体は右側に傾いていくように思えますが、右利きのテニスプレーヤーを立たせても、見た目には傾いているようには見えません。なぜなら、無意識のうちに何らかの筋肉を使ってからだを起こそうとする反応が働いているからです。
 つまり、そのテニスプレーヤーは腕以外の筋肉のつき方も左右非対称となりますから、骨格が歪んでくるのも自然ななりゆきなのです。
 どんな人でも、仕事や日常生活を通じて何らかの動作を続けているはずですから、当然のようにその動作に応じた骨格がつくられていくわけです。
 前述したように、骨格が歪んでいても、まったく支障なく動作が快適に行えるようであれば、それがその人にとっての正しい姿勢です。
 明らかに見た目で体型が歪んでいる場合は別ですが、決して歪みそのものが悪いわけではありません。神経質に歪みを矯正する必要はないのです。

 『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「猫背にならない」』 PART1 より 中野ジェームズ修一:著 大和書房:刊

 生活スタイルは人それぞれ、仕事の内容も人それぞれです。
 骨格の歪みは、その人の日々の習慣によって形づくられるもの。
 骨格や筋肉のつき方は生活スタイルに合わせて最適化されていきます。
 骨格が歪んでいても、動きに問題なく痛みもなければ、気にする必要はないということですね。

上半身の姿勢を保つ「コアユニット」=「体幹」


 人間の姿勢は、さまざまな筋肉によって支えられています。
 上半身の姿勢を保っているのが、「コアユニット」と呼ばれる筋肉のユニットです(下図1を参照)。
 いわゆる「体幹」といわれている部分ですね。

コアユニットP34
図1.コアユニット
(『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「ねこ背にならない」』 P34 から抜粋)

 人間の胸部を覆っているのが肋骨であり、からだの中央で上半身と下半身をつなぐ要に位置するのが骨盤です。肋骨には、心臓などの胸部内蔵を守るという大切な役割がありますが、肋骨と骨盤の間には刺激から内蔵を守る骨がありません。
 肋骨が上半身を覆い尽くしていれば、胃やすい臓などの臓器も守られているので安心。にもかかわらず、なぜ肋骨は胸部だけしか覆っていないのでしょう?
 答えは、動作の自由を確保するためです。肋骨を胸部までにとどめることで、人間はさまざまな動作を可能にしています。とはいえ、内蔵を守るという課題はクリアする必要があります。そこで、骨の代わりに筋肉が腹部を覆うようになったのです。
 コアユニットは、腹部を支える四角い箱にたとえられます。四角い箱をつくっているのが、腹横筋、腹斜筋、骨盤底筋群、多裂筋という筋肉です。簡単にいうと、腹横筋は肋骨と骨盤に付着し、おなかまわりにコルセットのように巻かれている筋肉。腹斜筋は、文字どおりおなかを斜めに走っています。
 骨盤底筋群は、骨盤の底にある内蔵をハンモックのように支えている筋肉。尿道や肛門を取り巻いている筋肉でもあります。
 背中の最も深い位置にあり、背骨の両脇について背骨を支えるのが多裂筋でした。この筋肉が弱まると、背骨を支えきれなくなり腰痛の原因となります。これらの筋肉が四角いコアユニットを形成し、上半身の姿勢を形づくっているというわけです。

 『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「猫背にならない」』 PART2 より 中野ジェームズ修一:著 大和書房:刊

 コアユニットは、「トイレットペーパーの芯」に例えることができます。
 トイレットペーパーの形が崩れないのは、中心に固い芯があるからです。
 同様に、人間のからだも肋骨と骨盤の間に厚くて丈夫な芯があれば、上半身の姿勢が保たれます。
「体幹を鍛えることが重要」と言われるのは、このような理由があるからなのですね。

肩甲骨が外に広がると肩こりになる


 肩こりの大きな原因のひとつは、「肩甲骨まわりの筋肉の衰え」です。
 デスクワークなどで前傾姿勢をとり続けていると、腕の重みに引っ張られるように、肩甲骨が背骨の中心から離れて外側へと開いてしまいます。 
 肩甲骨が外側に開くようになると、菱形筋(りょうけいきん)や僧帽筋(そうぼうきん)などの肩甲骨まわりの筋肉は、絶えず伸ばされる緊張状態が続きます。
 結果、血液の循環が悪くなり、筋肉に酸素と栄養素が適切に運ばれなくなって老廃物が蓄積し、こりや痛みを感じるようになるわけです。

 また、「腕を支える筋肉の衰えも肩こりの大きな要因」です。

 腕の重さは、それぞれ約2〜3kgもあります。この腕の重さを支えているのが、両肩の肩関節を覆うようについている三角筋などの筋肉です。
 三角筋が衰えてくると、少ない筋肉で重い両腕を支えなければならないので、疲れてしまいます。その結果、肩がこってしまうのです。
 普段の生活の中で腕組みをするクセがついている人は、三角筋が弱っている疑いがあります。腕の重さが負担となりますから、無意識のうちに腕組みをしたくなるのです。
 また、机に座っているときに両腕をテーブルや肘掛けに乗せる傾向があります。腕を乗せるとラクだからです。
 さらに、三角筋が弱くなると、カバンを持つのがしんどくなります。カバンをもっと軽くしたいという気持ちが働きます。若い女性がボーイフレンドにカバンを持たせている人をときどき見かけます。
 女性のカバンを持つ男性を”優しい”と表現してよいのかは、大いに疑問です。本当は、重い荷物を持って肩まわりの筋肉を鍛えることこそが、肩こりを予防・解消する格好のトレーニングの一つなのですから。
 ただし、2〜3kg程度の荷物を少しだけで歩けなくなる、肩がパンパンに張ってしまうという人は、すでに腕を支えるだけの筋肉がなくなっている証拠です。その場合は、無理をして重い荷物を持つのはやめて、三角筋のトレーニングをして筋肉を取り戻すところから始めましょう。

 『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「猫背にならない」』 PART3 より 中野ジェームズ修一:著 大和書房:刊

 中野先生は、三角筋を鍛えるトレーニングとして、ペットボトルを使った筋トレを紹介しています(下図2を参照)。

腕を支える筋トレP96
図2.腕を支えるための筋トレ(ショルダープレス)
(『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「ねこ背にならない」』 P96 から抜粋)

肩甲骨を「動かす」、そして「安定させる」


 中野先生は、肩甲骨を正しい位置に戻して肩こりを解消するためのトレーニングを紹介しています。
 このトレーニングは二つのステージに分かれています。
 一つ目は「肩甲骨を動かす」ステージで、二つ目は「肩甲骨を安定させる」ステージです。

 普段は使い分けを意識していないと思いますが、実は、関節は「スタビリティジョイント」と「モビリティジョイント」の二種類に分類されます。簡単にいうと、スタビリティジョイントは、からだを安定させるために働く関節。モビリティジョイントは、からだを動かすための関節です。
 人間のからだでは、安定させるための関節と動かすための関節が同時に働くことでスムーズな動作を可能にしています。
 たとえば、腰の関節はからだを安定させるために働き、手首の関節が動くから物をとったり話したりできる、という具合です。
 さて、冒頭で肩甲骨を正しい位置に戻して肩こりを解消しましょうとお話しました。肩甲骨は、からだを安定させるために働く関節(スタビリティジョイント)ですから、肩こり解消のためには、肩甲骨が安定するようなトレーニングを行えばよいのではないかと思えます。
 しかし、ここに落とし穴があります。非活動的な生活が続くと、肩甲骨は動かなくなります。肩甲骨は動くための関節ではないのですが、最低限動いてくれなければ、手を上げて“バンザイ“のポーズすらとれなくなってしまいます。
 ですから、あえて最初のステージでは肩甲骨を動かすストレッチからスタートします。肩甲骨が動くようになってから、二番めのステージへと移行し、本来の役割であるからだを安定させるためのトレーニングを行っていきます。

 『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「猫背にならない」』 PART4 より 中野ジェームズ修一:著 大和書房:刊

 ここでは、第一ステージのストレッチのひとつ「肩甲骨を回す運動」を紹介します(下図3を参照)。


動的ストレッチ①p146 動的ストレッチ②P147
図3.動的ストレッチ 「肩甲骨を回す」運動 
(『上半身に筋肉をつけると「肩がこらない」「ねこ背にならない」』 P146〜147から抜粋)


 動的ストレッチは、とにかく「たくさんの回数をこなすこと」がポイントです。
終わったときに明らかに肩の周辺、または肩甲骨のあたりが熱を持って熱くなっているような感覚を持つくらいしっかりやる必要があるとのこと。

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 中野先生もおっしゃっているように、「正しい姿勢」は人それぞれです。
 生活の中で最も長くとる体勢や動きのとき、負荷が最小限となる姿勢が「正しい姿勢」です。
 肩こりや首こりなどは、「正しい姿勢」をとるための筋肉が衰えている、体からのSOSです。

 筋肉はバランスよくつけることが大事です。
 自分にとっての「正しい姿勢」とはどのようなものか。
 自分に足りない筋肉はどの筋肉か。
 それらをしっかり把握して、日頃から鍛えていきたいですね。


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