【書評】『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』(松井孝嘉)
お薦めの本の紹介です。
松井孝嘉先生の『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』です。
松井孝嘉(まつい・たかよし)先生は、脳神経外科がご専門の医師です。
「頸筋症候群」を発見し、頸筋(首の筋肉)の治療法を完成させたことでも有名です。
原因不明の不快な症状のほとんどは、「首」に原因がある!
この治療法は、初めての自律神経失調症の治療法として世界的に認知されています。
松井先生は、35年以上の長きにわたり、「ムチウチ症」と「自律神経失調症」をテーマに研究を続け、10万人以上の患者を診療してきました。
臨床を続ける中で、めまいや不眠、吐き気、ドライアイなどの「不定愁訴(病院で「原因不明」とされることが多い不快な症状)」が首の筋肉の異常によって引き起こされる自律神経失調に原因がある
ことをつきとめました。
現在では、これらの症状は、「頸性神経筋症候群(略して「頸筋症候群」)と名付けられています。
首の疲れやこりが原因で不定愁訴が積み重なり、最終的にうつ状態になってしまう「自律神経性新型うつ」という病気もあります。
本書は、「頸筋症候群」の主な症状やそのメカニズム、予防法など をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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パソコン機器の普及が首こり患者を増やす
パソコンの画面を見ているときは、どうしても下向きの姿勢になります。
実は、これがいちばん多い首こりの原因です。
人の頭は平均で約6キロ、スイカ1個分の重さに相当します。まっすぐの姿勢で立っているだけでも、首はそれだけの重さの頭を支えているわけですが、下向きになることによって、首にかかる負担は約3倍になります。会社でも家でもパソコンを使っていると、首には常に大きな負担がかかっていることになり、これがやがて首こりを引き起こしてしまうのです。
さらに、最近ではスマートフォンやタブレットなども普及しており、移動中の電車の中でもメールやゲームを行う人が増えています。これによって、現代人が下向き姿勢をとる時間はよりいっそう長くなりました。このような機器の普及はわれわれの生活を便利にしてくれますが、その一方で首こりを患う人々を増やしてしまっているという現状もあるのです。
ほかにも、読書や書き物、女性の場合は床掃除や洗濯、洗い物などの家事と、日常生活において下向き姿勢になることは多々あります。その間じゅう、首にはずっと負担がかかりっぱなしです。
人間の首というのは、物理的に頭と体をつないでいるだけのものではなく、神経や動脈、静脈などの大事な血管がすべて通っている非常に重要な部位です。
それにもかわらず、首こりというのはなかなか自覚できないという特徴があります。首の筋肉は「沈黙の筋肉」といわれ、とても我慢強く、疲労を感じにくいのです。つまり、首がこっていても気づかずに放置しがちで、進行しやすいということです。
また、普段の生活において、首の筋肉は意外と伸び縮みしない筋肉です。そのため、首の筋肉は非常にかたまりやすいのです。『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 第1章 より 松井孝嘉:著 洋泉社:刊
IT機器の普及が、首への負担をより大きくしていることがわかりますね。
こっていても、なかなか自覚できない部位が、「首」です。
普段の生活からきっちりケアをして、いたわってあげたいですね。
首の筋肉の疲労と変性で自律神経が異常に
松井先生は、首周りの筋肉の構造について、以下のように説明しています。
頭を支える首の骨は頚椎といい、7つの骨で構成されています。頚椎は、大事に守られるように、数多くのさまざまな筋肉に囲まれています。その中に、首こりと関連がある主な筋肉があります。「頭半棘筋(とうはんきょくきん)」「僧帽筋(そうぼうきん)」「頭板状筋(とうばんじょうきん)」「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」です。頚椎の中心には、脳から背骨の中を通って伸びている中枢神経(=脊椎)があります。
脊髄から出ている末梢神経や自律神経は、体の至るところに張り巡らされ、脳の司令の伝達経路なります。脊髄を首の位置で保護している頚椎は、先述の4つの筋肉などが疲労すると、神経にも影響が出て、伝達経路に支障をきたし、体のさまざまな場所で不調が生まれるのです。『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 第2章 より 松井孝嘉:著 洋泉社:刊
(『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 P48~49 より抜粋)
これらを酷使し続けると、「こり」になり、神経を圧迫して、さまざまな不快な症状を生みます。
「ネックリラクゼーション」で首のこりの予防を!
首の筋肉のこりを予防するための方法として、「ネックリラクゼーション」があります。
首こりが起こる大きな原因は、うつむき姿勢をし続けることです。
首こりを予防するには、できるだけ首を休めなくてはなりません。ここで紹介する「ネックリラクゼーション」は、パソコン作業などで長時間うつむき姿勢が続く際に、効率よく首を休めることができる方法です(やり方は、下図参照下さい)。
首を休めるというのは「首の筋肉をゆるめる」ということです。前かがみの姿勢に耐えた首を休めてあげるためには、首を椅子の背あずけて、目線をやや上方向に持っていくだけでもかまいません。「疲れた」と感じる前に、行うことが大切です。『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 第4章 より 松井孝嘉:著 洋泉社:刊
(『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 P111~113 より抜粋)
いつでもどこでもできる首こり予防法なので、ぜひ習慣として取り入れたいですね。
暮らしの中で「首」をいたわる
首こりは、普段の生活のちょっとした工夫でも防ぐことができます。
松井先生は、自宅で気をつけるべきことについて、以下のように述べています。
自宅で気をつけるべきことは、まずうつむき姿勢をできるだけ避けて生活することです。
家事や趣味などで下を向くタイミングは、日常にたくさんあります。パソコン作業を家でする人もたくさんいるでしょう。しかし、その姿勢が首の筋肉に大きな負担をかけ、首こりを引き起こす要因となることを理解し、できるだけ首をいたわりながら生活するように心がけてください。また、首を冷やさないように配慮することも重要なので、お風呂に入る祭やドライヤーを使う際は、首を温める工夫をするといいでしょう
すべてを実行しようとすると必ず無理が出て、なかなか続かなくなってしまいます。自分が生活していく中で、無理なくできるものから、少しずつ取り入れて実行していくといいでしょう。『首こり・体調不良に効く「かんたん体操」』 第5章 より 松井孝嘉:著 洋泉社:刊
首こり予防のポイントは、「うつむき姿勢を避けること」と「温めること」です。
普段の生活から心掛けたいですね。
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本書を読むと、首の筋肉の重要性や首こりの健康への影響の大きさがよく分かります。
松井先生によると、「頸筋症候群」に当てはまる症状は、頭痛やめまい、だるさ、いらいらなどを含めて少なくとも30、細かく分ければ100ほどもある
とのことです。
それらの多くが、首の筋肉が原因とされる自律神経の乱れから生じます。
たかが、首こり。されど、首こりです。
症状が重くなるまで放っておかずに、早めの対処を心掛けたいですね。
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